もしもハジメ君の性格がキツく口調が悪かったら(仮)   作:fruit侍

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思ったより感想をくださる方が多くて、返信が間に合わない……。あ、でも全部読んでますので心配はしないでください。リアルが忙しいこともあり全部に返信するのは難しそうですが、これからも沢山感想を書いていただけると幸いです。モチベの増加にもなりますので。

運対が来てるのなんでだろう……自分としては嬉しい感想ばかりなのにそれが運対食らうとなると少し悲しい……。

UA40000、お気に入り800件、ありがとうございます!


第九話

ザァーと水の流れる音がする。

 

冷たい微風が頬を撫で、冷え切った体が身震いした。頬に当たる硬い感触と下半身の刺すような冷たい感触に俺は目を覚ました。

 

ボーとする頭、ズキズキと痛む全身に眉根を寄せながら両腕に力を入れて上体を起こす。

 

「っつ……ここは……俺は……」

 

ふらつく頭を片手で押さえながら、記憶を辿りつつ辺りを見回す。

 

周りは薄暗いが緑光石の発光のおかげで何も見えないほどではない。視線の先には幅五メートル程の川があり、俺の下半身が浸かっていた。上半身が、突き出た川辺の岩に引っかかって乗り上げたようだ。

 

「ああ……確か、橋が壊れて落ちたんだよな。……それで……」

 

霧がかかったようだった頭が回転を始める。

 

俺が奈落に落ちていながら助かったのは、全くの奇跡だろう。

 

「あの高さから落ちてよく生きてたな、俺。……ぶえっくしっ! クソ、体が冷えてやがる」

 

地下水という低温の水にずっと浸かっていた為に、すっかり体が冷えてしまっている。このままでは低体温症の恐れもあると早々に川から上がる。震えながら服を脱ぎ、絞っていく。

 

そして、全裸になると服から一個の魔石を取り出し、そこに錬成で魔方陣を書いていく。

 

これは俺が迷宮を無双していた時に、しれっと猫ババしておいたものだ。非常用として持っておいて正解だった。

 

俺の魔法適性は0だが、魔石があれば話は違う。魔石は魔法行使の効率をあげるため、これに直接陣を書けば、魔法適性がない俺でも魔法を使えるってわけだ。

 

ただ俺が今から使う魔法は、この世界の子供でも魔石を必要とせず、十センチくらいの魔方陣で出すことができるくらい簡単な火種という魔法だ。そんな魔法でも魔石を使うのだ。俺の適性のなさが嫌でも分かる。

 

魔方陣を書き終わり、俺は詠唱を開始する。この世界の人間は、詠唱なしでは魔法を使うことができない。

 

「求めるは火、其れは力にして光、顕現せよ、〝火種〟 ……クソ、なんでただの火を起こすのにこんな大魔法みてえな詠唱がいるんだよ……はぁ~だりぃ……」

 

最近、癖になりつつある溜息を深々と吐き、それでも発動した拳大の炎で暖をとりつつ、傍に服も並べて乾かす。

 

暖かな火に当たりながら気持ちが落ち着いてくると、次第に恩を仇で返しやがった奴等への怒りが胸中を満たしていく。

 

「クソッ……」

 

俺は思わず地面を殴る。あいつらが俺を憎んでいたとしても、あんな腰抜け共に殺しはできねえと思っていた。しかし俺は奴等を甘く見ていた。まったく、あんな奴等に遅れをとった自分に腹が立つ。

 

「地上に帰ったら、ゴミ山はぜってえ殺す……! 人を殺そうとしておいて、自分だけぬくぬくと生きるなんて、許せるかよ……!」

 

俺はゴミ山への仕返しを決断し、目を殺意でギラつかせる。

 

二十分ほど暖をとり服もあらかた乾いたので出発することにする。どの階層にいるのかはわからないが迷宮の中であるのは間違いない以上、どこに魔物が潜んでいてもおかしくない。しかもここは、歴代到達階層の65階の更に下だ。そんな場所に潜む魔物と鉢合わせたら、死を意味する。

 

俺は慎重に慎重を重ねて奥へと続く巨大な通路に歩を進めた。

 

因みにシュトーレンだが、服のポケット全部を探してもなかった。おそらく、落ちてる時に落としたのだろう。1日とはいえだいぶ世話になった相棒を失った喪失感は、果てしなかった。

 

 

 

 

俺が進む通路は正しく洞窟といった感じだった。

 

低層の四角い通路ではなく岩や壁があちこちからせり出し通路自体も複雑にうねっている。二十階層の最後の部屋のようだ。

 

ただし、大きさは比較にならない。複雑で障害物だらけでも通路の幅は優に二十メートルはある。狭い所でも十メートルはあるのだから相当な大きさだ。歩き難くはあるが、隠れる場所も豊富にあり、俺は物陰から物陰に隠れながら進んでいった。

