ガバ転生メイリンによる「こずみっくいら」再現物語   作:めんりん

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今日はいけると思った(仕事休み)。

いつもたくさんのコメント、評価、誤字報告(⇦おい)ありがとうございます(これが言いたくて今日投稿してる味あります)

…そしてなんとなーく感想欄で叩かれそうな話なので早めに投稿してしまえという勢いの投稿でもあります。…おかしいどうしてこうなった…(お前のせい)

批判されても流れは決めてるので変えないスタイルですすみません


第十九話 : 夢の終わり

 

メイリン・ホーク及びアスラン・ザラ両名の裏切りと死亡。今し方艦内に通達されたこの事実に、多くの、実に多くのクルーが衝撃を受けた。

 

とくにメイリンに関しては、彼女の人となりを知るからこそ、皆一様に驚き、戸惑い、涙を流す者さえいた。

 

姉のルナマリアが何より大好きな自他共に認めるお姉ちゃんっ子。艦内だろうが人前だろうが「お姉ちゃん」と呼ぶことを憚らず、彼女にしてみればシスコンなんてのは褒め言葉。

 

人見知りな子かと思えば、打ち解けたらどんどん顕になる年齢不相応な幼い発言と行動、無邪気、天然、ポンコツ。宇宙では何度艦内デブリになりかけたかわかったものじゃない。 

 

遊びでミネルバのシステムをハッキングしてるのを見つけて大目玉を喰らわしたこともある。あまりにワンワン泣くものだから途中から怒るのをやめてしまったのだけど。

 

特にパイロット組と仲が良く、あのレイが外へと彼女に連れ出されたと聞いた時はまさに青天の霹靂だった。あの時は思わず自分の頬をつねったものだわ。

 

挙げ句の果てに厨房を占拠した上、摂取可能の十倍以上の食事を作り、それの処理に艦長である私まで巻き込む度を越した破天荒。

 

まさしく、嵐のような子だった。まあ、嵐と言っても大きさは可愛いものだけれど。

 

そんな子が、基地のデータベースから機密情報をアスランと共に持ち出そうとした。なんて、俄には信じられないわ。

 

それに、戦闘時におけるレイに対する()の執拗なまでの撃墜命令。あんなに戦闘中に迷うレイもだけど、なによりあそこまで()()のようなものを露わにする彼の姿も、初めて見た気がする。

 

彼女と一体何があったのか、何があれほどまでに彼を掻き立てたのかは、今となってはわからない。

 

レイに頬にできた傷を尋ねても「何でもありません」の一点張り。…まあ、本人がそう言うのならこれ以上は聞けないわ。

 

艦内の空気が重い。直接関わった者にもそうでない者にも、彼女の裏切りと死亡という事実は、皆に決して小さくない影を落とした。

 

 

「…かく言う私も、例外じゃないのだけれど」

 

「艦長?」

 

 

…いけない、内面の呟きが口から漏れるなんて。思った以上に私も彼女の影響を受けていたのかしら。

 

 

「いえ、何でもないわ。アーサー、悪いんだけどもうしばらく頼めるかしら? 今のままじゃ…私もシートに座れないわ」

 

 

副官である彼…アーサーに今しばらく艦内をお願いしたい。彼も彼で思うところはあるだろうけど。

 

 

「は、はい。…艦長、その…本当に、あのメイリンが…?」

 

 

…当然よね、そう思うのも。

 

 

「通達は聞いたでしょ? なら…そう言うことよ」

 

 

私だって、そう簡単に納得出来るものではないわ。でも、仕方のないことだわ、上が…彼がそう言うのなら。

 

 

「それと、ルナマリアを呼んでちょうだい。…彼女には、これからについて話をしておかなくてはならないわ」

 

 

そう、この件で何よりショックを受けているだろう彼女には、話をしておかなくてはいけない。もしかしたら、彼女はもう、戦えないのかもしれないのだから。

 

 

 

* * * *

 

 

「…ルナマリア・ホーク、入ります」

 

 

シンたちと別れて部屋に戻ったら、副長に呼ばれた。あの子の遺品整理でもしろとかって言われるかと思ったら、ただ艦長が呼んでるって話。

 

