ガバ転生メイリンによる「こずみっくいら」再現物語   作:めんりん

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第三十二話 : 何のために

 

『その方の言葉に、惑わされないでください』

 

 

突如としてスクリーンに映し出されたラクス・クライン…だと思う人物が、そう言った。たかがそれだけでなに驚いてんだって思うか? そりゃ驚くさ、今スクリーン内には()()()()()()()()()()()が映ってるんだから。

 

しかも、間違いなく二人は別の場所にいて、この配信は録画じゃない。あのオーブ代表の隣にいるラクス・クラインも、今画面端で右往左往してるプラントのラクス・クラインも、どちらも今この瞬間、別々の場所にいる。

 

 

『私と同じ顔、同じ声、同じ名の方がデュランダル議長と共にいらっしゃることは、知っています』

 

 

なんだよこれ…一体どうなってるんだ。

 

 

『ですが、シーゲル・クラインの娘であり、先の大戦ではアークエンジェルと共に戦いました私は、今もあの時と同じかの艦と、オーブのアスハ代表の元におります』

 

 

ミネルバの休憩室はどよめきの嵐だ。まあ当たり前か、俺だって混乱してる。隣にいるルナが俺にしがみつく感触がなかったら、俺もみんなと同じように驚愕してたかもしれない。

 

 

『彼女と私は違う者であり、その思いも違うということを、まずは申し上げたいと思います』

 

『わ、わたくしはっ』

 

『私は、デュランダル議長の言葉と行動を、支持しておりません』

 

 

…オーブのラクス・クラインの言葉が、なんとか口を開こうとしたプラントのラクス・クラインの言葉を覆い隠すように響く。

 

 

『戦う者は悪くない、戦わない者も悪くない。悪いのは全て、戦わせようとする者、死の商人、ロゴス。議長の仰るそれは、本当でしょうか?』

 

「……っ!? …ち、がう…っ。わるい、の、ロゴス…っ!」

 

 

しまった…っ。 よりによって今のルナに一番聞かせたくない言葉を聞かせたくないニュアンスで言いやがった。腕に感じた感触が消えて、その手は彼女自らの頭に伸びる。

 

 

『それが真実なのでしょうか?ナチュラルでもない、コーディネイターでもない。悪いのは彼、世界…貴方ではないのだと語られる言葉の罠に、どうか陥らないでください』

 

「…ち、がう。ちがうちがうチガウチガうっ!! ロゴスが悪イ…ロゴスが悪いノ…全部…全ブっ!! だってっ!!!」

 

 

錯乱して自分の頭をかき乱すルナの手を取って、優しく抱きしめる。安心させるように、包み込むように。

 

 

「…大丈夫、大丈夫だから。…部屋に戻ろう、ここにいちゃだめだ」

 

 

手を握って、頭を胸に抱き寄せる。俺たちが部屋を出ようとすると、周りがなんとなく道を開けてくれる。それが優しさから来るものなのか、それとも違うものか。

 

まあぶっちゃけ、半分半分ってとこだろうさ。あの日…ヘブンズベースから帰艦した俺たちを…というかルナのインパルスを見て、恐怖を感じなかった奴なんていない。装甲とエクスカリバーに付着した大量の血と肉と臓物。それが何のものだなんて、見たことないやつでも一発で分かる。

 

驚愕して絶句するだけならまだいい、あまりの不快さにその場で吐き出すやつも…まあ仕方ない。でも、一番俺が許せなかったのは、まるでルナを化物みたいな目で見る周りの視線。

 

それをした奴らに、じゃない。こんなことになることを止められなかった俺自身に、だ。止められなかった、そもそも考えてなかった。ルナがまさかあんなことするなんて。

 

俺が目を離したから。ハイネにも言われたのに、ほんの少しだけ、戦闘が終わった余韻にかまけて油断した。その一瞬で、()()は起きた。

 

気付いた時には遅かった。暴れ回るインパルスと、殺戮される兵士たち。

 

あの一件以来、ルナの精神状況はほぼ艦全体に知れ渡ってる。今じゃ誰もルナに話しかける奴なんていない、ヨウラン達でさえ、なるべく気取られないようにしてるが、まあ避けてる。

 

そんなルナが今もミネルバにいられるのは、偏に議長にインパルスを託されたルナを、艦長が全力で擁護してくれてるから。作戦時でもなるべくルナを出撃させないよう、守ってくれてるから。…オノゴロ島の時みたいに。

 

 

「シン、ルナマリア」

 

 

…あとは、俺の他にもルナを守ってくれる仲間がいるから、かな。レイが反対側から人混みを割いてくれたおかげで、何となく角を立たせずに俺たちは休憩室を後にできた。

 

 

「…大丈夫か、二人とも」

 

 

…俺は別に平気だよ、ルナももう落ち着いた。

 

 

「…大丈夫、平気だ。サンキューな、レイ」

 

「………ん……」

 

 

そうか、とだけ呟いてそのままレイは背中を向けて歩いていく。多分部屋に戻るんだろ、方向は一緒だしとりあえずレイの後ろについていく。さっきの配信…どっちが本物のラクス・クラインだ、とか。気になることはあるけど、それを言ってしまったら何の意味もなくなってしまう。

 

