原作キャラの性格について、反転現象が起きていますのでご注意を。
うさぎって寂しいと死ぬらしいよ?
「実は父さんたち、転生者なんだぜ」
いきなり、朝にそんなことを言われて、混乱しない六歳児ってなんだろう。自分のことなのに、彼はそう思ってしまった。
「そうだ、驚いたか?」
母は何時も通り偉そうな態度で腕を組んでいた。
見事な金髪、赤い蛇のような眼。神が作りだしたような造形は、とても二児の母とは思えないなんて、ご近所で有名な奥様。
絶対に三十は超えているのに、見た目は二十歳前に見えそうで見えなさそうで、父親は犯罪者扱いされてること。
無いのである。
この父も見た目は二十歳前後に見える。四十になるのに、見た目が二十歳ってもう犯罪臭が凄いのだが。
「だからな、おまえに言っておかないといけないんだ」
「はぁ?」
「おまえ、転生者じゃないの?」
この時、高坂リクは思った。
両親の頭は絶対に膿んでいる、と。
「いやだっておまえ、六歳にしては落ち着いてるし、妙に大人っぽいし」
疑いの目を向ける高坂古城という父に、小さくため息をついた。
「三歳の頃の俺に、『頑張れ』って笑顔で谷に落とした母がいて」
「う?!」
胸を抑えて顔を背ける母、高坂リリィって名前らしいが、本来は別の名前があったのだが、女性だからと改名したらしい。
金の力は偉大だと、胸を張っていた母の姿をリクは絶対に忘れなかった。
「ギルガメッシュとかネロとか憧れなんて言わなければ」
自慢のきょにゅーを突き出して、そんなことを嘆く母に半眼を向けた。
「で、だ。おまえ、俺達の能力を受け継いでるだろ?」
苦笑する父に、再び半眼だ。
「出来るはずだって海に置き去りにした父がいて」
「あ、あれはな」
言い訳を口にしない父だったが、言葉に詰まったらしい。
「実際に、お兄様は受け継いでいたでしょう?」
リクは思う、何故にこの妹君は自分より聡明でしっかりして、四歳児らしからぬ発言が多いのか、と。
流れるような黒髪の妹まで半眼を向けてしまう。
「私は転生者ですから」
「あ、そう」
いきなりのカミングアウトに、もうどう言っていいか。
「おっかしいな、俺の親父も転生者だったぜ」
「我の母もだがな」
「だよな、てっきりおまえもかと思ったんだけど」
「ふむ、難しいものだな」
「とても難解な問題ですね」
父と母の思案顔と、困っていそうにない顔で頷く妹の深雪。そんな家族を前にして、リクは思う。
おまえらの常識で語るんじゃないとか、そんな家族だから大人になるしかなかったとか、色々と思うのでした。
高坂リクには幼馴染がいる。
一人目は織斑千冬。
「なんだ、また私に叩きのめされたいのか?」
「ええ?」
木刀を常に持った六歳児。黒髪をばっさり切った、さっぱりとした性格の六歳児。世間では、もっとやんちゃとか、女の子らしい子とかいるのに、どうしてだか女の子っぽくない千冬ちゃん。
「貴様、私に何か文句でも有るのか?」
「え、特にないけど」
「ないなら、私を見つめているその目はなんだ?」
どうしてか知らないけど、会うたびに木刀に手をかけて睨みつけてくるのですが、怒っているとか、嫌悪しているとかじゃないらしい。
「こんな軟弱そうな男に負けるなど、剣士の名折れ」
グッと拳を握る千冬に、そういえばそんなこともあったかとリクは思い出す。
最初に会ったときに、といっても半年ほど前のことですが、木刀を持って襲いかかってきたので、思わず返り討ちにしてしまった。
祖父が笑顔で教えてくれた『飛天御剣流』で、調子にのって叩き伏せてから会うたびにそんな顔でにらまれるようになって。
「まあ、いい、今日は知り合いを連れてきた」
でも会うときだけで、後は気さくないい子なのですよ、マジで。
リクは考える、これが世間でいうギャップ萌えか、と。燃えのほうがいいか、剣士だから。
「今、不遜な考えをしていなかったか?」
「してないしてない、千冬はなんで不遜って使うのさ?」
「いいだろう、『不遜な奴め!』とかカッコイイじゃないか」
笑顔で語る彼女は、とても綺麗で可愛くて、将来は美人になりそうなのですが、最初の剣士の顔をしていたら絶対に綺麗じゃなく凛々しいになりそうで怖いのがリクの今の心配です。
そして、二人目。
「なんだこいつ」
「え?」
千冬に紹介されて出会った幼馴染の最初の一言は、そんなバカにしたような言葉でした。
「束、こいつがリクだ」
「こいつが? なんかインチキしたんじゃないの? ちーちゃんに勝つなんて、ふざけるな、ミジンコ」
「・・・・・・え?」
初対面が悪態だったのを、数十年後に当人に言ったところ、泣きながら土下座するのですが、今は関係ありません。
