ガバ転生メイリンによる「こずみっくいら」再現物語   作:めんりん

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今のうちにご都合戦力推移なるものをば。原作と比較すれば、ということでお願いします。

・キラ⇨ほぼ変化なし(元がチート、どんとまいんど)
・ラクス⇨以下同文
・アスラン⇨上昇(最たる原因はメイリン)
・ハイネ⇨不明、原作では既に故人。

・シン⇨著しく上昇(精神デバフを諸々でブラックバフに変換&本来の実力を発揮可)

・レイ⇨上昇(理由は色々)

・ルナマリア⇨著しく上昇(精神が極めて不安定&内、外からの制御が非常に困難)


第四十八話 : 揺るがぬ覚悟

ステーションI防衛の為に航行するミネルバを発ち機体を動かすこと二十分と少し、俺は…いや俺たちは無事に宇宙要塞メサイアに到着した。フルスピードで飛べばもう少し早く来ることも出来たと思うが、些か以上の不安…と言うより懸念を考慮し、インパルスの手をレジェンドで引きながら飛翔しここまでやってきたための結果だ。

 

戦闘以外で推力の調整にここまで神経を使ったのはこれが最初で、そしておそらくは最後だろう。

 

光を喪失したかのように空虚な瞳をしたルナマリアの手を出来る限りで優しく引きながら、俺たちが辿り着いたのはメサイア内部、その中枢である司令室。

 

……こう言うことは得意ではないのだが、まさか一人残して俺だけほっつき歩くわけにもいかん。メサイアに到着したことはミネルバを通してあいつに…シンに伝わるはずだ。こんな状態の恋人と離ればなれになり不安だろうが、今はこれくらいしかしてやれることがない。

 

まあ…そんなことを言う資格が、果たして今の俺にあるかどうか、と言った話もあるのだが。

 

 

「やあレイ、それに…ルナマリア。よく来たね」

 

 

エレベーターと重なる扉を潜った先には、数名のオペレーターが忙しなくディスプレイと格闘しながらインカム越しに何かを話していた。おそらくは今既に始まっている戦いに関してだろうが、さして興味はない。

 

どのみち奴らの攻勢をステーションIで止められるとは考えていない。そんなことで止められるのであれば苦労はないし、そもそも今この時まで俺たちが討ち損じることもないだろう。いかにシンが本気で暴れようと、まず間違いなく止められない。

 

ステーションの代わりは既に用意してある、ようはここに来るまでにどれだけ奴らを消耗させられるか、という話だが…そればかりは流石にわからん、シンの頑張り次第、と言ったところか。

 

 

「はっ。レイ・ザ・バレル及びルナマリア・ホーク、出頭致しました」

 

「……………」

 

 

敬礼する俺と、無言のままただ立ち尽くすルナマリア。本来なら軍法会議、とまではいかないが立派な規律違反だ。評議会の、それもトップである議長に敬礼はおろか挨拶一つ出来ないのは、軍人としては目も当てられない。

 

…だが、

 

 

「…議長、彼女は」

 

「分かっている。咎めるつもりはない、寧ろよく連れてきてくれた、本当に」

 

 

今の彼女に、軍人としての責務を問うのはあまりに酷だ。それは議長も…ギルも分かってくれている。いや、そうなるように導いた、と言ったほうが正しいだろう。

 

 

「…久しぶりだね、ルナマリア。ジブラルタルの時以来かな?」

 

 

立ち上がり彼女の正面にまで歩み寄ったギルが、頬に触れながらそう声をかける。そこでようやく、これまで無言無心でいた彼女が僅かな反応を見せる。

 

 

「………っ…?」

 

「…色々、大変だったろう。報告は聞いているよ、よく頑張ったね、ルナマリア」

 

 

光すら映さない暗い瞳が、ギルの優しげな薄琥珀色の瞳を見つめる。憂うような、労うようなその瞳に、僅かだか彼女が安堵を感じているように思えるのは、きっと間違いではないのだろう。

 

……それがあまりに甘く残酷な毒であるとも知らずに。

 

 

「……がん……ば…………?」

 

