夜明けの為の物語   作:蛍石/ラディッシュ

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説明回で一話消費ってマジ??????(クソザコ執筆者の言)
ぶっちゃけフィーリングで問題ねっす。


まずは知ること

 ともかく、何を作るにしても「完成品」と「材料」についてよく知ることが重要だ。

 魔導具…マジックアイテムを作る際には特に。

 材料の性質やその他諸々を把握しないで大雑把に扱えば、爆発などを初めとした事故が起こる。

 また、完成品のことをよく知らないまま作れば、とんでもないものが出来上がったり、用途と全然違うものが完成したりする。

 

 そんな不安もあって、クルークはアミティとシグを改めて博物館に集め、皆で作ろうとしている「空鏡の望遠鏡」について色々と把握する機会を設けた。

 相当騒がしくなるだろうなと思ったのか、博物館の館長は黒板付きの一室を三人に貸している。

 

「二人とも…ちょっと期間が空いたけど“空鏡の望遠鏡”の材料はちゃんと覚えてきたんだろうね?」

「もちろん! セレスタイトと、月の石の粉とあとえっと…」

「各種元素それぞれ5グラム」

「それ!」

 

 どうやら二人とも概ねしっかりと覚えてきたらしい。満足そうに頷いた紫帽子の少年ことクルークは、意地の悪い笑顔を浮かべながら皮肉げにこう言い放った。

 

「流石にこれぐらいは覚えられたようで安心したよ。ここでつまづくようじゃ目もあてられ無いからね」

「えへへ〜」

「アミティ、褒めてないからな?」

 

 咳払いの音が響く。気を取り直して、クルークは黒板の前に立った。チョークを手に、簡単な図形を描く。

 それは八つの丸と、水と火と風と土と光の記号。

 記号の方は相関図のようになっており、水と火と風と土の記号を矢印が繋ぎ、菱形を形成していた。

 その菱形の中心には、光の記号が据えられている。

 

 八つの丸の方はそれぞれ色分けされており、その大きさも個々によって違う。

 とりわけ大きな赤い丸を、それぞれの色を持つ丸が囲むような形となっている。

 そこまで描き終えて、クルークはチョークを置いた。白や赤といった粉にまみれた手をその場にあった布巾で拭いつつ、二人の方へ振り返る。

 

「よし、じゃあこの魔導具について説明だ。このボクが説明するんだ、寝たりなんかするなよシグ 」

「大丈夫、ここに来る前だけどコーヒー飲んで来た」

「………とにかく、説明しよう」

 

 クルークの指が先ず菱形の図形を示すと、自然とアミティの緑の目も、シグの赤と青の目もそちらを向く。

 

「五大元素はこの前授業でおさらいしただろう?」

「えっと、魔導の基本で…火と水と風と土と…あと…エーテル…だっけ?」

「そうだ。ま、これくらいは覚えておいて貰わないとね」

 

 此処───プリンプの魔導は、個々人によって千差万別。作成方法を学校で習い、皆思い思いの魔道を作る。

 例えば生徒が嫌がる概念を魔導として組み立てたもの。

 他には、色を基本に構成されたもの。

 さらに言えば風に焦点を当てて作られたもの。

 このように魔導・魔法の形は様々だ。中には生まれつき幾つかの魔導を支える者もいる。

 そんな魔導だが、基礎・基本となるのは“五大元素”と呼ばれる五つの属性である。

 

 火、水、風、土、エーテル。どんな魔導もこの五つの元素の内、いずれかに沿ったものだ。そこから逸脱する事は、まず有り得ないと言えるだろう。

 別世界の魔導ともなれば、違うのだろうが。

 ともかく、此処の魔道とはそういうもの。定められたルールがあり、それを遵守さえすれば、どんな魔導も努力次第では作れてしまう。

 

「五大元素は、エーテルを除いて全部自然にある物だ。これは上級生で習うところだけど、エーテルは天体を表す物質で…火や土などで説明できないものを説明する元素、そこには無いけれど確かにそこにあるもの、といったところかな。“空鏡の望遠鏡”ではこのエーテルと他の全属性が…」

「ちょ、ちょっと待ってよクルーク!! いきなり難しくなってついていけないよ!?」

「アミティ、おちつけー」

「ああ、アミティには難しすぎたかな?」

 

 いきなり複雑さを増した情報に、頭から煙を出しそうなほどパニックになるアミティ。

 クルークはともかくとして、シグですらそんな彼女とは打って変わって落ち着き払っている。

 よく補修で顔を合わせる青髪の少年が、まるでクルークの説明を理解しているかのような顔をしていて、アミティは驚きのままに叫ぶ。

 

「シグはわかるの!?」

「大体だけど、分かってる」

「そう言えばシグの使う魔法も基本はエーテルだったか…。ああ、ちなみに僕の天体魔法もエーテルが基本さ」

「ますます何なのか分かんなくなって来たよー…シグの魔法って青色ばっかりだったよね…でもクルークの天体魔法と基本は同じ…うわーん! エーテルって何!?」

 

