ガバ転生メイリンによる「こずみっくいら」再現物語   作:めんりん

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そろそろ作品タイトルが内容に負けてる(手遅れ)


第二十五話 : 迷う心、軋む心

 

「…そうか、やっぱり」

 

 

メイリンの様子がおかしい。カガリから聞かさせたこの一言に、俺の頭の中には先程の彼女の姿と声があった。微塵の笑顔もない、ただひたすらに氷のように冷たい彼女の声音。

 

たしかに、俺は彼女のことを全て知っているなんて豪語するつもりはない。付き合いだってそう長くはないし、過ごした時間も決して多いとは言えないかもしれない。

 

しかし、それでもあれは流石におかしいだろう。艦内を走り回ってレイに首根っこ掴まれているような彼女でもなければ、いつかの時のようにまるで先の未来を見据えて俺に何かを諭すような…儚くも強い意志を秘めていたわけでもない。

 

 

「それに、あの子…さっき部屋の前で倒れそうになってて…」

 

「…な…っ!? あ、っ…!」

 

 

思わず驚いて体を起こそうとした瞬間に、激痛が走った。

 

 

「何やってんだお前まで。大丈夫だから、私が部屋まで運んで軍医の人に診てもらった。今はまた眠ってる」

 

 

…そうか、よかった。思えば部屋に入ってきた時からすでに苦しそうだったからな。無理に起こそうとした体をカガリに支えられながら、また体を横たえる。早くこの体を何とかしないとな、せめて立てるくらいにはならないと、何もできない。

 

 

「…ただ、その時にちょっとな……」

 

「…どうした、何かあったのか?」

 

「…突き飛ばされたよ、彼女に。フラフラで今にも倒れそうだったのに、支えようとした私を」

 

 

…そんな、あのメイリンが? カガリを突き飛ばした?

 

 

「彼女、それで気を失っちゃって。だから私も彼女を部屋までは運べた…ってわけなんだが」

 

 

信じられない、彼女が人にそんな。しかもカガリを。仮にもオーブの国家元首だぞ、それをわからない彼女ではないはずだ。それがなぜ?

 

 

「すまなかった、カガリは大丈夫だったのか?」

 

「何でお前が謝るんだよ。大丈夫だ、それくらいで怪我なんかしないって」

 

 

よかった。彼女がカガリに怪我をさせていたら…なんだかやるせない。

 

 

「なあ、アスラン。あの子、ミネルバではどんな子だったんだ? 私、殆ど知らないけど…でも、今のあの子は絶対に何かおかしい。…なんか、無理に一人になろうとしてるっていうか…上手く言えないけど、その」

 

「分かってる、それは俺にも何となく」

 

 

ほぼ接点がないカガリでも気付くんだ、今のメイリンが普段のあの子でないのは明白だろう。…少なくてもあんな露骨に人を遠ざけようとするような子じゃなかったはずだ。

 

 

「…どんな子、か。難しいな、一言で表そうとすると」

 

 

発言行動ともに歳不相応に幼くて、姉のルナマリアを中心に動く、生粋の姉っ子。艦内だろうが作戦中だろうが戦闘中だろうが、いつだって呼び方は「お姉ちゃん」 いくらやめろと姉から言われても決して辞めなかった。あのグラディス艦長すら黙認してるくらいだ。

 

 

「…そうか、姉妹でミネルバに。仲、良かったんだな」

 

 

たまに…よりは多い頻度でキテレツなことをやり、主に姉やレイに捕まって。艦長まで巻き込むんだから、ある意味大したものだとは思うが。

 

 

「ぶっ!? 唐揚げ作ったのに食べきれないからってグラディス艦長まで呼ぶのか、嘘だろ」

 

 

でも、真剣な相談には真剣に乗ってくれて。

 

 

「お前…そういうの鈍いからな。目に浮かぶよ、まったく」

 

 

