ガバ転生メイリンによる「こずみっくいら」再現物語   作:めんりん

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第四十七話 : 衝突

 

『で、どうすんだよ隊長』

 

 

呆れ半分に一応は体裁を取り繕っておこうと言った声音のディアッカがモニター越しの隊長…まあイザークに尋ねる。オーブ側のラクス・クラインによるレクイエム破壊宣言よりおよそ十数分。その一時中継点付近の宙域じゃ、既にド派手なドンぱちが始まってやがる。

 

ミネルバが制圧したはずのレクイエムを再使用してる時点でもう俺は今のザフトに味方する気はないとか、多分自分には声をかけてこなかったエターナルやアークエンジェル陣営に半ギレのイザークがいたりと色々あるが。

 

そんなことはどうだっていい。いや、光学映像で映し出されたある機体を見てどうでも良くなった。今も中継ステーションを守るザフトの大群相手に大立ち回りをしてるフリーダムの相方。

 

あの機体…俺の記憶違いじゃなきゃ…()()()()()()、と呼んでいいはずだ。そして、そのパイロットは……っ。

 

 

『一応出てって瞬殺されてくる?』

 

『そんな根性なら最初から出るな馬鹿者がっ』

 

 

そうなるわな。戦艦並みの火力持った化け物がMSを遥かに超える速度で飛び回ってんだ、ザクだのグフだのが何機居たって勝てねーよあんなの。接敵から三秒で手足もがれて漂流物にジョブチェンジだ。

 

 

「…イザーク、ハッチ開けろ。俺が出る」

 

 

確かめなきゃいけねんだ。もし本当にあいつなら、あいつが本当に生きていてくれたなら。話さなきゃいけないことがある、何より……聞かなきゃいけないことがあるんだ、どうしても。

 

 

『……っ…了解、俺とディアッカもすぐに出ます。出来れば貴方には先行してあのバカと接触していただきたい、迂闊に近づけばこちらが灰にされかねん』

 

「了解だ」

 

 

ああ、言われなくてもそのつもりだ。

 

 

『ハッチ解放、進路クリア。デスティニー発進、どうぞ』

 

『ハイネ・ヴェステンフルス、デスティニー。出るぜっ!!』

 

 

聞き慣れないオペレーターの声に従って、俺は機体の操縦桿を握り直し、ペダルを思いっきり踏み込む。凄まじいGに体を押さえつけられながらも、俺の頭にあるのはただ一つだけだった。

 

本当に、本当にお前なんだよな? 生きててくれたんだよな、()()()()………。なら、だったらっ。

 

俺は…俺はっ!!

 

 

* * * *

 

 

エターナルより、彼女の声に従って出撃することおよそ二十分弱。中継ステーションを守る多数のモビルスーツとナスカ級を始めとする戦艦数隻を戦闘不能に追いやりながら俺とキラは着実にステーションへ近づきつつあった。

 

が、

 

 

「ちぃっ!?」

 

 

飛来する数十のミサイルを前に、俺は思わず舌を打った。今ジャスティスに取り付けられている戦術強襲機"ミーティア"は、確かに火力と推力は凄まじいの一言だ。

 

が、如何せんその大きさ故に取り回しに難があるのが否めない。俺の力量不足かもしれないが、近距離迎撃に際しては少し窮屈さを感じずにはいられない。だからといってこんなところでミーティアを脱ぎ捨てるわけにもいかず、仕方なくビームとイーゲルシュテインを乱射すべく引き金を引こうとした瞬間。

 

 

「っ!?」

 

 

突如として放たれた俺のものではないビームライフルの光弾がミサイル群を纏めて射抜き爆散させる。何事かとその方角に振り向けば、同じく俺に目線と銃口を向ける機体が一機。

 

オレンジのボディカラーに一対の赤翼。鋭角なV字アンテナの下のカメラアイを通じて、パイロットの険しい目線が伝わってくるようだった。

 

 

『こちら、ザフト軍特務隊"FAITH"所属、ハイネ・ヴェステンフルス。……アスラン・ザラ……なのか?』

 

