ぐだ男君と立香ちゃん   作:雷神デス

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恐るべき敵ワイバーン。
この時代ではありえないほどの神秘を持ち高いステータスを持ちクラスはライダー、更に言えば数も多く空を飛ぶことから近接武器は通用しにくいという屈指の強エネミーです。
いやー怖い怖い


蹂躙開始

 まずは情報収集、ということで森を出て近くにあるドン・レミ村に向かう事になった。幸い森は小さかったので迷うことも無く森を抜けられたのだが……。

 

 

「……なに、あれ?」

 

『これは……信じられないほど大きな、何らかの魔術式か?おそらく人理焼却に関わっている何かだが、残念ながら今調べることはできない。……無事な集落や砦を見つけて、そこで情報収集を行ってくれ』

 

「……了解です、ドクター。行きましょう、先輩」

 

「うん、けど……」

 

 

 森を出た後に見た光景は、遥か宙に浮かぶ巨大な光の輪と、焼き払われたドン・レミ村と思われし焦土だった。思わず固唾を呑む。こんな光景を容易く作り出せる相手が、私達が戦わなければならない敵なのだ。

 

 

「村を焼き払う、のぉ。こりゃ見たところ、侵略目的じゃなさそうじゃ。ただ燃やして破壊すればいい、損害など知ったことかの雑な攻め方。山賊でもまだ上手くやる。……気に入らんな」

 

「ノッブ……」

 

「儂ならこの村全部を無傷で手に入れてやったものを!」

 

「あ、そこなんだ?」

 

 

 ノッブは雑な侵略がお気に召さないようだ。ランスロットもうんうん、と頷いてる。国のために戦った者同士、こういうシビアなところは割と似てるんだなぁ。

 

 

「立香、行こうか。見ててあんまり気持ちいいものでもないし」

 

「……そうだね。ドクター、ドン・レミ村以外でここから近い、人がいそうな場所は?」

 

『ヴォ―クルールという町が近いようだ。一旦そこに……おっと? 生体反応あり、どうやら近くに人がいるみたいだ』

 

 

 周囲を見渡してみると、たしかに少し遠くに何人かの兵士らしい格好をした一群があった。疲弊しているようで少し雰囲気が暗いが、話せる程度の元気はあるだろう。

 ひとまず、彼等に接触してみよう。

 

 

「先輩、どうコンタクトを取りましょうか?」

 

「ん~……ここは、私が行くよ。ぐだ男、ついてきてくれる?」

 

「了解。それじゃ、行ってくるね皆」

 

「頑張ってください先輩、ぐだ男さん!」

 

「ミスらんようにするんじゃぞ~」

 

 

 二人の激励と、ランスロットのサムズアップに背を押されながら兵士達に近づいていく。

 兵士達は私に警戒しているようで、槍や剣を構え一触即発といった空気だ。ぐだ男は私の後ろからちまちまついてきている。……よく考えれば動く人形ってすごく怪しいな?

 

 

「えーと、すいません。私達はとある場所からやってきた、旅の者なのですが」

 

「旅の者だと?……その人形、独りでに動いているように見えるがまさかお前呪術師じゃないだろうな」

 

「あーいえ、この子は……精霊みたいな感じです!」

 

「ぐだ男です、よろしく」

 

「よ、妖精だと?……たしかに、害は無さそうに見えるが……」

 

 

 ジロジロと私とぐだ男を観察してくる兵士達。幸いにも、武器とかは持っておらずぐだ男が小さくて弱そうに見えるからか、いきなり襲うとかは無いようだった。

 

 

「……おい、どうする?奇妙な服装をしてるし奇妙な妖精を連れているが、市民ということで連れ帰って保護した方がいいのか……?」

 

「いや、だが怪しすぎないか?もしかしたらこいつら竜の魔女の手下かもしれんぞ」

 

「竜の魔女?」

 

 

