ウサギの観察日記『完結』   作:サルスベリ

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 前回、白騎士事件が起きました。世界がびっくりです。

 サルスベリはお気に入りの数やら、評価やらでびっくりです。

 ご期待にこたえられるか解りませんが、がんばってぶっ飛んで行きますのでよろしくお願いします。

 暴走列車ってブレーキがないから暴走列車だと教わりました。







決意を刻んだ九ページ目

 

 

 

 

 その日、世界の常識は粉砕された。

 

 戦闘機が空を舞い、戦車が地上を進む。海を軍艦が支配して、そして各国の軍人が己の感情を律して、あらゆる困難に立ち向かっていく。そういった世界の軍事バランスは、その日を境にして一切が消え去って行った。

 

 今までの技術はすべてが無意味。

 

 現在までの軍事力は、それの前に完全に敗北した。

 

 各国のトップは頭を悩ませ、何度も考え、多くの有識者に意見を求め、さらに首脳部でも議論を重ねていき、何度も何万回も会議を重ねて。

 

 そして。

 

『やはり、無理か』

 

 誰かの嘆きがテレビ電話を通して、世界各国のトップたちを揺さぶった。どう考えても無理だ、不可能なことでしかない。

 

 全員の脳裏を支配しているのは、天空に浮かぶ白い機械。

 

 IS、インフィニット・ストラトスと呼ばれる、純白の翼を広げた機械の騎士。あの時、すべてのミサイルを撃墜し、追撃を仕掛けようとした航空機を振りきって、天空の存在し続けた異物。

 

 いや、あれは『天空に君臨した』というべきだ。誰かが呟いた声に、思わず頷いてしまったのは、本能が思い知ったからか。

 

 だからこそ、今回の会議は当然のように。

 

『ああ、無理だ。私は忘れられない』

 

 とある国の大統領が呟き、画面の中で首を振った。

 

『私も忘れられそうにない』

 

 とある国の首相が天を仰ぐように、顔を上げていく。

 

『そうだな』

 

 誰ともなく呟き、誰ともなく拳を握りしめ。

 

『やはり、フリルのついたエプロンドレスこそ正義』

 

 瞬間、通信回線でつながっているだけで、物理的に繋がっていないそれぞれの空間が凍りついて、ひび割れたように砕けた。

 

『あ?』

 

『なんだと?』

 

『てめぇ、正気か?』

 

『ああ、あのフリルこそ、私が求めていた可愛さだ』

 

 陶酔したように呟いた言葉への返答は、拳を机に叩きつけた音だった。

 

『ふざけるな! ゴシックロリータが最高だろうが!』

 

『おまえの目は腐っているのか?! ウサギ耳だ! あのウサギ耳こそ至高!』

 

『どいつもこいつもおかしいんじゃないか?! 和服だろう! あの見えそうで見えないエロスと清純さを併せ持つあれこそが!』

 

『黙れ俗物どもが! 純白の天使の翼にナース服! それこそが最高ではないか?!』

 

『貴様らぁぁぁ!! 許さんぞ! 我が軍が相手だ!』

 

『いいだろう! 貴様にフリルの良さを刻みこんでやる! 全軍を動かせ! 今すぐに宣戦布告しろ!』

 

『ふ、どいつもこいつも浅はかな。ウサギ耳を広める最初の一歩にしてやる』

 

『『『『『いい度胸だお前ら!』』』』』』

 

 誰もが中指を立てて怒鳴り合っていました。

 

 今日も可愛いは正義、その通りに平和な世界であります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天の理はさすがに怒られました、と高坂リクは平常心を取り戻して空を見上げていました。

 

 世界各国がISの価値を認めた現在、すべての軍事関係者が求めて奪いに来そうなのだが、何処も手を出してこない。

 

「来ねェな」

 

「来ないわね」

 

 何故か、気合十分なトオルとリナがいて。

 

「フ、私の怖さに恐れをなしたか」

 

 何故か、剣を地面に刺して仁王立ちする千冬がいて。

 

「今度こそ姉様のために」

 

 背中に阿修羅を背負った箒がいまして。

 

 

 十二の眷獣を従え、金色の鎧を身に纏い、右手に『エア』、左手に騎士王の聖剣を持ったリクは、なんでこんなことしているのか疑問を浮かべていました。

 

 事の発端は、束の素顔が世界中に曝されてしまったこと。

 

 ISの開発者、色々な人の協力を得たとしても、ISのコアを作れるのは束のみ。もう一人データ上での協力者がいたはずなのだが、それは世界各国が探っても痕跡さえ発見できず。

 

