ガバ転生メイリンによる「こずみっくいら」再現物語   作:めんりん

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本来ならここまでのつもりでしたが……まあいいや、ってことで


第三十四話 : 約束

 

 

 

「おつかれ。怪我の方は大丈夫か?」

 

 

夜。もっと詳しく言うなら、アークエンジェルのCICでキラやラクスから議長の真の目的を聞かされたり、それでフラガ少佐に叱咤されたり、メイリンがみんなに心配そうにされながら途中退室したり、そして俺たちも宇宙に上がることを決めたりとてんやわんやとした日の、だ。

 

覚悟を決めて彼女に話を切り出そうとしたら、

 

 

「なあアスラン、話したいことがあるんだ。今夜、甲板で待ってるから……頼むな」

 

 

そう、先を越された。彼女…カガリの声音から何となくだが、言いたいことを察せられた、俺としては珍しく。

 

これから俺は人として、いや男として、最悪なことを言わなくてはならない。

 

万人から指を差される行為だろう。場合によっては、大事な親友すら失うかもしれない。…だが、その程度の覚悟なくして今の彼女は救えない。全てを拒絶し、ただ冷たい仮面を被り続ける…メイリンは。

 

あいつは言った、迷っていたら何も守れないと。だからあいつは強いのだろうか。たとえ己の行動で犠牲が出ると分かっていても、そうしなくては守れないものがあるからと。

 

それが罪だとしても、守りたいものがあるのだと。

 

 

「大丈夫だ、もう」

 

「そっか…よかった」

 

 

なら、俺も覚悟を決めよう。これが罪であり、許されないことだと言うことはわかっている。だが、今の彼女にはそうしなければ声を届かせることすらできない。彼女の硬く閉ざした氷の壁に、傷一つつけることはできない。

 

 

「カガリ、俺は」

 

「あの子、変わったな」

 

 

正直、どう言ったらいいかわからない。だが何とか言葉にしようと口を開いた俺を、カガリは遮った。

 

 

「カガリ…?」

 

 

思わぬ返しに混乱する俺をおいて、カガリは続ける。

 

 

「お前から聞いたあの子と、私が僅かだが直接接したあの子。…まるで別人だ。……みんなの中心にいた子が、今は必死に一人になろうとしてる。差し伸べられた手を全部払い除けて、ひたすら殻に閉じこもろうとしてる」

 

 

…………。

 

 

「…ボロボロだよ、あの子。一体何をどれだけしょい込めばあそこまでになる。…あんな、痛々しい姿になる」

 

 

……たぶん。それがわからないから苦しいんだろうな。俺も、みんなも。

 

 

「…あの子、もうプラントにも帰れないんだろ? ミネルバになんてもっと。…どうしたらいいか、ずっと考えてたんだ。事が済むまでオーブで匿ってやろう…とかも考えたけどさ、多分それじゃ…何も変わらない」

 

 

だろうな。今のメイリンは、あらゆる他者からの助けを受け付けない。声を聞かない、差し伸ばされた手を握らない。…必死に自分で自分を責め続けている。まるで、自分にその資格はないのだと言わんばかりに。

 

 

「…だからさ。めちゃくちゃ身勝手だけど…お前に全部任せることにした」

 

 

…カガリ…?

 

 

「お前、鈍感だからな。こうでもしてやらないと分からないかと思って」

 

 

やめろ、カガリ。それは俺から言うことだ、俺から言わなくてはいけないことだ。俺が、背負うべき罪なんだ。だから、

 

 

「カガーーー」

 

「支えてやれよ、アスラン。どんだけ拒絶されても、跳ね除けられても、なんならぶん殴られても。…それでも、手を伸ばせ。…絶対に諦めんな」

 

 

涙ぐむ彼女が、ゆっくりと左手に嵌めている指輪を外す。やめろカガリ、頼むから。…それは俺に言わせてくれ、俺に背負わせてくれ。君が背負うことはないんだ。

 

俺の罪なんだ、だから、

 

 

「カガ」

 

「だからさ、アスラン。()()()()

 

 

そう言って、彼女はそれを…俺が渡した()()()()を、海に投げ捨てる。

 

 

「…どうして……それは、俺から、」

 

「どっちからだとしても同じだろ。結果はこうなんだから」

 

 

多分、もう互いに視界はぼやけて顔は見えていないだろう。

 

 

「すまない…っ! カガリ、俺はっ!」

 

