毎日過去の遺物のガラクタを掘っては小銭を稼ぐ街の外を夢見る少年カッシュール。
ある日母が病に倒れ薬を求める。
しかし金を払うことができないカッシュールは労働で返すことに。
連れてこられた先は大人たちが働く工場。
ゴーレムに乗って薬を隣の村まで届けることに。
外に出れるとワクワクする少年を待ち構えていたのはどこを見ても白一色の光景だった。
ゴーレムの地図とコンパスと銃によって無事に村へたどり着き戻る少年。
整備士から正式に町の外を巡りデータなどを集める仕事に就く少年を母は優しく抱きしめるのだった。
「まいにっち掘れやー、まいにっち掘れやー!」
俺、カッシュールはなんてことはない、ただの市民の子供だ。
毎日ゴミ山からガラクタを掘り出しては大人たちに渡してお金をもらう。
なんでも、この鉄くずの山はここにあった巨大な建造物の成れの果てらしい。
でも、俺は信じてはいない。金属で出来た城が崩れ去るなんて。
金属ってのはこんな子供の力で曲がるようなものじゃない、もっとすごい物質なんだ。
いつの日かコミューンの外に出るため、実力をつけるため、生活をするため、そう思い毎日の作業をしていた時、親方から母が倒れたと伝えられた。
俺の家の前には既に人だかりがあった。そこを押しのけて進んで戸を開けるとこのコミューンの医師先生のお弟子さんと、その横に横たわる母。
「先生!母さんは!?」
「落ち着いてください。彼女は…その、治りにくい風邪だ。だが、薬があればすぐにでも直せる。」
「じゃ、じゃあそれを!」
「……200G、払えるかい?」
「…え。」
とても足りない。
俺が今まで溜めてきたお金は120Gがせいぜい。家のお金は俺より少ないだろう。たとえ工面できたとしてもそこから先はどうだ。もしも食べ物が無くなれば、残りかすの貯金では俺達から死ぬだろう。だったら。
「お金では無理です!ですが、俺を代わりにその分働かせてください!!肉体労働と手先の器用さは自信があります!何でもします!!」
屈辱だ、こんな大勢のどうどうと盗み見る野次馬の目の前で、まだ成人もしてないであろう医者の助手に土下座をしながら、たかが12の子供が肉体と手先だけで仕事を手伝おうなんて、誰が信じるだろうか。
「あなたみたいなチビが私の手伝いを?この次期後継者ともうわさされている私に?……ああ、いいでしょう。
これがあなたの母を助ける薬です。飲ませてあげなさい。」
「あ、ありがとうございます!!母さん、これを…」
「では、君にさっそく頼みたい仕事があるんだ。ついてきてほしい。」
「あ、はい。野次馬の方々、母を頼みます。」
ここは…たしかお医者様のご自宅。
入るのは初めてだな。
「お師匠様、ただいま戻りました。」
「ンンー?そうか。で、そこのガキは?」
「はい、何でもするというらしいので薬のカタに持ってきました。」
「そうーかそうーか。おい、ガキ。お前は今自分がどういう状況かわかるか?言ってみろ。」
「えと、母さんを治して頂きました。お代の200Gが払えない代わりに肉体労働で払う事になりました。現在は仕事待ちです。」
「ほぉー、偉い偉い。それでな、お前にはやってもらいたいことがあるんだ。ついてこい。」
「立て、お師匠様を待たせるな。」
「はい!」
今まで来たことがない場所に来てしまった。
周りは大人だらけ、それも勤務中。
恐らく大人が必要な大仕事をしているんだろう。
お医者様はそのうちの一つ、金属でできた大きな施設へ入って行った。