 

やはり、お前か。

 

 

『ああ、そうだ。……久しぶりだな、ハイネ』

 

 

こうも早くに出会えるとは…幸運なのかどうか、果たして。モニターに映し出された彼の表情は、驚き、戸惑い、そして何より耐え難い何かに必死に耐えるような、そんな痛々しくて苦しそうなそれだった。

 

 

『…本当に、本当にっ……お前、なんだよなっ!?』

 

 

彼もまた、苦しかったんだろう。軍人だから、命令だから。そう言いながらも感情を押し殺して振るった刃で俺たちを…彼女を手にかけてしまったのだと、悔やみ続けてきたのかも知れない。

 

その上で、彼なりにできることをと一人孤独に耐えて戦い続けてきたのかもしれない。

 

なら、

 

 

「俺だけじゃないさ」

 

 

彼もまた、彼女が救いたいと、会いたいと願う一人に違いない。そしてそれは彼もまた。

 

 

『…っ!?』

 

「エターナルに行け、ハイネ。……会ってこい、彼女に。彼女も…メイリンもきっと…それを望んでいる」

 

 

それでお前の苦しみは終わる、抱えなくてもいい罪を下ろすことができる。お前は、俺たちを殺してなんかいない。

 

 

彼女を…メイリンを殺してなんか、ない。

 

 

『…お、俺はっ』

 

「ハイネ。俺たちがこうして生きていられたのは、お前のおかげだ。だから…会ってあげて欲しい。お前がそうやって苦しんでいるように、彼女もまた苦しんでいる」

 

 

それでも、彼女は必死に前を向こうと歩みを踏み出している。戦おうと、向き合おうと足掻いている。傷ついた心で、一歩を踏み出そうともがいている。

 

 

『…生きてるのか、本当に……あの子が』

 

「生きてる。エターナルで、今も戦ってる」

 

 

だから、会ってあげて欲しい。お前の迷いが、苦しみが、俺たちの命を繋いでくれた。なのに互いにそれを知らずに苦しんだままなんて、あんまりじゃないか。

 

 

『……っ…すまねぇ、後で必ず』

 

「……ああ、期待している」

 

 

その言葉を最後に、デスティニーは背の両翼から黄昏に輝く光を放出しながら凄まじい速度で俺から離れていく。行き先は教えた、彼女が生きていることも伝えられた。あとは…

 

 

『貴様ぁぁっ!! またこんなところにおめおめとっ!!』

 

 

なんて少しナイーブな感傷に浸ろうとした俺の頭を、聞き慣れた甲高い怒鳴り声が突き抜ける。見れば白いグフと黒いザクが一機、それぞれ俺の周りを包囲…してないなこれは。一応はグフの方が右手のガトリングを向けてきてはいるし、ご丁寧にロックオンまでしているが…大丈夫だろう。なにせ、

 

 

「イザーク? それにそっちは…ディアッカか?」

 

『おう、久しぶりアスラン。やっぱ生きてるよな、そりゃ』

 

 

悪かったな、無駄にしぶとくて。

 

 

「お前たち、ここで何を」

 

『何って、アレ落とすんだろ? それの手伝いに来たんだって。な、イザーク』

 

『うるさいっ! 俺に命令するなっ!!』

 

『してねーから』

 

 

相変わらず耳をぶち抜く声をしている。…変わらないな、こいつらは。いや変わったのか。俺がオーブでぼんやりしている間にも、二人は軍人としての責務を果たし続けてきたのだから。その結果がこのやり取りというのは……まあ、そんなこともあるさ、多分な。

 

 

『いいから、さっさとやることやっちまおうぜイザーク』

 

「そうだな、いくぞイザーク」

 

『よしわかったそこに並べ貴様ら。艦砲射撃で消し炭にしてやる』

 

 

さて、いつまでもキラだけに任せるわけにもいかない、早急にアレを落とすとしよう。エターナルは……大丈夫だろう、今考え得る限りでは最高の援軍が向かったはずだ。

 

