ガバ転生メイリンによる「こずみっくいら」再現物語   作:めんりん

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第二十九話 : 僅かなる光明

 

 

「大丈夫…って、君にそう聞くのはダメだね、アスラン」

 

 

目の前にいるこいつ…キラに支えられながら、俺は未だ重い体をベッドから起こした。

 

オーブでの戦闘は終わった…らしい。シンと戦ってる最中に意識が希薄になった俺の記憶は、デスティニーとレジェンドがミネルバへと帰っていく光景を最後に途切れているが。

 

だが、次は殺す、そう言い残したシンの声だけは…はっきりと憶えている。彼女の言った通りだった。今のシンは強い。…正直、万全な状態で戦ったとしても、勝てるかどうか分からない。

 

メイリンがいなくなったから、だからルナマリアは。その叫びこそ、あいつの今の力の源なのかもしれない。妹を何より思い、そしてその光を失ってしまった彼女の痛々しい姿が、見てもいないのに目に浮かぶ。

 

いや、違うな。きっと俺の想像なんて遠く及ばないほどに、彼女は傷ついているに違いない。傷つき、怒り、悲しみ、そして狂う。そんな彼女を間近で見ているこそ、シンのあの叫びなんだろうか。

 

 

「…大丈夫だ、べつに。オーブの方はどうなってる、ジブリールは?」

 

 

それらを確認する前にこのザマだからな、色々確認しておきたい。

 

 

「…あまり良くない、市街地にまで被害が出たって。シェルターはまだ解放できないし…それに、ジブリールは捕まえられなかった。戦闘の最中に、シャトルが一機宇宙に上がっていたらしいから、多分それだろうって」

 

 

なるほど…。

 

 

「俺たちのせい、か」

 

 

俺たちがしゃしゃり出たせいで、結果的にジブリールをのがしてしまった、と。プラント…議長はそう言うのかもしれない。世界の敵を、悪を、オーブが庇った、と。

 

 

「ムラサメ隊やザフトの隊も追撃しようとしたらしいけど、無理だったみたい。…ザフトからすれば、僕たちが邪魔をしたって言ってきても仕方ない…のかな」

 

 

オーブを守ったつもりが、結果的には世界の敵の味方をした、と言うことになるんだろうな、おそらくは。

 

 

「キラ、ザフトの追撃部隊のなかにインパルス…今はパイロットは違うが、フリーダムを撃ったあの機体はいたのか?」

 

 

戦場で一度もインパルス…ルナマリアを見なかった。ヘブンズベースでのあの姿が今の彼女の心の有り様を示すのなら、やはり気になる。

 

 

「いや、あの機体の出撃は確認してないよ。ザフトの追撃部隊も、近くのバビとグフが何機か向かっただけみたい」

 

 

…そうか、彼女は戦場に出てきてはいないんだな。…安心していいことなのか、それともそれは、ある意味また違うことを意味しているのか。

 

 

「そういえばラクスは? 一緒じゃないのか?」

 

 

当たり前過ぎて気付くのが今の今まで遅れたが、この部屋にいるのは俺とキラだけだ。同室だった少佐…本人は大佐と言っていた彼は、どうやら艦を離れてまたすぐに戻ってきたらしい。今は…どこにいるかは分からないが、まあ艦内にはいるだろうさ。

 

 

「…ラクスなら。気になることがあるからって、あの子のところに。すぐに戻ると思うよ」

 

 

…なに…?

 

 

* * * *

 

 

戦闘は終わった。ジブリールとか言う世界の敵ナウなやつを匿うオーブ許すまじと攻め込んだザフトと、国を守らんとしたオーブ軍との戦闘で生まれたこの光景はまさに悲惨の一言。

 

…想像はしてたけど、やっぱりシンは強かった。体が万全じゃないとは言え、あのアスランさんの乗るジャスティスに勝っちゃうんだから。まさに原作とは真逆の展開、二人の戦闘中、まだかまだかと必死にミネルバからの信号弾を待ってひたすら祈ってたのが少し前の私。

 

…でもね、別に大丈夫なんだよ。いくらシンが強かろうと、彼は別に問題じゃない。今の彼には、致命的な弱点がある、()っていう絶対的な弱点が。戦闘中に私が通信だろうが何だろうが、一声かけられれば、それで恐らく方がつく。

 