「ああ、よく頑張ったとも。君のおかげで我々はロゴスの首魁であるロード・ジブリールを討ち果たすことが出来た。君は立派に…彼女の仇を撃ったのだよ。彼らの醜い欲望が産んだ戦火、それに巻き込まれてしまった…君の妹の」

 

 

…………………っ…。

 

 

「…メ…い………り…」

 

「本当に、よくやってくれた。期待した通り…いや、それ以上だ」

 

 

…そうだな。もし本当に言葉通りの意味であったのなら。ただ彼女の奮闘を労い讃えるだけであるのなら、まだ救いがあったのかもしれない。

 

……くだらん、今更何を言っている。それがまやかしだと言うことは、俺が一番よくわかっている。

 

彼女の役割は、まだ終わっていない。いや、これからもずっと続いていくのだろう、ただそこに存在し、守られるために。そのための存在に、その為だけの()()に、余計な心など必要ない。

 

 

「レイ、積もる話もあるが…続きは他でしよう。ああ、ルナマリアも連れてきてくれ。彼女にも大事な話がある」

 

「…はっ」

 

 

それが、この人の考えだ。そしてそれを理解しつつも賛同しているのが俺と言う人間…いや、俺もまた人形か。少なくとも友と呼ぶべき彼らの心を弄んでいるような奴に、今更友人を名乗る資格などあるはずがない。

 

だが、それがどうした。そんな瑣末な躊躇いは、もう捨てた。あの日、ジブラルタルで千切り捨てた、たった一つの約束とともに。

 

彼女はもういない、俺に微かな夢と、胸に抱いていたものとは違った未来を見せようとしてくれた彼女は。

 

だから捨てたんだ、やめたんだ。夢はもう終わりだと、微睡から目を覚ますのだと。たとえいま友たちが狂い、悲しみ、喪失の中にいようとも。それでも俺は、もう止まらない、止まれない。

 

新しき世界を、俺たちのような存在が生み出されない平和な世界を。……二度とあんなくだらない悲劇など起きない暖かな未来を。

 

思い出せ、お前の使命を。思い出せ、お前の役割を。存在そのものが平和の否定であるお前の役割はなんだ? 

 

友の幸せを願うことか? 罪もなく葬られた彼女を憂うことか? 

 

違う。俺の役割は、ただギルの願いを成就させること。デスティニー・プランにより人類を統治し、争いの生まれない世界を作ること。そして…俺とともに、()の存在を世界から抹消すること。

 

忘れるなよ、レイ・ザ・バレル。お前が選んだこの道を。他の道を中途半端に歩こうとした結果、何が起きた、何が生まれた。悲劇と絶望以外の何をお前は生み出せた。

 

 

「…分かっているさ、そんなことは」

 

 

呆然とするルナマリアの手を引きながら呟いたその言葉は、誰に聞かれるでもなく虚空へと消えていく。発した俺自身さえ、なぜそんな呟きが漏れ出たのかもわからずに。

 

 

「………レ…い………」

 

 

……分かっている。俺はもう止まれない、止まるわけにはいかない。この連綿と続く悲劇の連鎖を……断ち切るためにも。案じることは許されん、共にいることも許されん。

 

ただ平和な世界を、彼らがもうこれ以上、何を失うことのない未来を。それが俺の選ぶ道であり、せめてもの贖罪とさせてもらう。今更謝るつもりはない、謝る資格もない。

 

だから、命を以って償おう。それがこの誰に望まれたものでもない命の、俺の命の使い道だ。

 

 

* * * *

 

 

『堕ちろぉぉぉぉっ!!!』

 

 

怒号のままに振り下ろされる巨剣を、同じ形、同じ名称の巨剣が受け止める。伝記によれば、円卓における裏切りの騎士がその手に振るったとされる剣と同じ銘を与えられた巨剣同士がぶつかり合い、鍔迫り合い、嵐のような電撃を宇宙に撒き散らす。

 

デスティニーとデスティニー。名も同じなら兵装も同じ、故にその機体性能もまた然り。にもかかわらず、戦いの均衡が保たれたのはほんの数瞬であった。

 

 

『デヤァァァァァァァァっ!!』

 

『ぐ…っくそっ!!?』

 

 

