ガバ転生メイリンによる「こずみっくいら」再現物語 作:めんりん
たくさんの感想とコメ付き評価、本当にありがとうございます。返信は出来ておりませんが、すべてに目を通させていただくとともに、大きな励みにさせていただいております。
「…はぁ…はぁっ!」
見知った光景、覚えのある体験。戦場の中をただひたすらに走る自分と、家族の姿。
海で出会った少女。溺れていたところを助けたことが、運命の始まり。
赤い髪。年不相応に幼い発言と行動。俺にとっての友達で、恋人である彼女のかけがえのない妹。
そして、今も隣で眠る大切な彼女。
「…はぁ…っ! はぁ…っ!」
強烈な爆風、振り向いた先にあったのは数秒前まで家族
約束したのに。守るって約束したのに、最後はボロボロになって俺の腕の中で死んだあの子。
わけのわからないまま、ただアイツと一緒に目の前で海に沈んでいく、彼女の妹。
狂気と憎悪に取り憑かれ、ひたすら狂乱の限りを尽くす恋人の姿。
「…はぁ…っ! はぁ…っ! はぁ…っ!」
「…ン、シ…」
『母さんっ!? 父さんっ!? マユっ!!?』
『…シン……ステラ…まも…』
『戻れないんだっ! 彼女はっ!!』
『きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?』
『死ねっ! 死ね、死ね死ね死ねっ!!!』
「…はぁっ…はぁっ! はぁっ!!」
「シ…、…ン」
『お兄ちゃんっ!』
『……シン……すき…』
『おかえりっ! シン』
『よくやった、シン』
『もうっ! シンっ!!』
「はぁ…っ! はぁ…っ!!」
「シンっ」
っ!?
……ルナ?
「…うなされてた。大丈夫…?」
俺の胸を枕にして寝てたルナが、心配そうな顔して覗き込んでくる。ああ、そっか。ここルナの部屋だ。……ルナと、
「…ああ、大丈夫。心配させた、悪い」
「…んーん。ちょっと待ってて」
そう言ってベッドから抜け出したルナが持ってきてくれたタオルとスポーツ飲料を素直に受け取る。とりあえず誤解のないように言っておくと、服は着てるからな、お互い。
本当はいつも通りレイと一緒に使ってる部屋に戻ろうとしたんだけど、ルナがどうしても腕を離してくれなかったんだ。そりゃ…今のルナを一人にしておくのは不味いとは思ったけど。
そしたら、通りかかった艦長に「レイには言っておく、見なかったことにするから他にバレないように」なんて言われた。めちゃくちゃ驚いたけど、まあここは甘えておくことにした。もしかしたら、艦長も分かってるんじゃないかと思うから。
……今のルナは、メイリンを失ったことがトラウマになってて、俺までいなくなるんじゃないかって不安に駆られてる、んだと思う。
それに戦場での錯乱っぷりを見れば分かる通り、精神が非常に不安定になってもいる。正直、艦に乗ってるのが不思議なほどに。それでも議長がインパルスを預けたって言うんだから、仕方ない。
俺が守るんだ、今度こそ。もうなにも守れないのはたくさんだ。家族も、ステラも、メイリンも、俺は守れなかった。せめて、せめてルナだけは、何がなんでも守ってやる。
「…ありがとう、落ち着いた」
なにも言わずに笑って俺にくっついてくる彼女の髪をすきながら、胸の中で誓った。ああ、そうさ。ルナだけは、今度こそ絶対に。
* * * *
「議長、少しよろしいでしょうか」
ジブラルタルでヘブンズベース基地における戦闘での勲章授与式が終わった直後。
シンやレイの"FAITH"入隊やロゴスの中枢であるロード•ジブリールとかいうやつを取り逃したなんてこともあったが、そんなことは今はいい。
今の俺にとっちゃ、これが最優先事項だ。
「ハイネ、どうかしたかね?」
「議長にお聞きしたいことが。…できれば、内密に」
…特に、シンとルナマリアにだけはな。
「…ふむ。わかった、隣の部屋で話そう。皆、少しの間ここで待っていてくれ。ハイネもそう長い話ではないだろう?」
「ええ、すぐに終わります」
では行こうか、と促されて俺たちは授与式に使ったものの隣に入る。部屋を出る際にパイロット組の視線はもちろん、グラディス艦長とも目が合った。…なるほど、あなたも興味ある話だと思うぜ。
「それで、話というのは?」
…話が早くて助かる、なら単刀直入にいかせてもらおうか。
「議長、失礼を承知で申し上げます。……ルナマリア・ホークに、一体なにを仰られたのですか? なぜあのような彼女に、インパルスを与えて戦場に出すのです」
確信はない、だが明らかに今のあいつの心には人為的な何かが加えられてる。じゃなきゃ、短時間であんな濁り切った瞳はしない。怒りと悲しみに震えて俺の首絞めてきたやつが、次の日あった時にはロゴスが悪いってまるで呪詛みてぇに。
…そんなことができる人物に、俺は一人しか心当たりがない。
「…なるほど。君からそんなことを聞かれるとは、少々驚いたな」
…そうかよ、その割には全く驚いてるようには見えないけどな。むしろ予想通りって顔してるぜ。
「率直に言えば、君の妹を奪ったのは私だ、故に君たちパイロットを恨むのはやめてくれ、そう言っただけの話さ」
違うな。嘘じゃないが、全てじゃない。いいぜ、そっちがその気ならこっちから仕掛けさせてもらう。
「…そして…こう仰られたのでは? ロゴスを撃って世界を平和にするまで、ご自身の命を預けてくれ、と」
「……………」
図星か。……なるほど、そりゃ効くわけだ。わざわざ仇の方から殺していいなんて言われたらな。しかもしれっと"ロゴスのせいだ"って暗に誘導してもいる。
…大切にしてた妹を失ってボロボロになってたところに、この人の掌握術が合わさりゃ、わけねぇことだったろうよ。
「…鋭いな、君は。流石と言うべきか」
「お褒めに預かり、恐悦至極であります」
だがまだ分からない。この人がルナマリアの心を中途半端に
「…それで、そうまでして彼女を戦場に出す意味はなんです? 先日の戦闘、議長も見ていらしたでしょう? ……降伏した兵にまで武器を振るう、彼女の常軌を逸した姿を」
あれは明らかな命令違反だ。下手すりゃ軍法会議どころか条約にすら引っかかりかねない。そしてそんなパイロットを前線で、しかも高性能機であるインパルスを与えるなんて、とても正気の沙汰とは思えない。
「……ハイネ、人が最も力を発揮する条件はなんだと思う?」
…なに?
