ガバ転生メイリンによる「こずみっくいら」再現物語 作:めんりん
見渡す限りの雪景色な山間部。思わず見惚れていたいほどの幻想的な風景のなか、憎悪に駆られた影が一つ。
エンジェルダウン作戦が開始され、私たちとミネルバにはアークエンジェル及びその搭載機であるフリーダムの撃破命令が下された。
先日デュランダル議長が発表した、対ロゴス声明。これにより世界の声は一気に議長に傾くこととなり、各地でロゴスやそれに関係した家屋や施設が暴動に見舞われている。
それに先しての、このエンジェルダウン作戦。なぜ、この時期にアークエンジェルを討つ必要があるのか。少し考えれば疑問を持つのは当然だ。
いまだ確かな目的も示さぬまま、悪戯に戦火を拡大する者共を討て、だったっけ。
要するに、ロゴス許すまじという世界の情勢を囮にした、議長の職権濫用でしょこれ。この先、間違いなく自分の障害になるオーブ、厳密に言えばオーブのカガリ様派閥の人たち、アークエンジェル、そして本物のラクス様。
特にラクス様はあらゆる意味で議長にとっての致命的なカウンターになる。
だから今のうちにその最大戦力のアークエンジェルとフリーダムが悪ではないと示される前に片付けてしまおう的な。適当だから外れてるかもしれないけど。
さっき、艦長が国際救難チャンネルでアークエンジェルに投降を呼び掛けた。でも、答えはノー。画面越しとは言え初めてみたマリューさんがきっぱりと否定してきた。
その後は、いまここ。画面越しからでもひしひしと伝わって来る、シンの怒り、憎しみ。性能差のあるインパルスであのフリーダムを徐々に追い詰めてる。まあ、全部想定通りなんだけどさ。
『メイリンっ! ソードシルエット!!』
そろそろ、だね。シンの要望に答えて、ハッチを解放してソードシルエットを射出する。
「タンホイザー起動。目標、アークエンジェル!」
こっちも終盤かな。潜航を開始するアークエンジェルと、追従しようとする片翼のフリーダム。そして、それを決して逃すまいと猛追するインパルス。
『はああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
インカム越しに、シンの怒号が聞こえて来る。すでにライフルを失い、投擲されたブーメランで態勢も崩されてるフリーダムに、エクスカリバーを構えて突貫してくるインパルスを迎撃する手段はない。
そして、インパルスの凶刃が、シンの憎悪と執念が、フリーダムの腹部を貫く。
「ぅてぇぇぇっ!」
同時に、副長の指示で、タンホイザーから放たれた熱線が海面諸共アークエンジェルを穿った。ついでやってくる、タンホイザーの海面直撃による海面の大規模水蒸気爆発。強烈な爆発と爆風がミネルバと、海上のインパルスを襲う。
『…は、はは…ははははは…やった、やったよ、ステラ…これで…はははは…』
余波でVPS装甲すら維持できなくなるほどボロボロになったインパルス。でも、インカムから聞こえてきたシンの声に、命が助かった安堵なんてない。
ただひたすらに、仇敵を討った余韻に浸って、壊れて乾いた笑い声だけが聞こえてくる。
そして、海中から上がる巨大な水柱。これにより、アークエンジェルが海中で撃沈した……と思うだろう、普通なら。
でも、私は伝えたよ。曖昧なことこの上ないけど。仲間を信じて、怒りに我を忘れないでって。
だからあなたなら、大丈夫だよね。アスランさん。
* * * *
フリーダムが撃墜された。アークエンジェルも、だ。正直取り乱した、死んだかもしれない親友の名前を叫ぶほどには。
だが、そんな俺を押しとどめ我に帰させたのは、先日の彼女の言葉。
俺にとって信じられないこと、耐え難いこと。例えそれが起きたとしても。仲間の強さを思い出せ、目に見える出来事だけに踊らされず、激情に流されず、本質を見ろ。
まったく驚かされる、まるでこうなることを初めから予感していたようだ。
そして、もう一つ。
「やったなシンっ!」
「すげぇやお前!」
格納庫で帰艦したシンを迎える拍手と喝采、称賛の声。キラを、フリーダムという最強の
これがそうなのか。例え俺にとってはかつての仲間で、今も志を同じくするもの達でも。ひとたび上から命令されれば、そんなものは関係なくなる。
そして、彼らを
アークエンジェルに、とくにフリーダムに挑めば、どれだけの損害を被ることとなるかなど、これまでのデータから明らかだ。それでも、どうしても彼らを討たねばならない理由がある人物。
障害となるのはなんだ。アークエンジェル? フリーダム? もちろんそれもある。だが、本当にそれだけか? 違うさ。今
それはーーー
「アスラン」
頭の中で思考をめぐらしていた俺を、当のフリーダムを討ったエースが呼んだ。
「なにしてんです? こんなとこで。俺を褒めにきたわけでもないでしょう?」
…相変わらず、よく突っかかる奴だ。
「別に。お前が無事かどうか見に来ただけだ」
「はっ! 嘘ですよ、本当は言いに来たんでしょう? なんでフリーダムを討ったんだーってさ」
ああ、本来ならそうしていた。お前の胸ぐらを掴んで怒鳴り散らして喚き散らしていたさ。彼女の言葉がなければ。
「…命令されたから討った、そうだろう?」
「…っ、ええ、そうですよ。俺が討ったんだ、あのフリーダムをっ!」
そうか。アイツを討てたことがそんなに得意か。それほどまでに、アイツが憎かったんだなお前は。
「あんたの言ってた親友とやらは俺が討った。アークエンジェルだって沈んだ、なのに何もなしですか? 偉そうにあれは敵じゃないとか言っといて、死んだら死んだでーーー」
「死んでない」
死ぬはずがない。この程度であの艦が、アイツが。そう簡単に殺れる相手なわけがない。
あまりに冷静な俺の態度が気に障ったのか、はたまたとったはずの仇をとれていないと否定されたからか。逆上したシンがさらに詰め寄ってくる。
「な、なんでそんなことが言えるんですっ!? 俺がフリーダムを討ったんだっ! 俺が討ったんだ! ステラの敵をーー」
「こんなことで死ぬようならっ!」
ああ、そうさ。こんなことで死ぬようなら。
「こんなことで死ぬようなら、とっくに俺が殺しているさ」
「な、なにを…」
そうだ。こんなことで死ぬようなら、俺がこの手で殺している。なにも生まれない、雷鳴の中ただひたすらに憎しみをぶつけ合った、あの日の戦いで。
『アスラァァァァァァンっ!!!』
『キラぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
だから、死んでない。アイツも、アークエンジェルも。
そろそろ、潮時かもしれないな。アイツの言っていたことが、今ようやく分かった気がする。プラントは信用できない、ラクスの暗殺事件。そして、今回のこの作戦。覚悟を決めなくてはならないな。
俺は、
「…………」