Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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【三期生】池袋で遊ぼう その4

 専門店での買い物を終えた三人は次にカフェにやってきていた。

 池袋にある店舗は日本橋にある店舗と違ってテイクアウト専門であるため、購入後はすぐに外に出なければいけない。

 レオは期間限定のバナナフラッペを、夢美はカフェラテを、林檎はソーダをそれぞれ購入して、店の外に出た。

 

「内装も凝ってて凄いな、ここ」

「ねー、デザインした人天才だよねー」

「うぅ……可愛くて飲むのがもったいない……」

 

 悩まし気にラテアートを眺めていた夢美だったが、何度か写真を撮ると、吹っ切れたようにカフェラテを飲み始めた。

 

「それにしても、このフロアのポケ率凄いよな」

「移転してすぐの頃はポケセンくらいしかなかったもんねー」

 

 専門店があるレジャー施設の二階の中心には専門店以外にも、派生した同シリーズのコンテンツのエリアが広がっている。

 そんなフロア全体を眺めてレオと夢美は表情に陰を落とした。

 

「何か時代を感じるな……」

「はぁ……あたし達もう二十五だもんね」

「えー、まだまだ若いじゃん」

 

 自分達の年齢を自覚してショックを受けている二人に、林檎は首を傾げた。

 

「二十一歳の優菜ちゃんはまだわからないと思うけど、二十代の折り返しに来ると何か焦るんだよ」

「たかが四歳されど四歳だ」

「別に変わんないと思うけどねー」

 

 それから購入したスイーツを平らげてカップなどをゴミ箱に捨てると、レオは見知った顔を見つけた。

 

「あれ、サタ――(つかさ)君?」

「えっ、獅子じ――司馬さん?」

 

 髪を金髪に染め、左耳にはピアスをはめた、いかにも人生をエンジョイしていそうな見た目の少年――サタン・ルシファナは驚いたように目を見開いた。

 レオはサタンと頻繁にRINEでやり取りをしていた。そのときの流れで本名を聞いていたため、慌てて本名の方で名前を呼んだ。

 

「拓哉、知り合い?」

「知り合いも何も……あ、司君。何となくわかると思うけど、こいつらもアレだから」

「あ、なるほど三期生の方々でしたか」

 

 サタンはレオの言葉で、夢美と林檎もライバーだと理解した。

 

「えっ、同業者の人?」

「あはは……某魔王をやってます」

「うっそ、全然声違うじゃん」

「しっかりキャラ作ってんねー……ん、君どっかで……?」

 

 配信中の様子とまるで違うサタンの様子に夢美も林檎も驚いていた。

 

「今日はオフで?」

「はい、今日は友人と来ているんですよ」

 

 サタンがそう言うと、トイレがある方向から恰幅の良い眼鏡をかけた青年が駆け寄ってきた。

 

「ごめん司君、お待たせ!」

「あ、本場さん」

 

 本場と呼ばれた青年は、サタンと話し込んでいる三人を見て首傾げた。

 

「あれ、司君の知り合い?」

「あはは……まあ、そんなとこです」

 

 第三者に素直にVtuber仲間と紹介するわけにもいかず、サタンは言葉を濁して笑った。

 

「あの……もしかして、実況者のポンバーさんですか」

「ご存じでしたか。いやぁ、動画を見てくださりありがとうございます」

 

 レオは本場の顔に見覚えがあった。

 彼はサタンと同じ大人気モンスター育成ゲームの対戦実況者ポンバーであり、対戦実況者の中でも最強クラスの実力を誇っているのだ。

 

「ORASのときの世界ランカーですからね。そりゃチェックしてますよ! あ、でも最近は動画投稿していないので、やめちゃったんじゃないかと思って……」

「えっ、あ、ああ、まあ……ちょっと忙しくなっちゃって。一応、今も対戦には潜ってますよ」

「マジですか!」

 

 自分の方が有名人だというのに、レオはまるでアイドルのファンの如く、ポンバーに会えたことに目を輝かせていた。

 

「お会いできて光栄です!」

「いえいえ、もしランクマで当たったときはよろしくお願いしますね」

 

 ポンバーはレオの反応に嬉しそうな反面、どこか寂し気な笑みを浮かべた。

 

「あー、どっかで見たことあると思ったらポンちゃんか」

 

 そんなやり取りを見ていた林檎は、思い出したかのように右手をポンと左手の掌に打ち付けた。

 

「あれ、ゆなっしーさんじゃないですか」

 

 ポンバーも林檎の顔を見て、彼女がゆなっしーであることに思い当たった。

 

「優菜ちゃん、もしかして実況者時代の知り合い?」

「直接の絡みはなかったけどねー」

「ニヤニヤのイベントのときにちょっと挨拶した程度ですもんね」

 

 お互いそこそこ有名な実況者であったため、林檎とポンバーは面識があった。直接の絡みこそなかったものの、お互いに顔くらいは認識していたのだ。

 