精神に迷いや綻びを抱えたシンじゃ、絶対にアスランさんには勝てない。いくら今強くとも、結果は変わらないの。

 

…レイは…正直分からない。でも彼の相手はあのフリーダムとキラ・ヤマトでしょ? よっぽどのことがない限り、大丈夫じゃないかな。

 

そんな未来に私が考えを馳せているこの場所は…正式名称は分かんないけど、アークエンジェル内のでっかい窓があるデッキ…みたいなものと廊下が融合したみたいな場所。原作だと海中でキラ・ヤマトとラクス様が仲良くしてたとこって言えば伝わるかな。

 

まあ、今私の目に映る光景は海中なんて幻想的なものなんかじゃなく、戦後処理に奔走するオーブ軍と、破壊された街並みだけどね。

 

あちこちに残る戦いの爪痕。破壊されたMSの残骸や倒壊した建物の撤去、大規模な消火活動に市民の安全確保やらで、今頃オーブ軍とカガリ様は大忙しだと思う。

 

加えて、ロード・ジブリールの確保失敗。原作通り、戦闘のドサクサに紛れて一人宇宙…月面に逃避行を成功させたらしい。いいけどね、それで。それが物語の道筋なんだし。…ただ、そこにインパルスの姿がなかったことだけは、少しだけ気がかりだけど。

 

 

「…いっぱい、死ぬんだろうな…」

 

 

いや、すでにたくさんの犠牲者も出ているか。結局、私はカガリ様に何も伝えなかった。伝えるつもりも、なかったのだけど。

 

そのせいでジブリールを取り逃し、彼を確保しようとした兵士の方々は勿論、この戦いによる犠牲者なんてほぼ全員犬死だ。だって、私は知っていたんだから。ジブリールの確保は失敗する、それゆえに攻め込んできたザフトの人たちも、国を守ろうとしたオーブ軍の人たちも、全て無意味な戦いに命を散らしたことになる。

 

私が一言、カガリ様に伝えていれば。ジブリールの確保に成功していれば、こんなに戦いが激化することもなかったかもしれない。これから撃ち抜かれるプラントの人々だって救えたかもしれない。

 

 

「…なにを今更。無理だって言ってんじゃんか…」

 

 

そうだよ、これが正しい選択なんだ。くだらない絵空事をなんていらない。あるべき世界の明日のために、私は最善を尽くしている。余計なことさえしなければ、後は勝手に周りが世界を救ってくれる。私の役割は、用意された舞台の外で完全な傍観者に徹すること。

 

そこにある罪だけ背負って、見ているだけでいい。それだけが、私に残された最後の役割。

 

その後は…どうしようかな。この戦争が終わったら、どうしよう。当初はちゃちゃっと議長倒してお姉ちゃんと遊びに行こうとか、軽く思ってたけど。…もうそんなこと、出来るわけがない。

 

許されるわけ、ない。

 

いっそ名前も何もかも捨てて、私のことなんて誰も知らない場所にでも行こうかな。

 

そんな時だ、カツンカツンと規則正しく踵を鳴らして誰かが後ろから歩いてくる音を聞いたのは。人と会うのは面倒、話しかけられる前にさっさと退散してちゃお。どのみち、この艦の人にとって私は真っ赤な他人、そんな私にわざわざ話かけてくるような酔狂な人はいないだろう。

 

そう思って、私は近づいてくる人の正体も確認せずにこの場を立ち去ろうとした。

 

 

「こんにちは、メイリンさん」

 

 

………………嘘でしょ…。

 

 

「少し貴方とお話ししたいことがございまして。今、よろしいですか?」

 

 

…カガリ様といいこの方といい…。なんで私なんかに絡んでくるの、もういいじゃん、放って置いてよ、私なんか。

 

透き通るような声に振り向いた先にいたのは、ただそれだけで見るものに慈愛を感じさせるように微笑む美しい女性が一人。

 

平和を謳う姫君、本物のラクス・クラインその人が、私の前に静かに佇んでいた。

 

 

 

 

 

* * * *

 

 

「ジュール隊指揮官、イザーク・ジュールであります」

 

「同じく副官…のようにこき使われてるディアッカ・エルスマンであります」

 

 

目の前で敬礼する二人は、俺にそう名乗った。議長…いやデュランダルとの問答の後、俺は用意させたシャトルに乗って機体共々宇宙に上がった。

 

