ウサギの観察日記『完結』   作:サルスベリ

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 このようなお話にお付き合いいただき、ありがとうございます。感想も嬉しかったです。 
 
 ご期待に添えるかどうかわかりませんが。
 
 観察日記の二つ目です。
 
 どうぞ。









驚きの二ページ目

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 篠ノ之束ちゃん、十二歳。

 

「ふぇ」

 

 

 現在、絶賛。

 

「ふぇぇぇぇぇ!!」

 

 大号泣中である。

 

「りりりりりりりくぅぅ!!!」

 

「え、俺? 俺が悪いの?」

 

「おまえ束に近づくなとか」

 

「いや待った、千冬。俺はただな」

 

「鬼か貴様!!!」

 

 速やかに腰の刀を抜いた千冬に、リクは思う。

 

 明らかに銃刀法違反だろうが、と。

 

 周りを見る。クラスメートたちも、『おまえ、本気か』って凄い蔑むような眼をしている。

 

 先生を見る、唯一の大人だ、立派に止めてくれるはずだ。しかし先生は女性なので、同じように『これだから男は』なんて眼で見てくる。

 

 つまり味方はいない。

 

「いやだってさ」

 

「だってなんだ?! 事と次第によってはおまえでも」

 

 スラリと抜かれた刀が、真剣って言葉を思い出させる。ここは教室、小学校の教室なのに、家にいる時のように身の危険を。

 

 リクは感じない。ただの刀にどんな威力があるというのか、普段から母の古今東西の武器の雨やら、父の滅茶苦茶な威力を持つ獣たちの一撃を受けたり、妹が覚えた凍結魔法の餌食になったりとか。

 

 うん、思い出して泣きたくなったリクだった。

 

 そんな壮絶な毎日を過ごす少年が、たかが刀で命の危険を感じるとか、そんなことない。

 

「理由を話せ。そうでなければ」

 

 ゆっくりと上段を構えた千冬と、机の影というか、教室の隅に逃げ込んだ束の泣き声と、クラスメート全員の冷たい目線を前にして。

 

 リクは俯いて顔をちょっと染めて。

 

「・・・胸が当たるから」

 

「・・・・・・・・私が悪かった介錯を頼む」

 

 千冬、見事なまでの土下座の後、脇差を取り出して腹に当てる。

 

「待って織斑さん! それは駄目よ!」

 

「先生! 止めないでください! 私は私は! リクになんて辱めを受けさせてしまったのか!!」

 

「いいから落ち着きましょう!!」

 

「離してください先生! 私は!!」

 

「いいからね!!」

 

 その後、必死に止めた先生は、穏やかに優しく千冬に話をして彼女を止めたのでした。

 

「リク、私は先生になる」

 

「え?」

 

 幼馴染が、そんなわけで将来の職業を決めたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 篠ノ之束は考えた。

 

 その頭脳はフル回転。今まで使っていない細胞まで使うように、必死に頭を捻って色々と考えて、さらに思考を重ねて試行を繰り返して。

 

 リクは大切な友達、自分を大切に育ててくれた人。そんな風に彼女が思いこむのは、彼が容赦なく攻撃してきた結果、この人は自分を大切に教えてくれるなんて、そういった勘違いがマッハを超えて無我の境地に辿り着いたため。

 

 その人が近づくなとか、いうはずがない。どんな時も自分を見捨てないあの人が、酷いことを言うことなんてないのに。

 

 今日はどうして駄目だったんだろうか。

 

 小さい声で何か言っていたが、聞こえなかったから。

 

 千冬が何か言っていた。辱めとか、何とか。辱めを辞書で引いてみても、意味が解らない。

 

 こんな単語一つで、近づくななんて言われることはない。

 

 リクは優しい、きっと意味がある。自分のために何か、重要なことを教えてくれたのではないか。

 

 唸って、捻って、腕を組んで考えて。

 

 ハッと気がついた。

 

 この腕の中のものが原因か。

 

 つまり、リクは、自分に女の子らしい格好をしてほしいと。

 

 気づいてポンっと手を打って。

 

「母さん、私はスカートが欲しい」

 

「・・・・・・・・え?」

 

 母親のところに駆け込んだ。

 

 今までスカートなんて無駄、邪魔とかいってズボンしか着なかった娘が、スカートが欲しいとか、どうしたことだろう。

 

 母が、『明日は世界が終わる』なんて思ったのは、内緒の話。

 

「私は可愛くなるの」

 

 胸の前で握り拳を作って、真っ直ぐに見上げてくる娘に、母は感動した。

 

 ついに目覚めたと。

 

 今まで可愛い服とか買っても、『無駄、邪魔』と一蹴して着てくれなかった娘が、初めて自分から着たいと言ってきた。こんなに嬉しいことはない。

 

「買いに行きましょう!」

 

「え?」

 

