もしもハジメ君の性格がキツく口調が悪かったら(仮)   作:fruit侍

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思ったより伸びたので更新。前の話と違って二日くらいで仕上げたから正直なところ微妙な出来だと思います……。

一話を投稿してからわずか五分くらいで低評価……予想はしてましたけど、やっぱりへこむものがあります。


第二話

瞼越しに眩しさ感じなくなった俺は、ざわざわと騒ぐ無数の気配を感じてゆっくりと目を開いた。そして、周囲を呆然と見渡す。

 

まず目に飛び込んできたのは巨大な壁画だった。縦横十メートルはありそうなその壁画には、後光を背負い長い金髪を靡かせうっすらと微笑む中性的な顔立ちの人物が描かれていた。

 

背景には草原や湖、山々が描かれ、それらを包み込むかのように、その人物は両手を広げている。美しい。美しいはずなのだ。だが、

 

(気色悪ぃ……)

 

俺はその絵から感じられる気色悪さに、絵から目を反らした。

 

よくよく周囲を見てみると、どうやら俺達は巨大な広間にいるらしいということが分かった。

 

素材は大理石だろうか? 美しい光沢を放つ滑らかな白い石造りの建築物のようで、これまた美しい彫刻が彫られた巨大な柱に支えられ、天井はドーム状になっている。大聖堂という言葉が自然と湧き上がるような荘厳な雰囲気の広間である。こんなのが現世にあれば、世界遺産認定不可避だろう。

 

俺達はその最奥にある台座のような場所の上にいるようだった。周囲より位置が高い。周りには俺と同じように呆然と周囲を見渡すカス共がいた。どうやらあの時、教室にいたカス共は全員この状況に巻き込まれちまったってことらしい。

 

俺はチラリと背後を振り返った。そこには、呆然としてへたり込む白崎の姿があった。いっそ怪我でもすればよかったのに、と俺は思った。

 

そして、おそらくこの状況を説明できるであろう台座の周囲を取り囲む者達への観察に移った。

 

そう、この広間にいるのは俺達だけではない。少なくとも三十人近い奴等が、俺達の乗っている台座の前にいたのだ。まるで祈りを捧げるように跪き、両手を胸の前で組んだ格好で。

 

彼等は一様に白地に金の刺繍がなされた法衣のようなものを纏い、傍らに錫杖のような物を置いている。その錫杖は先端が扇状に広がっており、円環の代わりに円盤が数枚吊り下げられていた。

 

その内の一人、法衣集団の中でも特に豪奢で煌びかな衣装を纏い、高さ三十センチ位ありそうなこれまた細かい意匠の凝らされた烏帽子のような物を被っている七十代くらいの爺さんが進み出てきた。

 

もっとも、爺さんと表現するには纏う覇気が強すぎる。顔に刻まれた皺や老熟した目がなければ五十代と言っても通るかもしれない。

 

そんな爺さんは手に持った錫杖をシャラシャラと鳴らしながら、外見によく合う深みのある落ち着いた声音で俺達に話しかけた。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

そう言って、イシュタルと名乗った老人は、好々爺然とした、しかしどこか胡散臭い微笑を見せた。

 

てかイシュタルって女神の名前だろ? なんでこんな爺さんが……。もしかして神の名前だから自分も神ですよとか思ってる基地外か?

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

現在、俺達は場所を移り、十メートル以上ありそうなテーブルが幾つも並んだ大広間に通されていた。

 

この部屋も例に漏れず煌びやかな作りだ。素人目にも調度品や飾られた絵、壁紙が職人芸の粋を集めたものなのだろうとわかる。

 

おそらく、晩餐会などをする場所なのではないだろうか。上座に近い方にロリロリ愛ちゃんとバカ之河達四人組が座り、後はその取り巻き順に適当に座っている。俺は言わずもがなは最後だ。

 

ここに案内されるまで、誰も大して騒がなかったのは未だ現実に認識が追いついていないからだろう。イシュタルとか名乗った基地外ジジイが事情を説明すると告げたことや、カリスマレベルMAXのバカ之河が落ち着かせたことも理由だろうが。こういうときだけは本当に使えるんだよな。

 

教師より教師らしく生徒達を纏めていると、ロリロリ愛ちゃんが涙目だった。

 

俺達が席に座ると、絶妙なタイミングでカートを押しながらメイド達が入ってきた。そう、生メイドである。地球の喫茶店にいるようなエセメイドや外国にいるデップリしたおばさんメイドではない。正真正銘、男子の夢を具現化したような美女・美少女メイドである。以前の俺なら凝視してただろうが、今の俺は見た目がいい程度で凝視なんかしない。そうやって見た目と口先で騙して、俺を騙してきたクソ女を俺は嫌というほど知っている。大方、ハニトラ要員だろうな。

 

こんな状況でも思春期の飽くなき探究心と欲望は健在でゴミ共の大半がメイドを凝視している。発情期の間違いじゃねえのか?

