ウサギの観察日記『完結』   作:サルスベリ

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 ついに立ちあがったIS学園。

 それに真っ向からぶつかる形で宣戦布告した『亡国企業』。

 あれ、世界だったかな? いや束がタバネちゃんに宣戦布告した、それとも可愛いと理性のぶつかり合い。

 まあいいか。

 とにかく、一夏が世界のために巨悪に立ち向かう話。いや待った、ちょっと待った、織斑家のヤバい奴を卒業した千冬と、織斑家のちょっとヤバい奴になりかけている一夏。

 あれ、織斑家のぶっ飛び二女様がいない?

 





転生してないのに異世界っぽい十一ページ目

 

 

 

 

 

 

 

 体中が震える。

 

 全身の筋肉が悲鳴を上げている。

 

 もう無理だと諦めかける心を、魂の奥底にある何かが張り倒す。まだできる、まだまだやれるはずだ。全身に力を込めて、重くなりつつある巨大な刀を握り締める。

 

 今がいつか、どれだけの時間が経ったか解らない。夜か昼か、そんなこともう関係ない。

 

 彼女にとって大切なのはたった一つ。

 

 そのたった一つのために、自分の能力のすべてを使って、意思も魂も、命の一欠片さえ使って。

 

「さあ! 行くぞ!」

 

 彼女は叫ぶ。自らの目的のために、願いのために、いつかあの姿に追いつくために。

 

「今日こそ私に下るがいい!」

 

 巨大な刀を振りあげ、飛んでくる岩や巨木を薙ぎ払い。

 

「イヴェルカーナぁぁぁぁ!!!」

 

 雄たけびを上げる巨大なモンスターに対して、織斑マドカは巨大な刀を振り上げて突撃していくのでした。

 

 そんな彼女に追走するミラボレアスとキリン。別方向から突撃してくるアルバトリオン。

 

「私の配下になれ! いつか古城さんが従えているような眷獣となれ! 私の夢のために!!」

 

 刀を叩きつけるも回避したイヴェルカーナに、キリンが雷光を纏いながら突撃。一瞬、怯んだそこへミラボレアスの一撃が炸裂。

 

 倒れるイヴェルカーナ。追撃するアルバトリオンに対して、横から巨大な何かが突撃してきた。

 

 ハッと顔を向けた先、倒れたアルバトリオンを踏みつけて雄たけびを上げるのは、今日が初見ではない強敵種。

 

「おまえも来たか、クシャルダオラ」

 

 相手は二つの瞳でマドカを見つけ、雄たけびも上げずに身構えるように翼を下ろす。

 

「いいだろう。今日の目的はイヴェルカーナだったが・・・・・おまえも私の眷獣にしてやろう!!」

 

 気合を入れ叫ぶマドカに、クシャルダオラも負けずに咆哮したのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのころ、織斑家では。

 

「そういえば、最近、マドカを見てないんだが」

 

「えっと、なんだっけ、あれだよ、千冬姉さん」

 

「何か知っているのか、一夏?」

 

「うん、確かね、『歴戦王』を狩りに行くって言ってたよ」

 

 千冬はその言葉を聞く、とても形容しがたい顔をした後、深く静かに長くため息をついた後。

 

「・・・・・・・・・そうか」

 

 何とか言葉を絞り出したのでした。

 

「眷獣は十二体が基本だって言っていたかな?」

 

「・・・・・・・・古城さんに連絡を入れておくか」

 

 千冬、もうこれは自分の手に負えないと諦めて、携帯電話を取り出すのでした。

 

 小学生に出席日数ってないよなぁ、なんて無理やりに平和的な考えに向けて、自分の精神を護りながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 唐突ですが、皆さまはドラゴンってかっこいいと思える人ですか。それともドラゴンって危ない凶暴って思える人ですか。

 

 マドカは迷わずに答える。

 

 『カッコイイ』と。

 

「今日も私は頑張った。頑張ったよな」

 

 一人、丘の上でそう笑う彼女の背後で、二つの巨大なモンスターがうなり声をあげているのだが、彼女は見ようともせず沈みゆく太陽を見つめていた。

 

「フフフフ、いいぞ、実にいい。そうか、そうなるのか」

 

 太陽から視線を動かし、手元の携帯端末へと向ける。

 

 長い間、戻ってなかったような気がする。俗世と呼べるくらいに、今の世間の常識や流行が解らなくなってきた。

 

 今時の小学生が何に感動して、何を思って生活を送っているのか、同じ小学生のマドカには解らないことであり、知りたくもないことかもしれない。

 

 今の自分は目指すべきものがある。誰もがあやふやで将来のことなど考えていない時に、明確に目指すべきものがある自分はとても幸せかもしれない。

 

 高坂古城。彼が率いる眷獣はどれも巨大で凶悪、その一匹一匹が世界を滅ぼすと言われても頷けるほどに、巨大な獣たちだ。

 