また事情聴取か、そんな冷めた感情のまま艦長室に足を踏み入れる。

 

 

「…おはよう、ルナマリア。…その…何といえばいいのかしらね、こういった時って…」

 

 

…そんなもの、私が教えてほしい。私は、これからどうすればいいの。あの子がいない世界で、あの子がいない明日を、私はどうやって生きていけばいいの。

 

 

「…ルナマリア、短刀直入に聞くわ。あなた…まだ戦える?」

 

「……それ…は…」

 

 

…どうだろ。今までは国のため、家族のためって戦ってきた。ミネルバにはあの子が…メイリンがいたから。何が何でもって思って戦った。

 

でも…いまは…

 

 

「あなたには、除隊という選択肢もあるわ」

 

「…えっ…?」

 

 

こんな時に。こんな大きな作戦の前に。パイロットの私が?

 

 

「…こんな時期に、艦の貴重なパイロットを失うことは普段だったら容認できません。…けれど…あなたたち姉妹のことは、私も少なからず見ていたつもりよ」

 

 

その言葉で、また脳裏にあの子の笑顔が浮かんだ。いつまで経っても子供のままで。何もないとこで転んで、宇宙で飛び跳ねてレイに捕まって。その癖、たまにまともなこと言い出して。

 

頭の中がめちゃくちゃになりかけて、それでも何か言おうとした時

 

 

『すまない、ルナマリア・ホークがここに来ていると聞いたのだが。いるかね?』

 

 

私でも艦長でもない、第三者の声がした。

 

 

「議長? どうして…こちらに?」

 

 

慌てて艦長が扉を開閉して敬礼をする。私も一瞬遅れて艦長に倣うと、扉から先程の声の主…思いもよらない人物が目に映る。

 

 

「先程言った通りだよ。ルナマリア・ホークに少し話しておきたいことがあったのでね。…例の、メイリン・ホークの件について」

 

「…っ…」

 

 

なによ…まだ何かあるって言うの…もうそれは、

 

 

「ルナマリア、君の妹を奪ったのは私だ。アスランの裏切りを阻止出来ず、彼らの撃墜を命じたのは…この私だ」

 

 

……は…? アスランが…裏切り?…そういえば…。

 

 

「彼らに…シン、レイ、ハイネに彼らを撃てと命じたのも、皆の前で二人を悪と断じたのも、この私だ」

 

「…議長…?」

 

 

…だから、何だって言うのよ。だから許せとでも言いに来たの? そんな…そんな…っ!

 

 

「そんなーー

 

「故にその怒りは、全て私に向けたまえ」

 

 

……え?

 

 

「今、君の胸中は大切な者を失った怒りや悲しみ、そして先の見えない絶望に支配されていることだろう。どのような形であれ、大切な妹を奪われたのだ。憎しみだってあるやもしれん」

 

 

…そのとおりよ…ほんとうに。

 

 

「だがその怒りや憎しみは、どうか私に向けて欲しい。彼らはただ、私の命令に従ったに過ぎない。…もう会ってしまったかな、彼らとは」

 

「…は、はい。先程…」

 

 

…何ならあなたに報告がいけば一発で私に厳罰が下るまでの悶着を起こしましたよ。

 

 

「…そうか…それはすまなかったね、話をするのが遅れてしまって。…ルナマリア、先にも言ったが、君の内に燻る怒りや憎しみは、全て私に向けるべきものだ。彼らに…君の仲間である彼らに向けてはいけない。今回のことでこれ以上…君は大切な人を失ってはいけない」

 

 

…たいせつな、ひと。

 

 

「君の憎悪の対象は私だ。ロゴスを撃ち、平和な世を実現する。これはその為にと下した私の決断だ」

 

 

…ロゴス…へいわな…せかい。

 

 

「君には、私を撃つ権利がある。だが今しばらく預けて欲しい。私に課された使命を、ロゴスを撃ち、争いのない世界を実現するという使命を為し遂げるまでは。それが済めば…この命、喜んで君に差し出そう」

 

「議長っ!」

 

 

…ロゴスを…うつ。…わたしは…わた…し…は…。

 

 

「私の話はそれだけだ。なにかお話し中だったかな?」

 

「…いえ…彼女にはその、除隊を勧めていたところで」

 

 

ロゴス。戦争を起こす存在。己の欲を満たすために、命を金に変える存在。戦争…戦争、それがなければ、そんなものがなければ…っ!

