もしもハジメ君の性格がキツく口調が悪かったら(仮)   作:fruit侍

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前回の投稿から早くも1ヶ月が経過。オリジナル展開となります。だいぶ前からこの話の構成は考えてたんですが、書くとなると時間がかかるものですね。


第十七話

俺達が準備を終えて迷宮攻略に動き出したあと、十階層ほどは順調に降りることが出来た。俺の装備や技量が充実してきたからというのもあるが、ユエの魔法が凄まじい活躍を見せたというのも大きな要因だ。

 

全属性の魔法をなんでもござれとノータイムで使用し、的確に俺を援護してくれる。

 

ただ、回復系や結界系の魔法はあまり得意ではないらしい。〝自動再生〟があるからか無意識に不要と判断しているのかもしれない。もっとも、俺にはこの万能薬な水があるのでなんの問題もなかったが。

 

現在俺達がいる階層でまず見えたのは樹海だった。十メートルを超える木々が鬱蒼と茂っており、空気はどこか湿っぽい。本当にどういう構造してんだかこの迷宮は。

 

階下への階段を探して探索していると、突然、ズズンッという地響きが響き渡った。何事かと身構える二人の前に現れたのは、巨大な爬虫類を思わせる魔物だ。見た目は完全にティラノサウルスである。

 

なぜか頭に一輪の可憐な花を生やしていたが……。

 

鋭い牙と迸る殺気が議論の余地なくこの魔物の強力さを示していたが、ついっと視線を上に向けると向日葵に似た花がふりふりと動く。かつてないシュールさだった。

 

ティラノサウルスが咆哮を上げ俺達に向かって突進してくる……前に俺はトイフェルを抜き早撃ちを繰り出した。

 

結果は見事ティラノの上顎を吹き飛ばし、貫通して一瞬で命を刈り取った。地響きを立てながら横倒しになるティラノ。

 

そして、頭の花がポトリと地面に落ちた。

 

「……」

 

トイフェルをしまった俺は、無言でその花に近づき、手に取って見てみる。見た目は向日葵に近いが、赤い花弁と緑色の中心。いくら脳を漁っても、この花に関する知識は出てこなかった。

 

その時、花が動いた。

 

「ッ!」

 

俺は咄嗟に投げ捨てて退き、警戒する。花はピクピクと動くだけで、こちらに一切攻撃などはしてこない。ふと、横倒しになっているティラノの方を見るが、全く動いておらず生き返っている様子はない。ということは、この花がティラノの心臓部、というわけでもない。

 

「……何だろう」

 

ユエが疑問の声を漏らす。さっきから分からないことだらけだ。とりあえず俺は、もう一度花を拾おうとする。

 

突如、なんと花が俺の頭に飛び掛かってきた。

 

「うおっ!?」

 

突然のことで俺は反応できず、頭に根を張られてしまう。すると、体が思ったように動かせなくなり、その場から動けなくなる。

 

「ハジメ!」

 

ユエの叫ぶ声が聞こえる。ユエは魔法を放とうと掌を前に出しているが、花が俺の頭にいるということもあり、放てないでいる。

 

分かったぞ……こいつ、寄生型の魔物か……!

 

それならティラノが死んだってのにこいつだけ生きているというのも説明がつく。こいつ自身はとても弱い。そのため生物に寄生して、自分の身を守っているんだ。

 

てか冷静に分析してる場合じゃねえ……抵抗しねえと、ユエに攻撃しちまう……!

 

「ぐおおお……!」

 

「ハジメ、呑まれちゃダメ!」

 

しかし思ったより花の支配が強く、俺の意思では体を動かせそうになかった。そして、花にされるがままトイフェルを抜き、ユエに向けてしまう。

 

俺の指がトイフェルの弾き金を弾こうとしたときだった。

 

花が、枯れ始めた。

 

「……あ?」

 

見るも無惨な姿で、ポトリと俺の前に落ちる花。先程のようにピクピクと動いてはいなかった。

 

「一体何が起きやがった……?」

 

俺は、もしかしたら自分の技能が何かしたんじゃないかと思い、ステータスプレートを取り出す。

 

そして技能の欄を一望し、花を枯れさせた技能に目星をつけた。

 

その技能の名は、『毒耐性』。

 

いつ獲得したのかは覚えてないが、まあ名前の通りあらゆる毒に耐性を持つってことなんだろう。しかしそれはあくまで耐性であり、完全に遮断するわけではない。俺が一瞬花に体を奪われかけたのも、それが理由だろう。

 

強毒は、完全に防ぐことができない。

 