 あの人を目指す自分もまた、その巨大な獣を手に入れなければ。世界を滅ぼせるモンスターを従え、いつか古城に示したい。

 

「その前に、リクさんを超えないと」

 

 十二の眷獣を従え、古今東西の伝説の武器を操る古城の息子。未だ倒れたことを見たことがない、もっとも身近な最強。

 

 絶対に超えてやる、敗北を知らない彼に最初の敗北を刻むのは自分だ。

 

 マドカは沈みゆく夕日と、手の中の携帯端末の中で宣言する『亡国企業』に、固く誓ったのでした。

 

 彼女は知らない、高坂リクが束の胸部装甲に敗北して気絶したことを。

 

「待っていろリクさん!! 私が貴方を倒して古城さんを倒して! 世界最強の真祖になってやる!!」

 

 フハハハハはと笑うマドカの姿は、昔の千冬にそっくりだったとか。

 

 彼女は知らないのだ。ただの人間が真祖になれることはない、と。真祖を取り込めばイケるけど、この世界の真祖って古城だけなので、不可能なのですが。

 

「さあ次だ! 行くぞお前ら!」

 

 振り返り、自分の眷獣、のようなポケットに入らないモンスターのような、そんな獣たちに号令を出し、マドカは進んでいくのでした。

 

「次はマムタロト! そしてゼノジーヴァだ!」

 

 片手をあげて歩きだしたマドカの姿は、幼いながらも歴戦のモンスターを狩る人たちみたいでした。

 

戻れ、小学校に通え。解ったな? 解ってないのか? 解ったら答えろ。マドカ?

 

「ごめんなさいわかりましたあねうえさま」

 

 駆け出して数秒後、怒り狂った織斑家の長女様のお説教に、配下のモンスターともどもガタガタと震えることになるのですが。

 

 古城に連絡したら、『妹も説得できないで教師なんてできるのか』なんて言われた千冬、決意と気合が天元突破したそうです。

 

 そしてマドカは日本に戻ることになったのですが。

 

 モンスターって、今の日本に入国できるでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「総理! 総理!! 大変です! ミラボレアスだけじゃない連中が来ました!」

 

「・・・・・・・」

 

『おい、日本は何時からモンスターでハンターな世界になったんだ?』

 

『隣の国なんだから、もっと穏便になってよ』

 

『IS学園の工事、始まったばかりなのにもう問題が? これだから極東の国は』

 

『オタクの聖地だからって出していいものと悪いものがあるだろうが』

 

『可愛いは正義、でもモンスターでハンターなライフはちょっとなぁ』

 

 各国とのホットライン中に舞い込んできた話に、日本のトップは胃を掴むようにして前に倒れたのでした。

 

『え、あれ、待てよおまえ! 立つんだよ!』

 

『おまえが倒れたらあいつらどうするんだよ?!』

 

『ここは、女王陛下の国に出張ってもらって』

 

『おまえのところの総人口のほう多いだろうが! 集団戦だろう?!』

 

『いや、ここは世界の警察官とか正義とか言っている国に』

 

『俺のところ、動物愛護団体がうるさくて』

 

『え? あれって動物愛護になるの?』

 

『ウソだろお前、本気か、おまえら。動物って・・・・動物かぁ』

 

『とにかく、頼んだ、日本の』

 

『『『『『『我らの可愛いを目指すためにな』』』』』』

 

 全員にウィンクされて親指を突き出され、日本のトップはどうにか上げた顔を再び机に沈めたのでした。

 

「総理! 総理!! 誰か医者を呼ぶんだ! しっかりしてください総理! 私はこんな案件を扱うのは嫌ですからね!」

 

「おまえもかブルータス」

 

「総理! 総理ぃぃぃぃぃ!!!」

 

「古城、後は頼んだ」

 

「総理ぃぃぃぃぃ!!!」

 

 とある国の政治中枢は、今日も平和です。

 

一部の人のストレス以外は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、マドカが戻ってきた織斑家。とある国のトップが体調を崩したことを知り。

 

「国を率いるって大変なんだな」

 

 マドカ、重圧を感じながらも頑張る人の姿に、うんうんと頷いて敬意を示し。

 

いいからやれ

 

 殺意のみを浮かべる千冬の姿に、慌てて勉強に戻っていくのでした。

 

 記念すべき、織斑マドカ軍団の初撃墜は、とある国のトップの胃でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 篠ノ之束は人生最大のピンチを迎えていた。

 

「ふぇ?」

 

『きぐるみ愛好会は、その人員を増やしたので』

 

「は、はい」

 

『きぐるみ防衛隊となることになった』

 

「えええ?!」

 

 久しぶりに長船からの連絡に、喜んで受けていた束に対して、彼はカメのきぐるみで鋭く見つめてきた。

 

