Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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遅くなりました。

※掲示板の回で逆凸と凸待ち間違えてたので、修正しました。すみません……。


【みんな祝って!】10万人記念凸待ち! その1

『視聴者巻き込み型企画のコツ!?』

「え、ええ、但野さんはそういう企画をよくやってるので、アドバイスなどいただければと思って……」

 

 レオのチャンネルは登録者数10万人を超えた。

 にじライブや他の企業Vtuberでもそうだが、登録者数10万人というのはある種の中間目標として捉えられている。

 どうせならいつも応援してくれる袁傪達に最高の時間を届けたい。

 そう考えたレオは、先日のカラオケ企画で仲良くなった但野友世に相談を持ちかけていた。

 

『アタシはよく音声データとか募集してるよ! モノマネ対決は結構盛り上がったかな!』

 

 友世の配信はゲーム配信を含め、視聴者をとにかく巻き込むスタイルのものが多い。

 一緒にゲームをやったり、決められたお題のモノマネの音声データを募集して対決し、視聴者に判定をしてもらったりするなどして、視聴者は女友達と一緒に遊んでいるような感覚を味わえるのだ。

 それこそが人気Vtuber但野友世の人気の理由だった。

 

「音声データの募集か……」

『リスナー参加型やるなら一体感は大事にしなよ! もらった音声データとかはただの素材じゃなくて、リスナーの分身なんだからね!』

「リスナーの分身……ありがとうございます、但野さん」

『堅っ苦しいのは無し! 友世って呼んでよ!』

「あはは……はい、友世さん」

 

 こうして友世のアドバイスのおかげで何をやるか、レオの中で企画が固まった。

 レオはツウィッターで「その声は、我が友、李徴子ではないか?」という一文を読み上げた音声を募集した。

 

「ん? 白雪から通話?」

 

 さきほどまで友世と通話していたため、気がつかなかったが、スマートフォンの通知を見てみると林檎から不在着信がきていた。

 すぐに折り返すと、コールを待たずに林檎が出た。

 

『もしもしー?』

「もしもし? 悪い。通話中で気づかなかった」

『気にしないでー。それより、今日はバラギの10万人記念枠じゃん?』

「ああ、そうだな。白雪も凸するんだろ?」

 

 レオと夢美はほぼ同時に登録者数10万人を達成した。

 夢美は元々10万人目前ということもあり、レオと違って予め何をやるか決めていた。

 夢美は今日の配信で凸待ち枠を行う予定だった。

 凸待ち枠とは、他の配信者から通話がかかってくるのを待ち、お祝いの言葉をもらい会話をする配信のことである。

 多くのライバー達が行う配信形式ではあるが、下手をすると誰もかけてこないという悲しい事態が発生することになる、人望が試される配信でもあるのだ。

 

『そのつもりだったんだけど、良いドッキリを思いついてさー』

「またドッキリか……」

 

 相変わらずドッキリに抵抗のあるレオは、林檎の提案に難色を示した。

 しかし、林檎はそんなことは既に織り込み済みだった。

 

『大丈夫大丈夫、今回のはレオもきっと気に入ると思うから』

 

 電話口の向こうで、にしし、と楽しそうに笑うと、林檎はレオに夢美に行うドッキリの内容を伝えた。

 

「――なるほどな。それなら俺も喜んで協力するよ」

『オッケー。じゃあ、よろよろー』

 

 林檎から聞かされた内容は、レオとしても好みの内容だった。

 林檎との通話を切ったレオは早速準備に取りかかることにした。

 

 

 

 

 

「シャァァァァ! 10万人じゃゴルァァァァァ!」

 

[開幕大絶叫で草]

[にじライブにまた伝説が増えた]

[こいつらいっつも伝説作ってるな]

[伝説代 ¥50,000円]

 

 夢美の配信が始まるのと同時に、大量のスーパーチャットが飛び交う。

 

「……はい。というわけで、こんゆみー。今日は凸待ち枠だよ」

 

[急に落ち着くな]

[何がというわけなのか]

 

 挨拶もして一段落付いたため、夢美は改めて妖精達に礼を述べた。

 

「いやぁ、マジでみんなありがとうね。まさか二ヶ月で10万いくとは思わんかったわ」

 