「おう、整備士の居るか?」
「はい、親方は現在2番に。」
「ああ、もうすぐ完成とかいったか。ついてこい。」
「「はい!」」
建物の中では、おそらく車が作られていた。普段から配給の時に見る給水車、見かけない四角い車、棘や筒がついた丸い車。
「おおい、整備士の。」
「おお!医師の!どうした突然に!」
「ほら、アレあったろ。身長が低いやつしか乗れないからってボツになったやつ。」
2人の話なんて耳に入ってこなかった。
2番、そういわれていた者の前に立つと頭が白くなるようだった。
大人が4人並んでもまだ足りない横幅、大人3人分くらいの身長、なにより中心にある赤い目、威圧感のある茶色と灰色、これが物語に聞く魔物なんだろうか。
「んー、だが俺は賛同しかねるぜ?」
「おうガキ。お前はどう思う?」
「え、あ、その、この魔物は?」
「ん?おー確かにこれなら子供でもいいかもなぁ。」
「え、なに、ですか?」
「コレ乗って薬届けに行くかってことだ。なんだ、聞いてなかったのか?」
「ああ、まずは機体があるかだけ見に来た。」
「ハァー…お医者様のお前より俺のほうが外出について詳しいのはわかってるが、せめて事前説明してから来いよ。いいか?この先70kmにある岩の村で土砂崩れがあって薬が一切合切ダメになったらしくてな。ここジャンクの街から薬を分けることになってるんだ。それを行かせるつもりだぞこいつ。」
「その、外、出れるんですか?」
「ん?おう。出れるぞ。まぁ、お前も知ってるとは思うが安全じゃない。」
「外はこわーいこわーい魔物が棲みついている。この2番にのってりゃ安心だがな。」
「その、それ、なんですか?」
「これか?これはな、昔の…世界が凍る前にたくさんあった兵器、ゴーレムってやつだよ。」
「整備士のはな、自分でゴーレムを作りたくてわざわざこのジャンクの街一番の権力者になっちまった。で、これが2個目の試作機だから2番、っつぅことだ。」
嘘だろ、こんな凄いものが作れるのか…もしかして俺が集めてたガラクタも…
「あの、もしかして、子供が集めているガラクタって。」
「そうさ、ここでこうして車になる。これからはゴーレムも増えていくだろうが、それでも車の需要は多い。良くも悪くもね。さぁ、乗りたまえ。えーと…名前は?」
「カッシュールです。」
「……よし、次はここに手を当ててくれ。……よし。次にこの板に……よし。最後に中に座ってみてくれ。」
わ、わぁ。まさか中から外が見れるなんて。どういうことなんだ?表からは何も見えなかったのに。
「ちゃんと見えてる?聞こえてるよね。聞こえてたらドアをガンガンってしてくれ。」
カンカン
「うん、大丈夫そうだね。正面に見える景色は実際に見えているわけじゃない。機体の前方に設置した赤い玉、カメラから見た映像だ。」
「大丈夫です!ハッキリ見えています!」
「よしよし、それじゃあ次に…」
整備士さんの指導は続いて、夕方になったころようやく俺はゴーレムの操作を覚えることが出来た。
「やー、口述試験全部満点!キミ頭いいねぇ。将来は整備士とか目指してみない?」
「あぁ?俺の助手の助手だぞ?」
「でも200G分働いたら君の助手の助手じゃないだろ?先行投資さ。それに、これだけ鍛えていれば大人とも十分仕事して行けそうだからね。」
「ありがとうございます。でも、僕はいつか外の世界を見て回りたいんです。」
「ふーん、外をねぇ。お前、ここでしか暮らした事ねぇだろ。」
「はい。」