俺は、俺の役割を…約束を果たす。

 

 

 

 

* * * *

 

 

『…そうかよ…っ…あんたも裏切るのかよっ!!』

 

 

己が悲願、その成就をあと一歩のところで妨げられた少年が憤激の限りで叫んだ。湧き上がる怒りに、決して少なくはない悲しみをのせて。

 

少年の駆る機体…デスティニーに対しビームライフルを発砲したのは、同じく一対の巨大な赤翼を背負う機体、デスティニー。ただし、赤と青というどこかフォースインパルス…かつては少年が操った機体であり、今は心を喪失しつつある少年の恋人が駆るそれに似通ったカラーリングではなく。

 

パイロットである彼のパーソナルカラーともいえる派手派手しい橙色を基調とした、もう一機のデスティニー。

 

 

『答えろよ…っ…ハイネっ!!』

 

『………っ……』

 

 

少年の激情に、彼はただ無言を持って応えた。いや、かける言葉が咄嗟に見つからなかったのだ。守ると誓い、断腸の思いで別れを告げた少年の血を吐くような叫びに、ただ言葉を返せなかった。

 

まだ確かめられたわけではない。だが間違いなくそうであるという一つの真実を聞いた自分とは違う。目の前の少年は、今この時もずっと苦しんでいるのだ。もがいてもがいて、それでもなお何も得られず、守れず、失った光を追い求めて足掻き苦しんでいる。

 

伝えるのは簡単だ。ただ一言でいい、先程彼自身が聞いた言葉を少年にかけてやればそれでいい。困惑はするだろう、明かされた真実に戸惑い混乱するかもしれない。

 

だが、果たして本当にそれでいいのか。今ここで自分がそれを口にして、目の前の少年を救うことが出来るのだろうか。全てを失い、それでも残された何かに縋り付くように戦う少年を、本当の意味で救い出すことが出来るのだろうか。

 

答えは…おそらく否だ。もはやこの少年を、いや彼が知る少年たちを本当の意味で苦しみの連鎖から救い出すには、言葉だけでは到底足りない、言葉だけでは止められない。

 

彼らを救えるのは、かつて悪意に踊らされた彼自身が撃ち、それでも生きていてくれたという一人の少女を措いて他にない。

 

そして、彼女と彼らを引き合わすことも…おそらくは彼の役目ではない。もっとふさわしいも者達がいる、それを為すに相応しい者達がいる。

 

故に、彼がいますべき選択は…ただ一つ。

 

 

『…シン』

 

 

武器を取り、この桜色の戦艦を守ることのみ。今ここでこの艦が撃たれれば、今少年にこの艦を撃たせてしまえば、今度こそ取り返しのつかない悲劇を生み出してしまう。

 

ボロボロになりながらもここまでがむしゃらに突き進んできた、突き進むしかなかった少年の心に、背負いきれない悲しみと絶望を背負わせてしまう。

 

 

そんなことを、許すわけにはいかない。

 

 

『…やらせねぇ…っ…お前に、お前にだけは……っ!』

 

 

かつて彼自身が味わったあの絶望を、無力を、悲しみを、この少年に背負わせるわけにはいかない。二度と彼らに悲劇の引き金を引かせるわけにはいかない。

 

もう二度と、()()を失うわけにはいかない。

 

 

『……邪魔を…スるな…っ…どけよ……っ…そこを……っ…どケぇぇぇぇぇぇぇ…っ! ハイネぇぇぇぇぇっ!!』

 

『やらせねぇ…やらせねぇぞっ!! シンっ!!!』

 

 

狂乱と憤怒に身を委ねるデスティニーと、確かな覚悟を身に宿すデスティニーの巨剣がぶつかり合う。守りたいものは同じ、失ってしまったものも同じ。それでもなお、ぶつかり合うしかないもの達の叫び。

 

運命と運命、悲劇と悲劇。かつて未来という誰に定められたでもない結末に取り憑かれていた少女ですら知らぬ、名も無き小さく、そして何より哀しくもはげしい戦いが、今始まった。

 

 

 

 

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