「フン、どうせおまえみたいな愚図は両親も愚図」
「あ」
思わずだった。
リクは大人びていても、言動や思考も大人に見えていても、実際には六歳児。
両親と自分を馬鹿にされて、怒らないほど精神的に成熟してません。
思わずもう一人の祖父に教えてもらった『陸奥圓明流』を、この失礼な奴にかけてしまっても仕方がないことでした。
頭から地面に叩き落とされた束の姿に、さすがの千冬も蒼白になって。
「り、りりりりりリクぅ!」
「あ・・・・・あ、不味い」
「確かに束は失礼なやつだ! おまえが怒るのも仕方がないけどな!」
「え、ごめん、生きてる? 生きてるよね?」
何故か蒼白になって泣きそうな顔をしている千冬。
なんでこんなことしたのか、自分でもわからないリク。
そして問題の束はというと。
「お、お前ぇぇぇ!!」
怒って飛び起きて、リクに掴みかかり。
「お」
「へ?」
「・・・・・・おおいぃぃぃ!!!」
十メートルほど投げ飛ばされました。
この日、リクに二人目の幼馴染ができました。
そして彼の受難の日々の原因が始まったのでした。
小学一年生。
「おまえを倒す!」
「あ、そう」
毎日のように挑んでは、陸奥の技の前に沈む束。
小学二年生。
「これなら!」
木刀を使うことを決めた束を、飛天の技が沈めていく。
小学三年生。
「こ、このぉ」
頭脳を総動員して、武器を作ることを決めた束の、全自動迎撃装置っぽいアームの数々を、母譲りの『武器が飛び出す宝物庫』で迎撃。
小学四年生。
「束さんは悟った! これなら勝てる!」
ロボット軍団を作った束の総攻撃を、父譲りのなんか色々と魔力を纏った獣たちの総攻撃で殲滅。
小学五年生。
「・・・・・てい」
なんかもう、死んだような眼で歩いて来て、ペチペチと叩いてくる束の頭をそっと撫でてやる。
一瞬、きょとんとしてふわぁって笑顔になった後。
「人に暴力はダメ」
最近になって、叔父に教えてもらった『表蓮華』って技でこらしめ。
思えば、この時の束が最も荒れていた。
「フン、お前らみたいな」
「同級生になんてこと言ってんだ」
さらに裏蓮華もしかけた。叔父曰く、『アレンジしてあるからオリジナルじゃないよ』らしい。
「この天才の視界に入るな」
「先生だぞ、お前」
担任に対しての態度に、教室の窓から放り出して。空中で従兄が編み出した嵐の魔法で叩き落とし。
「この天才のぉ!!」
「クラスメートじゃないといって、その態度は駄目だなぁ」
道行く人たちに対して偉そうな態度で説教している束に、祖父の友人という人から教わった千手観音みたいな技でお仕置き。
そんな何年かを過ごした結果、小学六年生になった束は。
「あの、篠ノ之さん?」
「みぃぃぃ?! な、ななななななにぃ?!」
声をかけられてすぐにリクか千冬の背中に隠れる。二人が傍にいない、なんてことないように常に二人から離れない。
いや、そこはリクから離れようよ、なんて多くの人が思うのですが、彼女のポジションは常に二人の背中。もっと言えば人のいない所。
長年の積み重ねにより、肉体のスペックは上がりましたが、精神的なスペックはかなり落ちました。
そう、篠ノ之・束さんは極度の人見知りになりましたとさ。
リクは思う、昔の自分が目の前にいたら教えてやろう。
人間、やり過ぎは駄目と。
「あれ?」
「まあ、あれはあれでいいか」
「よくないだろ、あれじゃなんか弱々しくて」
「いいんじゃないか」
「男らしくないって言われないか?」
リクが思わず言った言葉に、千冬は目を見開いて驚いた。
「え?」
「何を言っているんだ、束は女だぞ?」
「・・・・・・・え?」
出会ったころ、短髪よりも短かったので気づかなかったリク君。そう言えば、最近は背中に隠れると柔らかい感触があったような。
ぴったりくっついていると、ちょっとドキドキしたのは背中から襲撃されないか心配だったからではなく。
「お、女の子ぉぉぉ?!」
「ああ、女だな」
リクは数十年後に思う、この時から自分の受難が始まったのだと。
「束ちゃん」
「みぃぃぃ?!」
「篠ノ之さん?」
「ふみゅぅぅぅ!!」
「束」
「みゅわぁぁぁぁ?!」
名を呼ばれる度に悲鳴をあげて隠れる束に、多くの人がリクに目を向けた。
おい、原因、おまえだろ、何とかしろと。
「み、みんな、束さんに何かしたら、ゆ、許さないんだぞ」
背中に隠れながら涙目で言う束に、多くの人がリクに親指を立てた。
よし、よくやった。グッジョブ!!
「あ、はははは・・・・はぁ」
そしてリクは項垂れて、彼の『うさぎの飼い主』生活が始まったのでした。
暴走と妄想と、その後に来る衝撃の末に。
衝動的に書き上げました。
後悔はしてないけど、反省はしています。