[にじライブが有名になってきた頃のまひるちゃんでさえ四ヶ月でかかったところ二ヶ月でいくのはやばい]

[収益化に続き登録者数でもRTAする女]

[登録者数10万人RTA最速記録はバンチョーの一ヶ月だぞ]

[いかにバンチョーが狂ってるかわかる]

[カラオケ大会からハマり、アーカイブで沼に落ちました]

[レオ君にも感謝しろよー]

 

「もちろん、レオにも感謝してるよ。あいつがいなかったら正直ここまでこれてなかったと思うし。凸待ちやってるのも最悪、誰も来なくてもレオだけは来るだろうからやったとこはある」

 

[バラレオてぇてぇ ¥10,000円]

[お互いに支え合ってる感あってすこ]

[素直に感謝しててえらい]

 

 一通り最初に言うべきことも言ったため、早速夢美は凸待ちを開始することにした。

 にじライブのThiscodeグループには、ライバー同士の連絡用グループが存在する。

 そのため、面識のないライバー同士でも連絡を取ることは可能なのだ。

 

「さて、今から凸待ち開始――ヴェッ!? もう来た!?」

 

[早すぎて草]

[今、カエルが潰れたみたいな声出たぞwww]

[にじライブ内でもすっかり人気者だな]

 

「も、もしもし?」

『こんまひ、こんまひ! こんまひー! バラちゃん、おめでとー!』

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛! ま゛ひ゛る゛ち゛ゃ゛ん゛た゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」

 

[初手限界化]

[まあ、そうなるよな]

[推しが一番に凸してくる女]

 

 夢美の枠に真っ先に凸してきたのは、夢美の憧れのライバーであるまひるだった。

 夢美は慌ててまひるの立ち絵を表示した。

 コラボしようという話はしていたものの、まひる自身スケジュールがぎっしり詰まっている身だったため、なかなか夢美とのコラボは実現していなかったため、まひるが真っ先に凸してきてくれたことに夢美は歓喜していた。

 

『コラボしようって話してたのに、なかなかできなくてごめんねぇ』

「これ実質コラボだから大丈夫!」

『ハードルが低いねぇ。ちゃんとスケジュール調整するから妥協はしちゃダメだよ?』

「あ、ああ、ありがとごじゃます!」

 

[久々のバラまひてぇてぇ]

[何だかんだでこの二人の組み合わせもすこ]

[良い先輩だなぁ]

 

『まあ、これからもまひるのことは、お姉ちゃんとでも思って仲良くしてね!』

「お姉ちゃんだと! まさか年下の姉ができるとは……!」

 

[お前は何を言ってるんだ]

[年下の姉www]

[年下の姉を手に入れた勝ち組]

[焼き林檎も手に入れてるんだよなぁ]

[速報、バラギまひるちゃんより年上だった]

 

 姉というワードが出たため、夢美はまひるとの話題を盛り上げるためにレオの姉の話をすることにした。

 

「そういえば、久しぶりにお姉さんと会ったんだー」

『ん、バラちゃんお姉ちゃんいたの?』

「や、あたしのじゃなくてレオのお姉さん」

 

[ガタッ]

[その話詳しく!]

[素材提供助かる]

 

 普段からレオと夢美の関係性が好きな妖精達は、降って沸いた新たなてぇてぇの予感に胸を膨らませた。

 

『レオ君とは元々幼馴染みだっけ。事務所でも仲良さそうだったもんねぇ』

「あはは……あたし達からすると普通に接してるだけなんだけどね」

『でも、どうしてレオ君のお姉さんと会うことになったの?』

「あいつが全然実家に帰ってなくて、心配で様子見にきたみたい。家が近所だからたまたま会ったの」

 

[そういや家近所だもんな]

[姉も優しい]

[ぐう聖姉ライオン]

 

 同じマンションで部屋が隣同士ということは隠している夢美は、静香との出来事をぼやかして話し始めた。

 

「小学校のとき凄くお世話になった人だから会えて嬉しかったんだけど……」

『だけど?』

「あたしとレオが付き合ってるって誤解しちゃって、違うって言っても信じてもらえなかった……」

 

[草]