「これ以上お邪魔しても悪いですし、本場さん。そろそろ……」

「そうだね。では、皆さん。また!」

 

 どこか居心地悪そうにしていたサタンはポンバーを促して、足早に去っていった。

 

「……なるほどねー。そーゆことか」

「何が?」

「ううん、何でもない」

 

 何かを察したように呟く林檎に夢美は怪訝な表情を浮かべたが、林檎は手をひらひらと振ってごまかした。

 

「あれ、何かイベントやってるみたいだねー。ちょっと見てみようよ」

 

 人が段々と中央の吹き抜け部分の周りに集まりだしたため、林檎は興味深そうにそっちの方に歩き始めた。

 

「あー噴水広場の方か。しょっちゅう何かやってるよな」

「どっかのアイドルのライブかな?」

 

 レオと夢美も林檎に続いて吹き抜けの方まで行ってみることにした。

 池袋のレジャー施設には噴水広場があり、そこでは様々なイベントや展示会が行われる。

 噴水広場は上の階まで吹き抜けになっており、上の階にいても広場の様子が窺えるようになっていた。

 

『どうもどうもー! わざわざカリューのライブを見にきてくださったみなさん! 別にカリューには興味ないよっていう通行人のみなさん! ライブ配信で見てくださっているみなさん! 掲示板でカリューのことをバチクソに叩きまくってるアンチのみなさん! こんにちはー!』

 

「お、アイドルのイベントだ」

「あっ、あの子知ってる! 最近バラエティーに結構出てる子だ」

「へー、私はバラエティー見ないからよくわかんないなー」

 

 噴水広場で行われているイベントは、とあるアイドルのCD発売イベントだった。

 出演しているアイドルは、最近バラエティー番組によく出演している体当たり系アイドル〝カリュー・カンナ〟だ。

 彼女は出演する番組で、どんなに無茶な要求をされても呑むという近年では珍しいタイプのアイドルだった。

 

「ジャングルの奥地で虫とかよく食べてるよね。ピラニアのいる川に飛び込んだりもしてたっけ」

「この前は生肉に繋がった紐を括り付けてコモドオオトカゲと追いかけっこしてたよな」

「えっ、何その命がけの企画」

 

 林檎はカリューの活動内容を聞いて、驚いたように目を見開いた。

 

「心臓に毛が生えてるってよく言われているけど、本当に凄い子だよ。本当、現役時代の俺とは大違いだ……」

 

 NGなしで何にでも挑戦するカリューの姿にレオは尊敬の念を抱いていた。

 それから、一通りオープニングトークも終わり、カリューのライブが始まった。

 すっかり興味をそそられた三人は吹き抜けから覗き込むようにカリューのライブの様子を覗き込んだ。

 

「あの子ってネタ枠なイメージが強いけど、歌ってみるとガチなんだね。ダンスもキレッキレだよ」

「相当レッスンしたんだろうな……」

「何かネタで引き寄せてパフォーマンスで引き込むって、拓哉みたいだね」

「本人の根性もそうだけど、きっとマネージャーも優秀なんだろうな」

 

 すっかり笑顔を浮かべて手を振り始めた夢美は、カリューと目が合って興奮したように叫んだ。

 

「あっ、目が合ったよ! ねえ、絶対今目が合ったって!」

「凄いな。この人数でも、きちんと目が合っているように会場全体に目を配っている。あれ、結構大変なんだよなぁ」

「……何かマジックの種明かしされてるみたいで萎えるからやめてよ」

「っと、悪い悪い。つい前の職業柄な」

 

 レオはアイドル時代の名残で、つい冷静にカリューのパフォーマンスを分析してしまっていた。

 

「しかし、これだけのパフォーマンスが出来るならあそこまで命がけの企画に挑戦する必要もないと思うんだけどな……」

「きっと、芸能界で生き残るために出演できる番組を増やしたかったんじゃない? 当時の拓哉から傲慢さを抜いたらああかもね」

「あー、それはあるかもな」

 

 それでも俺はあそこまでできないだろうけどな、とレオは苦笑する。

 

『今日は本当にありがとうございました!』

 

 それからライブが終了し、深々と頭を下げるカリューを見て、レオと夢美は感慨深そうに呟いた。

 

「あの子、もっと売れるといいね」

「あれだけガッツのある子だ。きっと芸能界の大御所の方達だって気に入るさ……そういや、さっきから黙っているけど、どうしたんだ優、菜?」

 

 さっきから会話に参加してこない林檎が気がかりで、彼女の方を向いたレオは尋常じゃない林檎の様子に固まった。

 

「何であの子が……アイドルに……」

「優菜ちゃん、どうしたの?」

 

 夢美は心配そうに林檎に声をかけるが、彼女の声は林檎には届いていなかった。

 

「狩生さん……どうして」

 

 林檎だけは顔面蒼白でカリューの本名を呟いたのだった。

 

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