ウサギの観察日記『完結』   作:サルスベリ

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 お待たせいたしました、待っていてくれる人がいたらいいなぁ、いないかなぁ、いてくれるといいなぁ。

 正直、束に告白させたから、燃え尽きたサルスベリです。

 後、書こうとすると他の話のネタが浮かんでは消えて、どうするんだろうと自問自答したために遅れました。

 はい、言い訳です、申し訳ありません。

 ちっくしょう、他の作品の『童磨転生したけど』のネタが頭をずっとチラつくんですよ。
 
 では、今回もよろしくお願いします。


 童磨転生、転生特典は流刃若火、乖離剣エア、太陽神の権能、ゴジラアースの熱線砲、ゴルディオン・クラッシャー、あたふたする主人公が見てみたい。








ドタバタコメディみたいな十二ページ目

 

 

 

 

 

 高坂リクは思い出す。

 

 最初に会った時の無礼千万な篠ノ之束の姿を。何度も挑んできては返り討ちにして、必死になって勝負を仕掛けてきては、一撃で撃退していた頃を。

 

 年間を通して叩き潰して、自分や千冬に対しては穏やかになったものの、それ以外の人には無礼だったから、さらに身をもって教育したのは、単純に最初の頃の怒りが尾を引いたからだろうか。

 

 高坂リクは回想する。

 

 あの頃、篠ノ之束は間違いなく独善的、独創的、いやあれは自分以外はどうでもいい目をしていた。世界中の誰もが信用できない、他人なんて同じ人間とは思っていない、何もかものがつまらない、退屈なだけで感情を騒がせるものではない。

 

 そんな、悲しい目をしていたから。叩き潰した、教え込んだ、世界は能力だけじゃない、もっと楽しいことがあるから、礼儀は大切だから。

 

 自分の昔を思い返した高坂リクは、きっぱりと首を振った。

 

 そんなことない、向かってくるから返り討ちにしただけ。

 

 鬱陶しいって気持ちはなかったが、メンドクサイとは思えた彼女が、いつの間にか背中にひっつくようになったのは、ひょっとしたら必然だったかもしれない。

 

 見た目は美少女だ。間違いなく可愛いと思える束が、震えながら背中に隠れて頼ってくれるのは、男としては正直に言って気持ち良かった。

 

 こんな可愛い子が自分を頼りにしてくれるなんて。そこでリクは首を傾げた。いや、そんなことはなかったんじゃないか。

 

 束の行動を思い出す。服装は可愛いものがあった、仕草も可愛いと認めてもいい。疑いなく信頼を向けてくれる姿は、異性として悪い気はしなかった。

 

 しかしだ、どうしてだろう。何故か、それが可愛い、好きになる、そんな感情に繋がらない。

 

 高坂リクはどうしてだろうと考える。普通、あんなに可愛い美少女に近づかれたら恋愛感情が動くものではないだろうか。

 

 頬を染めた束が、『りっくん』と名前を呼んでくる。うん、可愛いとか愛らしいなんて言葉より先に、何故か身の危険を感じる。

 

 『りっくん』と声をかけてくる束が、笑顔で両手を広げて歩いてくる。トテトテと歩く姿は愛玩動物みたいだが、どうしてだろう全身が警戒を叫んでしまう。

 

 フリルのついたエプロンドレス姿で、怯えた表情で背中にぴったりとくっついた束に、誰もが『ほっこり』しているのだが、どうしてだろうか今すぐに眷獣をすべて使って撃退したくなってくる。

 

 『りっくん、りっくん』とうさぎ耳をピコピコと動かした束の姿に、道行く人が振り返って彼女を見ているのだが、今すぐに『王の財宝』を全力掃射したくなってくる。

 

 何故だろう、高坂リクは疑問に対して答えを出そうと悩んで、何度も昔の束を思い出していると、不意に怒りが浮かんできて。

 

 そして、ようやく答えを得た。

 

