ガバ転生メイリンによる「こずみっくいら」再現物語   作:めんりん

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第十四話 : 今はまだ

 

 

シベリアでのデストロイ撃破作戦が終わり、現在ちょっとした小休止。まあ、休めと言われて言われて休めるほど平和な心境じゃない。

 

ステラが死んだ。

 

まったくの、寸分の狂いなく原作通り。シンの必死な呼び掛けに、ほんの一瞬動きを止めたデストロイ。でもその直後に再起動を果たし、それまで以上の無差別攻撃を開始。

 

シンによる静止の声ももはや届かず、最後はフリーダムによって発射直前の陽電子砲を貫かれ大破。その余波と、おそらく既に生物学的に限界が近かったステラは、これもまた原作の通りに、シンの腕の中でそのあまりに過酷で短い生涯を終えた。

 

 

『ううぅぅぅあああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

 

「っ!?」

 

 

あの時のシンの絶叫が、ステラの亡骸を抱いて慟哭する声が耳から離れない。フィクションではない、本物の怒りと悲しみに満ち溢れた友人の声が、今も私を内側から引き裂かんばかりに叫んでいる。

 

おかげでさっきから吐き気が止まらない。油断すれば胃液ごとぶち撒けかねない。

 

それに、今ミネルバは、というよりシンとレイとアスランさんの仲が最大級にギスギスしている。

 

おそらく、シンは今フリーダムを撃とうと必死に研究とシミュレーションを重ねているはずだ。それこそ、部屋から一歩も出ず、食事や睡眠すら惜しんで。多分、レイも。

 

それが結局、かれらの仲をどんどん険悪にしていくことになる。

 

はぁ…。ほんとに気が休まらない。分かっていたこととはいえ、空気が重過ぎる。まあ、だからと言って私に出来ることなんて何もないんだけど。

 

 

「…あっ」

 

 

シンとレイの部屋の前を通り過ぎようとした時、中からアスランさんが出てきた。しかも、相当怒ってる。そのまま彼は今までに見たことがないほどの早足で歩いていく。

 

そして私も、気づけばそんな彼の背を追いかけていた。出来ることなんてなにもない。そんなこと、分かっていたはずなのに。

 

 

 

* * * *

 

 

どうすればいい。沸き上がる怒りの正体も分からぬまま、俺は無心に足を動かした。今止まれば叫び出してしまいそうだった、だからひたすらに足を動かしどこに行くかも考えぬまま歩き続けた。

 

そうしてがむしゃらに歩き続けていると、いつぞや彼女がユニウスセブン落下の折に仲間を諭していたあの休憩室が見えてくる。中に誰もいないことを確認した俺は、年甲斐もなく乱暴にソファに腰を下ろした。

 

苛々する。だがどうしてこうも腹が立つのか、何に対して腹を立てているのかすら分からない。

 

アイツを…キラを撃とうとするシンになのか、それをうまく伝えられない俺自身になのか。それとも、この訳のわからない状況そのものになのか。

 

 

「くそっ!」

 

 

そう口汚く叫んで感情のままに拳を叩きつけても、一向にこの居心地の悪い感情は消えない。

 

感情が堪えきれなくなり、二発目の拳を振り抜こうとした俺の前に、

 

 

「…えっ?」

 

 

突然、一本の缶コーヒーが差し出された。そこの自販機にあるものだろう。

 

 

「君は…」

 

「…お隣、よろしいですか?」

 

 

見慣れた二つ結びの赤髪の少女が、俺を見つめていた。

 

 

「あ、ああ…」

 

 

差し出されたコーヒーを受け取り、彼女を隣に促す。正直他人と話す気分ではなかったが、不思議とこの少女を拒絶する気にはなれなかった。

 

 

「…それで、俺に何か用か?」

 

 

自分でも驚くほどに低い声だ。まるで八つ当たりだ、これでは。

 

 

「…シンは。彼はきっと、フリーダムを撃ちます」

 

「っ!?」

 

 

なにかと思えば、この少女は一体何を言っている。

 

 

「なにをーー」

 

「それに、アークエンジェルも。私の推測ですが、近々正式に命令が降ると思います。あの艦を撃て、と」

 

 

なんだ、なんなんだ。さっきからなにを言っている、彼女は。

 

 

「…どうして君にそんなことがわかる、それにあの艦は敵じゃ」

 

「敵ですよ」

 

 

俺の言葉を遮って、彼女はハッキリと口にした。あの艦は、アークエンジェルは敵だと。

 

 

「違うっ! 何故そうなる!? 君も見ただろう、フリーダムも、アークエンジェルも俺たちの敵じゃないっ!」

 

 

なぜ彼らが敵になる。彼らを撃つ必要がある。敵は地球軍と、その裏にいるロゴスという連中のはずだ。なのになぜ。

 

 

()()()の敵ではないのかもしれません。でも、他の人はそうじゃない。あの艦を敵とみなしている人達は多かれ少なかれいます。この艦にも、そして…プラントにも」

 

「しかしっ!」

 

「そう思う人がっ! …こちらにもいるということです。どうしてもあの艦を敵にしたい人がいる。そういう人が、私たちに命令を下せる立場にいるということを、忘れないでください」

 

 

あの艦を…敵にしたい人物がいる? プラントに? なんなんださっきから。何を言っている。この少女は、一体何を見ている。

 

 

「アスランさん」

 

 

先日の幼い様子などどこにもない、まるで…まるでいつかのラクスと話しているかのような錯覚に陥りそうになる。

 

 

「この先、あなたにとって信じがたいこと、耐え難いことが起きるかもしれません。でもその時に、どうか思い出して下さい。あなたの仲間の強さと、本当の敵が何なのかを。目の前の出来事だけに踊らされず、激情に流されず、どうか本質を見極めてみてください。あなたなら……必ずそれが出来ると、私は信じています」

 

「君は…」

 

 

仲間の…強さ? 本当の敵? わからない、彼女は何を言っている、俺に何を伝えようとしている。

 

 

「このことは、誰にも話しちゃダメですよ。お姉ちゃんにもです。それ、口止め料ですから」

 

 

そう言って彼女が微笑しながら指差したのは、先ほど彼女から手渡された缶コーヒーだ。

 

 

「…内容に比べて、随分と安い口止め料だな」

 

 

本当に、安い口止め料だ。これだけのことを聞かされて、コーヒー一本で黙っておけ、とはな。

 

 

「…いつか、わかる時が来ますよ。必ず」

 

 

そう言い残し、彼女は席を立ち去っていく。目の前のものだけに踊らされず、怒りに流されずに本質を見ろ、か。なるほど、なかなか…痛いところを突かれたな。

 

手渡された口止め料の中身を乾いた喉に流しながら、彼女に言われたことを反芻する。何があるのかは分からないが、まあ…そうだな、肝に命じておくことにしよう。

 

 

* * * *

 

 

「…メイリン…お前は…」

 

 

* * * *

 

 

 

この後ほどなくして、ミネルバに新たな作戦が通達される。

 

 

『エンジェルダウン作戦』

 

 

これが後に、運命に翻弄される者たちの対立を決定的なものとすることを、この時はまだ、彼女以外の誰も知る由はなかった。

 

 

 

 

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