[俺達だって信じてないぞ]

[外堀埋まり出したな]

 

『えっ、付き合ってないの? あんなにてぇてぇのに!?』

「違うよ!? まさかずっと誤解してたの!?」

 

[まひるちゃんwww]

[まひるちゃんにまで付き合ってると誤解されてて草]

[推しを自分のCPの沼に落とした女]

 

 まひるは何度か事務所内で仲睦まじいレオと夢美を見ていたため、すっかり彼らが付き合っているものだと誤解していた。

 

「まあ、レオが身バレしたくないからって言うから、詳しい事情話すわけにもいかなくて、結局お姉さんには誤解されたまんまだったんだよね……」

『大変だったねぇ。まあ、まひるも弟いるから、弟にバラちゃんみたいな可愛い彼女出来たら嬉しいって気持ちはわかるけどね』

「まひるちゃん、弟いたの!?」

 

[バラギの見た目保証助かる]

[新情報きちゃ!]

[よくやったバラギ ¥5,000円]

 

 まひるは今まで弟がいるという話はしたことがなかったため、夢美を含め妖精達は驚きを隠せなかった。

 

「だからお姉ちゃんっぽいんだ……」

『子供っぽいせいで、よく姉弟逆に間違えられるけどねぇ。バラちゃんは兄弟いないの?』

「妹ならいるよ。今、小学生だけど」

『年結構離れてるねぇ。バラちゃん、小さい子好きだから嬉しいんじゃない?』

「いやいや、さすがに妹は対象外だって」

 

[何、常識人っぽく言ってんだ]

[妹じゃなくてもアウトなんだよぁ]

[まひるちゃん気をつけろ。君は対象内だ]

[妹はライバーやってること知ってるの?]

 

「知ってるよ。実家帰ったときはよく一緒に遊んでるし、仲は良い方かな」

 

 夢美には15歳離れた妹がいた。

 夢美は盆と正月に実家に帰る度に、妹と一緒に遊んであげていたため、妹からはよく慕われていた。

 

『小学生だったら周りに自慢したくなっちゃうんじゃない?』

「ゴミカス死ねって叫ぶ姉を自慢したいと思う?」

 

[草]

[妹ちゃん強く生きて……]

[俺だったら自慢するわ]

 

 それからまひるとの会話は盛り上がった。そろそろ尺を気にしだしたまひるは、通話を切ることにした。

 

『じゃあ、そろそろ他の人に譲らないと行けないから切るねー』

「他の人? あ、まひるちゃん、ありがとうね!」

『うん! またねー!』

 

 こうしてまひるとの通話は終了した。自分の憧れのライバーが逆凸をしてくれたことで、夢美は満たされた気持ちになっていた。

 

「まひるちゃん来てくれてマジで嬉しかったわ。一発目からこれはかなり幸先いいんじゃない? じゃあ、また待ってい――」

 

 余韻に浸りながら感想を述べようとした夢美だったが、即座にThiscodeの通知音が鳴り出す。

 慌てて通話を繋げると、耳を劈くような叫び声が響き渡った。

 

『シャアァァァ! やったで!』

「ひっ」

 

[初手威圧で草]

[相変わらずビビり散らしてる]

[バンチョーが乗り込んできた!]

[初代清楚()枠VS三期生期待の清楚()枠]

 

 次にかけてきたのは、にじライブ一の登録者数を誇る看板ライバーであるかぐやだった。

 

「バ、バンチョー? いきなりどうしたんですか?」

『いやぁ、すまんすまん。今、にじライブのライバー内で誰が先にバラギに繋げるか競い合いになっててな』

「ヴェッ!? 何ですかその状態!?」

 

[にじライブ内でバラギの取り合いが発生してるってマ?]

[バラギはレオ君のもんやぞ!]

[相変わらず潰れたカエルみたいな声出すなぁ]

 

 そう、現在夢美が凸待ち配信を行っていることで、にじライブのライバー――レオと林檎を除いた総勢12名がひたすら夢美に通話をかけている状態になっていたのだった。

 

 




今日から旅行に行くので、明日の分は更新できるかわからないです。
一応、出先でも書けるようにノートパソコンは持ち歩いているので、できたら更新します。

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