 

俺も傍に来て飲み物を給仕してくれたメイドを見ていた。が、しかし、メイドの淹れた紅茶を飲んでみると、思わず顔に出てしまうほど不味かった。俺はそそくさと立ち去っていくメイドを睨み、カップを静かに置いた。

 

全員に飲み物が行き渡るのを確認すると基地外ジジイが話し始めた。

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

そう言って始めた基地外ジジイの話は実にテンプレで面白味がなく、どうしようもないくらい勝手なものだった。

 

要約するとこうだ。

 

まず、この世界はトータスと呼ばれている。そして、トータスには大きく分けて三つの種族がある。人間族、魔人族、亜人族である。

 

人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配しており、亜人族は東の巨大な樹海の中でひっそりと生きているらしい。

 

この内、人間族と魔人族が何百年も戦争を続けている。

 

魔人族は、数は人間に及ばないものの個人の持つ力が大きいらしく、その力の差に人間族は数で対抗していたそうだ。戦力は拮抗し大規模な戦争はここ数十年起きていないらしいが、最近、異常事態が多発しているという。

 

それが、魔人族による魔物の使役だ。

 

魔物とは、通常の野生動物が魔力を取り入れ変質した異形のことだ、と言われている。この世界の人々も正確な魔物の生体は分かっていないらしい。それぞれ強力な種族固有の魔法が使えるらしく強力で凶悪な害獣とのことだ。

 

今まで本能のままに活動する彼等を使役できる者はほとんど居なかった。使役できても、せいぜい一、二匹程度だという。その常識が覆されたのである。

 

これの意味するところは、人間族側の〝数〟というアドバンテージが崩れたということ。つまり、人間族は滅びの危機を迎えているのだ。

 

「あなた方を召喚したのは〝エヒト様〟です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という〝救い〟を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、〝エヒト様〟の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

基地外ジジイはどこか恍惚とした表情を浮かべている。おそらく神託を聞いた時のことでも思い出しているのだろう。気持ち悪い。次その顔見せたら、エヒトとか言う神の絵か何かに盛大にこのクソ不味い紅茶をぶちまけてやる。

 

基地外ジジイによれば人間族の九割以上がエヒトとか言う神を崇める聖教教会の信徒らしく、度々降りる神託を聞いた者は例外なく聖教教会の高位の地位につくらしい。

 

(バッカじゃねえの?)

 

俺は率直にそう思った。神託か何だか知らねえが、それを疑うどころか喜んで従うとかどう考えても頭がおかしいどころか退化してるに違いない。

 

人間族の九割以上はエヒトとか言う神を崇めている。そいつらが全員この基地外ジジイみたいな奴なら、この世界にまともな奴は殆どいないということになる。

 

俺達はエヒトとか言う神を狂信してる基地外共が蔓延る世界に、そのエヒトとか言う神とこの世界の勝手な都合で召喚されたってわけだ。そして仕舞いには戦争を、つまり人を殺せと。これ以上馬鹿げた話があるのか?

 

とか思ってると、突然立ち上がり猛然と抗議する人が現れた。

 

ロリロリ愛ちゃんだ。

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

(あんたがいくら怒ったって、無駄だよ)

 

ぷりぷりと怒るロリロリ愛ちゃん。あの女は今年二十五歳になる社会科の教師で非常に人気がある。百五十センチ程の低身長に童顔、ボブカットの髪を跳ねさせながら、カス共のためにとあくせく走り回る姿はなんとも微笑ましく、そのいつでも一生懸命な姿と大抵空回ってしまう残念さのギャップに庇護欲を掻き立てられるカス共は少なくない。

 