「ここはよ?まだマシなんだよ。よくわからんがジャンクの山があって、100年くらい経った今でもまだまだ高い。だからこそ全員が働き、休み、効率よく仕事が出来るんだ。
…まぁ、行けばわかるか。いいか、明日の朝またここへ来い。そうすれば出発準備しておいてやる。整備士のがな。」
「あー、まぁ部下達にてつだってもらうけどね。薬はそれなりに多いから。」
「わかりました。また明日よろしくお願いします!」
「いいか?お前のゴーレムには山の村の命が入っている。お前の乗っているゴーレムはそのものが金になる。要するに、盗賊が狙ってくることもあるだろう。そのために、その上の銃がある。」
「あの筒、銃っていうんですね。」
「ああ、基本はゴーレムに任せればいい、勝手にやってくれる。お前がやるのは山の村との話し合いだ。」
「たしか、もっと鉄を貰ってくればいいんですよね。」
「『薬の対価に満たない場合は怒った奴らが来る』とでも言っておけ。じゃ、乗れ。」
「いいですか?そのゴーレムに乗っている限り君はほとんど安全です。でもゴーレムを奪われたりなんかしたら、不安ですよね?安心してください。ちゃーんと昨日君を認証しておきましたから。ゴーレムは君以外の命令は効きません。安心してくださいね。」
「…おい、整備士の。いいのかそんなこと言って。」
「いいんですよ。どうせ彼には外に出るって夢があるんですから。どうせならあのゴーレムで行ってほしいじゃないですか。」
「乗りました!動作万全です!」
「よし、薬をしっかり運べよ!いいか!鉱石もたんまりとだぞ!」
「帰ってきたら戦闘データなんかを読みますからね。フヒヒヒ!」
ここが、外。どこを見ても白い。これじゃ…70kmも先なんて行く前に方向を見失っちゃうな。
「ゴーレム、方向はわかる?」
『ハイ、イエス。ガメン ニ トウエイ イタシマス。』
「お、おお。コンパスというやつですね。NWSEで方向が分かるか。地図はある?」
『ハイ、イエス。シカシ マダ コノ キンペン ダケ デス。ジュンジ ハンエイ サセテ イキマス。』
「おお、ちゃんと地図だ。町並み…あ、ここが俺の家か。でも、外はほとんどないな。」
『シュッパツ シマス。』
「なるほど、地図がどんどん更新されていく。あの整備士さんはこういうデータも欲しいのか。」
『ハイ、イエス。トウキ ニバン ハ セントウ ハンソウ データシュウシュウ ヨウノ ゴーレムデス。』
「2番があるなら1番もあるんだろう?」
『ハイ、ノー。イチバン ハ ヒトガタ ゴーレム デス。セントウ ヨウ ニ ツクラレ マシタ ガ ドウサ ニ ムリ ガ アリ ショブン サレマシタ。』
「処分済みか。人型のゴーレム…かっこいいだろうな。」
『ハイ、イエス。ドクター イワク シビレル カッコヨサ ダッタデス。』
「なるほど。」
『通告!!速やかに離れろ!!敵とみなすぞ!!』
「うわ!?な、なんだ!?」
『イマノハ ロクオン サレタ テイケイブン デス。』
「そうじゃなくて、なんで今?」
『ハイ、トウゾク デス。ゴランニ ナラレ マスカ?』
「ああ、お願い。」
「ヒャッハァァ!」ブルゥンブルゥン!!
「これ、これ、ゴーレムってやつだろぉ!?高値で売れるだろぉ!?」
「ヒャハハハハ!!!!銃だけ壊せよ!」
「…あれが盗賊。」
『ハイ、イエス。ショブンシマス。』
パパパパパパパパパ
「へっ、そんな銃なんざ俺達のジープならはじくぜ。」
『パルス』
ボボボボボン!!