 

そうやってどれくらい歩いただろうか。

 

(クソ、どれだけ歩いても階段がねえ。体感的に3キロは歩いたぞ)

 

俺がそろそろ疲れを感じ始めた頃、遂に初めての分かれ道にたどり着いた。巨大な四辻である。俺は岩の陰に隠れながら、どの道に進むべきか逡巡した。

 

しばらく考え込んでいると、視界の端で何かが動いた気がして慌てて岩陰に身を潜める。

 

そっと顔だけ出して様子を窺うと、俺のいる通路から直進方向の道に白い毛玉がピョンピョンと跳ねているのがわかった。長い耳もある。見た目はまんまウサギだった。

 

ただし、大きさが中型犬くらいあり、後ろ足がやたらと大きく発達している。そして何より赤黒い線がまるで血管のように幾本も体を走り、ドクンドクンと心臓のように脈打っていた。物凄く不気味である。

 

(この階層の魔物か……無闇に動くのは危険だ。ここで様子を見るとするか)

 

俺は岩陰から少しだけ顔を出し、ウサギの動向を探る。

 

その瞬間、ウサギがピクッと反応したかと思うとスッと背筋を伸ばし立ち上がった。警戒するように耳が忙しなくあちこちに向いている。

 

(何だ? 何かを感じ取ったのか?)

 

ウサギの警戒行動に、俺が考えを張り巡らせていると、

 

「グルゥア!!」

 

獣の唸り声と共に、これまた白い毛並みの狼のような魔物がウサギ目掛けて岩陰から飛び出したのだ。

 

その白い狼は大型犬くらいの大きさで尻尾が二本あり、ウサギと同じように赤黒い線が体に走って脈打っている。

 

どこから現れたのか一体目が飛びかかった瞬間、別の岩陰から更に二体の狼(以後二尾狼とする)が飛び出す。

 

俺は岩陰からその様子を観察する。どう見ても、二尾狼がウサギを捕食する瞬間だ。あのウサギは間違いなく終わった。

 

だがしかし……

 

「キュウ!」

 

可愛らしい鳴き声を洩らしたかと思った直後、ウサギがその場で飛び上がり、空中でくるりと一回転して、その太く長いウサギ足で一体目の二尾狼に回し蹴りを炸裂させた。

 

ドパンッ!

 

まるで銃を撃ったような強烈な音を発生させてウサギの足が二尾狼の頭部にクリーンヒットする。

 

すると、

 

ゴギャ!

 

という鳴ってはいけない音を響かせながら二尾狼の首があらぬ方向に捻じ曲がってしまった。

 

俺はその光景の衝撃に硬直する。

 

そうこうしている間にも、ウサギは回し蹴りの遠心力を利用して更にくるりと空中で回転すると、逆さまの状態で空中を踏みしめて……地上へ隕石の如く落下し、着地寸前で縦に回転。強烈なかかと落としを着地点にいた二尾狼に炸裂させた。

 

ベギャ!

 

断末魔すら上げられずに頭部を粉砕される二尾狼二匹目。

 

その頃には更に二体の二尾狼が現れて、着地した瞬間のウサギに飛びかかった。

 

今度こそウサギの負けかと思われた瞬間、なんとウサギはウサミミで逆立ちしブレイクダンスのように足を広げたまま高速で回転をした。

 

飛びかかっていた二尾狼二匹が竜巻のような回転蹴りに弾き飛ばされ壁に叩きつけられる。グシャという音と共に血が壁に飛び散り、ズルズルと滑り落ち動かなくなった。

 

最後の一匹が、グルルと唸りながらその尻尾を逆立てる。すると、その尻尾がバチバチと放電を始めた。どうやら二尾狼の固有魔法のようだ。

 

「グルゥア!!」

 

咆哮と共に電撃がウサギ目掛けて乱れ飛ぶ。

 

しかし、高速で迫る雷撃をウサギは華麗なステップで右に左にとかわしていく。そして電撃が途切れた瞬間、一気に踏み込み二尾狼の顎にサマーソルトキックを叩き込んだ。

 

二尾狼は、仰け反りながら吹き飛び、グシャと音を立てて地面に叩きつけられた。二尾狼の首は、やはり折れてしまっているようだ。

 

ウサギ(以後蹴りウサギとする)は、

 

「キュ!」

 

と、勝利の雄叫び? を上げ、耳をファサと前足で払った。

 

俺はその圧倒的な強さに、久々に恐怖を感じていた。

 

(なんだよあのデタラメな強さ……俺がシュトーレンを持ってたとしても勝てねえぞ……こりゃ駄目だ、あんなのがうろちょろしてるような場所にいちゃ、命がいくつあっても足りねえ……どこかに、身を潜めねえと……)

 