 すっかり頭をパンクさせてしまったアミティ。両手は赤ぷよを模した帽子に上がっており、頭を抱える形になっている。顔は言わずもがな苦悶に満ちていた。

 クルークもまた頭を抱えた。どうやって説明したものか、きちんと理解してもらわなければ恐らく大惨事に発展するし、そもそも目標の魔導具が作れない。

 悩みの沈黙が部屋を支配する。何となく喋りづらい雰囲気。

 

 そんな中でも相変わらず、ぼんやりとした青い髪の少年───シグは、普通な方の手でこめかみの辺りをかいていた。

 そんな彼だが、ふと思い至ったかのように顔を上げる。何かに気付いたような面持ちで、アミティに顔を向けて口を開く。

 

「アミティ、画用紙みたいな感じだ。何でも描けるし塗れる」

「あ、ちょっと分かったかも」

「ふむ…シグにしては良い説明じゃないか」

 

 悩みが氷解したような空気。実際、シグの比喩は間違っていない。エーテルとはそういうもの。無色透明で、火水風土では表せない物を表せる万能な系統。 

 シグの言は間違ってもいなかったので、クルークはまぁそうだなと頷く。アミティはこちらの説明の方が理解しやすかったのか、仕切りに何度か頷いていた。

 

「ま、話を戻そうか。天体にも一応属性がある。火星には“火とエーテル”みたいな感じにね。

 空鏡の望遠鏡のレンズに五大元素が必要となる理由がそれになるね。見たい星の属性と、レンズの属性を一致させる。するとレンズの方の属性が呼び水になって、より鮮明に視界と天体が繋がるのさ」

「一緒だから引き合うってこと?」

「概ねそうだね」

 

 ここまで説明して、ようやく二人は“空鏡の望遠鏡”について理解する。

 

 アミティは魔導具について記された本を開く。わからない事ばかりだったそれは、今や何とか理解できるものと化していた。

 それは紛れも無く、ここにいる二人のおかげだろうと口元を綻ばせる。あとでちゃんとお礼を言わなくちゃ、と思っていたその矢先、アミティは一つの項目に疑問を持った。 

 

「んー…? じゃあ、このセレスタイトっていうのはどうして使うんだろう? 普通のレンズを使っちゃダメなのかな?」

 

 クルークの説明であれば、レンズに元素を練り込めば良いだけの話だ。あとは月の石で、透明度を高めれば完成する筈である。どうしてわざわざセレスタイトというか、レンズでもない鉱石を使うのだろう?

 顎に手が行き、小首を傾げる。

 ただ、この疑問の氷解は、予想以上に早いものだった。

 

「セレスタイトは、天の青石って意味。空っていう意味があるから、こっちと空を繋げるものに使うのが一番…だっけ?」

「…シグ、キミ頭がいいのか悪いのかどっちなんだい?」

 

 クルークが訂正をしないということは、そういうことである。どうもシグの持ってる知識はかなりの偏りがあるらしい。学校の成績が芳しく無いのも、それなりに納得出来る実情だ。

 頭痛がするかのように頭を抱えるクルークだが、やっぱりシグはぼんやりとしたままだ。

 

 そんなこともあったが、魔導具に関してはこれで大体理解できたと言えるだろう。何度かおさらいに本を読み直すアミティだが、そこに理解できない故の悩み顔は無くなっていて、代わりに自信に満ち溢れた顔が現れていた。

 

「なるほど〜…。あたし二人と一緒なら何だかいけそうな気がしてきたかも! クルークもシグもありがとう!」

 

 アミティは満面の笑みで本を掲げる。嬉しさから来る行動だろう。

 窓から刺した陽光が、本の表紙を光らせる。色は透き通った橙色で、日が落ち始めたという事を皆に知らせてくれる。

 

 感謝の言葉への反応は人それぞれだった。腕を組んで“別に”と言った態度を取ったり、変わらずぼんやりとしたままだったり。何方にせよ、邪険に扱われる事はないのは、彼女特有の明るい雰囲気のせいかもしれない。

 

 一通り物事を終えれば、黒板を消したり本を返したりと後片付けをこなす。

 片付けが終わる頃には、すっかり夕暮れ時になっていた。清々しく、しかし何処か感傷的な夕陽を受けながら、三人の子どもは帰路に着く。

 地に伸びた真っ直ぐな影が、くるりと振り返る。

 その影はアミティのもの。彼女特有の外ハネを持った髪が判別を可能にしている。

 

「ちょっと息抜きにぷよ勝負しようよ!」

 

 アミティは微笑みながら提案した。

 ぷよ勝負とは、“ぷよ”という生物を用いて行われる勝負だ。このぷよには赤、青、黄、緑、紫の種類が存在し、更にその同種のぷよを四つ以上そろえると消滅するという現象が起こる。