時間が経てば毒に慣れ、耐性程度で防げるようにもなるだろうが、毒の強さによってその時間の長さは変わる。今回はすぐに慣れたからよかったが、これが解毒が困難な劇毒だったなら危なかった。

 

偶然助かったからよかったとはいえ、これからは用心深く行動しないとな、と俺は反省する。

 

「……ハジメ、大丈夫?」

 

もう操られていないと分かったユエが近づいてくる。

 

「もう平気だ。しかし寄生型の魔物もいるとはな……俺は技能でどうにかなったが、ユエはこういうのに一切耐性はないんだろ? 俺の心配をしてくれるのは嬉しいが、自分の心配もしろよ。できればお前を撃つなんてことはしたくないからな」

 

大丈夫だと示すと同時にユエにも忠告しておく。ユエも、この花が寄生型の魔物だとは思ってもいなかっただろうからな。

 

「……ん」

 

ユエがいつも通りの返事をする。

 

その直後、俺の気配感知に続々と魔物が集まってくる気配が捉えられた。

 

十体ほどの魔物が取り囲むように俺達の方へ向かってくる。統率の取れた動きに、二尾狼のような群れの魔物か? と訝しみながらユエを促して現場を離脱する。数が多いので少しでも有利な場所に移動するためだ。

 

円状に包囲しようとする魔物に対し、俺は、その内の一体目掛けて自ら突進していった。

 

そうして、生い茂った木の枝を払い除け飛び出した先には、体長二メートル強の爬虫類、例えるならラプトル系の恐竜のような魔物がいた。

 

頭からチューリップのような花をひらひらと咲かせて。

 

「……さっきと花の種類が違うな。亜種か何かか?」

 

「……かわいい」

 

俺が先程の経験を元に推測する横で、ユエが思わずほっこりしながら呟く。

 

ラプトルは、ティラノと同じく、「花なんて知らんわ!」というかのように殺気を撒き散らしながら低く唸っている。臨戦態勢だ。花はゆらゆら、ふりふりしているが……

 

「シャァァアア!!」

 

ラプトルが、花に注目して立ち尽くす俺達に飛びかかる。その強靭な脚には二十センチメートルはありそうなカギ爪が付いており、ギラリと凶悪な光を放っていた。

 

俺とユエは左右に分かれるように飛び退き回避する。

 

そして俺は空力を使って三角飛びの要領で、ラプトルの頭上を取った。そして、試しにと頭のチューリップを撃ち抜いてみた。

 

ドパンッという発砲音と同時にチューリップの花が四散する。

 

ラプトルは一瞬ビクンと痙攣したかと思うと、着地を失敗してもんどり打ちながら地面を転がり、樹にぶつかって動きを止めた。シーンと静寂が辺りを包む。ユエもトコトコと俺の傍に寄ってきてラプトルと四散して地面に散らばるチューリップの花びらを交互に見やった。

 

「……死んだ?」

 

「いや、生きてる。花を潰せば、寄生は解けるんじゃねえかと思ったんだが……」

 

俺の見立て通り、ピクピクと痙攣した後、ラプトルはムクッと起き上がり辺りを見渡し始めた。そして、地面に落ちているチューリップを見つけると歩み寄り、親の敵と言わんばかりに踏みつけ始めた。

 

それが意味するのは、一つ。

 

(俺みたいに、寄生されてる間も意識があるみたいだな)

 

先程寄生されかけた時、俺は意識が普通にあった。感覚としては、骨を遠隔操作されているような感じで、逆らえはしないが意識に全く問題はないのだ。こいつらがどれだけ寄生されてたのかは知らんが、花を踏みつけているのは、長い間自分の体を好き勝手しやがって、といった感じだろう。

 

ラプトルは一通り踏みつけて満足したのか、如何にも「ふぅ~、いい仕事したぜ!」と言わんばかりに天を仰ぎ鳴き声を上げた。そして、ふと気がついたように俺達の方へ顔を向けビクッとする。

 

「今気がついたのかよ。どんだけ夢中だったんだよ」

 

「……やっぱりイジメ?」

 

俺がツッコミ、ユエが同情したような眼差しでラプトルを見る。ラプトルは暫く硬直したものの、直ぐに姿勢を低くし牙をむき出しにして唸り一気に飛びかかってきた。

 

俺はスっとトイフェルを掲げ大きく開けられたラプトルの口に照準し電磁加速された弾丸を撃ち放った。

 

一筋の閃光となって狙い違わずラプトルの口内を蹂躙し後頭部を粉砕して飛び出た弾丸は、背後の樹も貫通して樹海の奥へと消えていった。

 

そして俺の中に一つの疑問が沸き上がる。見た感じ花の種類はランダムらしい。花の種類別に魔物の種類が違うなら、その花の種類別で争っててもおかしくないはずだ。なのにこいつらは全部俺達に向かってきた。まるで、親玉に攻撃指令を出されたみたいに。

 

(……もしやこの花には別に本体があるのか?)

