ガバ転生メイリンによる「こずみっくいら」再現物語   作:めんりん

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第十三話 : 悪夢の前触れ

 

 

じーーーーーー。

 

 

「………………」

 

 

じーーーーーーーーーーーーっ。

 

 

「…………………」

 

「じーーーー」

 

「…なんだ」

 

 

ようやくこっち向きやがったなこのやろう。あ、皆さんこんにちは遂に腹パンヒロイン属性を獲得しました、ツインテールは女の懐刀、美少女オペレーター、メイリン・ホークですんきゃっぴきゃぴ。

 

ってんなことはどうでもいいんだよ今は。なあ、レイ・ザ・バレルさんよぉ。

 

 

「痛かった」

 

 

いやまじで。内臓に直にきたわ。まあだからこそ一瞬で意識も飛んだんだけどさ。流石というか何というか。が、それとこれとは話は別なのだよ。

 

 

「…すまなかった」

 

 

まったく。私の玉柔肌に拳ねじ込んどいてそれだけとは。許すまじこの金髪。お返しにドロっドロになったチョコレート棒でも差し入れてやろうとか思ったけど、それは今のレイの顔見てやめた。

 

 

「…ま、いいけどね。もうだいぶキツいのもらっちゃったみたいだし」

 

「…分かっていたことだ」

 

 

そう言って営倉のベッドの上で膝を組むレイの左頬は、この薄暗い空間でも分かるくらいの痣が出来てる。下手人? お姉ちゃんだよ?

 

レイが私に腹パンして意識刈り取った後、シンは原作通りにインパルスで無許可発進、んでこれまた無許可で捕虜であるステラを敵に返してしまった。

 

当然そんなことが許されるはずはなく。実行したシンとそれを手助けしたレイは、それそれは様々な軍規違反で拘束。艦長は怒髪天つくんじゃねかなってくらいプンプン。

 

でもって二人は司令部からの通達が来るまで営倉入りを命じられた。

 

ちなみに。シンは帰艦して格納庫で投降。レイは眠る私をお姫様抱っこした状態でコントロールルームを出て、包囲してる武装した兵士さんに混じってたお姉ちゃんに私をクーリングオフ。

 

びっくり仰天するお姉ちゃんにそこまでの経緯を説明して、次の瞬間には渾身の右ストレートがレイの顔面にダイレクトアタック。いやむしろ怒りに任せて振りかぶってたらしいからロシアンフックだったのかもしれない。

 

いくらわざと受けたとはいえ、あのレイを、拘束しようとした兵士の皆さんともども吹っ飛ばす激おこお姉ちゃん。その場にいたアスランさんが止めなかったら確実にお姉ちゃん傷が開いてたって。

 

 

「…まだ、痛むか?」

 

 

べっつにー。痛みもなければ君みたいに痣もなかったよ。本当にうまく殴ってくれやがった。

 

 

「…へーき。お姉ちゃんも分かってると思うから。だからその一発は、許してあげて欲しいな」

 

「ああ、分かっている。気にするな」

 

 

一応、お姉ちゃんに事情は説明した。めちゃめちゃ怒られたけど。だからこそレイは私を助けてくれたんだってこともわかってくれてる。でも、まあそれとこれとは話違うよね。

 

理解と納得ってやつ。めっちゃ居心地悪そうな顔してたもん。

 

 

「…ありがとう、と言うべきなのかな、私は」

 

 

私は、ステラを逃すつもりでいた。もちろん理由は原作の流れのために。私には、あの子は救えない。ヴェステンフルスさんの時とは状況も何もかもが違う。

 

例えシンとレイを私が妨害したとしても、その後にステラは間を置くことなく衰弱死するだろう。彼女の体は、もはや専用の薬物と機械による記憶操作なくして生きられない。プラントの医学では、彼女は救えない。

 

だから、私も罪を背負うことにした。何もしなくてもステラはシンによって返還される。そして、あの焼け野原となったベルリンで死ぬ。

 

ザフトのサンプルとして解剖されるか、それとも最期はシンの腕の中で安らかに逝くか。私には、彼女に後者を選ばせることくらいしかできない。

 

ならば。その命の終わりを弄ぶ傲慢の罪くらいは、私も背負うと決めた。そう、決めたのに。

 

 