 首を傾げると、兵士達は一度向かい合い頷いた後、竜の魔女について説明してくれた。

 竜の魔女とは死んだはずのジャンヌ・ダルクが怨念により復活を果たし、竜を引き連れ侵略してきたことから付けられた二つ名のようなものらしい。ヴォークルールという町もワイバーンの軍勢の襲撃を受け陥落寸前だとか。

 

 

「……そんなことが」

 

 

 おそらく、そのジャンヌ・ダルクこそがこの特異点を作り出した原因、つまり聖杯を所有している者なのだろう。早くも手掛かりゲット、幸先は良い。

 ぐだ男は妖精らしく振舞おうと変なダンスを踊ってる。兵士達には好評のようで、微笑まし気にそれを見られており少し顔を赤らめてる。恥ずかしいならやらなきゃいいのに。

 

 

「うーむ。どうやら竜の魔女についても知らないようだ。入れてもいいんじゃないだろうか?この妖精、ぐだ男と言ったか?彼も悪い奴じゃなさそうだし」

 

「ありがとうございます!助かります!あ、あと3人ほど仲間がいるんですけど、彼等も連れて行っていいですか?」

 

「ああ、構わんぞ。それで、その仲間というのはどんな?」

 

「それは……おーい、マシュ、ノッブ、ランスロット!いいってさ~!」

 

「おー、上手く行ったようじゃのぉ!やるではないか!」

 

「rrrrrrr……」

 

「お疲れ様です、先輩!」

 

 

 声に反応して、大きな盾を持つ騎士の少女と、異国の服を身に纏う少女と、ただならぬ雰囲気の鎧を纏う騎士が出てくる。それを見て固まった兵士達は、3人を指さす。

 

 

「あれ本当に仲間?」

 

「あ、はい。頼りになるし危険はないので安心してください!」

 

「……わ、分かった。信用しよう!」

 

 

 というわけで、なんとか説得の末に5人そろって町に案内してもらった。

 

 

―――

 

 

「……ひどい。ドン・レミ村と同じだ」

 

「ああ。何度も襲撃を繰り返されて、もうボロボロさ。次を耐えきれるかどうか……」

 

 

 沈鬱な顔で言う兵士達。町の中にいる人たちも、何時来るかわからぬ襲撃に怯えている。ノッブは関心を示さず通り過ぎていくが、ランスロットはそれを見て何か思うところがあるようだ。親に抱きしめられた少女をジッと見ている。

 

 

「だが、最初は怪しいと思ったが強そうな騎士さんが来てくれて安心したよ。喋らなくて少し怖いが、ワイバーンにだって勝てそうなくらい覇気がある!」

 

「おい待てい。儂はどうなんじゃ儂は。この第六天魔王織田信長を見て、まさか頼りにならぬというか?」

 

「え?」

 

「あーダメじゃわこれ。やる気失せたわー、あーもう知らん。儂はもう知らんぞぉ!おい猿、ゲームを持て!特異点なんぞもう知らんわ!」

 

 

 思わず、と言った風にノッブを見る兵士さん。その目にはありありと「君戦えるの?」と言った風な驚きが見て取れる。ノッブは拗ねた。

 

 

「ま、まあまあ。ノッブが強いのは皆知ってるから!」

 

「そうですよ、信長さん!ランスロットさんとのガチンコ勝負、素晴らしかったです!あれほど円卓最強を追い詰めるなんて流石です!」

 

「そうそう。それに、今回の特異点で一番活躍するのノッブだと思うよ?ワイバーンに相性いいし」

 

「フハハ、そうじゃろうて!いやーやっぱわかる奴には分かるんじゃよなこのオーラ。まあ?そこにいるタイマン特化な騎士より?儂できること一杯ある万能サーヴァントじゃからなぁ!」

 

「……hu」

 

「おい貴様今鼻で笑ったな?よしいい度胸じゃ再戦と行こうか。儂の宝具が火を噴くぞ」

 

 

 二人のやり取りに苦笑してると、カンカンと鐘が鳴らされる。

 

 

「ワイバーンだ!ワイバーンが来たぞ!」

 

「くそ、ついに来たか!君たち、すまないが民を守るのに協力してくれないか!?」

 