 

俺はここまできてピンときた。だとしたら面倒だな。本体を叩かねえと永遠に終わらねえ。

 

考え事で大分時間を使っていたのか、包囲網がかなり狭まってきていたので急いで移動しつつ、有利な場所を探っていく。

 

程なくして直径五メートルはありそうな太い樹が無数に伸びている場所に出た。隣り合う樹の太い枝同士が絡み合っており、まるで空中回廊のようだ。

 

五分もかからず眼下に次々とラプトルが現れ始めた。

 

(こいつら、ある特定の方向からしか来てねえな)

 

ラプトルがやって来た方向の向こうにもそのまた向こうにも、ラプトルの群れやティラノが見られる。逆に言うと、他の方向からは来ていない。

 

向こうは勘づかれたことに気づいたんだろう。守りを捨て、伏兵も全部攻撃に回しているようだ。

 

「ユエ、俺の背中に乗れ」

 

俺はユエを背中に乗せる。瞬間的な身体強化はできるユエだが、走り続けるなどの持続的な身体強化は苦手らしいからこっちの方がいい。

 

勘の良さはまあまあみたいだが、戦術は三流以下だな。何故かって?

 

「一方向だけから攻めるのは、こっちに来てくださいって言ってるようなもんだろうがよォ!!!」

 

敵が馬鹿すぎることに笑いを隠せない俺は、一方向から来るラプトルを避けながら、どんどん突き進む。

 

一方向から攻めたんじゃ、敵に自分の本陣の方向を教えてるようなものだ。つっても戦争とかならまあまあ有効かもしれねえ。だが今は戦争をやってる訳じゃねえ。防衛するもんもない俺に対しては愚策としか言いようがない。

 

「さァさァ、見えて来たぜェ!? 馬鹿のアジトがなァ!!」

 

ラプトルやティラノを出来るだけ避け、避けられない奴は突き進む勢いのまま蹴り殺していると、人二人分くらいしかない岩の割れ目があった。襲ってくる奴らの必死さから間違いねえ。本体のアジトだ。

 

俺は二百体以上の魔物を引き連れたままその割れ目に飛び込んだ。

 

割れ目の先には洞窟があり、この洞窟は大の大人が二人並べば窮屈さを感じる狭さだ。ティラノは当然通れず、ラプトルでも一体ずつしか侵入できない。

 

俺を追ってラプトルの一体が、カギ爪を伸ばし洞窟に侵入しようとしてきたが、その前に俺が錬成し割れ目を塞ぐ。

 

「悪ぃな。お前に罪はねえが、生き埋めにでもなっててくれや」

 

僅かに残っていた隙間から「おいふざけんな!?」と言わんばかりにギャアギャアと騒ぐラプトルを無視し、俺は錬成を続ける。隙間は塞がり、隙間があった場所の奥から生々しい音が聞こえてきたが、気にしないことにした。

 

「ふぃ~、これで取り敢えず大丈夫だな」

 

「……鬼」

 

「ん~? 何か言ったか~?」

 

「……何も」

 

しっかり聞こえていたが、聞こえないふりをした。鬼っつってもなぁ。魔物に情けをかけられるほどの余裕はねえし。

 

ていうかこいつはいつまで俺の背中に乗ってんだ。

 

「てかそろそろ降りてくれよ。もう乗っかってる意味はねえんだからよ」

 

俺の言葉に渋々といった様子で降りるユエ。そんなに俺の背中は居心地が良かったのか?

 

錬成で入口を閉じたため、洞窟は先程より薄暗い。

 

「慎重に行くぞ」

 

「……ん」

 

しばらく道なりに進んでいると、やがて大きな広間に出た。広間の奥には更に縦割れの道が続いている。〝気配感知〟には何も反応はないがなんとなく嫌な予感がするので警戒は怠らない。気配感知を誤魔化す魔物など、この迷宮には普通にいるからな。

 

俺達が部屋の中央までやってきたとき、それは起きた。

 

全方位から緑色のピンポン玉のようなものが無数に飛んできたのだ。その数は優に百を超える。

 

(チッ! 迎撃は無理か!)