俺は最初見たとき、飛び級かなんかで中学生が教師になっちまったのかなーと思ったが、本人が言うにはちゃんと高校も大学も卒業してるらしい。

 

カス共には〝愛ちゃん〟、俺には〝ロリロリ愛ちゃん〟と愛称で呼ばれ親しまれているのだが、本人は身長が低いのがコンプレックスらしく、そう呼ばれたり子供扱いされると特に俺には直ぐに怒る。なんでも威厳ある教師を目指しているのだとか。正直言って無理だろ。

 

今回も理不尽な召喚理由に怒り、うがーと立ち上がったのだ。「ああ、また愛ちゃんが頑張ってる……」と、ほんわかした気持ちで基地外ジジイに食ってかかるロリロリ愛ちゃんを眺めていたカス共だったが、次の基地外ジジイの言葉に凍りついた。

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

場に静寂が満ちる。重く冷たい空気が全身に押しかかっているようだ。どいつもこいつも、何を言われたのか分からないというマヌケな表情で基地外ジジイを見やる。

 

「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

 

ロリロリ愛ちゃんが叫ぶ。

 

「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」

 

「そ、そんな……」

 

ロリロリ愛ちゃんが脱力したようにストンと椅子に腰を落とす。周りのカス共も口々に騒ぎ始めた。

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

 

「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」

 

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

 

「なんで、なんで、なんで……」

 

パニックになるカス共。

 

俺は平静を保てていた。オタクであるが故にこういう展開の創作物は何度も読んでいる。それ故、予想していた幾つかのパターンの内、最悪のパターンではなかったのでカス共よりは平静を保てていた。

 

ちなみに、最悪なのは召喚者を奴隷扱いするパターンだったりする。

 

どいつも狼狽える中、基地外ジジイは特に口を挟むでもなく静かにその様子を眺めていた。

 

だが俺は、なんとなくその目の奥に侮蔑が込められているような気がした。今までの言動から考えると「エヒト様に選ばれておいてなぜ喜べないのか」とでも思っているのかもしれない。ふざけんなよ。そもそもエヒトとか言う神は俺らは知らねえし、てめえらの見方で勝手に見下してんじゃねえ。

 

未だパニックが収まらない中、バカ之河が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。その音にビクッとなり注目するカス共。バカ之河は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

 

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

 

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

 

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

 

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

ギュッと握り拳を作りそう宣言するバカ之河。無駄に歯がキラリと光る。俺にはその姿が何とも滑稽で、見ていられなかった。

 

同時に、奴のカリスマは遺憾なく効果を発揮した。絶望の表情だったカス共が活気と冷静さを取り戻し始めたのだ。バカ之河を見る目はキラキラと輝いており、まさに希望を見つけたという表情だ。女共の半数以上は熱っぽい、俺には気持ち悪いとしか思えない視線を送っている。

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」

 

「龍太郎……」

 

「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」

 

「雫……」

 

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

 

「香織……」

 

 いつものメンバーがバカ之河に賛同する。後は当然の流れというようにクラスメイト達が賛同していく。ロリロリ愛ちゃんはオロオロと「ダメですよ~」と涙目で訴えているがバカ之河の作った流れの前では無力だった。

 

「皆……ありがとう! 皆でこの世界を救って、皆で帰るぞ!」

 

「「「「「おおおおおおおおお!!!!!」」」」」

 

「うるせえ!!!!」

 

俺の一喝で、先程の気合いに満ちた声が嘘みたいに静まる。俺は立ち上がり、ロリロリ愛ちゃんの方へわざと足音が鳴るように歩く。

 

重々しい足音が、先程冷静さを取り戻したカス共の精神を追い詰めていく。

 

「戦争ねぇ……こんな貧弱なガキ共に何ができるって言うんだ?」

 

何人かは俺の言うことの真理に気づいたが、それはすぐに俺に対しての嫌悪感によって忘れさせられてしまう。こいつらはもう駄目だな。見たくない現実を、俺への憎悪で上書きして、目を背けている。

 

「俺達は、ここの世界とは比べ物にならないほどの平和な世界で過ごしていた。それはどういうことか、分かるよなぁ? ロリロリ愛ちゃん」

 

「は、はいっ! 私達は、戦争なんて考えられないほど平和な世界で過ごしてきました! 今、この場にいる子達は、刃物を使って生物を殺したことすらない子達ばっかりです! そんな子達に、戦争なんて無理です!」