 

 

「そうか…それもまた」

 

「…やめません」

 

 

そうだ。戦争さえなければ…そんなものを起こす奴らなんていなければ。メイリンは…っ!

 

 

「戦争がなかったら…そんなものを起こすやつらなんて…ロゴスなんてものがいなければ…アスランが裏切ることはなかった、あの子は…メイリンは死ななかった……そうですよね…そうなんですよね…?」

 

 

髪の毛をぐちゃぐちゃに握り潰しながら、確かめるように、すがりつくように議長を見る。そして、

 

 

「…ああ、そうだとも」

 

 

この人は、頷いてくれた。

 

だったら、私のやるべきことは。私が為さなきゃいけないことは。逃げることじゃない。

 

 

「…私…戦います。ここで戦わないと…じゃないと…あの子が…何のために死んだのか…わからなくなる」

 

 

そうだ、メイリンは死んだ、死んだんだ。戦争なんてものを引き起こす奴らのせいで。だったら、そんな奴らを生かしておく理由なんか、私がここで逃げる理由なんか、

 

 

「…だから、私はっ!」

 

「ルナマリア」

 

 

涙や怒りや何やらで視界も内面もグシャグシャになっている私の肩に、議長の手が置かれてる。

 

 

「…ありがとう、君の平和への…いや家族への思い、見せてもらった」

 

「…議長…?」

 

「タリア、インパルスを彼女に。乗り手が必要だろう、アレには」

 

 

…インパルスを、私に? 私なんかに、シンが使ってた機体を……

 

 

「そ、それは…たしかに可能ですが、今の彼女には…」

 

「なら頼む。それと次の作戦の間だけではあるが、ハイネにもこの艦に乗ってもらうことになっている。…ルナマリア、一度彼と話をしてみてくれ。思うところも多分にあるだろうが…」

 

 

…そうだ……謝ら…ないと。彼は命令に従っただけ、だから。

 

 

「…はい、そうさせて、いただきます」

 

「ありがとう。では期待しているよ、ルナマリア」

 

 

そう言うと、議長はもう一度私の肩を優しく叩いて去って行く。メイリンの敵…それは、議長でも、ましてハイネでもない。

 

戦争と、それを引き起こす奴ら、ロゴス。こいつらさえ、こいつらされ、こいつさえいなければっ!!! アスランがあの子を連れ出すことも、あの子が死ぬことだってなかったんだ。

 

そうだ、ロゴスが悪い、全部ロゴスが。あいつらが奪ったんだ、あいつらが殺したんだ、メイリンを、私のたいせつな妹をっ!!!

 

 

「…殺して…やる…絶対に…絶対に…っ!!」

 

「…ルナマリア」

 

 

膝を折って涙を落とす私の肩を、そっと艦長が抱き締めてくれる。それが、すごくあったかくて、優しくて。私はそのまま泣き続けた。

 

さっきから、私泣きっぱなしだな。でも今だけだから。いっぱい泣いたら、また戦うから。

 

…アンタを殺したやつら、全部、全部、皆殺しにしてやるから。一匹も、生かしておいたりなんてしないから。

 

だから、今だけは。泣き虫なお姉ちゃんでいさせてね、メイリン。

 

 

 

 

* * * *

 

 

艦長室の前。中から先程聞いたばかりの泣き声が聞こえて来る。…そうか、それがお前の選ぶ道なのだなルナマリア。いや…知らず知らずのうちに選ばされたというべきか。

 

 

「レイ、来ていたのか」

 

「ええ。ギル、彼女に…何か?」

 

 

ルナマリアは特にギルの目に留まるほどの何かを持ってはいないはずだ。それはギル自身も分かっているはず。

 

 

「…いや、妹があれほどのイレギュラーだったのでね。姉の方ももしやと思って来てみたが。どうやら杞憂だったようだ」

 

 

それでも彼女には、彼女の役割があるがね。そんな呟きが聞こえたような気がした。なるほど、遺伝子上のデータをこれでもかと否定した彼女の血族ということで見に来たと言うことか。

 

