ガバ転生メイリンによる「こずみっくいら」再現物語   作:めんりん

14 / 53
第十二話 : 罪のありか

 

「メイリン、ここは大丈夫だから行ってきていいよ」

 

 

心配しずきて涙目でコンソールにしがみついていた私に、そんなイケメソな野島ボイスが聞こえてきた。

 

 

「で、でも、まだーー」

 

「そんな目じゃコンソール見えないでしょ。俺だけで大丈夫だから。お見舞いついでにコーヒー持ってきてくれたら嬉しいな」

 

 

う、やばい嬉しさと心配とか感情の嵐でわけわからん。涙で霞む視界の中、何とかお礼を言って私はブリッジを退出して目的地である医務室へと走る。

 

今回ばかりはいつもみたいなキテレツ奇行とかではなく明確な目的があるため、どうか見逃して欲しい。

 

私が涙でモヤモヤになった視界で駆けていくと、ちょうどその目的地の扉から治療を終えたらしい人物が出てきた。

 

 

「お姉ちゃんっ!!」

 

 

そう、その人物こと私の姉ルナマリア・ホークその人だ。先のオーブ軍との戦闘で機体に甚大なダメージを負ったため、操縦していたお姉ちゃんも軽くはない怪我を負ってしまうことになった。

 

 

「メイリン、どうしたのそんな血相変えて」

 

 

どうしたもこうしたもあるもんか。駆けた勢いのままたまらなくなった私はお姉ちゃんに抱きついた。

 

 

「だって! 被弾して機体もあんなになって、そんな怪我までっ!」

 

 

今のお姉ちゃんは頭に包帯を巻き、左手を骨折して肩から吊るしている。その他見えないところにもすり傷打ち身とオンパレードだ。お姉ちゃん大好きっ子の私がこの状況で落ち着いていられるはずがない。例え、原作の流れの通りのことが目の前で起きていたとしても、だ。

 

 

「大丈夫よ、オペレートしてたんだからわかってるでしょ?」

 

「でもぉっ!!」

 

 

もちろん、その辺は分かっている。でなきゃフリーダムにスクラップ同然に解体されたセイバーの中にいたアスランさんとかの心配だってしている。しかしそれとこれとは話は別だ、私は生粋のシスコンなんだぞ、舐めるなよ。

 

 

「でも、でも、だってお姉ちゃんがーー」

 

「もう…よしよし、大丈夫だから。そんなに泣かないの」

 

 

今も涙止まらずグスングスンと嗚咽を漏らす私の頭をそっと撫でてくれるお姉ちゃん。よかった、本当によかった。被弾して機体が大破した時とか思わず戦闘中にお姉ちゃんっ! って叫んじゃったし。

 

 

「うっ…ぐすっ…喉渇いた」

 

「泣きすぎよ。でもまあ…そうね。何か飲みにいきましょ」

 

 

苦笑しながらも痛めてない右手で私の手を引きながら歩くお姉ちゃんの後ろを、涙を拭いながらトコトコ歩く。

 

私たちが天元突破レベルのシスコン姉妹であることは既にこの艦では周知の事実。今更手を繋いで歩いてるくらいじゃ誰も気にしない。てか気にされても今は手離さないもん。

 

とりあえず移動中にここまであったことをサラッと流します。

 

一つ目、悲劇の引き金ステラ・ルーシェの収容。

 

二つ目、アスランさんの帰艦。

 

三つ目、クレタ沖におけるオーブ軍との戦闘及びそれに伴う被害としてセイバー及びお姉ちゃんのザク大破。

 

びっくりするくらい原作通りだけど、レイから提供された情報からポートタルキウス付近に地球軍のものと思われる廃棄された研究施設を発見。これが通称「ロドニアのラボ」ってやつ。そこに単騎でやって来たガイアをシンと帰還したアスランが撃退、鹵獲したのち、パイロットである地球軍のエクステンデッドの少女ステラ・ルーシュを捕虜として収容した。

 