それに……あの時。キラとアークエンジェルを撃てって命令が下る前。俺に細やかすぎる口止め料と一緒に口にした言葉。これから先に起こる事態をまるで全て予期していたような口ぶりと、普段とはかけ離れた大人びたような雰囲気。

 

多分、議長はジブラルタルであの彼女を見たんだろう。そして自らの理想を否定された。そんな彼女を危険視した彼によって、あらぬ容疑をかけられてしまった、そんなとこだろうか。

 

 

「…なるほど、それがあの子が命を狙われた理由か。…白のクイーン…ラクスに足る、か。すごいんだな、あの子」

 

 

彼女が危ないって聞いて。いてもたってもいられなくて。気付いたら体が動いてた。困惑すると思った、反対されると思った。けど実際はいつかはこうなると分かっていた、そう言って彼女は何より大切な姉の手すら振り切って俺について来てくれた。

 

 

「…俺のやったことは、本当に正しかったのかな」

 

「…アスラン」

 

 

俺なりに、正しいと思って連れ出したつもりだ。彼女を失ってはいけないと、死なせたくないと、強く思った。

 

でも、今の彼女を見ているとそんな思いもわからなくなってくる。

 

 

「…俺が無理に連れ出したから、こんなことになってるんじゃないかって。彼女にあんな顔をさせているのは、俺のせいなんじゃないかって」

 

 

彼女がいたかった場所から無理やり連れ出して、ルナマリアと引き裂いて、レイとあんな別れをさせて。命を守ったつもりで、心を殺してしまったのではないか。

 

彼女の笑顔を奪ったのは、俺なんじゃないか。

 

 

「…俺は、本当に正しい選択をしたのかな」

 

 

彼女にとって、これは最善だったのだろうか。これが本当に彼女の望んだことだったのだろうか。

 

 

「やめろよ、そんなこと言うの」

 

 

…カガリ?

 

 

「助けたいって思ったんだろ? 死なせたくないから連れ出したんだろ?」

 

 

………。

 

 

「…話聞いて、私にも少しだけ分かった気がする。たしかに今のあの子は普段のあの子じゃないのかもしれない。…言葉じゃ推し量れない悲しみを抱えているのかもしれない」

 

 

…そう、かもしれない。こうなると分かっていた、そう口にした彼女の表情が脳裏に浮かんだ。…一体、彼女は何を見据えいるのだろう。なにを抱え込もうとしているのだろう。

 

 

「…だから、支えてやれよ。そうしたいから、助けたんだろ?」

 

 

………俺は……。

 

 

「…カガリ、俺はーー」

 

 

『カガリさん、至急ブリッジへ。ジブリールの居場所が判明したと、キサカさんから通信が』

 

 

っ!? ジブリール…ヘブンズベースから逃亡したロゴスの残党が?

 

 

「…悪い、行ってくる」

 

「あ、カガリっ」

 

 

カガリが早足で部屋を出ていく。彼女の目元がほんの少しだけ光っていたのは、気のせいじゃないはずだ。

 

 

『…だから、支えてやれよ。そうしたいから、助けたんだろ?』

 

 

…俺は……。

 

 

 

* * * *

 

 

…やらかした。何やってんだろ、私。ついカッとなってオーブ代表突き飛ばして気絶とか意味わからない。危うく私が国際問題引き起こすとこだった。

 

…まあいいけどね、どうせあの人はさっき入ったジブリール発見の報を聞いてオーブに飛んでいく、黄金のMS"アカツキ"に乗って。

 

あとは適当にバカ晒してるユウナなんとかせーやとか言うのふん捕まえてシンに負けてもらってジブリール逃したらあの人の役割はほぼ終了。ああ、私が見ているなかでは、の話だけど。

 

ジブリール…か。私はベッド横に備え付けられたモニターから連日流れるヘブンズベース攻略作戦の録画映像に目を向けた。いや、これはもはや攻略じゃなくて一方的な蹂躙とすら言えるけど。

 