 

情けないことこの上ない。俺が悪いのに、俺のせいなのに。俺が言わなきゃいけないことを、全て彼女に言わせてしまった。…彼女に、背負わせてしまった。

 

 

「…いいんだ、アスラン。私はもう、大丈夫だから。もう十分…助けてもらったから。だから、これくらいは私に背負わせろ。……お前が背負うもんは、他にあるだろ?」

 

 

…カガリ…っ……。

 

 

「絶対に諦めんなよ、支えてやれ、助けてやれ、救ってやれ。……でもって、全部終わったらまたオーブに来いよ、あの子と…一緒に」

 

 

…………っ……。

 

 

「覚悟しとけよ、めちゃくちゃ高い店予約してやるからな、お前が奢るんだからな。……ちゃんと、()()()

 

 

………ごめん、ごめんっ!! カガリ……っ!!

 

 

「…ああ…っ! 約束する…っ!! 必ず…必ずっ!!」

 

 

涙でガラガラな声しか出ない俺の肩をそっと叩き、

 

 

「今までありがとう、アスラン。…これからも、またよろしく頼む」

 

「…ああ、ありがとうカガリ…っ!……これからも、頼むっ……」

 

 

それを最後に、彼女は甲板を去っていく。拭った目で足元を見つめれば、俺のではない大粒の涙が甲板にシミを作っていた。

 

 

「…アスラン」

 

 

……やっぱり、聞いてたんだな。

 

 

「…どうした、思いっきり殴っていいぞ。何しろここにいるのは、お前の姉にプロポーズしておきながらそれを相手に破棄させた、最低最悪の男なんだからな」

 

 

…なんなら、殺されても文句は言えない立場だ。いや、いっそ罵倒されて殴られて絶交でもされた方が楽なのかもしれない。

 

 

「…別に、それが君たちの選んだ道なら、僕にとやかく言う資格はないよ」

 

 

……………。

 

 

「…でも、まあ個人的な八つ当たりを君にするとしたら」

 

 

……するとしたら、どうするんだ、キラ。

 

 

「…これであの子を救えない、諦める、なんてことになったら……ジャスティス諸共、君を撃つ。それが僕から君に叩きつける一方的な約束、かな?」

 

 

…なるほど、それはまた。

 

 

「…おっかないな、とんでもなく」

 

「一応、弟らしいからね。これくらいはいいかなって」

 

 

……少し見ない間にシスコンになったか、お前。俺に対してかなりシビアな死刑宣告した自覚ないだろこいつ。

 

 

「…絶対に、帰ってこないとね」

 

 

そうだな。戦争を止めて、議長を止めて。そして……メイリンを救って。盛り沢山だ、まったく。

 

 

「あ、でも帰ってきてもお金貸さないからね」

 

 

…馬鹿にするな。きっちり奢ってやるさ、焼肉でもフルコースでもなんでも……きっちり、三人分。

 

 

 

 

* * * *

 

 

「ーーーーだが、アークエンジェルには、正式にオーブ軍第二宇宙艦隊所属として出来る限りのサポートを約束する」

 

 

…はい、昨日ヤマトさんの演説中に貧血起こしてそのまま部屋に早退しました私です。とりあえずゼリー状の栄養食品を流し込んで皆さんがオーブ軍の軍服着てならえの姿勢決めてるなか一人だけ無地のパンツに臙脂の上着というラフな格好で紛れ込んでます。

 

目の前では察しが悪くて話の通じない方のお姫様がアークエンジェル頑張って演説してる。別になんでもいいけどね、もうあなたの仕事終わってるから。とりあえずデュランダルはんたーいって言って寝っ転がってれば全部終わってますよきっと。

 

……あの人指輪外してる。まあいいや、そこは別に()()()()()()し……。

 

 

「本艦はこれより、月面都市コペルニクスに向かい情報収集活動の任に就く。発進は三十分後、各員部署につけ」

 

 

…了解ですよラミアス艦長。まあ、アークエンジェル内に私の場所なんてないけどね。だってハウさんとかいるし私の出番ないでしょ? これまで通り出番までもらったお部屋で不貞寝させてもらいましょうか。

 

 

「あ、えっとメイリン・ホーク。話がある、私と来い」

 

 

……鬱陶しいな、なんなのよ。

 

 

「…なんでしょうか」

 

「いいから来い。……なに、すぐに終わるさ」

 

 

 

* * * *

 

 

 

なんか原作にない無駄なムーブかましました頭悪い方のお姫様に連れてこられたのは、アークエンジェルの客室。しかも二人っきり、私がスパイとかだったらどうすんだろ。……いっそ首でも絞めてみようかな。

 

 

「…そう邪険にするなよ、少し話がしたかっただけだ」

 

 

話すことなんてありません。あなたの役割は終わりました、さっさと私の前から消えてくれませんか?