薄紫の光を噴出させた少年のデスティニーが、黄昏色の光を放つデスティニーを力の限りで押し返し、吹き飛ばす。凄まじい衝撃と無理やり付与されたGに耐えながらも彼が機体の体勢を整えたのも束の間、生み出した残像を置き去りにするかの如き出鱈目な速度で肉迫して来た少年の振るう凶刃が迫る。

 

これほどかと、彼は機体の操縦桿を握り直しながら奥歯を噛み締める。同じ機体、同じ装備、機体を受領した時期もそれによる戦闘経験にすら差は殆どないに等しいはず。

 

にも拘わらず、こと機体戦闘力において少年は彼を大きく上回っていた。操縦テクニック、状況判断、反射速度、武装の使い方その他全て戦闘における悉く、少年のそれは彼を置き去りにして余りある。今彼がこの少年相手に何とか食い下がるような戦いを続けられているのは、その凌駕されている全てを長年の経験と戦士の直感とも言える何かで誤魔化しているに他ならない。

 

歯を食いしばり、負けじと彼も背の赤翼より光を放ち、残像を生みながら少年へと突貫する。だが、

 

 

『邪魔……っ、ダァァァァっ!!』

 

 

左肩口を狙った絶速と逆袈裟斬りは、少年の力任せに叩き付けられた刃に叩き落とされ、続く大振りかつ高速な回転切りで強引に機体ごと弾き飛ばされる。左手のビームシールドがなければ、今の一閃で胴体を真っ二つにされていたかもしれない。

 

これほどか、ここまでになるか。再度後方へと吹き飛ばされる機体の中で、彼は胸の内で少年に問いかける。想い人を守る、ただそれだけの思いで戦う少年の心を蝕む深い悲しみと絶望。それが純粋な思いと覚悟を黒く染め、憎悪となりて少年を駆り立てる。

 

守る、故に殺す、蹴散らす、叩き潰す。あの時、別れ際に彼がかけた言葉をこれ以上ない最悪な形で今も貫かんとする少年の姿。

 

全て己のせいだと、彼は叶わぬ後悔を胸に抱く。あの時、悪意に満ちた命令ではなく、ただ己の心に従っていたならば。彼らから光を奪うようなことをしていなければ。少年がここまで狂うことはなかったのかもしれない、少年の想い人が心に深すぎる傷を負うことはなかったのかもしれない。

 

ここにはいないもう一人の少年に、あんなにも辛く何かを押し殺すような顔をさせることはなかったのかもしれない。

 

 

『終わりだ…っ…消えろ…消えろ……っ…! …このっ!!』

 

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 

だが、たとえそうだとしても。いや、そうであるならば。己の弱さが、選択が、彼らにこうも悲劇を押し付けてしまったならば。そこから救い出すのもまた責務…いや、誓い。

 

思い出せ、お前はジブラルタルで何を胸に誓ったのだと、彼は己に問いかける。何を聞かされ、何を思い、何のためにここまでやって来た。あの時知らされた真実を前に、それでもと胸の内で燃えたぎる激情を押し留め、辛酸を舐め、傷つく彼らの元を離れてここまでやって来た。

 

何のためだ。お前は、何のためにここにいる。ただこうして少年に打ち負かされるためにここに来たのか? ただ無力と後悔を嘆くためにここまでやってきたのか?

 

 

『…んなわけ、ねぇだろうが……っ』

 

 

そう、そんなものは否、断じて、決して、絶対に、絶対に否。

 

 

『…やらせねぇ、撃たれねぇ……っ!』

 

 

実力で劣っていることは、もう十分に痛感した。今の己の実力では、狂乱のままに機体を駆る少年を倒すことは愚か、傷を与えることさえも難しい。

 

それでも、だとしても。己の役割は変わらない、胸に誓った覚悟は変わらない。

 

 

『お前に、お前らにっ!! もう何一つ、失わせるわけにはいかねぇんだよっ!!』

 

 

守ると決めた、救い出すと決めた。だから、どうか力を貸してくれと、彼は己の機体に強く願う。今の己では、少年ほど上手くお前を扱えない、お前の力を使いこなすことはできない。

 