 

「よく言った。偉いぞロリロリ愛ちゃん」

 

「頭を撫でないでください南雲君! てかロリロリ愛ちゃんじゃありません! 愛子先生です!」

 

ぷりぷり怒るロリロリ愛ちゃんを尻目に、俺はロリロリ愛ちゃんの頭を撫でる。身長はバカみたいにある俺は、ロリロリ愛ちゃんと並ぶと兄妹にしか見えない。周りから見たら、子供扱いするなと怒る妹を撫でている兄だ。

 

しかしここで俺が今もっとも聞きたくない声で返ってきた。バカ之河の声だ。

 

「南雲、君はこの世界の人達がどうなってもいいというのかい?」

 

その問いに、俺は即答してやる。

 

「ああ、さっきまで知らなかった奴を助ける義理はないし、むしろ勝手に滅びろ」

 

「き、君はこの世界の人達が苦しんでいることに何とも思わないのか!? 困っている人がいたら助けるのが人としての義務だろう! 俺達は戦争で魔人族を倒して、この世界を救う! もう決まったことなんだ!」

 

そのバカ之河の言葉に、先程まで黙っていた取り巻き共も、次々と俺を非難する。

 

「お前の勝手な都合で俺達の邪魔すんじゃねえ!」

 

「そうだそうだ!」

 

「あんたなんか話に入ってこないでよ!」

 

俺は黙ってその光景を見ていた。唯一の味方だったロリロリ愛ちゃんも、俺の先程の発言に俺を凝視してしまっている。

 

俺は気がついていた。基地外ジジイが事情説明をする間、それとなくバカ之河を観察し、どの言葉に、どんな話に反応するのか確かめていたことを。

 

正義感の強いバカ之河が人間族の悲劇を語られた時の反応は実に分かりやすかった。その後は、ことさら魔人族の冷酷非情さ、残酷さを強調するように話していた。おそらく、基地外ジジイは見抜いていたのだろう。この集団の中で誰が一番影響力を持っているのか。そしてまんまとバカ之河は罠に嵌まり、俺達を戦争に参加させようとした。

 

今尚も続く罵詈雑言の嵐に、俺は

 

アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!!

 

嘲笑を含んだ爆笑を返してやった。俺がいきなり笑いだしたことに引いたカス共は俺への非難を止める。それでも俺は笑うのを止めない。

 

「何がおかしい!」

 

耐えきれなくなったバカ之河が、俺が笑っている理由を聞いてきた。

 

「だってよぉ! 刃物で生きてる生物を殺したことすらない奴等が戦争に参加するんだぜ!? これ以上の冗談がどこにあるってんだよ! ハッハッハッハッ!!!」

 

「それがなんだ!」

 

まだ分からねえのかこのバカは。本当に面白えな。

 

「じゃあどうやって人を殺すんだよ! 刃物で頸動脈を切って殺すのか? それとも鈍器で頭を叩き割って殺すのか? それとも槍で心臓をぶっ刺して殺すのか? それとも水に沈めるか毒を吸わせるかして苦しませて殺すのか? なあ、なあ!」

 

俺は半狂乱状態のふりをしてバカ之河を問い詰める。あいつからしたら、いきなりこの世界に来た影響でパニックになっているだけだとか勝手に解釈しそうだが、これには目的がある。

 

カス共に、今自分がしようとしていることに気づかせる。

 

あいつらはとりあえずバカ之河に賛同しとけば、自分達は帰れると思ってるんだろう。だが俺はそう思わない。先程の基地外ジジイの言葉をしっかりと覚えている。

 

基地外ジジイはバカ之河の問いに対して、「無下には()()()()()」と言ったのだ。俺は聞き逃していない。

 

バカ之河は完全に信じているようだが、あれは単なる基地外ジジイの妄言であって、エヒトとか言う神が直に「人間族救ったら帰してあげるよー」と言ったわけではない。信憑性が低すぎるんだよ。少なくとも、俺はエヒトとか言う神がそう言わなければ絶対信じない。言ったところで信じねえけどな。自分の世界の危機を自分一人でどうにかできない神なんか信用するに値しない。

 

よって俺達が人間族を救ったところで帰れる保証なんかどこにもない。はい終わりで済まされるか最悪の場合、『強大な力を持っている俺達は、反乱の因子になりかねない』とかいちゃもんつけられて命を狙われる可能性もなくはない。