レイもそれが分かっているからこそ、何も言わずに助けてくれたんだと思う。…いや、レイのことだからまったく気にしてないって線もあるかも。

 

 

「シン、さっきの戦闘を解析したデータだ。……一人になったら目を通しておけ」

 

 

部屋に入る直前、レイがそれとなくデータチップを俺のポケットに入れてくる。…さっきの、戦闘。

 

 

「…ルナマリアには見られるなよ」

 

「…分かってる。悪い、何から何まで」

 

 

…ジャスティスのこと、アスランが生きていたことは、まだルナには話してない。いや、これからも話すつもりはない。あの時、帰艦するまでの道すがら、レイと通信で決めたことだ。

 

 

『…分かっているな、シン。ジャスティスのこと…アスランのことは、ルナマリアには伏せておけ』

 

『…ああ、そのつもりだ。今ルナにアスランが生きてて、メイリンは…メイリンは死んでるなんて言ったら……多分今度こそ……ルナは耐えられない』

 

『…分かっているならいい。解析して後からデータは渡してやる…お前はあいつの側にいろ』

 

 

……ほんと、なんか世話になりっぱなしだな。こんなに面倒見のいい奴だったかな。…いや、元からか。好き放題やらかしたメイリンの首根っこ掴まえてるのって、いっつもレイかルナだったもんな。

 

…メイリン…。…次は、絶対に逃がさない。フリーダムも、ジャスティス…アスランも。次で絶対に堕としてやる。今度こそ、終わりにしてやるんだ。

 

終わりにしなきゃ、いけないんだ。…こんなことは…っ!

 

 

「…シン…?」

 

 

…そして、平和な世界にするんだ。もう、なにも…争いもなにもない、あったかくて優しい世界に。

 

これ以上、ルナが苦しまなくていい世界に。

 

 

 

 

* * * *

 

 

…ラクス様によるミーア・キャンベル公開処刑全世界生配信から翌日。アスランさんのお見舞いすらブッチして私はベットで不貞寝を決め込んでいた。

 

いや、だってしょうがないじゃん。ラクス様からのヤマトさんってこの世界ではいろんな意味で最大級のコンボでしょ。誰が耐えられんの?

 

あれだけの景色を見てあなたのせいじゃないから自傷すんなとか、訳がわからん自分ルールで勝手に仲間判定してくるとか。流石こんな混乱極める世界をゴーイングマイウェイ出来る人たちは違うなって思ったよ。

 

私のせいじゃない? …馬鹿じゃないの。全部私のせいだって言ってるじゃん。人がたくさん死ぬって分かってて止めなかったんだから。そんな人間が、仲間?……ほざくな。

 

これから私のせいでどれだけの人が命を散らすと思う。どれだけの人の心を引き裂くと思う。これまでも、これからも。戦火の拡大という大罪を犯している私が、無実なはずないじゃんか。

 

……それでも、私は止まらない、止まれない。あるべき結末のために、みんながみんなでいられる世界のために。今あるどれだけの命を踏みにじることになったとしても、私は私が知ってる未来を実現する。

 

……そうすれば…そうすれば、きっと…、

 

 

「……ん?…」

 

 

なんか艦内が騒がしくなってきた気がする。………っ!?

 

それに思い至った瞬間、私は被っていたシーツを蹴飛ばす勢いでベッドを飛び出して、壁に備え付けられたモニターのスイッチを入れた。

 

 

「……ヤヌアリウス……」

 

 

映像に映し出されなのは、プラント内の基礎微細工学や応用微細工学を専門とする居住地…()()()もの。砂時計のような形をしていたはずのそれは、もはや僅かな跡を残す残骸となって宇宙に散乱している。

 

…レクイエム、発射されたんだ。…あれ、でもおかしい。たしか原作だと隣のディセンベルもヤヌアリウスの衝突に巻き込まれる形で崩壊したはず。……なんで? 原作より少な………

 

 

「……は……?」

 

 

………まて、まてまてまて。今、私なに考えた?

 

思ったより少ない? ヤヌアリウスだけでもどれだけの人が暮らしていたと思ってるの? 百とか千なんて数じゃ到底及びもつかない人たちがいたはずなんだよ? 

 

それを……思ったより…少ない?

 

 

「…うゥ!?」

 

 

直後、喉元にこみ上げるものを感じた私は、口元を押さえながら部屋を飛び出しそのままトイレに駆け込む。

 

 

「うおえぇっ!!?」

 

 

便器を覗き込むようにした直後、直前まで堪えていたものをそのまま吐き出した。ここ最近はゼリー状のものしか口にしていないのが幸いし、固形のない吐瀉物を吐き出すのはそれらが含まれるものよりも僅かだが楽な気がした。

 

 

「…はぁ…はぁ…っ!?」

 

 

だが、吐き出した汚物の中に赤い液体…恐らくはストレス故の己の血液がそこに混じっているのを見ると、そんな些細な気持ちなど一瞬で消え失せる。

 

 

「…はぁ…はぁ…は、はぁ、は、ははは、ははははっ…」

 

 

…なんだ、私…もうとっくに壊れてるんだ…。心と体を罪と血で汚して、もう自分の願いも叶わなくて。

 

…私、何のために戦ってんだろ、何のために………。

 

 

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