 この消滅の際、不思議な力が発生する。それを用いて呪文をぶつけ合うのがぷよ勝負だ。

 もちろん、そのまま呪文をぶつける訳ではない。呪文の威力は“おじゃまぷよ

”というものに換算され、相手に降り注ぐようになっている。

 

「やろう」

 

 少女の提案に、最も早く賛成したのはシグだった。普段のぼんやりさをかけらも感じられない勢いで、彼はどこからとも無く大量のぷよを用意する。

 クルークはそんなシグの手際の良さに、呆れ混じりの反応を見せるが、彼も彼で大量のぷよを準備済みだった。

 

 そんな時だ。

 

「ぷよ勝負の時はやる気に溢れるな、シグは…」

ぷよは楽しくなれるから好───ッ!?

  

 ズキリ、と不意にシグの頭で頭痛が走る。

 よほどの激痛なのか、彼は頭を咄嗟に抑える。それどころか、姿勢を崩し、片膝で立つことを余儀なくされた。

 ぐしゃり、と空のように青い髪が紅く、鋭い左手でぐしゃぐしゃになる。頭痛は治らないまま、目眩にも似た視界の白化を少年は体験する。

 

“これなら、皆傷付かないで済むと思う。”

“貴方は…、優しい子ね。”

 

 ザリザリとした声が聞こえた気がする。砂と砂を潰し合わせているみたいな音。何を言っているのか、全くわからない。

 そもそも誰の声なのかもわからない。頭痛が更に悪化する。息も絶え絶えに荒くなってきて、意識も次第にぼんやりと薄くなり───

 

「「シグ!!」」

 

 その寸前で、一気に意識が戻る。

 声だ、二人分の声がシグを留めた。

 

「だ、大丈夫!? すごく辛そうだよ…?」

「風邪でも拗らせたんじゃないだろうね…早く家で休んでくれ、ボクにうつされたらたまったものじゃない」

 

 冷や汗が、伝う。

 ぴとり、と青色が頬に張り付く。

 

「…大丈夫、問題ない」

 

 ゆっくりと身を起こした。身体に問題はない。痛みが引けば、何もおかしなところはない。

 何度か服についた土を払い、深呼吸。

 それだけで、ほら…元どおり。

 

「本当? 無理してない?」

「うん、心配ない」

 

 覗き込むアミティに、シグはいつも通りの声で返す。

 未だ不安そうな二人だが、本人が大丈夫なら大丈夫なのだろうと判断し、結局ぷよ勝負を催す事となった。

 とは言えども、少しでもシグにおかしなところがあったら、即刻家に返すことを取り決めてからだが。

 

 空色の髪をした少年は考える。確かに聞こえたあのザリザリとした音は何だったのだろうか? あれは、彼自身初めて見た未知であった。不安はあるが、しかしそれ以上に───彼の心中を疑問が満たしていた。

 

 しかし、まぁ良いかと、彼は沸いた疑問を押し潰す。

 深く考えず、友達とぷよ勝負に精を出す。楽しければ、悩むこともない。あっという間に笑顔になった三人の子どもが、そこにはいた。

 

「いっくよー! アクセル! フ・フレイム!」

「何の! プロミネンス!!」

「…シアン、セルリアン!」

 

 日食の日が近い。街の様子も随分と様変わりする。

 普段の長閑な姿はそこになく、代わりに祭り前のような慌ただしさと、活気に満ち溢れていた。

 

 

 

 

 

 




トピック1:五大元素
全くわからねぇぷよフィバの魔導(魔法・呪文とも)関係の説明をつけたくてどうにか形にした解釈。魔導は皆自由に作ってるけど、基本の系統はあるよって感じ。じゃ無いと色々説明つかねぇ。元は言わずもがな現実世界の五大元素。

火…アミティのフレイムなどが該当。基本の一つ。シンプルだが威力が高い。日常生活において欠かせない。
水…さかな王子等の魔導が該当。基本の一つ。特殊性があるが、少々趣向を凝らす必要がある。農家や漁業、救助にとって必要不可欠。
風…リデルの魔導などが該当。天候関係もここに含まれる。基本の一つ。テクニックを要するが、変則的な運用が可能。風車回し、干し物、風向きの制御など重要な場面で重宝。
土…タルタルのアースクエイクや、ゴゴットの魔導など該当。植物関係もここに含まれる。守りに長けているが、攻め手に欠ける。農家ならば必修。

エーテル…代数みたいなもの。そこにはあるがそこには無いもの。概念・星・光・闇などといったもの。レムレス、クルーク、アコール、フェーリ、シグなどが使用する魔導が該当。定まった形・系統が存在しない。使用者次第で強くも弱くもなる。必要性も個人によってまちまち。
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