「貴方は可愛いの! 本当に可愛いから!!」

 

「え・・・・え」

 

「だから束! 今すぐに行きましょう!!」

 

 母としては、娘がファッションに目覚めたとか、女の子として自覚が芽生えたとか、嬉しい気持ちでいっぱいだったのですが。

 

 ここで思い出してほしい。

 

 この世界の篠ノ之束が、どういった性格だったか。

 

 彼女が思ったことは、一つ。

 

 母は怖い。

 

「さあ束!!」

 

「ふぇぇぇぇ?!」

 

「泣いてる場合じゃないの!」

 

 もう止まらない、暴走した母親に連れられ、街を駆け巡る。一着二着でいいとか、そんな当たり前では止まらない。

 

 篠ノ之束は可愛い、原作の彼女は細胞レベルでハイスペックらしいが、それは外見にも当てはまるのではないか。

 

 綺麗とか美しいなんて言葉が、とても無意味なものに見えるくらいに。

 

 強気で人を馬鹿にしたような笑顔の彼女ではなく、同級生に比べたらちょっと胸が大きいかなって女の子が、怯えた目でこっちを見てくるなんて。

 

 そそるものがあるらしい。

 

「さあ、束!!!」

 

「・・・・・・・りっくぅぅぅぅん!!!」

 

 暴走してそそるものに流されるままに、突っ走った母の姿に、束は思わずそんな叫び声を上げたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、リクと千冬は二人だけで学校に来ていた。

 

「束が一緒じゃないとは珍しいな」

 

「篠ノ之の母さんが、先に行ってって言ったから来たけど」

 

 二人は心配になりながら、学校に来ていた。

 

 あの束が一人で学校に来れるのかどうか。

 

 しかし、待っていてはダメと言っている篠ノ之母の言葉に、何か異様なものを感じて二人は学校に先に来ていた。

 

 登校できるのか不安を感じる二人は、そのまま教室に入って、それぞれの席に座って鞄を置いて。

 

 そこでリクは不意に気配を感じた。

 

 何か嫌な予感と同時に、教室の窓を開けて。

 

「リク、どうしたんだ?」

 

「いやなんかさ」

 

 窓を開けたことを不審に感じた千冬が近づいてきた。

 

 リクもどう言っていいか解らずに困った顔をしていると。

 

「りっくぅぅぅぅぅん!!!!」

 

「ブ?!」

 

 何かが猛烈な勢いで教室の外の窓から飛び込んできて、そのままリクを押し倒して、勢いのまま床を転がって行った。

 

「リク?! 敵襲か?! 大丈夫か?!」

 

 千冬がすぐさま刀を抜いてリクに近寄ると、そこには。

 

 目を回したリクと。

 

 ピンクのフリフリドレスにウサギ耳をつけた少女がいて。

 

「・・・・・・・束か?!」

 

「えええええええ?!」

 

 千冬、驚愕あまり固まる。

 

 教室にいたクラスメートは衝撃を受けて目を見開き。

 

 そして、彼女はゆっくりと顔を上げた。

 

 薄い紫色の長い髪は、前日まで肩くらいだったのに、腰まである。紫というよりは、藤色のような髪がゆっくりと風に流れるように広がり。

 

 フリルが施された長いエプロンドレスの中が、彼女の体に合わせて形を変えて彼女の動きを彩り。

 

 顔を上げた瞳は、涙をためているが、そのすべてが宝石のように輝きを放っていて。

 

 何処に出しても間違いなしの美少女がそこにいた。

 

 ついでに保護欲をそそられるほどに、弱々しいオーラも纏って。

 

「ちーちゃぁぁぁぁぁぁん!!」

 

「た、束、どうしたんだその格好?」

 

「ふぇぇぇぇぇ!! り、リッくんが、リっくんがね」

 

「あ、ああ」

 

「私に女っぽくなれって言ってると思うの!」

 

 なんだそれ、教室の誰もが一瞬でシンクロした瞬間だった。

 

「だからね、だからね、頑張ったの!!」

 

 ギュッと握りしめる。もう離さないと握り締めたものは、高坂リクの襟首だったりするのだが、誰もが気にしている余裕はない。

 

 なんだこの超絶、可愛い生き物は。

 

 泣いている束に、教室中の感想が一致したのでした。

 

 その日、高坂リクはもっと自分を鍛えようと思った。

 

 そして篠ノ之束は。

 

「もっと速くリッくんのところに行けるように改造しないと」

 

 後にインフィニット・ストラトスのプロトタイプとなる機械をくみ上げる決意をしたのでした。

 

 

 

 

 

 






 原作崩壊、つけてあるよね、タグ?

 原作の篠ノ之束が、ISを作った経緯は原作通りでしょうけど、この話の篠ノ之束がISを作った理由は、このようになりました。

 ついでに千冬が教師になった理由も。

 以上でございます、読んでいただきありがとうございました。




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