 追跡したり、ハッキングしたりすると、使用したコンピュータがきぐるみのダンス映像しか流さなくなったり。あるいはきぐるみサイトしかつながらなくなったりするので、世界各国は諦めることにした。

 

 『きぐるみっていいな』、『俺も入ろうかな』、なんて最後に必ず出てくるきぐるみ同好会への参加者が増えたのは、決して意図して行ったものではなく、催眠を施したわけではない。

 

 話を戻して、束を狙ってくるだろうから、それを阻止するために全員で待ち構えていたのだが、数日が経過しても誰か来る様子もなく。日本政府さえも篠ノ之神社に近寄ろうとしない。

 

「あれがタバネちゃん可愛いファンクラブの本部だな」

 

「ああ、あれこそが可愛いの伝道師の家だ」

 

 時々、遠くから祈るように見つめてくる人たちがいるのだが、誰もが無視することにした。なんだか、凄く妙な熱気を向けてくるので、関わったら最後、自分もそんな道に入りそうで怖いから。

 

「もう来ないんじゃないの?」

 

 飽きてきたようなリナの声に、リクはそうかもしれないと思い始める。今頃、各国はISを巡って議論を重ねている頃だろう。開発者を狙ってくる様子がないから、きっと各国のトップは理性的に話し合い、平和的な解決手段を見つけているのだろう。

 

 今まで世界を引っ張ってきたリーダーたちだ、世界平和のために頑張ってきた人たちだから、簡単に戦争なんてしないはずだ。

 

 リクはそう思っていたのですが。

 

 現在絶賛、それぞれの欲望と願望のために、世界大戦が勃発しそうな雰囲気になっているのですが、それはリク達は知らないことですので。

 

「今日は解散だろウな。もういいダロ?」

 

「・・・・・・なんでトオルって能力を使っていると、そんなにアクセントが変わるんだ?」

 

「仕様だ」

 

 以前からの疑問をぶつけると、トオルは真顔で答えたのでした。

 

 何の仕様なのか、リクはとても疑問に思うのですが、突っ込んだら負けと第六感が叫んでいるので止めておくことにした。

 

「皆の者!」

 

 バッと後光がさした。ハッとしてリク達が振り返った先、空に浮かんだ金色の船に乗ったリリィ推参。

 

「束の護衛、御苦労であった。我が夫、古城が見事に役割を果たした。もう何も心配いらぬぞ!」

 

 リクと同じ色合いの金色の鎧を身に纏いながら、微妙に肌が露出している二児の母は、満足そうに腕組みして頷いた。

 

「フ、また我の美貌に酔わせてしまったようだ。良いぞ、特別に許そう。我が黄金の肉体を脳裏に刻む許可を出してやろう」

 

 ご満悦な母が高笑いを始めました。

 

「・・・・・・・りぃぃぃぃく」

 

 リナが凄い顔でリクを見ています。

 

「止めろ」

 

 トオル、感情が完全に死んだような顔をしています。

 

 仕方がないか、とリクが溜息をついた時。

 

「此度の働き、まことに大義であった! ではさらばだ!!」

 

 フハハハハなんて笑いながら、リリィは去っていきましたとさ。

 

「・・・・・・・で、何がどうなったの?」

 

「俺に聞くなよ。リクに聞け、あの英雄王の息子だ」

 

「俺、あの母親から生まれたなんて、信じたくない」

 

 呆れたリナと、半眼のトオル、そして項垂れたリク。

 

「リリィさんは今日も素晴らしかったな。私も目指したいものだ」

 

 グッと拳を握って高笑いするリリィの姿を脳裏に刻む千冬だった。誰か止めないと、彼女の将来が不安になるか、黒歴史で悶絶することになるので、説得してください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、一触即発の世界のトップたちの会議は。

 

『あ~~~高坂古城だ。つまりあれだ、ISの学園を作って、そこで競わせればいんじゃないか?』

 

『・・・・・さすがミスター『フィクサー』!!』

 

『そんな意見を言えるなんて、さすがだ裏ボス!』

 

『影の参謀殿! 貴方ならそういう提案をしてくれると思った!』

 

『闇の支配者殿! その考え方や意見に憧れる痺れる!』

 

『『『『『あんたこそ世界のリーダーだ!』』』』』

 

『おまえらいい加減、理性を殴り捨てると暴走する癖、直せよ』

 

 古城、昔からの苦労を思い出しながらため息をついた。

 

『じゃ場所は日本な。タバネちゃんの故郷だし』

 

『え?』

 

『当然、日本に作るべきだな。アキバあるし』

 

『え、ちょ待』

 

『日本がいいだろう、あそこがオタクの聖地だ』

 

『お待ちください、ちょっと待ってください』

 