 

俺は咄嗟にしゃがんで錬成でドーム状の石壁を作り出す。石壁を貫通してくる様子もないから、威力はほぼないに等しい。

 

(なるほど、これがあの寄生花の種子ってところか)

 

威力がないので攻撃目的ではない。これが本体の攻撃だとするなら目的は支配。永遠に自分の僕にするか、同士討ちさせて殺すかのどちらかだろう。

 

「ユエ、おそらく本体の攻撃だ。どこにいるかわかるか?」

 

「……」

 

ユエに本体の位置を把握できるか聞いてみる。ユエは〝気配感知〟など索敵系の技能は持っていないが、吸血鬼の鋭い五感は俺とは異なる点で有用な索敵となることがあるのだ。

 

しかし、俺の質問にユエは答えない。一体どうしたんだ?

 

もう一度名を呼ぼうとした時、ユエがゆっくり振り向いてくる。だがその顔は焦燥に満ちている。

 

「……にげて……ハジメ!」

 

いつの間にかユエの手が俺に向いていた。ユエの手に風が集束する。それを見た俺は、石壁を破壊しその場を全力で飛び退いた。刹那、俺のいた場所を強力な風の刃が通り過ぎた。

 

これだけでユエに何が起こったのかは理解できた。

 

(クソ! 錬成が遅かったか!)

 

ユエの頭の上には花が咲いていた。それも、ユエに合わせたのか? と疑いたくなるぐらいよく似合う真っ赤な薔薇が。おそらく俺がドーム状の石壁を錬成するより先に、1~2個被弾してたんだ。

 

俺の錬成は詠唱こそいらないものの、速度は依然として遅い。だから防御として使うなら素早い判断力を要するんだが、今回は間に合わなかったらしい。

 

その結果、俺みたいに耐性を持っているわけではないユエは頭に花を咲かせられ、寄生されたというわけだ。

 

(全部俺の判断ミスが招いた結果か……)

 

「ハジメ……うぅ……」

 

ユエが無表情を崩し悲痛な表情をする。

 

だが、解放の仕方は既に知っている。俺はユエの花に照準し引き金を引こうとした。

 

しかし、本体も俺が花を撃ち落としたことや俺の飛び道具を知っているようで、そう簡単にはいかなかった。

 

ユエを操り、花を庇うような動きをし出したのだ。上下の運動を多用しており、外せばユエの顔面を吹き飛ばしてしまうだろう。ならばと、接近し切り落とそうとすると、突然ユエが片方の手を自分の頭に当てるという行動に出た。

 

「……やってくれるじゃねぇか……」

 

つまり、俺が接近すればユエ自身を自らの魔法の的にすると警告しているのだろう。

 

ユエは確かに不死身に近い。しかし、上級以上の魔法を使い一瞬で塵ちりにされてなお〝再生〟できるかと言われれば否定せざるを得ない。そして、ユエは、最上級ですらノータイムで放てるのだ。特攻など分の悪そうな賭けは避けたいところだ。

 

俺が苦しんでるのを察したのか、それは奥の縦割れの暗がりから現れた。

 

アルラウネやドリアード等という人間の女と植物が融合したような魔物がRPGにはよく出てくる。俺達の前に現れた魔物は正しくそれだった。

 

もっとも、神話では美しい女の姿で敵対しなかったり大切にすれば幸運をもたらすなどという伝承もあるが、目の前の奴にはそんな印象皆無である。

 

確かに、見た目は人間の女なのだが、内面の醜さが溢れているかのように気色悪い顔をしており、無数のツルが触手のようにウネウネとうねっていて実に気味が悪い。その口元は何が楽しいのかニタニタと笑っている。アルラウネよりメデューサの方があっているだろう。

 

何が言いたいかって言うと、100人中100人がブス中のブスだって言うくらいブスだってことだよ。

 

俺はすかさずブスアルラウネに銃口を向けた。しかし、ユエが射線に入って妨害する。

 

「ハジメ……ごめんなさい……」

 

悔しそうな表情で歯を食いしばっているユエ。自分が足でまといなっていることが耐え難いのだろう。今も必死に抵抗しているはずだ。口は動くようで、謝罪しながらも引き結ばれた口元からは血が滴り落ちている。鋭い犬歯が唇を傷つけているのだ。悔しいためか、呪縛を解くためか、あるいはその両方か。

 

ユエを盾にしながらブスアルラウネは緑の球を俺に打ち込む。

 

俺は、それを無抵抗で受けた。球が潰れ、目に見えないがおそらく花を咲かせる胞子が飛び散っているのだろう。

 

しかし、ユエのように俺の頭に花が咲く気配はない。ニタニタ笑いを止め怪訝そうな表情になるエセアルラウネ。

 

「ざァ~んねんでしたァ~! 俺には効かねえんだよボケブス!」

 