「あ、俺って束に攻撃される毎日だったんだ」

 

「え?」

 

 ポンっと手を叩くリクに、両手を広げて精一杯の告白をした束が固まった。

 

「・・・・・・ああ、そうだな、束は常にリクを攻撃していたな」

 

 同じくポンっと千冬も手を叩いた。

 

「え、え?」

 

 束、何を言われているか解らずに固まった後、オロオロと左右を見回し始める。彼女はそんなことした覚えはない。白騎士の時は確かに攻撃したが、それ以外で攻撃したなんて、記憶にない。

 

 すっぱりと昔のことを記憶から消している、優秀な頭脳を持った天才ウサギである。

 

「・・・・・・姉様」

 

 箒、信じられない顔で姉を見た。まさか、そんなことを。自分が知らない間に、リクに対して攻撃していたなんて。

 

「え、マジなの、束は覚えてないの?」

 

 リナ、驚愕に目を見開く。

 

「恋は盲目っていうからな」

 

 トオル、深々と溜息をついた。

 

「え、えええ?! 私はりっくんに攻撃したことないよ?!」

 

 悲鳴を挙げて全身で否定する束に対して。

 

「マジかお前」

 

 リク、千冬、リナ、トオルの半眼が迎え撃ったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 恋する女の子が、世界で一番、可愛い。

 

 昔、偉大なる英雄はそんな言葉を残したのですが、同時にとある偉人がこんな言葉を残しました。

 

 恋は盲目。

 

 思い込んだら一直線、他のことなんて見てられない。そんな時間があるなら好きな人に真っ直ぐに飛び込んでいく。

 

 直情思考の末期な恋愛頭脳、そんな行動を誰もができるわけがなく。大抵の人はこうしたら駄目かな、こうなったら迷惑で、こうなったら嫌われるから。

 

 そういった想いがブレーキとなって、直情的な盲目な恋の行動力を抑えているのですが。

 

 篠ノ之束にとって、そんなものはない。礼儀とか常識をリクによって叩きこまれた、そんなことは全くなかった。

 

 リクが怒るなら、リクが言うから、一応ルールを守ろう。そんな意識が、彼女の深層心理に刻まれているだけで、彼女が本心から常識を護っているわけではない。

 

 それが周りから見たら、篠ノ之束に常識が身についたように見えていただけなのですが、誰もが、本人さえもそれに気づいていなくて。

 

 結果、周りなんて関係ない、自分の感情のままに生きる束は、しっかりと自分を見て受け止めてくれるリクに対して、ブレーキなんて知らない暴走状態で気持ちをぶつけていった。

 

 それが常にリクに対して『攻撃』になっていたのは、彼女の気持ちに歯止めがなかったからかもしれないが、向けられた方はそれが『好き』なんて気持ちから出てくるものなんて考えられず。

 

 『あいつ、俺を殺す気か?』なんて思っても仕方がないことだが、リクの家庭も普通じゃない家庭なので、あの程度の行動は攻撃であっても、命の危機に陥ることもないものなので。

 

 『あ、これは昔の仕返しだろうな。もういい加減にしろよ、大人なんだぞ、俺達』的な気持ちでいたリクに対して、束は盛大に真っ直ぐに、最短距離を駆け抜けるように告白したのですが。

 

 上手くいくわけないでしょうが、そんなの。

 

 見事に玉砕した束は、グッと拳を握った。普通なら、告白してありえないと返されたら心が折れて、泣いて逃げるか、家に閉じこもって否定するか、少なくともこの場を逃げ出すものだろう。

 

 しかし彼女は篠ノ之束。何処かの世界では唯我独尊、他なんて関係なくて世界相手にケンカ売れるような性格の彼女。性格が違ってはいても、この子も篠ノ之束だ。

 

 しかも、小学生からずっとリクに躾けられて、リクの傍にいることが当たり前で、もうリクの傍にいない自分が考えられないくらいに、彼に依存している女の子。

 

