ガバ転生メイリンによる「こずみっくいら」再現物語   作:めんりん

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第三十八話 : 決める、やり通す

ワシャワシャワシャワシャ。サーサーサーサー。フワッフワッフワッフワ。サーサーサーサー。サザーーっ。

 

 

「はい、もう目開けていいわよ」

 

「いや子供じゃないんですから、大丈夫ですよ」

 

 

はい、メイリン・ホークです。…ええ、仰りたいことは分かりますよ、とっても分かりますよ、だから言葉にするのはやめてくださいお願いします。

 

え? 今何してんのかって? お風呂ですよ、そんなの見れば一目瞭然じゃないですかお馬鹿なんですか。あ、訂正です、見てたら絶対許しません、月に代わってお仕置きです。ていうかそれ以外に何だと思ったんですか? まったく(逆ギレ)

 

……いやまあ、実のところ今この時に対して「何故だ」と世界に最も強く訴えているのは他ならぬこの私です、間違いありません。だってそうでしょ? もうそろそろこういうのお腹いっぱいになりません? 胸焼けしてきません?

 

ちなみに私は先程のキャンバーグのせいで物理的にもお腹いっぱいなんですけどね、今。

 

とりあえずこの『ハンバーグだけだと思った?? ところがぎっちょぉんっ!!』みたいな状況と経緯を説明しますね。……はぁ。

 

一応、キラさんにはレイの出生から今に至る私が知り得ていることは全て話しました。彼がアル・ダ・フラガ…ロアノーク一佐の父親のクローンであり、ラウ・ル・クルーゼと同じ遺伝子を持つ者だと言うことも。

 

彼の願いは、自らとともにあなたという自分たちの結果である存在を抹消すること…だったかもしれないということ。そして、変わろうとした彼の手を振り払い、切り捨ててたのがここにいる私であるということも。

 

…今のレイがどんな思いで戦ってるのかは分からない。ただ一つ言えるのは、彼が並々ならない覚悟で戦場に出ているということだけ。その根幹にあるものが何なのかまでは、分からないけれど。

 

……正直、レイに会うのは怖い。いや、どの口が言ってんだって話だよ、それは私が一番分かってる。あの議長の命令に逆らってまで彼は私を救おうとしてくれた。それがどれほどの葛藤の末にある選択であると知りながら。

 

私が撒いて、そして摘み取った。手を差し伸べておきながら、彼が手を伸ばした瞬間に振り払った。傲慢で残酷、彼の心をこれ以上ない形で弄んだ。

 

そして、おそらく私がいなくなったことで最も心に深刻なダメージを負っているお姉ちゃんと、その隣にいてくれているだろうシンについても。

 

原作の流れなんてものを優先して、私は二人の心をズタズタに引き裂いた。後でまた会えるから、そんな甘い言葉を免罪符にして。その過程で二人が一体どれだけ傷だらけになるのかすら、多分考えてなかった。

 

どれもこれも、取り返しのつかないことばかり。本当に、私は彼らに会う資格があるのだろうか。 ……私の声は、彼らに届くのだろうか。

 

 

「大丈夫よ」

 

「…っ!?」

 

 

そう言って彼女に握られた私の右手は、小さく震えていた。…心の呵責やら不安が抑えられずに外に出たのかな。

 

 

「…私、何も言ってないですよ」

 

「さっき言ってた友達と家族のことでしょ? 顔見れば分かるわよ、ほら」

 

 

彼女の指が差す真前には、シャワー用の一枚の鏡がある。そこに映される、まだ少しだけ幼さの抜け切らない少女の体と…不安そうに俯いていたであろう辛気臭そうな顔。

 

 

「…私、会ってもいいのかなって。未来のためにって、散々切り捨てて、蔑ろにして…いまさらそんな都合のいいことが許されるのかな…って」

 

「私が知るわけないじゃない、そんなこと」

 

 

……ド直球ですね。まあ、その手の答えを返してくれるであろうから投げかけたのですけど。あなたは私に気を遣わない、言いたいことをはっきりと口にしてくれる。……お姉ちゃんみたいに。