「な、なに、今の。」
『ハイ、バクハツ ニヨリ ショリ シマシタ。』
「どうやったのって。」
『ハイ、トクシュナ バクダンヲ エンカクソウサ デ バクハ シマシタ。』
「……わかった。で、今しているのは?」
『ハイ、ジャンク ヲ アツメテ イマス。』
「……安らかに眠ってくれ、俺の命を奪いに来た人たち。」
『ミエテキマシタ。岩の村デス。』
「ん?もう一回。」
『ミエテキマシタ。岩の村デス。』
「どうして俺の声?」
『チメイ ジンメイ ドウシテモ イントネーション ガ ダイジ デス。』
「そういうことか。わかった。」
「な、なにものじゃぁ。これは!!」
「すみません。ジャンクの街から薬を届けに来ました。」
「お、おおお!!薬が!!皆の衆!安全なやつらじゃった!!」
「儂がこの岩の村の村長じゃ。して…キミだけかの?」
「はい、今回の配達員です。」
「そうか、では薬はもらっていくぞ。ほれ、運び出すのじゃ若者たち。」
「それでですね、対価として金属を頂きます。」
「む、うむ。そうじゃな。山で掘った金属じゃ。どれぐらいじゃ?」
「お医者様曰く、『薬の対価に満たない場合は怒った奴らが来る』だそうです。」
「ほっほっほっ。確かに、あの方のようじゃな。その言葉は合言葉みたいなものでの?出す鉱石の量を示しているんじゃよ。」
「ああ、そうだったんですね。」
「まぁ、これを言うということは多くなくてもいいという事じゃ。言わなくても少し量が増えるだけじゃよ。」
「それなら…まぁ安心です。」
「すぐに帰るのかね?」
「はい、外は初めてなので用心しています。」
「ふむ、ならば気を付けなされ?最近この辺りに北から賞金首どもが来ているらしいからの。」
「あ、それなら、途中であのゴーレムで倒しましたよ。」
「むむ、そうか。それならばいいのじゃが。」
「それじゃ、またいつか!」
「うむ、皆の者。この若者に山の歌を!」
『「ヨローレレイー!グーネレイホー!!」』
「ありがとうございました!」
声が大きすぎてきつい。急いで行こう。
地図を見ればもうジャンクの街と岩の村の間の地図が出来上がっていた。
「なぁ、どうしてもう岩の村まで地図に綺麗にあるんだ?入口に止めてあっただろ?」
『ハイ、イエス。トウキ ニハ ドローン ガ アリマス。ジョウクウ カラ ミマシタ。』
「上空から…そのドローンってのは飛ぶのか。街に戻ったら見せてくれよ。」
『ハイ、イエス。』
「おう、無事に戻ってきたようだな。」
「賞金首に襲われましたけどね。」
「ほう……にしちゃぁ傷も血の跡も無いな。」
「銃で十分でしたけど、他にも何か?」
「いんや、整備士のの事だ。そのままぶつかってもへこみはするだろうが問題ないんじゃないかと思ってな。おら、さっさと工場へ行って報告してこい。」
「はい、失礼します。ついてきてくれ、2番!」
『ハイ、イエス。』
「うおっ、降りても動くのかよ。」
「まぁ帰りに教えてもらいました。」
「うんうん、しっかりデータはとれたね。戦闘データも取れたのはラッキーだ。コミューン内で実験することはできないからね。」
「これで200G分にはなったでしょうか。」
「なったとも。それでだ、君には大事な仕事を任せたい。」
「え?」
「このゴーレムに乗って各地を巡り、様々なデータ、地図、品を持って帰ってきてくれ。それができれば君はコミューンに貢献できる。やってくれるね?」
「よ、よろこんでやらせていただきます!!長年の夢だったんです!!」
「ははは、さあ。今日はもう帰りなさい。お母さんの容態も安定したらしいからね。」
「はい、本当にありがとうございました。」
「ふふふ、やっぱり気づいてないか。小さなころの君に外への興味を持つように仕向けたのは私だよ。」
「母さん!俺、外に出る仕事に就いたんだ!」
「あら、ふふ。外は怖いところなのよ?」
「大丈夫、俺には相棒がついているから!」
「お医者様から聞いてるわよ。ゴーレムに乗って各地に行くんですってね。ちゃんと身なりを整えないとダメよ?ジャンクの街の品性を疑われちゃうわ。」
「へへへ、それより。母さん、よくなってくれて本当に良かった!」
「あら、もう。なんだかんだ言ってまだまだ子供ね。よしよし、頑張ったわね。」
「俺、外を、zzz…」
「あら、疲れてたのね。ゆっくりおやすみなさい。」
と、こういうあらすじです。気が向いたら書くかもしれないです。
更新ストップしてるDQ8の二次創作もよろしく。