 

 

「…別に、話すことなんて」

 

 

役目を終えた役者はさっさと舞台から降りてくださいよ。邪魔です、世界があるべき明日を迎える妨げになってるんですよ。

 

 

「なあお前…メイリン。この戦いが終わったら、オーブに来いよ」

 

 

……は…?

 

 

「なんでも食いたいもん食わしてやる。ああ、心配すんなよ、財布ならもう用意してあるから」

 

 

いや、だから言ってる意味が、

 

 

「なんでもいいぞ、値段は…なるべく高いところがいいな。食いたいもん決まったら教えてくれ、私が国内でいっちばん高いとこ予約しといてやるから」

 

 

あの、話聞いてます? 私はべつに、

 

 

「約束、だからな」

 

 

…………だから、話がよくわかりませんってば。

 

 

「お前、この戦争が終わったらいなくなるつもりじゃないだろうな?」

 

 

…っ……………。

 

 

「許さないからな、そんなの」

 

 

私の両肩をがっしり掴んで、彼女は涙目になって訴えてくる。

 

 

「許さないからな。私のいないところで、あいつの心めっちゃくちゃに振り回して…っ! なのに…なのにこんな顔しやがって…っ!!」

 

 

…言ってることの意味が、わかりません。…いいから離してくださいよ、もう終わりですって。

 

 

「…許さないからな。このまま飯の一つ、愚痴の一つも付き合わないままいなくなるなんて、私は絶対に許さないからな…っ!」

 

 

うるさいな……っ! いいから離せって言ってんでしょっ!! あなたの役目はもう終わったの、部外者が余計なことしないでよっ!!

 

そう思って無理に振り払おうとしても、彼女の両手は決して私を離さなかった。私の肩を掴んで、涙でぐしゃぐしゃになった顔でなお、力強い瞳は私に逃げることを許さなかった。

 

 

「お前、生きろよ。死ぬんじゃないぞ、勝手に消えたりなんかするんじゃないぞっ!」

 

 

……うるさい…うるさいうるさいうるさいっ!!!

 

 

 

 

 

「みんなの前から、いなくなったりなんかするんじゃないぞっ!!」

 

 

 

……うるさい……うるさい……うる……さ、い………。

 

 

「…約束、したからな。逃げたりしたら、それこそ国を挙げて見つけ出してやる。……それが嫌なら、素直に食いたいもん決めて()()()()()……いいな?」

 

 

そっと私の頭に手を置いて、この人は去っていく。……なによ、なにも知らないくせに、部外者のくせに。……ただの人のくせにっ!!

 

…あなたの国を焼いたのは…私なのに…っ!!

 

 

「…うるさい…うるさいうるさいうるさいっ!!!」

 

 

一人になった部屋で、誰に言うでもなく私は地団駄を踏みながら髪の毛を掻き毟る。霞む視界のなか、振り乱した髪が頬を撫でる感触が気持ち悪い。

 

私は間違ってない、私は正しいことをしてるんだ。世界のために、みんなのために、出来る限りのことをしてるんだ。そんな戯言に意味なんて、

 

 

『約束、したからな』

 

 

違う、違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違うっ!!!

 

 

「……違う、私は、世界の、ために…みんながみんなでいられる……未来の、ために」

 

 

 

世界のために、あるべき結末のために。そのためだけに、私、は………。

 

 

 


 

 

 

罪と死、そして命。

 

 

その全てを、少女は背負ったつもりでいた。擦り切れた心で、その本当の意味も知らぬまま。

 

 

だが、一発の弾丸が愚かな少女にそれらの真なる重さを知らしめる。

 

 

壊れる心、砕かれる意志。絶望の果てに、少女が辿る運命とは。

 

 

次回

『少女の願い』

 

 

その心、こじ開けろ。()()()()

 

 

 

 

 

 

 






と、いうわけで。はい、次は前編後編の二分割のやつです。両方とも今日中に投稿できるので、暇だったら見てやってください
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