現在彼女は日に日に原因不明の体調悪化が進行しており、呼吸器がなければ生命維持すら困難な状況。ここに関しては後に重大な出来事が発生するため、要警戒。

 

二つ目はそのままなので省略。三つ目は……まあ要するにステラというサンプルを輸送するためジブラルタル基地へと向かい出港したミネルバをまたも"ユウナ邪魔しかせーやん"率いるオーブ軍と先の通りガイアを欠いた地球軍の例の部隊に出待ちされたことによる戦闘。

 

二度目となるアークエンジェル陣営の乱入、カガリ様によるオーブ軍の戦闘中止号令、そしてフリーダムによる戦闘介入と中々にカオスな事態に陥るなか、フリーダムにブチ切れたシンが再び種割れを起こし、あのアビスGを撃破。

 

が、その激情のままシンは敵オーブ艦隊を単騎で壊滅させてしまう大暴れを敢行。結果、彼は知らずのうちに家族を失った直後の自分を励ましアカデミー入学へのきっかけを作ってくれたトダカ一佐を殺害してしまった。

 

また、オーブ軍ムラサメ隊による決死の総攻撃の末にミネルバは艦全体に甚大な被害を被り、お姉ちゃんのザクはその余波により大破。そして、フリーダムの猛攻に晒されたアスランさんのセイバーもまたコクピットブロック以外を切り落とされる惨状となった。

 

これから、迷いを抱えたままのアスランさんと、怒りやその他の感情で不安定になっていくシンとの溝はさらに深まることになる。あの人がいればまた違ったのだろうけど、良くも悪くも結果は先日の食事会の雰囲気なんて見る影もないほどの曇り空。

 

現在私たちはどことも知れぬ岩陰に隠れて緊急メンテナンス中。搭載機体の半数を大破させられ、みんなのテンションは激落ち。エンジニア組は過労死まっしぐら。

 

お姉ちゃんも軽くはない怪我を負ってしまったけど、これでしばらくは…少なくても私がミネルバにいられるうちはもう出撃は出来ないと思う。そこに少しばかりの喜びを見出してしまう私は、やっぱ内面終わってんなと思った。

 

さ、これからまた重大イベントだ。原作では私蚊帳の外だけど…今回は少しだけ動かさせてもらう。散ると分かっている命を救うその偽善、背負うべき罪は私にこそあるはずだから。

 

 

 

* * * *

 

 

「どんな命であれ、生きられるなら、生きたいだろう」

 

 

例のエクステンデッドの少女を連れたシンに、俺はそう口にした。深夜に様子がおかしいシンを追ってみればこの騒ぎだ。無断で捕虜の連れ出しと返還など、重要な軍規違反だ、下手をすれば銃殺すらあり得る。

 

だがそれでも、こいつは今やろうとしていることをやめはしない。俺も、止める気はない。すでにクルーへの暴行を行った俺たちにそんな後戻りできる道などない。そこにある命を生かすというのなら、少しくらいの手助けはする。

 

 

「いけ、ゲートは開けてやる」

 

 

シンにコアスプレンダーへの搭乗を促し、俺はサブコントロールルームへと向かう。ハッチを開けるためのコンソールはそこかブリッジにしかないが、ブリッジには今も艦長をはじめとした多くのクルーがいるだろう、操作は困難だ。

 

ならば守りも手薄なサブコントロールルームからハッチの解放とインパルスの出撃をサポートする方が成功率が高い。

 

おそらく、すでに艦内への異常は通達されているはずだ、急ぐ必要がある。扉の前に到着した俺は開閉パネルを操作、迅速に室内を制圧すべく扉が開くと同時に室内に侵入し拳を構える。

 

だが、そこにいたのは数人の武装した兵士ではなく、

 

 

「やほ。大丈夫だよ、他の人には格納庫に行くようお願いしたから」

 

 

普段は二つに結んだ赤髪を背中に流した、見知った少女ひとりだった。

 

 

「なぜ、ここに?」

 

「レイと同じ理由、って言えば分かるかな?」

 