「…さあな。俺は俺でやりたいようにやった、それだけだ」

 

 

まったくこいつは。でも、君があの時止めてくれなかったら、今頃は私もこの暗くて冷たい場所に押し込められてたってことだよね。

 

 

「…そっか。何か欲しいものとかある? シンも」

 

 

レイの隣に入れられているシンにそう声をかけると、寝っ転がったまま不貞腐れたような声が聞こえてきた。

 

 

「ないよ。てかもう来るなよ、あんまルナに心配かけんな」

 

「同意見だな」

 

 

…ほんっとにこいつらは。もう少し言い方ってのをだな。んなこと言ってたら、扉から見知った青髪の青年が入ってくる。ああ、そういえばもうそんなタイミングか。

 

 

「…君は…邪魔だったかな?」

 

「いえ、私はもう出ますから」

 

 

ここから、アスランさんとシンの対立が目に見えて深くなっていく。どちらが悪いって話でもないけれど、今の二人はまだ心を通わすことはできない。

 

 

「アスランさん」

 

「ん?」

 

 

それでも、少しだけお節介を焼くとすれば。

 

 

「あまり、シンをいじめちゃダメですよ」

 

 

あなたが言わなくても、じきに彼は自らの行いのツケを、最悪な形で払わされることになる。…あんまし、喧嘩しないでくださいね。

 

 

「…わかった、覚えておくよ」

 

 

そんな彼の言葉を聞いた私は、暗い営倉部屋に背を向けて足を動かした。

 

ごめんね、止めようと思えば止められるけど、今止めてもどのみち無駄だから。天使が落ちれば、あなたたちの対立は決定的なものになってしまう。私にできることは、何もない。ごめんなさい。

 

 

 

* * * *

 

 

何か飲み物でも、と思って休憩室に立ち寄ると、赤服のジャケットを肩にかけるように羽織った赤髪が見えた。

 

 

「お姉ちゃん?」

 

「あ、メイリン」

 

 

多分医務室帰りかな。包帯とかが新しい。怪我人がフルパワーで拳振り抜いたんだからね、そりゃ軍医さん怒るよ。

 

 

「大丈夫?」

 

「まあ、とりあえず。次は死ぬほど染みる消毒液使うって脅されたわ」

 

 

よかった、傷が開いたりはしてないみたい。

 

 

「二人に会ってきたよ、とりあえず元気そう」

 

「…そう」

 

 

あら、なんか暗いお顔。まあ、自分が殴り飛ばした友達に私が会ってきたって言ったらこうなるよね、普通。

 

 

「レイ、気にしてないって。今度謝りにいこ、私も一緒に行くから」

 

「……うん」

 

 

妹殴られたから殴ったら、その相手が妹を助けてくれてたってめちゃめちゃ複雑だと思う。私もそう思う。それでも、謝ろって言えば素直に頷くあたり、

 

 

「えへへ」

 

「な、なにすんのよっ!?」

 

 

なんか急にお姉ちゃんが可愛く思えてきた。頭撫でたら逃げられたけど。やーいめっちゃ照れてやんの。

 

 

「小腹空いちゃった、お姉ちゃんなんか食べに行こ」

 

「あ、ちょっとメイリンっ」

 

 

もうすぐ、嵐がやってくる。命も涙も全て飲む混む、破壊の嵐が。そんな事実から目を背けるように、私はお姉ちゃんの手を引いて歩く。

 

もうすぐ、この艦とも、みんなとも、お姉ちゃんとも、お別れしなくちゃいけなくなる。

 

だから今だけは。この優しくて甘いひと時に、身を委ねていたい。けれどそんな私の小さな願いを打ち砕く非常警報が、この後に鳴り響くことになる。

 

向かう先はベルリン。雪に覆われているはずのこの街が、今は戦火と悲鳴に覆われている。あの、破壊の名を冠する死の巨人によって。

 

そして、その巨人の体内に囚われた一人の女の子によって。

 

願わくば。次にあの子が生まれてくるのなら。その時は、こんな戦争しかない世界なんかじゃなくて。あったかくて、優しい世界に生まれてきますように。

 

普通の女の子として、幸せな家庭に生まれてこれますように。

 

 

 




来るべき時のため、少しの間これくらいの短いのが続きます。
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