「勿論!マシュ、ランスロット、ノッブ!行―――あれ?」

 

 

 ノッブいなくない?そう思って周囲を見渡すと、いつの間にかこの町で一番高い塔に上り、上機嫌にワイバーンの軍勢を見渡していた。

 

 

「おー、なんじゃなんじゃ。随分とでかい蜥蜴じゃのぉ!」

 

「お、おい君!何をやっている、早く降りろ!」

 

 

 塔の上で鐘を鳴らしていた兵士がノッブを心配して降りるように言うが、それを意にも介さずニヤリと獰猛に笑い私を見る。その眼に思わずゾワリと悪寒が走る。あれはまさに、魔王の眼光だ。

 

 

「立香よ。儂に何か言うことは?」

 

「―――OK、思いっきりやっちゃって、ノッブ!」

 

「フハッ!いいのう、小難しい言葉よりもよほどやる気が出るわ!!」

 

 

 ノッブに魔力を吸い取られる。アーチャーとして召喚された織田信長には、宝具が二つある。どちらも強力だが、この状況で最も効果を発揮するのはランスロットと戦った時にも見せたあれだろう。対集団、それも騎乗スキルを持つ相手にはことさら効果を発揮する、かつて武田の軍勢を打ち負かした戦術が形となった対軍宝具―――!

 

 

「さて。人も乗っとらん蜥蜴如きには弾が勿体ないが。見せてやろう、儂の宝具を」

 

 

 織田信長の周囲に淡く輝く光が幾つも生み出され、それらが無数の火縄銃へと変貌していく。百やニ百、千などでは生ぬるい。武田の軍勢を倒すため、経費度外視で取り寄せた火縄銃の数は実に―――。

 

 

「三千世界に屍を晒すがよい。これが魔王の、三千世界(さんだんうち)じゃぁ!!」

 

 

 ―――その数、実に三千丁。ワイバーンの数などでは到底それを攻略することはできない。それに加え、ワイバーン達は不幸にも竜として召喚されたことにより騎乗スキルを所有している。それに加え竜であることから強力な神秘さえ持っている。つまり何が言いたいのかと言うと。

 

 ワイバーンは羽虫のごとく、一瞬で薙ぎ払われてしまうということだ。

 

 

「「「……」」」

 

 

 シン、と静寂が町を包む。ぐだ男とランスロットは「まあこうなるか」と納得しているようだったが、私とマシュは知っていてもあの強そうな竜達が出オチみたいにあっさりやられたのに驚愕していた。相性が良いという話は聞いたが、まさかここまでとは。

 

 そして何の事前情報も無く、更にはワイバーンの強さをその身をもって知っていた町の人たちは当然私達よりも遥かに驚いている。何せ町を幾度も襲われ死の象徴として恐れていたワイバーンが、ものの数秒で全滅してしまったのだから。

 

 そしてそんな静寂を生み出したノッブは。

 

 

「なーんじゃ、つまらん。蜥蜴は蜥蜴じゃったか」

 

 

 心底その光景につまらなさそうに息を吐き、私の所に戻ってきた。

 次の瞬間、地面を揺らすような歓声が沸き起こる。

 

 

「うおおおお!?なんじゃなんじゃ!?何が起こっとるんじゃこれ!?ちょ、やめいやめい!頭を撫でるでないわ!おい立香、ぐだ男、マシュ!見てないでとっとと助けんか!」

 

「いやー……ちょっとこの中に入り込むのは怖いから、暫くもみくちゃにされててね!」

 

「流石でした、信長さん!」

 

「まあ、ほら。自分達の命を救ってくれたヒーローだから、こうなるのも当然だよね!」

 

「おぬしらぁ!?」

 

 

 結局その後、ノッブは町の住民たちからもみくちゃにされたのであった。

 

 




まあ、こうなるよねって(ノッブが召喚された時点で決まり切ってた運命)
なおランスロット単体でも割とどうにかなった模様、このカルデアの戦力高すぎない?

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