衛星軌道から曇りのちザクウォーリアーの大半が消し飛ぶまでは予想通り、けどそこから基地が白旗上げるの流れはまるで違った。

 

出撃する四機のガンダム。シン、ヴェステンフルスさん、レイ…そしてお姉ちゃん。負けることはありえないし、ヴェステンフルスさんのデスティニーが一機増えてる分早く終わるだろうとは思った。

 

けど、甘かった。シンが一騎当千の活躍するのは分かってた、ヴェステンフルスさんもシンには及ばずとも戦果を上げるとも思ってた。

 

でも、お姉ちゃんとレイについては完全に私の予想を超えていた。あのデストロイに飛び乗ってこれでもかとエクスカリバーを叩きつけるインパルスを見て……正直絶句した。

 

あれが、今のお姉ちゃん。画面越しからでも十分伝わってきたお姉ちゃんの心の悲鳴。私が思っていたよりも、ずっとずっとお姉ちゃんの心は傷ついてる。

 

そして、レジェンド。…ゾッとするほどに冷たかった。自分を見上げるしかできない地上戦力を、一方的に上空から殲滅していくその姿。基地施設、逃げ出した歩兵、MS、戦車。全て例外なく粛々と消していくそのありように、恐怖を感じなかったと言えば嘘になる。

 

 

「……っ…」

 

 

私のせいだ。私がいなくなったから、お姉ちゃんはあんなに苦しんでる。私が余計なことをして、レイにあんな一方的な別れを告げたから、彼をあんな風にしてしまった。

 

全部、私のせい。私が選び、私が生んだ、私の罪。勝手に願い、押しつけた末がこの地獄。

 

そして、これからもっと人が死ぬ。ロード•ジブリール、彼がオーブから月に逃げた後、彼の手によって引き起こされる惨劇はプラントにかつてないほどの被害と死者を出すだろう。

 

引き金を引くのは彼だとしても、知っていて止めない私も同類、もしくはそれ以上の罪人だ。私が一言カガリ様に「セイランの所有するシャトルに気を付けろ」と言うだけで、おそらく結果は変わってくる。

 

でも、そうはしない。レクイエムの惨劇でロゴスの…と言うよりはジブリールの悪性を全世界に報道し、それを撃ったことによる議長にデスティニープラン導入宣言をしてもらわないといけないから。

 

それが、私の知ってる未来だから。それ以外の道筋なんて知らないし、探すつもりもない。死ぬべき命にはちゃんと死んでもらう、そう最初に決めたはずじゃんか。

 

忘れるな、メイリン•ホーク。お前は英雄じゃない、お前に何かを為す力なんてない。分不相応な何かを望んだお前の甘さが生んだ罪を忘れるな。

 

 

「…そうだよ、仕方ないんだよ。私には、何もないんだから」

 

 

私の役割はただの道案内。誰かを救う力なんてどこにもない。あるのはただ、みんなの血溜まりから己の罪を拾い上げる汚い両手だけ。

 

ああ、戦争が終わっても…これじゃ、ダメだな私。ごめんね、約束したのに。

 

 

「…こんなんじゃ…もうお姉ちゃんに会えないよ」

 

 

こんな汚れきった妹じゃ、お姉ちゃんの側になんていられない。罪のない人々を平気で見殺しにするような罪人の身に、そんなこと許されるはずがない。私に許されるのは世界と皆んなの明日を望むことであって、自身の明日を望むことじゃない。

 

…ごめんね、お姉ちゃん。約束……守れそうにないや。

 

二度と会えない最愛の家族を思い、私はただ膝を抱えて流す資格すらない涙とともに、静かに嗚咽を漏らした。……泣き止んだら、アスランさんのところにいかないと。

 

もうすぐまた、戦いになるんだから。何も得ず、ただ無数の命を浪費させるだけの無駄な戦いが。予定調和という名の血と罪に塗れた劇場の開演まで、あと少し。

 

 

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