『じゃ日本で決定な。あ、資金は出すから制服はフリル多めで頼むぞ』

 

『工事費、全額負担してやるから、ウサギ耳よろしくな、な!!』

 

『材料と建設部隊、総派遣してやるから、ゴシックロリータ制服にしろよな』

 

『『『『『あ、ケンカ売ってんのか、買うぞこの野郎』』』』』

 

『古城ぉぉぉぉ!!』

 

『解った、解ったから。あれだろ、制服改造自由でいいんじゃないか?』

 

『『『『『さっすが我らが黒幕!!』』』』』

 

『うううう!! 来期は逃げてやるぅ!!』

 

『俺も逃げたいよ』

 

 こうして日本に、ISを学ぶための学園、『IS学園』が作られることになったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 恥ずかしい、逃げたい、もう誰もいない場所に行きたい。

 

 そうだ宇宙に行こう。

 

 束は一人、研究室の隅っこでそう決意した。しかし、いざ行動に移そうとしてモニターに流れる熱狂を見てしまった。

 

 誰も可愛いは正義と叫び、誰もがロマンこそがと信じている。熱意は大勢の人を動かし、情熱が様々な人を突き動かしていく。

 

 誰もが自分の趣味を声高に叫び、誰が一番の可愛いであるかを競うような世界の景色を前にして、束は違うと感じていた。

 

 情熱は確かにすばらしいものだ。ロマンは人を突き動かす原動力だ。けれど、その二つは決して前に前にと出すものじゃない。理想も理念も、夢物語であっても、それがすべてであっていいはずがない。

 

「白騎士」

 

 目の前に浮かぶ機械に、束は怒りをぶつけようとして止めた。自分が、この子をそう育ててしまった。

 

 可愛い衣装を着て、この子の前にいたから。この子はそれが当然のことだと、世界のすべてだと思い込んでしまって。

 

「決めた」

 

 束は静かに顔をあげて拳を握る。

 

「私は取り戻すんだ。ロマンの熱意も情熱もあるけれど、理性的で冷静に物事を考える。そういった人たちが、未来と宇宙を目指していた世界を」

 

 顔をあげて、腰を上げて、両足をしっかりと伸ばして。

 

「もう何処にもないもの、亡くなった故郷。違うかな、亡くなった(理性)を求めるための組織、うん、それでいい」

 

 真っ直ぐに白騎士を見つめ、束は怒りではなく、決意を持って拳を突き出した。

 

「私は君に教えてあげる。可愛いは正義でもない、ロマンだけじゃない。もっと素晴らしいものを。私が見せるものを、私たちの組織が君に教えてあげる」

 

 理性を持ち、情熱を胸に秘め、ただロマンを現実にするために冷静に判断する人達の集団。

 

 可愛いは正義、ロマンはセオリー。そういった世界に真っ向から対立する武装組織。

 

 『亡国企業』はこうして、生まれたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、りっくん!」

 

「・・・・・・・は?」

 

「私と一緒に国際テロリストになってよぉ!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・はぁ!?」

 

 後に可愛いウサギ耳の魔王と、残虐非道な大魔王と呼ばれる、亡国企業のトップ二人は、こうして始まったのです。

 

「そっちのルートかい?!」

 

「面白そうだな」

 

「フ、私も参加させてもらおう」

 

「姉様のために」

 

 そして後に、亡国の四天と呼ばれるリナ、トオル、千冬、箒も参加することになったのでした。

 

 頑張れ一夏、君だけが世界を護る最後の砦だ。

 

「え?」

 

 可愛いは正義、ロマンこそセオリーの世界を護るために、頑張れ一夏。

 

「お、俺ぇ!?」

 

 しかし、束は知らない。

 

 表では可愛いは正義、ロマンこそセオリーの世界の第一人者として方々で呼ばれたり。

 

「ふぇ」

 

 裏側では、情熱を理性で、熱意を冷静で包む組織のナンバーツーとして。

 

「うぇ」

 

 忙しい日々を送ることになることを、篠ノ之束はまだ知らないのでした。

 

 

 

 

 

 









 というわけで、暴走の結果。

 亡国企業を作ったのは、タバネちゃんとなりました。

 国際テロリスト『亡国企業』、その最終目的は世界の目を覚まさせる。可愛いは正義でもいいし、ロマンも大好きだけど、そんなに暴走しないで止めようぜ。

 建前は。

 束の本音としては、『私の動画を削除したい!』だと思いますので、どうか生暖かい目で見守ってあげてください。

 それではこのあたりで。

 この作品が皆さまの日常の小さな楽しみの一つとなっていたなら、サルスベリにとっては幸いでございます。





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