正直、ミネルバに残ったあの三人が気がかりで仕方なかったが、情にかまけて奴の思惑に乗るわけにもいかない。俺のやるべきことは他にある、そう自分に言い聞かせて、当初の予定通り俺は宇宙で目の前にいる指揮官…イザークってやつの部隊に合流した。

 

…ぶっちゃけ、刺客の襲撃やシャトルの整備不良という名の事故、後は合流前に何かしら敵襲なんてこともあるんじゃねえかとそれなりに警戒してたんだが…予想とは裏腹に無事にここまでたどり着くことができた。

 

まあ…この短期間にFAITHを二人も始末するような派手な真似は流石に控えたってことか。…どうだっていいんだが。

 

 

「特務隊、ハイネ・ヴェステンフルスだ。あいつらの世話してくれてんだってな、礼を言わせてくれ」

 

 

この艦…というかイザークは今、FAITHになる前に俺の部下だった奴らを纏めて自分の隊で面倒を見てくれている。ご丁寧に全員がザクウォーリアの右肩をオレンジに染めてるような奴らを全部、だ。

 

さっき俺の顔みて「げっ!? なんで隊長がこんなとこにっ!?」なんて言いやがった奴がいたから連帯責任で全員即刻で便所掃除の刑に処してやったが。

 

 

「いえ、とんでもありません。彼らからも…そして報告でも、ご活躍はかねがね」

 

 

…ご活躍、ね。

 

 

「なら知ってんだろ、俺がやったこと」

 

 

俺はお前らの同期を…アスランを殺した。なのによく俺を艦に受け入れてくれたもんだ。

 

 

「…まあ、一応報告だけは。しかし奴のことです、この程度でくたばりはしないでしょう」

 

 

…なんだって?

 

 

「失礼ですかヴェステンフルス殿は、奴の死体を見たのですか?」

 

「いや、それはまだ確認されてないが…」

 

「では撃墜した機体のコックピットは? その他奴が死んだと断定できる証拠は?」

 

 

…それもまあ…ない。けどあの状況で無事なんてことは流石に、

 

 

「なら生きているでしょう、残念ながら」

 

 

…なんだ、こいつ。なんでそんなにはっきりと言い切れる。俺は、アスランを…アスランとあの子が乗っていた機体を撃墜したんだぞ?

 

 

「あのいけ好かないバカタレが、たかだかその程度で死ぬわけがない」

 

 

………。

 

 

「奴がそんなもので死ぬものか。たかが一回二回三回四回五回撃墜された程度で」

 

「いやそんなされてないから。むしろお前だろされたの」

 

「…何か言ったか、ディアッカ?」

 

 

睨み合う指揮官と苦笑する副官(?)

 

 

「ストライクにやられて泣いて帰ってくるわ、フリーダムに瞬殺されて回収されてくるわ…よく生きてるよなぁ…流石だよイザーク」

 

「…いいだろう、死にたいのだなディアッカ。機体を出せ、ここで宇宙の塵にしてやる」

 

 

青筋を浮かべるイザークに、それをおちょくるディアッカ。こいつら…本気でアスランが生きてると思ってる。むしろ死んだなんて可能性、少しも考えちゃいない。

 

 

「…そうか…それ、俺も信じてもいいのか?」

 

「信じるも何も、生きていますよ。だからあなたもそんなつまらない顔はさっさとやめて、仕事をしていただきたい。なんだかおかしな宙域で妙な動きをしている奴らがいるらしいので」

 

 

…こいつ、俺がFAITHだってこと忘れてんじゃないだろうな。

 

 

「…分かったぜ。あと呼び方な、ハイネでいい。長ったらしいだろヴェステンフルスじゃ」

 

「ではハイネ、と。出撃の準備をしていただいても? 一応、俺にあなたに対する命令権はありませんので」

 

「…了解だ、バッチシ頼むぜ、隊長」

 

 

…なんなんだろうな、ったく。人が並々ならぬ覚悟を決めて、必死に堪えてきたもんなのによ。簡単に言ってくれやがる、こいつら。

 

…生きてる、か。殺した俺がそんな夢物語にすがるなんて許される話じゃねぇのは分かってる。軍人として、そんな情けねぇことしていいはずないなんてことも…分かってる。

 

 

……でもよ、本当に…生きててくれるのか? アスラン、メイリンちゃん。

 

 

 

 

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