ガバ転生メイリンによる「こずみっくいら」再現物語 作:めんりん
「すみません艦長。情けない話ですが、俺はここで離艦させてもらいます」
ミネルバの艦長室で、俺は艦長にそう告げた。ここはマルマラ海 ポート タルキウス。あのアークエンジェル乱入戦闘を終えて、艦首に大きなダメージを負ったミネルバ修復のため、この軍港に立ち寄った。
「そう…残念だわ。でも仕方ないわね、機体があれじゃ」
「ええ、まったくです」
俺の機体、議長から頂いた最新の試験機「グフイグナイテッド」。今はまだ俺たち"FAITH"級の奴らにしか与えられてない高性能機だ。
それがまぁ、片腕と両脚持っていかれたとあっちゃぁ、流石に修復は難しい。やってくれたぜ、フリーダム。
「それで、あなたこれからどうするの?」
「議長にこの件を報告したら、使いを回すから合流するようには言われました。詳細は俺も知らされてません」
そう、謝罪と一緒に機体状況と今後のついて議長に指示を仰いだところ、とりあえず合流するよう言われちまった。多分新しい機体を預けてくださるんだろうが、さてどうなることやら。
「そう。全て了承しました。短い間だったけど、この艦とクルーみんなを守ってくれて、ありがとう」
へっ…。なるほど、こりゃべっぴんさんだ。そりゃ議長も懇意に…ってあっぶね、これは考えちゃいけないやつだな。
「いえ、こちらこそ。大したお力添えも出来ず、申し訳ありません。またいつか、どこかでお会いできる日を心待ちにさせていただきます」
俺は笑顔で差し出された右手を握り返す。まあ、またいつか会うこともあるさ。生きてさえいりゃ、必ずな。
「それで、出発はいつなのかしら? 時間が空くならこれまで通り本艦の部屋を使っても構わないわよ」
「いえ、そういうわけには。議長が仰るに、今日中には迎えが来るそうなんで、それまではゆっくり街の観光でもしてますよ」
まあ、俺がいつまでもここにいちゃ、
* * * *
やっちゃった。あれだけわんわん泣いて悩んで決めたはずなのに。気付いたら声に出して叫んでた。
これからどうしよ。もうこれで彼の生存はほぼメサイヤまで確定だ。人ってのは不思議で、一度身の危険を感じるレベルの失敗をすると、そう簡単に同じミスは繰り返さない。
それがコーディネーターで、しかも"FAITH"でしょ? まー死なないっしょ。それに物語の鉄則、死亡フラグを乗り越えた奴はもう死なない法則とかもあるし。ここ現実だから知らんけど。
で、私メイリン・ホークが何をしているかと言いますと。タルキウスに着いてひと段落したら甲板に行けと言われたので仕方なく来ました。理由はまあ…察した。
「はぁ…なんて言おう…」
次に会うとは思わなかった。つもりもなかったし、何ならその芽を私が自分で摘むつもりでいた。血塗られた十字架と一緒に。
でも、結果はこの有様だ。最後の最後で自分が可愛くなってしまった。目の前で死んでいく仲間を、大義のために見殺しにするほどの非情な覚悟が、私にはなかった。
「よう。ちゃんと来てくれたんだな」
私が逃れた罪で悶々としていると、橙色の髪を潮風になびかせた件の彼が甲板に上がってきた。
「…まあ、約束しましたから。お姉ちゃんにも言われたし」
「なんだよ、そっちが本音か? ほんと仲良いよな、二人」
そりゃそうさ。なんたって私はあなたを殺すつもりであんなデタラメを取り付け逃げたんだ。その私が今更約束なんて。
「…あの、それで。えっと…私は…っ」
「あの約束な、延長できないか?」
はい? なんとかその場凌ぎの言い訳を考えていた私の声を遮って、彼はそんなことを口にした。
「バッチシ帰ってくるって言っておいてこのザマだ。こんなんでメイリンちゃんにだけ約束を守らせんのは、フェアじゃない」
いやまって。色々まって。延長? はい?
「でも、だからって一度した約束をなしってのはまたズルいだろ? だから延長。俺が君にこのデカイ借りを返したら、今度こそ名前で呼んでくれ。そんな他人行儀じゃなくて、仲間としてな」
なんだそれ。なんだそれ。仲間? 私が? あなたを見殺しにしようとしたゲスだぞ私は。
「最後にこれだけは聞いてってくれ。艦を離れる前に、どうしても君にこれを伝えときたくてな」
なんですか、告白ですか? 生憎と私は自分で殺そうとした男とのうのうの付き合えるほどサイコパスじゃーーーーー
「助けてくれてありがとう。俺が今ここにいられるのは、全て君のおかげだ」
……は?
「君が俺に対して何を思ってるかは、わかんねぇ。でも、それでも君は俺の命の恩人だ。これだけは、何にも変えられない事実だ」
いや…違うし。恩人なんかじゃない、むしろ私はーーーーー
「このデカイ借り、必ず返すからよ。だから色々含めて、ありがとう」
私はーーーーーっ
「そんだけだ。じゃあな、またどっかで会おうぜ。出来れば、戦場以外でな」
俯く私の頭にそっと手を置いて、そのまま彼は甲板を、そしてこの艦をも去っていく。
「私は…そんなんじゃっ…ちがうのに、ちがうのにっ!!」
理不尽な理由で殺そうとした相手に感謝され、胸に刺さる名前のわからない感情に支配される私。
助けた命、でも助けてはいけなかった命。もしこの罪に名前があるとしたら、いったいどんなだろう。
様々な思いが渦巻いて止まらず、私は誰もいない甲板で一人、止まらぬ涙を流し続けた。
* * * *
「…ぐすっ…はぁ…ズビ…」
短いスパンでギャン泣きは目と鼻にくるな。見る人が見れば何やこいつみたいな顔になってるかも。その時はあ○花見てたとかって言い訳してやる。
さて、
「すぅっ……わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
なんだよもうっ!! いいよもうっ!! やってやるよ、このままあの西川ボイス生存してようが不倫ダル議長倒してやるよ!
しょうがないだろ、助けちゃったんだから。ならこのまま行くしかないの。どうせやることは変わんない。何がなんでもですてにーぷらんとか言う誰得、いや私損な計画なんて阻止だ阻止。
全ては、私の私による花の美少女らいふのために。そして、私の大切な人たちがみんなで結末にたどり着くために。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……ふぅ…」
やってやる、何がなんでも。泣き言なんて終わってからいくらでも言える。だから今は戦え、私に出来ることを、為すべきことを為す。そうしたら、きっと上手く行く、ううん、やる。
よし、叫んではっちゃけたらスッキリした。とりあえずご飯食べよ、お腹空いた。
幾分か軽くなった足で、私は甲板を後にした。この先、気が滅入るイベント盛り沢山で、何なら例の脱走の時だって近づいてる。それでも、私はやり遂げる。
だってそれが、私に出来る、みんなの守るただ一つの方法だから。
ちなみにこのあと甲板で奇声発してたの見てたお姉ちゃんにめっっっっっちゃ怒られた。艦長にもちょっぴり怒られた、ぴえん。