 

 

「だって、そんな考えに意味なんてないもの」

 

 

………。

 

 

「会ってもいいのってどういうこと? 生きてるんでしょ? 会えばいいじゃない。会っていいのか、じゃなくて。どうせなら会った時に何を言えばいいのかで迷いなさいよ」

 

 

………会った時に…何を言うか。

 

 

「会うのよ、絶対。そのためにアスランたちが手伝ってくれるんでしょ? だからそんなことでうじうじしないでシャキッとする。そして笑う、はいスマイルっ」

 

「むぎゅうっ」

 

 

こ、このっ。暴力反対です、私の顔がまるで失敗した菩薩みたいになってるじゃないですか。いくら気を遣わないスタイルとはいえ物理攻撃まで許容するなんて言ってないですからね。たとえお姉ちゃんに秘蔵のプリンを食べられても五、六時間で心を入れ替えて甘え倒すほどの慈愛精神の固まりである私でも怒ですよ。

 

ちなみに内心では賠償金(お菓子)とハグがあれば三秒で許していたのは内緒です。

 

 

「いっぱい話す、謝る、何でもいいのよそんなの。その時は…まあ泣いてもいいと思うわよ。…柔らかいわね…お餅みたい、うりうり」

 

「ふぁ、ふぁふぁりまひふぁはらふぁひゃひへふははいぃぃぃっ」

 

 

# : 分かりましたから離してください

 

って、なんで心の声で翻訳つけなきゃいけないんですか。ていうか良いこと言いながら私のほっぺをムギュムギュするのやめ、やめろっつってんだろこの暴走アイドルぅぅぅぅ!!

 

 

* * * *

 

 

半年分の小顔マッサージをするかの如く延々とほっぺをこねくり回されること少し。

 

 

「はいおわり、私も髪流すから先入ってなさい」

 

「…いや、私もう疲れたから上がりたいんですけど」

 

 

これでもかと全身綺麗になりましたから、頭の先から爪先まで余すことなくピッカピカですから。早く私を解放してください。さっきまでメンタル崩壊三秒前とかだったんですよ、病人(?)はここいらでさっさと

 

 

「ダーメ。すごいストレス抱え込んでたでしょ、なのに何のケアもしてないんだから。髪が少し傷んでるわ、ちょっとでいいからお湯に浸かりなさい」

 

 

…はーい。なんでしょうね、段々とこの人の私に対する命令権が効力を増してきている気がします。そろそろ手を打たないと肥大化する既得権益にてがつけられなく…ふぁぁぁ…。

 

 

「…気持ちいいー」

 

 

湯船最高。ひっさしぶりに浸かるお湯は格別ですね。え? さっきと言ってることが違う? 細かいこと言わないでくださいよ、ホカホカタプタプの湯船の前ではそんな些末ごと、児戯にすら劣りますよ。

 

 

「ふふふ。大変仲がよろしいのですね。少し妬いてしまいますわ」

 

 

…いや、仲がいいというか、やりたい放題されたい放題というか。私の自由意志が行方不明というか。

 

 

「…見てたなら止めてくださいよ、ラクス様」

 

 

ていうか何一人で先にちゃっかり湯船満喫してんですか。私がミーアさんにあれやこれやと好き勝手されてる時に、お団子巻き巻きみたいな頭で悠々と湯船でプカプカしてただけですからねこの人。

 

 

「必要なことですから。止める必要がありませんわ」

 

「私がお風呂でお人形にされることが、ですか…?」

 

 

ほっぺを挟みながらジト目気味にラクス様のお美しいご尊顔を睨みつける。いやまあ似たような顔の人がさっきまで私の髪とかほっぺとか弄り回してたけども。

 

こっちの苦労も考えてくださいよ、こうしている私は今も絶賛経過観察中の精神患者だって忘れてません? …廃人or自殺という最悪のバッドエンドから救い出してくれたのもこの人だけどもさ。

 

 