けれど、それでも。今この瞬間を、戦い抜く力を。勝てなくてもいい、傷を負わせられなくてもいい。自らの役目を果たすだけの分だけでいい。だから、

 

 

『うおおおおおおおおおっ!!』

 

 

裂帛の怒号とともに、右手に握る巨剣を両手で脇に構えるようにして宇宙(そら)駆ける。彼の思いに機体が応えるかのように、これまで以上の勢いで背の赤翼からは鮮烈なまでの黄昏色の光が暗き宇宙を染め上げる。

 

彼が駆ける先から、同じく背から光を放ちながら突貫してくる少年の機体。互いに速度は絶速、交錯の時は刹那。振り下ろされる凶刃と、振り上げられる覚悟の刃。

 

凄まじい抵抗とともに刃がせめぎ合い、光と光の衝突が眩いまでの電撃を生む、

 

かと思われた。

 

 

『っ!?』

 

 

衝突の瞬間、彼は巨剣を手放し左腕のビームシールドで少年の振り下ろす刃を受け止める。圧倒的な質量を誇る対艦刀を受け止める左腕関節が悲鳴を上げるも、彼は渾身の力で操縦桿を押し上げ、機体の背より奔流の如く光を放出し続ける。

 

また、自ら武器を手放すという行為に理解が追い付かず、ここまで熾烈なまでの戦いを続けてきた少年の思考がほんの数瞬、停止した。

 

 

刹那、狙いすましたかのように彼は無手となった機体の右手で少年の持つ巨剣、その刀身を掴む。

 

 

『…っ!? しまっ』

 

 

だが、少年が彼の狙いに気付いて刃を戻そうとするよりもほんの僅かに早く。眩い光が輝く直後、少年の持つ巨剣が半ばから爆散し虚空へと消えていく。咄嗟に敵の腹部を蹴り付けつつバックブーストで距離を稼ぐも、今の一撃で少年は機体の最たる近接武装を失った。

 

 

『……………』

 

 

パルマフィオキーナ。デスティニーに搭載されている超至近距離ビーム兵器。掌から僅かという射程と引き換えに、凄まじい密度と出力の光を放つ、まさに奥の手。

 

それが、今し方少年の握る巨剣を半ばからへし折り爆散させたものの正体だ。

 

 

『…ハイ、ネぇぇぇぇぇぇ……っ!』

 

『………………』

 

 

力も、速度も、何もかも少年が上回っていた。その上で、少年を思う彼の意地と覚悟が為したこの必然。光を消した瞳を血走るように燃やす少年が彼を睨みつける。

 

 

『…殺す、コロス、コロしてやるっ!!』

 

 

沸き上がる殺意をおくびも隠そうとしない少年が、拾い上げた巨剣を構える()()()()へ迫ろうとした瞬間、

 

 

『…っ…ちぃっ!?』

 

 

新たに鳴り響くアラートとともに飛来する高出力ビームと数えるのが馬鹿らしいほどのミサイルの嵐。先程目の前の敵が自身に放ったものとは数も火力も何もかも桁外れなそれを、少年は全力の回避行動とライフルによる迎撃でいなす。

 

火線の先に見えるのは、二機のモビルスーツ。見覚えのない白い大型強襲機のようなものを背に装着した機体、蒼き翼と紅き刃翼を持つ、少年の因縁深きものたち。

 

 

『…フリー、ダム…っ…。…ジャスティス…っ…!……アス、ラァァァン……っ!!』

 

 

これまでで最大限に憎悪を込めた彼方から、尋常ではない速度で彼らはこちらへと迫ってくる…いや、役目を終えて帰投してきた、のか。であるなら、

 

 

『シン、残念だけどステーションが堕ちたわ。一時帰投して頂戴』

 

『ふザケるなっ!! ここで、ここまで来てーーーーーー』

 

『なら貴方一人であの二機とハイネ…デスティニーまで相手にするのっ!?』

 

 

溢れ出す激情を押し留められずに怒号を発する少年を、叱咤するような怒号が覆い潰す。

 

 

『…まだチャンスはあります。本隊と合流し戦線を立て直すために、今は戻って補給を受けなさい。ここで貴方を失うわけにはいかないわ、いいわね?』

 