 そんな行動力の化け物が、断られたくらいで離れるなんてことは、あるわけがないのです。

 

 だから、彼女の次の行動は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 決意は、時に人に今までのすべてを捨てさせることがある。

 

「りっくん」

 

 ゆっくりと束は、拳を握り締める。

 

「なんだよ?」

 

 妙な迫力に、リクは思わず身を引いた。

 

「私は、ずっとりっくんを見ていたよ。ずっと、ずっと」

 

「だから、何だよ?」

 

 俯いていた顔をゆっくりと束は上げていく。

 

 沸々とわき上がる何かが束の体を押し上げる。全身を駆け巡る何かが、束の心の底にある何かを引きちぎった。

 

「だから、ずっとね。りっくんもね」

 

 顔を上げて、にっこりと笑う。自分の精一杯の笑顔を向けた後、束は。

 

私を見てよ。白騎士!!

 

 白騎士を護ってリクへと突撃したのでした。

 

「おまえ!!」

 

 リク、咄嗟に金色の鎧をまといながらも『エア』を引き抜く。同時に左手には最古の斬魄刀を反射的に持っていた。

 

「りっくん! りっくん!!」

 

「束!! 止めろお前!!」

 

「りっくんがいいの! りっくんは私の傍にいてほしいの!!」

 

「他人の迷惑を考えろ束ぇぇぇ!!」

 

 宝具が降り注ぎ、ミサイルが乱れ飛び、眷獣が叫び、ビームが走る。まさに世紀末みたいな戦場がここに出現したのでした。

 

「・・・・・・よし、私はここで見届け人をしよう!」

 

「千冬! あんたが止めなさいよ! 白式が一番じゃないの!」

 

「リナ、諦めろ、あの目は何もきいてねェ目だ」

 

「能力を使ってないで止めなさいよ、トオル!」

 

「俺が能力をキレば、一帯が火の海だけど、それでもイイのか?」

 

「ああもう!! 解ったわよ! 結界なんて覚えるんじゃなかったわよ!」

 

 リナ、ブチキレしつつ魔法を展開。トオルはすでに攻撃のベクトルを操作して内側に戻るように操作中。

 

 千冬、仁王立ちのままニヤリと笑っている。

 

「姉様、流石です」

 

 うっとりと箒は姉の姿を見つめていたりする。

 

「ここがリクさんへの挑戦場かぁ!!」

 

 モンスター従えたマドカ参戦。雄たけびを上げるモンスターたちの進撃に対して、束とリクは。

 

「「邪魔」」

 

 一蹴である。

 

「さ、さすがリクさんだ。束姉上もさすがだ」

 

 フッと笑ったマドカはそのまま、千冬の背中に隠れたのでした。

 

「落ちろ束!!」

 

 山を斬る剣を天空から一撃。

 

「嫌だよぉ!」

 

 束は白騎士のスラスターを全開、剣の刃を中心としたロールをしながら、天空へと駆け上がる。

 

「そこぉ!」

 

 マルチロックオンの後に全火器を一斉射撃。幾筋もの光と、爆音を伴ったミサイルがリクへと突き刺さる。

 

「ぬるい!」

 

 エアを回転、擬似的な次元断層を生み出しての防御。おい待て、そんな使い方、するな。そんな文句が何処からか聞こえてきそうだが、リクはお構いなしに振るう。

 

「月牙天衝!!」

 

 本家が見たら絶叫しそうなほど滅茶苦茶な、全力の流刃若火による月牙天衝が地面を灼熱の地獄に変えた。

 

「リクぅ!! あんたそれまったく違うところでしょうが! エアを使うなエアを!!」

 

 思わずリナの絶叫ツッコミ入るが、彼は聞いてない様子で両手の剣を放り投げる。

 

「ゲ?!」

 

「ハァ?!」

 

 リナ、トオル、あまりの出来事に悲鳴を上げる。

 