 

だから帰れる可能性限りなく0のこの方法に乗ってはならない、と奴等に気づかせる。こいつらだけでやるんなら俺は反対しない。やりたきゃ勝手にやって死んどけって思う。だがそれに俺も巻き込まれちゃたまったもんじゃない。

 

ま、こいつらのことは正直言ってどうでもいいので、最低でも俺一人帰れればそれでいい。こいつらのことなんか知ったことじゃねえ。

 

「なあ、どうやって殺すんだよ!」

 

「落ち着け南雲! 君は混乱しているだけだ! そんな皆を怖がらせるようなことを言うのは止めろ!」

 

俺は最初からまともなんだけどな。やっぱり都合よく解釈してやがった。

 

「落ち着きなされ、黒髪の方」

 

横から違う声が聞こえた。あの基地外ジジイだ。黒髪だから俺のことか。てかてめえがバカ之河を操作するからこんなことになってんだろうが責任とって死ね。

 

「いきなりこの世界に呼び出されて混乱するのは分かります。先程皆様もそんな感じでしたからな。ですがあなた方を危険に晒すことは絶対にしません。教皇の名に誓います。あなた方を、決して一人も欠かさず、あなた方の世界に返すことを約束いたしましょう」

 

「そこまで言うんだったらよぉ、志願制とかにしろよ」

 

「なっ、どういうことだ南雲!」

 

俺の提案に突っかかってくるバカ之河。

 

「お前は黙ってろ。今は俺と基地gゲフンゲフン、イシュタルが話してるんだ。危険に晒すことはしないんだったらよ、戦争に行きたくない奴は行かせなければいいだろ。矛盾してんだよ最初の発言と。そうしないなら俺は信用しねえが、そうすれば信用くらいはしてやる」

 

「ふぅむ……分かりました。では戦争は参加したい者だけが参加することにしましょう。その代わり、貴方には戦争に参加してもらいますぞ」

 

「断る」

 

即答した俺を、周りの奴等全員目玉が飛び出るくらい目を大きくして見る。

 

「戦争に参加したくない奴は参加しなくていいんだろ? 俺は信用してやるとは言ったが、戦争に参加するとは一言も言ってない」

 

バカが。俺の狙いを読まずに、早まった結果だ。

 

「当然だが、ロリロリ愛ちゃんも戦争には参加させないでもらう。この人はこんな見た目だが、一応こいつらの保護者だ。そこら辺はちゃあんと理解してくれるよなぁ、イシュタルさんよぉ?」

 

俺はロリロリ愛ちゃんの肩を掴みながら言う。隣で「ですから愛子先生ですっ!」とか聞こえるが気のせいだろ。

 

「ぬぅ……分かりました……貴方の話を聞いていなかったのは私ですからな。貴方は戦争に不参加とします」

 

やってやった。基地外ジジイはこれ以上覆すのは不可能だと悟ったのだろう、あっさり認めやがった。

 

「南雲! どういうつもりだ! お前だけが不参加なんて!」

 

「俺はこんな世界で死ぬのは御免だ。俺には家族がいる。今頃俺らがいなくなったことを知って、必死こいて探してるかもしれねえぞ?」

 

「戦争に勝てば帰れるじゃないか!」

 

「それほど悠長に待ってられるほど、俺は気が長くないんでね。俺は俺でこの世界で元の世界に帰る方法を探す。俺についてくる奴は勝手についてこい。俺は暇させてもらう」

 

俺はバカ之河とカス共の睨みつけを無視し、この部屋から出るために扉の方へ向かう。ロリロリ愛ちゃんや、八重樫、白崎、一部の奴等が俺を心配そうに見つめていたが、他の奴等は俺を殺す勢いで睨み付けていた。

 

そして俺が出るときに、基地外ジジイが俺のことを神敵をみるような目で見ていたのを俺は見逃さなかった。




次回が投稿された瞬間、アンケートは締め切らせていただきます。

恵理ちゃんと清水君は救済する?

  • 両方とも救済して魔改造して、どうぞ
  • 恵理ちゃんだけ救ってハーレム増やせ
  • 清水君だけ救って相棒っぽくしちゃって
  • 両方救わず原作と同じ末路を辿れ(無慈悲)
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