『…っ…了解…』

 

 

その言葉に僅かながら思考を冷却した少年は、撃つべき者たちを一瞥すると、宇宙に薄紫の光を放ちながら母艦へと帰投していく。そして少年と行き違うかのようなタイミングでエターナルの二振りの剣が母艦へと舞い戻る。

 

 

『大丈夫か、ハイネ』

 

『まあ、何とかな。…七、八回死ぬかと思ったが。それより、』

 

『…ああ、わかっている』

 

 

先程会った時より幾分か以上に機体パイロットともに疲弊している彼の声を聞き、紅き機体…ジャスティスを駆る青年は自らの母艦へと通信を促す。

 

そこにいるであろう、己の恋人へと向けて。

 

 

* * * *

 

 

『こちら、ザフト軍特務隊"FAITH"所属、ハイネ・ヴェステンフルス。エターナル、応答願う。こちらに戦闘の意思はない』

 

 

そんな通信音声とともに、エターナルのブリッジにある中央モニター(中央にあるから暫定的にこう呼ぶことにしました)に映し出される彼の姿に、私は見えない鎖に締め付けられるような痛みを感じた。

 

戦闘がはじまってもはや何度目かもわからない驚きとともに死を覚悟した私を、私たちを救ってくれた彼。デスティニーでデスティニーを迎え撃つなんて万国ビックリな戦いを繰り広げつつも、あのシンを、本気の彼を相手して私たちを守り抜いてくれた恩人。

 

どうして彼が今ここにいるのかは分からないし、私たちを…エターナルを助けてくれたのかはもっとわからない。けれど、間違いなく彼は私たちを助けてくれた、FAITHという立場を恐らくは投げ捨ててまで。

 

 

「こちらはエターナル、ラクス・クラインです。ご助力、感謝致しますわ」

 

『その分だと、やはり貴方は本物…ということでいいみたいですね』

 

 

…そっか。彼は一度ミーアさんの護衛を務めている。であれば、今のラクス様の反応は些か以上に不自然に映るわけですね。…なんて、言ってる場合じゃないのですが。

 

 

『俺からの用件は一つです。……メイリンちゃん、いるか?』

 

 

………そう、ですよね。

 

 

「…なるほど。貴方もまた、彼女に縁のある方なのですね」

 

 

…そんなんじゃないですよ。見殺しにしようとして、最後の最後で我が身可愛さに勝手しただけです。縁なんて…そんな綺麗なものじゃ、ないですよ。

 

 

「メイリンさん、こちらに」

 

 

そう言われて、私は黙って席を立ってラクス様の隣に立つ。おそらくこれで、彼からも私の姿が確認出来たのだろう。信じられないと言ったように目を見開く彼に、私はただ静かに語りかける。

 

 

「…お久しぶり、です。ヴェステンフルスさん」

 

『……メイ……リン…ちゃん……?』

 

 

…ええ、私ですよ。

 

 

「はい、そうです。あ、幽霊とかじゃないですよ、ちゃんと足はーーー」

 

『やめてくれっ!!』

 

 

…………すみません、ふざけるタイミングじゃ、ないですよね。

 

 

『…すまない、すまない…っ! 俺はーーーーーー』

 

「生きてますよ」

 

 

ええ、生きていますとも。私も、アスランさんも。

 

 

「生きています、あなたのおかげで」

 

 

あなたが助けてくれた、とは言えません。それを言ったら、きっとあなたは自分を今よりもっともっと責めてしまう。それはダメです、生きてるという一言すら黙って、物語の筋書きなんてものを優先した私の言い訳に、あなたを巻き込むことはできません。

 

 

「あなたの迷いが、葛藤が、私たちを生かしてくれました。ありがとう、とは言えません。それはあなたの苦しさだから、辛い気持ちの上にあるものだから」

 

 

感謝はしてる、彼のあの時の涙を呑む決断と迷いが、私たちを救ってくれた。でもそこにありがとうだなんて言えない、言ってはいけない。全ては私が仕組んだ出来レース、人の心をこれでもかと弄んだ最悪の仕掛けもの。

 

 

「…でも、それでも。生きてますよ、私」

 

 