「悲しみと苦しみ以外の感情を徐々に感じていくことが、です。拒絶と苦しみで満たされていた貴方の心に、少しずつこうして暖かさを注ぐこと。…恐らく、貴方なくして私達は真の未来に辿り着くことは出来ませんから」

 

 

…なるほど。これまでやたらめったら悲劇のヒロインムーブにかまけてボロンボロンのけちょんけちょんになった私の心のケアということですか。徐々に、という言葉の限度は些か気になる所ですがね、徐々にってとこに。

 

キス⇨ハートスナイプ⇨キャンバーグ⇨今ここ。…徐々にってとこに。

 

しかし…真の未来、か。言い得て妙、ですかね。今の私にとっては原作通りすら九割バッドエンドみたいなもの、まあ今更それを目指すつもりもありません。

 

たとえ困難でも、私は違う未来が欲しい。シンも、お姉ちゃんも…そしてレイも、みんな助けたい。描いたつもりで丸投げて放り捨てて、今こうして都合のいい改変をしようとしてることくらい分かってる。

 

大勢見捨てて、切り捨てて、殺して、背負わせて、押し付けて。それなのに大事なものだけを掬い取ろうとするこの身勝手のツケ、それくらいは自分で払う。

 

私が最後の引き金を引く。物語のトゥルーエンドとやらの為には、どうしても私がそれをやらなきゃいけないから。

 

 

「議長を止めるだけではいけません。貴方と、貴方のご友人と、そしてご家族。先ほどのまでの貴方と同じように、今彼らもまた、深い悲しみの渦中にいらっしゃることでしょう」

 

 

そう、でしょうね。お姉ちゃんは狂気に、シンはそんなお姉ちゃんの一番近くに、レイはあらゆるものを振り払い何かを求めて。上手く言えないけど、多分こんな感じ。

 

みんな苦しんでる、みんな戦ってる。身も心もボロボロになりながらも、それでも必死にもがいて生きている。

 

 

「怒り、悲しみ、苦しみ…それらが作る暗闇に囚われてしまっている彼らの心を照らすことが出来るのは、この世界に一人だけ。残された僅かな猶予で、でき得る限り貴方には本来の貴方を取り戻して頂きます」

 

 

残された猶予って…。もう数日とありませんよ、何なら明日くらいに議長が世界中にレッツ運命計画ーってやると思います。いくらなんでもそれは無理すぎRTAな、

 

 

「わぷっ!?」

 

 

うぇ、ぺっ!? 水が鼻と口に入った、ちょ、何すんですか。

 

 

「ですから、はい、このように。ふふっ」

 

 

その形のいい水鉄砲が私の精神にプラスな要因をもたらすことを三十文字以内で説明してくださいぃぃっ。

 

ん……。そういえばこれ何か知ってるような…あ、あれか。

 

 

「…"まず決める、そしてやり通す。それが何かを為すための唯一の道"、でしたか?」

 

「…………」

 

 

これ、初めてアークエンジェルがオーブとザフトの戦争に割って入った後のやつだ。これでよかったのかと悩むカガリ様の背中を、この人はそうやって押したんだっけ。

 

まず決める、そしてやり通す…か。この場合、私はみんなを助けて未来に辿り着くってことを決めて、それをやり通すってことなのかな。何という精神論、木の葉隠れのゲジ眉ビーストもここまでじゃないですよ、きっと。会ったことないから知らんけど。

 

 

「…やはり、ご存知でしたのね」

 

 

ええ、まあ。それなりにおおっとなったシーン…な気がするので。もう遠い昔のような気がしますが。

 

 

「私は決めましたわ。もう逃げない、と。ですがその道を行くには、やはり貴方の存在が必要です。ですから」

 

「ぶわぁっ」

 

 

なんかシリアスぶってるけれど、今あなたがしてんのはニッコニコで私の顔に水鉄砲ピュンピュンしてるだけだかんな、世界平和の第一歩がお風呂で水鉄砲とかショボすぎる。てかいい加減にしろよ撃ち返すぞ歌姫コラ。

 

 

「えいっ」

 

「むぎゃっ」

 

 

なんか反対側からも砲撃が来た。って貴様もかミーア・キャンベルぅぅぅっ!!