 

いや、撤回しよう。たしかに目の前にいるのはメイリン・ホークで間違いない。だが、俺が普段から見知った彼女では、断じてない。

 

普段から年不相応な幼い言動行動を繰り返すような彼女ではない。こんな、こんな悲しげに遠くを見つめるような瞳をする彼女を、俺は知らない。

 

 

「それは…意味がわかっていて言っているのか?」

 

「もちろん。あの子を連れ出したシンを発進させてあげればいいんでしょ?」

 

 

そう言って、彼女は何気なく片手でコンソールを叩き、ハッチ解放の手順を完了させる。あとはその最後のキーを叩けば、それでシンは発進できるだろう。

 

 

「なぜ、こんなことをする」

 

「なぜ…か。なんでだろう、自己満足かな。何もしないでいるよりは、私も何か罪を背負いたいから。そうした方が…私が楽だから」

 

 

なんだ、これは。だれなんだ、この少女は。俺は今だれと話をしている。

 

 

「助けられない命を、ほんの一時でも助けたつもりになりたいから。私は、できるだけのことをしたんだって、後から言い訳したいから。だから…二人の罪、私にも分けて」

 

 

そう言って、彼女はコンソールの最後のキーを叩こうとする。あれが作動すれば、ハッチは解放されてシンはインパルスで発進することができる。そして、それを手引き手助けした俺と…彼女もまた軍法会議にかけられるだろう。

 

そう思い至った瞬間、気づけば体が勝手に動いていた。

 

 

「ちがう、それはお前の罪じゃない」

 

 

指を叩こうとする彼女の手を掴み、最後の一手を遮る。

 

 

「…離して」

 

「離さん、何度でも言う。これはお前の罪ではない」

 

 

華奢な腕が震えているのが、掌越しに伝わってくる。罪を分けろと言いながら、こんなにも震えるものがいるものか。

 

 

「…何もわかってない。いいから離して、これは私がやらなきゃいけないの、私が背負わなきゃいけないの。じゃないと…私はシンに何も償えない」

 

 

 

何を言っている。まるでこの先に待つものが分かっているかのような口ぶりだ。一体お前がシンに何を償うと言う。お前に、どんな罪があるという。

 

 

「ちがう、これは俺たちの罪だ。俺たちだけで済む罪だ。わざわざ艦内から違反者を増やす必要はない」

 

「ちがわない、いいから離して。じゃないとーー」

 

 

気づいていないのなら、教えてやる。

 

 

「なぜ、これから罪を犯そうとする人間が涙を流す」

 

「……え?」

 

 

俺の言葉でようやく気がついたのか、彼女は空いている方の手を恐る恐る目元に当てた。

 

 

「あれ? なんで? おかしいな…」

 

 

慌てた様子で涙を拭おうとするも、溢れる涙を片手で拭い去ることなど出来るはずもなく。

 

これは俺の知らない彼女の一面なのか、これこそが彼女の本質なのか。答えは出ない。

 

唯一はっきりと分かるのは、気づいたときには彼女の手を引き、その華奢で震える体を抱きしめていたことだけだ。

 

 

「何度でも言う、これは俺たちの罪だ。お前が背負う必要はない」

 

「レ、レイ…?」

 

 

突然のことに、ひどく困惑しているのが声音でもはっきりと分かった。そんな彼女の鳩尾に、拳を打ち込む。

 

 

「うっ!?…れ……い…」

 

 

痛みと衝撃で意識を失い、倒れ込もうとする彼女を抱きとめ、コンソールを叩く。解放されたハッチからシンが飛び立つのを確認すると、気絶した彼女を横抱きに抱えてコントロールルームの扉を開ける。

 

 

「……何をやっているのだろうな、俺は」

 

 

頬を涙で濡らしたまま眠る彼女を見た俺の口から、そんな呟きが漏れた。

 

おそらくすでに包囲されているだろうが、連行される前に、あの過保護な姉に一発殴られてやらねばな。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。