迷ってくれたから、戸惑ってくれたから。あなたを見捨てて殺そうとした私なんかのために、あなたはあんなにも迷って、叫んで、救おうとしてくれた。

 

 

『…お、おれ、は……俺は……っ』

 

「私、議長を止めたいです」

 

 

あの人に会って、遺伝子で管理なんていや、心のままに生きていたいんだバカやろーって言いたい。みんながみんなでいられる、当たり前な未来が欲しい。

 

望む人の隣でいられる未来が欲しい。

 

虫がいいのは分かってる。こんなこと言える立場も資格もないって分かってる。それでも私は、あなたに言わなきゃいけない。私には出来ないから、私一人じゃ、何も出来ないから。

 

戦う力も、生まれも、立場も、権威もない。どうしようもなく無力な私は、何かを為すにはこうするしかないから。誰かの力を借りなくちゃ、私はこの願いを実現できない。

 

 

「あの人を止めたい、みんながみんなでいられる未来を掴みたい。……みんなに、シンに、レイに……お姉ちゃんに、会いたい…っ」

 

 

みんなに会いたい。もうやめてって言ってあげたい。いっぱい謝って、話して、助けてあげたい。でも私一人じゃそれは出来ない。戦う力を持たない私じゃ、今の彼らに会うことすら叶わない、声を届けることは叶わない。

 

 

だから、

 

 

「だから、お願いします…っ! 私たちに、私にっ! 力を貸してください、」

 

 

()()()()()()()()

 

 

ずるいってわかってる。卑怯だって、わかってる。それでも私には、こうするしか出来ないから。一人で見る未来は、もうやめたから。みんながいて、みんなでいて、それでも平和であったかい未来を作るんだって決めたから。

 

あなたには、私に怒る権利がある、怒鳴って、罵倒して、張っ倒す権利がある。でも今は、今この時だけは、どうか私の我儘を聞いて欲しい。一人じゃ何もなくて、何も出来ない私の我儘に付き合って欲しい。

 

だから…っ!!

 

 

『…ははっ……ずりぃぜ、そいつは…っ』

 

 

………はい、わかってます。涙を流し、泣き笑いのような彼の目を真っ直ぐ見据える。

 

 

『…ああ、分かった。あの時の約束を覚えててくれた…。こんな俺に、まだそう言ってくれるって言うのなら』

 

 

…………………。

 

 

『ラクス様。勝手ながら、これよりそちらの指揮下に入れていただきたく思います。どうかその許可をいただきたい』

 

「もちろんです。心強い限りの申し出、どうかよろしくお願いしますわ、ハイネさん」

 

「…この嬢ちゃんの人脈が一体全体どんなものか興味がつきないが、いい拾い物だ、あてにさせてもらおう」

 

『あの砂漠の虎にそう言って頂けると、些か恐縮に過ぎますね。バルトフェルド隊長』

 

「よせよせ、昔の話だ」

 

 

…色々ありましたが、とりあえず中継ステーションは落とせたみたいです。見ればヴェステ…違う、ハイネさんが大破したドム・トルーパー隊の搬入を手伝ってくれている様子。

 

医療班の方々に緊急コールをかけつつ、私はハッチを解放する。ヒルダさん達の搬入もすぐに終わるはずです。……っ。

 

 

「行きましょう」

 

 

その声に振り向けば、ラクス様の強くも優しげな瞳と目が合った。

 

 

「戦いはまだ終わっておりません。進軍を、速やかにレクイエムを破壊し、この戦争に終止符を打ちます」

 

 

…そうです、まだこの戦いは終わってなんかない。レクイエムとメサイアを落とさなければ、議長を止めなければ終わらない。進まなきゃ、私はみんなに会うことはできない。声を届けることはできない。

 

だから進みます、たとえこの先にどんな困難が待ち受けているとしても。その先にいる、その先で苦しんでるみんなに会うために。

 

 

『行こう、メイリン。彼らに会いに』

 

 

インカム越しに聞こえてくるアスランさんの声に、私ははっきりとした口調で答える。

 

 

「はい、行きましょう。レクイエムへ」

 

 

そして、メサイアへ。シン、レイ、お姉ちゃん。待ってて、今行くから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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