舌を出してブスアルラウネに負けないくらい気持ち悪い笑みを浮かべながら挑発する。ブスアルラウネは挑発に乗ったようでユエに命じて魔法を発動させる。また、風の刃だ。

 

もしかすると、ラプトル達の動きが単純だったことも考えると操る対象の実力を十全には発揮できないのかもしれない。

 

(不幸中の幸いだな)

 

風の刃を回避しようとすると、これみよがしにユエの頭に手をやるのでその場に留まり、サイクロプスより奪った固有魔法〝金剛〟により耐える。

 

この技能は発動すると、文字通り金剛の如き防御力を発揮するという何とも頼もしい技能である。まだまだ未熟なため、おそらくサイクロプスの十分の一程度の防御力だが、風の刃も鋭さはあっても威力はないので凌げている。

 

だが、魔力を消費しないわけではない。俺とユエ。どちらが魔力が多いかなんて言うまでもない。このままじゃ俺の魔力が切れ、ユエの風の刃が俺の体を真っ二つにするだろう。

 

(……ここは、一か八か賭けてみるか)

 

俺は咄嗟に思い付いた方法でこの状況を切り抜けることにした。

 

俺は、トイフェルを持ち直し、

 

 

 

 

投げ捨てた。

 

 

 

 

「ッ! ……駄目! 私はいいから……戦って!」

 

何やら覚悟を決めた様子で俺に戦えと叫ぶユエ。俺が諦めたと思っているんだろう。だがこれは俺の作戦なんだ。

 

「これでいいんだろ。とっととユエを離しやがれクソブスが」

 

悪態をついて戦いを諦めたように演じる。ブスアルラウネはケタケタと気色悪い笑い声をあげながら俺にゆっくりと近づいて来る。大方俺の悔しそうな表情を見て楽しんでいるんだろう。そして俺の前に立つと、俺の首を掴むと同時に上に持ち上げた。

 

「ぐっ……!」

 

「ハジメ……! ハジメぇ……!」

 

ユエは涙まで流しながら俺の名前を呼ぶ。確かに何も知らなかったら、こうなるだろう。ブスアルラウネはそんなユエの声でさえも楽しんでいるようだ。

 

だがな、一つだけ教えてやるぜブスアルラウネさんよォ?

 

(現実はそううまくいかねえんだよ!!)

 

俺は思いっきり右手を振り、〝風爪〟を発動した。

 

俺が作り出した風の刃は、狙い違わずユエの頭の花を切り裂いた。

 

ユエもブスアルラウネも、何が起こったのかいまいち分かっておらず、唖然としていた。

 

「ユエ! 今だ!」

 

俺の叫びにピクッと反応したユエは、寄生から解放されたことに気づき、涙を拭って魔法を発動した。

 

「〝緋槍〟」

 

紅蓮の炎で構成された緋色の槍が、ブスアルラウネの胴体を横薙ぎにし、文字通り消滅させる。

 

ブスアルラウネが消滅したと同時に俺も解放され、地面に降り立つ。

 

「面倒な相手だったな。ま、面倒なだけで倒せない相手じゃなかったがな。ギヒャヒャ!」

 

控えめに嗤っていると、ユエが近づいてくる。

 

「おうユエ。無事か? 違和感とかないか?」

 

気軽な感じでユエの安否を確認する。だがユエは、涙目で俺を睨んでくる。

 

「……心配した」

 

「あ?」

 

「……ハジメが私のせいで死んじゃうんじゃないかって……心配した」

 

「だがそうでもしねえと、本当に全滅してたかもしれねえんだぞ? 実際あの時はちょっとヤバかったんだからな? 敵を欺くにはまず味方からってやつさ」

 

「……」

 

ユエは突然俺に抱きついてくる。

 

「おい。急にどうしたんだ?」

 

「……作戦だったってのは分かったけど、もう少し私の気持ちも考えて……また一人ぼっちになるんじゃないかって、怖かった」

 

「あ……ま、まあ、何も言わねえで一芝居打ったのは謝るよ」

 

ろくに打ち合わせもせず、気持ちを疎かにしたことを謝り、俺とユエはしばらくの間抱き合うのだった。




兵器の名前及びオリジナル魔法の案はまだまだ募集中です。(名前が確定した兵器も少なからずあります)
↓↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=259253&uid=215423

皆さんが望むクラスメイト(一部を除く)の今後

  • 魔人族に着いていって奴隷化
  • 王都戦争編でハジメ君に一人ずつ処刑される
  • 迷宮で全滅
  • エヒトに強化(建前)されて捨て駒になる
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