 

 

「ちょっ、ぶぇ、ミーアさんまで、な、むびゃっ」

 

「んー…何か楽しそうだったから?」

 

 

ふざけんなこのぱちもんアイドル。てか連射速度すげーなその水鉄砲、フルオートマシンガンみたいに弾丸飛んでくるんだけど、乱れ撃つぜ!ってくらい飛んでくんだけど、手先どうなってんのよこの人。アイドルの前は大道芸人でもやってたんかよ。

 

……っていうかっ!!

 

 

「い、つ、ま、で、やってるんですかっ! 顔が水浸しじゃじゃないですかっ!!」

 

「いやここそういう場所でしょ? お風呂なんだから」

 

 

あ、たしかにぃっていーーやそうじゃなくてっ!! なにしれっとツッコミ入れてんだこんにゃろう、そこじゃないんだよ今は。

 

これ以上の無差別砲撃は看過せぬと、私の両手はそれぞれの砲台(指鉄砲)をグワシと握り潰す。ふん、あなた方とは違って私はこれでも軍人なのだ、握力が違うってんだ舐めんなこら。民間人とは違うんだよ、民間人とはっ。

 

 

「まあっ。メイリンさんの手、小さくて可愛いですわね」

 

 

ねぇ、なにさらっと抜け出してんの歌姫様。そしてなにニギニギしてんですか。あなたの手の方が白魚すら裸足で逃げ出すレベルでめさめさ綺麗じゃないですか。私のようなパンピーなんて話にならんでしょうに。

 

 

「あらほんと。小さいのねー、それにフニフニしてる。癖になりそうこの触り心地」

 

 

癖になんな、するな、そして離せ。てかあなたは何回も触ったろうがさっき。今更再確認してんじゃねーわ。

 

てか離して、はーーなーーしーーてーーっ。もうやだ私出る。この二人に付き合ってたら精神が幾らあっても足りないんだと言うことが分かった。出るかんな、もうマジで出るかんな、だから離せっつってんだろラクシーズ。

 

 

「ほっぺも柔らかくて…。はぁ…メイリンさん、今日は是非私の部屋でお泊まりを」

 

「い、や、で、すっ!」

 

 

ほっぺツンツンしてくんな、抱きしめて頬ずりしてくんな。いくらラクス様でもそろそろキれるぞこら。ただのメイリン・ホークだと思って甘く見るなよ、こちとら庶民育ちで上流階級に対する礼儀なんて鐚一文持ち合わせてねーからな。

 

 

「あ、ズルいっ。この子は私が抱いて寝ますから、ラクス様はキラさん?と一緒にいればいいじゃないですか」

 

「いえ、ミーアさんは先ほどメイリンさんの髪を洗ってらしたではありませんか。次は私ですっ」

 

 

ふ、ざ、け、ん、なっ。何一つ了承してねーわ、私挟んでおんなじ顔で喧嘩すんな、おんなじ声で私の意思を無視するな。なんだ抱いて寝るって、私は枕じゃないわ、そして次もクソもあるか、強いて言うなら次こそは私の意思を尊重しろや貴様ら。天上天下ゴーイングマイウェイも大概にせんかい。

 

 

「私の番ですっ!」

 

「いーえっ!! 私が面倒見ますっ!!」

 

 

……ああもうっ!! だからっー!!

 

 

「…人の話を聞けーーーーっ!!!」

 

 

決めた、この戦争終わったら二度とアークエンジェルにもエターナルにも乗らない。誰に何を言われても、食堂で毎日特製生クリーム乗せ焼プリンをただで食べていいって言われても、ぜっっっっったいに乗ってやらない。

 

ん?…そういえば隣って男湯だよね? ……これ、アスランさんとキラさんに丸聞こえなのでは?

 

…ええええ…もういやぁ……。

 

 

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