『我々は世界中のきぐるみ愛好家のためにも立ち上がるべきだ』

 

「会長ぅ」

 

『君は今やISの、世界の可愛いの伝道者。私達は相容れない道を歩むしかないのかもしれない』

 

「でもでも!」

 

『君は確かに可愛い。女の子で大学生で、それだけ可愛いを素で表現できるのは君だけだろう』

 

 今の束は白いエプロンドレスと、青いロングスカートのワンピースに、何時ものウサギ耳。

 

 フリルとレースも完全装備の『ふしぎの国のアリス』衣装。フワッと広がったスカートと、動くたびに揺れる胸部装甲が妖艶でありながらも、仕草の一つ一つが可愛いと思える彼女は、まさに今の世の中の考えを体現していた。

 

『可愛いは正義、それを私も否定はしない』

 

「私はそんなんじゃ」

 

『しかしだ!!』

 

 長船は画面の中で立ち上がる。同時に画面が彼の背後を映し出す。ゆっくりと彼の姿が遠ざかり、彼の周囲の人たちを束の視界に収めていく。

 

 そこに広がるは、人間以外の姿ばかり。

 

『可愛いは衣装のみではないこと私は示したい! 女の子の衣裳が可愛いのは自明の理! ならばそこに我らは一石を投じる!』

 

 多種多様、色とりどり。そして、色々な顔の人たちがそこでグッと拳を突き出していた。

 

『可愛いの第一人者にしてISの生みの親、篠ノ之束』

 

「会長ぉ」

 

『我々きぐるみ防衛隊は、君たちに対して宣戦布告する! 我らのきぐるみこそが可愛いと示して見せよう!』

 

 高らかに宣言するきぐるみ集団に、束は何と言っていいか解らずに黙り。

 

『そして亡国企業にも可愛いを教えてあげようではないか!』

 

「え?」

 

『じゃ束君、どっちが可愛いか勝負だよぉ~~』

 

「え?」

 

 気楽に笑顔でウィンクなんてきぐるみで器用にする会長は、そのまま通信を閉じたのでした。

 

「・・・・・・可愛いで勝負するの? 私と会長が?」

 

 その日、束は思った。

 

 どうしてこうなった、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「りっくぅぅぅぅぅん!!!」

 

 悩んだ束は迷わずリクへ突撃。

 

「止まれ束!!」

 

 突撃してくる束に対して、リクは宝具の雨を降らせて停止させた。

 

「なんで、どうして?」

 

「もうおまえに抱きつかせない」

 

 その一言に、束は衝撃を受けてその場に倒れた。

 

「どうして、なんで、りっくん」

 

「ダメなんだ、束。俺達はもう過去の俺達じゃない。だから」

 

「そんなことないよ。そんなことない」

 

「ダメだ、束。おまえも俺ももう大人だ、立派な大人なんだ」

 

これ以上は耐えられない、というか抑えられない。今までよく頑張った、必死に耐えた自分をリクは褒めたい。

 

 だがこれからも耐えられるとは思えない。だから束に告げる、もう二度とするな、と。お互いに大人なのだから、引くべき一線はあるのだと。

 

「え? 何で?」

 

 きょとんと疑問を浮かべて立ち上がる束に対して、リクはどういっていいか解らずに言葉に詰まり。

 

 丁度、歩いてきた千冬は色々と察して束を説得しようとして。

 

「りっくんになら何をされてもいいよ」

 

「は?」

 

「え?」

 

 千冬とリクを凍結させる一言が、可愛い衣装の束の口から放たれたのでした。

 

「あれって本当にリクは気づいてなかったの?」

 

 半眼で睨むリナ。

 

「・・・・・・どーなんだろうな」

 

 呆れてため息をつくトオル。

 

「姉様、貴方の姿に感銘を受けます。リクさん、鈍感。幻滅です」

 

 一方で感動して、一方で睨むように溜息をつく箒。

 

 少年より少し先に、少女は大人でしたとさ。

 

 そして、織斑家のぶっ飛ぶ二女様は。

 

リクさんが撃墜されていただとぉ?!

 

「え? マドカ知らなかったの?」

 

 長男様から、驚愕の事実を知らされていましたとさ。

 

 うわぁぁぁ、カオス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








異世界転生の定番といえば、気づいたらヒロインに恋されていました、だとサルスベリは思うわけです。

 だから、転生してないのに異世界なここでは、こうなった次第です。

 ウソです、最初のモンスター総進撃をやろうと考えて、いやでもそんなことしたらタイムリーな話にならないかと思いなおし、それでもやりたい気持ちが暴走した結果。

 タイトルそのままで、中身だけそれっぽくなりました。

ではではこのあたりで。

 この作品が皆さまの日常の小さな楽しみの一つとなっていたなら、サルスベリにとっては幸いでございます。







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