俺は手が震えながらも岩壁に手を触れた。いつもの俺だったら、奴が去るまで待って、何もいなくなったことを確認してから錬成をしていただろう。

 

だが、恐怖に支配された俺は、自分の安全を優先するあまり、盲目になっていた。

 

「錬成……!」

 

ゴゴゴ……と岩が錬成される音で俺はようやく正気に戻る。そして俺はやってしまったと後悔した。

 

錬成には詠唱が必要だ。そして錬成では、岩などが動く際に大きな音を発する。恐怖でそのことを忘れていたのだ。

 

振り向くと、蹴りウサギがこちらをばっちり見ていた。

 

赤黒いルビーのような瞳が俺を捉え細められている。俺は錬成を急ぐ。ここで止めたら間違いなく死ぬ。

 

「錬成……錬成……! 錬成!」

 

高速錬成のお陰で割りと早く錬成出来ている。しかしそれでも俺には遅く感じた。

 

ふと蹴りウサギの方を見ると、足をたわめグッと力を溜めるような体勢になっていた。

 

(やべぇ!)

 

俺が本能と共に悟った瞬間、蹴りウサギの足元が爆発した。後ろに残像を引き連れながら、途轍もない速度で突撃してくる。奴の固有魔法だろうか?

 

って冷静に分析してる場合じゃねえ! 壁か何か作らねえと、死ぬ!

 

俺は咄嗟に入り口の真横の岩壁に左手を付いて蓋をしようとするが……遅かった。

 

蹴りウサギは、何故か俺の左側目掛けてサマーソルトを放つ。そこから、バカ之河の天翔閃のような斬撃のようなものが放たれる。

 

「れんせ……がっ!」

 

放たれた斬撃のようなものが、俺の左側に命中する。俺は錬成で作った空洞の奥へと吹き飛ばされる。

 

「クソ……ぐっ!?」

 

左手をついて起き上がろうとした途端、信じられないような激痛が走る。俺は左手を見る。

 

そこには、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()人間の手と呼んでいいのか分からないものがあった。

 

「あ……あ……?」

 

俺は一瞬これが何なのか分からなかった。しかし少しして、これが自分の左手だと分かった。

 

「ッッッ------!!!!」

 

俺は声にならない叫びをあげた。それは痛みによるものなのか、自身の体が簡単に壊された恐怖によるものなのか、俺にも分からない。

 

蹴りウサギは空洞の入り口から俺を見ていた。その顔は笑っているようで、完全に俺を遊び道具として見ているようだった。さっきの蹴りを俺に直接当てなかったのも、遊んでいたからなのだろう。

 

「あ、がっ……れっ……錬成……!」

 

頭がおかしくなりそうな程の激痛の中、俺はなんとか正気に戻り、後ろの壁を錬成する。

 

ついでに俺の前方に壁を作り出す。錬成して壁を削っているだけでは、魔物か何かに入り込まれてしまう。実際、すぐそこに魔物がいるのだ。

 

「錬成、錬成、錬成、錬成! 錬成! 錬成!」

 

俺は狂ったように錬成し続ける。生き物の生存本能とは凄まじい物だ。痛みや恐怖を一時的になくし、生きるために必要な行動を振るえる力全てを持ってして生き残ろうとする。

 

そうしている内に魔力が尽きたようで、もう岩壁は変化しない。

 

魔力が尽きたことによる疲労感が、どっと押し寄せてくる。銃を作っていた時に一度魔力を使いきり、翌日まで眠ってしまった覚えがある。それほど魔力切れとは疲労感が半端じゃない。

 

俺は仰向けになって倒れた。しばらくそうしていると、少しずつ意識が闇に呑まれていくように暗くなっていった。

 

いつしか俺は昔のことを思い出していた。走馬灯というやつかもしれない。保育園時代から小学生、中学生、そして高校時代。どの時代も嫌な思い出しかないが、最後に思い浮かんだのは、

 

俺がこんな目にあっているのを見ながら嫌な笑みを浮かべるカス共。

 

そんな最悪な光景を最後に俺の意識は闇に呑まれていった。意識が完全に落ちる寸前、ぴたっぴたっと頬に水滴を感じた。

 

だが、俺にとってはそんなことどうでもよかった。




というわけでハジメ君は爪熊に会うことなく避難しました。その結果豹変後の変化は小さくなりそうですが、元があれだしあれより酷くしたらなんじゃこりゃってなりそうなのでこれでいいっ……!

あ、でもクラスメイトと日常を奪ったこの世界に対する憎悪をバネにして、結果変わらなさそう……。

アンケートは、もう結果が分かりきってるので締め切りました。こんな圧勝みたことないぞ……やっぱ皆さんミレディ好きなんですねぇ。

ミレディとか言う奴……どうする?

  • お持ち帰り
  • ゴーレム魔改造しちまえ(着いては来ない)
  • 原作通りぶっ壊すだけぶっ壊せ
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