「眷獣融合」

 

 十二の眷獣が混ざりあい、やがて一つの巨大な何かを生み出した。

 

「そんなのぉ!!」

 

 束も白騎士の試作武器を呼び出す。巨大な砲身を持つ武器を両手で持ち、エネルギーチャージ開始。

 

「束、それも待ちなさい!!」

 

「おいおいオイオイ!!」

 

 束が持っている武器の見た目に、心当たりがあり過ぎるリナとトオルは絶対に止めるべきだと必死になった。

 

「仮称、クトゥルフ!!」

 

「バスターランチャー、シュート!!」

 

 天空から第四真祖の十二体の眷獣の威力をすべて集めた一撃が。

 

 地上からは空間を歪ませる威力を持つ大砲の一発が。

 

 それぞれ相手を潰すために放たれたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 威力は僅かに眷獣が上だったようで、白騎士は地面を削りながら吹き飛び、やがて止まった。

 

 リクはゆっくりと束に近づく。

 

 白い装甲が散乱した中心地、そこに彼女はいた。

 

「たば」

 

「りっくん!!」

 

 声をかける前に叫ばれて、リクは反射的に『エア』を抜いて。

 

 固まってしまった。

 

 叫んで顔を上げた束は、泣いていたから。

 

「好きなの、ずっと好きなのぉ」

 

 大粒の涙を流して、それを拭うこともなく両手を広げたまま。

 

「大好きなの! ずっとずっとぉ! 私を見てくれたのはりっくんだったから! 私が間違っているって教えてくれたのはりっくんだったから!」

 

 願いと両手を広げて、大きな声で叫ぶ彼女は。

 

「逃げないでずっといてくれたのは、りっくんだけだから! 私を、束として見てくれたのはりっくんだけなんだから!」

 

 とても小さな女の子のようで。

 

「大好きなの! 他に何もいらないの! ずっとりっくんだけが!」

 

 年相応な女性のような雰囲気を持っていて。

 

「りっくん! りっくぅぅぅん! 私を置いて行かないで!」

 

 そんな曖昧な雰囲気を持っていながらも、確かに普段から見ている彼女だったから。

 

「ずっと私の傍にいてよぉぉぉ!!!」

 

 叫んで鳴いて、必死に伸ばして、悲鳴を上げている篠ノ之束だった。

 

「・・・・・・・あ、可愛い」

 

「ふぇ?」

 

 リクはこの時、自分はサディストなのだろうかと呆れてしまったという。そのくらい、今の泣いている束は。

 

 とても可愛い女の子だったから。

 

「解ったよ、束」

 

 そっとリクは彼女の頭を撫でた。それだけで、告白に対しての答えなんてなかったのに、束は嬉しくて楽しくて。

 

 涙なんてすっきり消えるほど、笑顔になっていたのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい具合に纏まりそうじゃない」

 

「ソーだな。で、こっちはどうするンだ?」

 

「フ、束の奴め、あんなに可愛い顔ができるんだな」

 

「ああ、姉様、貴方は本当に天使のようだ。女神さえ貴方の前では霞んでしまう」

 

「リクさん、束姉上、お幸せに」

 

 クレーターの中心地で楽しそうに笑う二人を、見守る亡国企業の面々。

 

 そして。

 

何してんだ、バカ息子?

 

いい度胸だ、我の手を煩わせるとはな

 

 激怒状態の高坂夫妻の姿に、誰もが忘れるように今のほっこりムードを護ろうとしたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








 頑張った、頑張ろうとした。必死に頭を捻ってどうにか、という風に書きだしたら、こんな話になりました。

 おかしい、もっと短くなるはずだったのに、書きだしてみたら次々に文章が浮かんでくる。

 まさに暴走状態。あ、それって何時ものサルスベリでした。

 ではでは。

 この作品が皆さまの日常の小さな楽しみの一つとなっていたなら、サルスベリにとっては幸いでございます。




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