 

「…ところでレイ。話というのは…君も分かっているだろう」

 

 

ええ、分かっていますよギル。()()()()を決めたから、ここに来たのです。

 

 

「はい。昨夜はご心配、ご迷惑をおかけして申し訳ありません、ギル」

 

「…ふむ」

 

 

そう、決めたのだ。いや、寧ろ醒めたと言うべきか。居心地のいい、あたたかな微睡みから。

 

 

「…どうやら、柄にもなく夢を見ていたようです。優しく…心地の良い夢を」

 

 

だがそれも終わりだ。彼女はもういない。俺に夢を見せてくれた彼女は、俺を惑わす笑顔も、柔らかな声も。時折見せる別人のようなあの姿も。もう、どこにもない。

 

 

「…ですが、もう終わりです。私に夢を見せた小さな花は…既に散りましたので」

 

 

だから、いい加減に目を覚ませ。お前の使命を思い出せ。お前は誰でもない、ただのクローン。()と同じ、ただのクローンだ。

 

 

「…だから、大丈夫です。私は戦えます、いつでも、誰とでも、何とでも」

 

「…そうか。ならばいい、これからもよろしく頼むよ、レイ」

 

「はい。次の命令を心待ちにしています、議長」

 

 

頬笑みながら去っていく彼の背中が十分に遠ざかり、やがて見えなくなったところで、俺は廊下の死角に隠れている男に声をかける。

 

 

「…出てこい、シン。もう隠れなくてもいいだろう」

 

 

俺に名前を呼ばれた男…シンがおずおずといった様子で姿を見せる。

 

 

「…その、えっと…盗み聞きとか、別にそういうわけじゃ」

 

「構わん。それで、お前はどうしてここに? …もしルナマリアに用事なら…今はやめておけ」

 

 

……図星か。大方艦長室に呼び出された彼女が気になって様子を見に来たのだろう。

 

 

「…そっか。なんか聞いてたか? 話」

 

 

…まあこれくらいなら、教えても構わんか。

 

 

「いや、特に。ただインパルスには今後ルナマリアが乗る、とだけは」

 

「ルナが?」

 

 

正直なところ、除隊するのではないかと思ってはいたが……いや、今更俺がそれをいう資格はない。俺にだけは。

 

 

「…シン」

 

「ん?」

 

「俺は…俺は作るぞ。もう二度とこんな悲劇が生まれない世界を」

 

 

ギルの理想の世界を。争いのない、誰もが幸せでいられる世界を。

 

彼女が生きていれば、違う答えが出たのかもしれない。自分の幸せは自分で決めるといった彼女ならば、俺に違った世界を見せてくれたのやもしれん。俺があの時彼女を、彼女だけを選んでいたならば、別の道があったのかもしれない。

 

彼女を守り、ギルを裏切っていたならば。俺が今の()を捨て、彼女と同じ未来を望んだならば、或いはそんな可能性もあったのかもしれない。

 

だが、結局俺はそれを選べなかった。ギルを裏切れず、しかし彼女も捨てられず。そんな半端な迷いが招いた結果が今なのだ。ルナマリアのあの悲痛な叫びを生んだのは他ならぬ俺だ、俺の迷いが生んだ結末が今だ。

 

だから、もうそんな未来はありえない。戯言と甘い微睡みは、もう終わったんだ。だから戦え、今まで通りに、目指した世界のために。誰もが満ち足りた、平和な世界のために。こんなくだらないことが、二度と起きぬ世界のために。

 

 

「ああ、分かってる。やってやるさ、これ以上ルナが泣かなくていい世界にする」

 

 

…そうだな、守ってやれ。今の彼女には、お前の支えが必要だろう。家族を失う悲しみは、同じ悲しみを持つ奴にしか、分からんだろうからな。

 

たとえそれが、用意されたお前の楔であったとしても。心の中で親友にそう呟き、俺は右手首につけられた、彼女のくれたそれを()()()()()

 

当たり前だ、俺の目指す世界に、俺は生きていてはいけないのだから。これが内側から切れるまで生きるなんてことは許されない。

 

もう止まらない、迷わない。夢はここで、終わりにする。

 

 

『ごめんね…さよなら』

 

 

ああ…、

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

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