「人が持てる力を最大限に発揮する条件。怒りや憎しみといった強い感情や、金や栄誉などと言った報酬。その他にも、様々な要因があるだろう」
……それがなんだって言う。それとルナマリアの心を壊すこととなにが関係が……っ!?
「しかしね、私はこう考えている。人が最も強さを発揮する条件とは……大切ななにかを、守る時だと」
まさか……まさかっ…
「彼女のことは…きっと
そうか…そんなことのために……あいつを戦う道具にするためにっ!! 彼女の心を壊し、戦場に立たせるってのかっ!!!
そうすれば。彼女が戦場にいる限り、あいつは戦い続けるから。そこに彼女の存在がある限り、あいつは守るために常に持てる力の全てを振るい続けるから。
…いや、ちがう。シンを戦う道具にするために、ルナマリアの心を壊したんじゃなく…。
…そもそもルナマリアの心を壊すために、必要なものはなんだ? 馬鹿が、んなもん今更考えるまでもない。
寒気がする、一瞬怒りを通り越して背筋が凍りつくような悪寒に襲われた。そうか、初めっからここまで全部見越して仕組んだってことか。
既に手駒であるレイにいらない影響を及ぼしたあの子の抹消と、今度はシンを自分の傀儡にするために。
そのためにあの子を人柱にして、ルナマリアを壊したんだ。
冗談だろ…ここまでするのか、この人は…。そのために、自身に都合のいい戦闘人形たちを作る為に、あの姉妹の運命をここまで狂わせたのか。
そんなことのために……っ!! 俺はまんまと踊らされてっ!!! あの子を撃ったのかよっ!!!
「…それで、この話を聞いて君はどうするかね? 君も軍を抜けると言うのかな、君が殺した…彼のように」
…こいつ……っ!!
「別に構わないよ。残念なことに変わりはないが…それもまた、仕方のないことだ」
…本音を言えば、今すぐこいつをぶち殺してやりたい。善良な為政者の仮面を被り、人々を騙すこいつを差し違えてでも。けど、それはきっと今じゃない。
それに、これは脅しだろうからな。ここで抜けますなんて言ってみろ、それこそ……間違いなくアスランの二の舞だ。…今がどんなに悔しくても、殺されるわけにはいかない。
堪えろ、ハイネ・ヴェステンフルス。お前のやるべきことは、今ここで激情に身を任せることじゃない。
「…いえ。たとえあなたにどのような思惑があったとしても。一度は国のためと軍に捧げた命です。今更それを覆すつもりはありません」
だが国の為には戦っても、あんたの為には戦わない。
「お時間を取らせてしまい、申し訳ありませんでした。失礼します」
敬礼をして、俺はさっさと部屋を出る。…早いとこ宇宙に上がっちまおう。今ここで俺にできることは、もう何もない。
「ハイネ。議長と何話してたんだ?」
部屋から出て階段を降りようとすると、踊り場でシンが何のつもりもなく声をかけてくる。なんだ、待ってたのか。
「…別に、なんでもねぇよ」
…すまねぇな、シン、ルナマリア。今の俺は、お前らに何もしてやれない。いいように使われてお前らの大切な光を奪っておきながら、ルナマリアをこうまでした原因を作っておきながら。
情けねぇ。何がFAITHだ、目の前で悪意に雁字搦めにされてるガキ一人助けられないなんて。
「…悪いな、中途半端なとこで抜けちまって。死ぬなよ、お前ら。あとシン…俺が言ったこと、絶対に忘れるな」
「…ああ、分かってる。ハイネも…その、気をつけろよ」
…へっ…ありがとうな。
「…ハイ…ネ…」
シンの腕にしがみ付きながら、それでもこいつは俺を名前で呼んでくれるんだな。…本当は、辛くてしょうがないだろうに。
本当はミネルバに残ってこいつらを守ってやりたいが…そんなことをしちゃ結果的に思う壺だ。……信じるしかない、今は。
「………………」
……お前も、気をつけろよ、レイ。何も言わず、俺はこいつの肩を軽く叩いてこの場を離れる。
心残りはある。でもそれにかまけてたら、本当に今度こそ何もかも終わりになっちまう気がした。だから、今は信じて先に進ませてもらう。
とりあえず、これから行くとこの指揮官…イザークってやつが、少しは話のわかるやつだと…いいんだがな。
* * * *
「………っ…ここ…は……?」
明日まではいける…はず。