周回が、周回がぁ……!(投稿遅くなってすいません)
「……まさか、逃げられるなんてね。酷い屈辱だわ」
「おお、ジャンヌ。どうやら敵の陣営には、バーサーク・ランサーを倒す程の実力を持つサーヴァントがいる様子。何の手立ても無ければ、我々の障害になり得るでしょう」
「ええ、そうね。それに加え、あの黒い騎士。真名看破で確認しましたが―――彼は湖の騎士。竜殺しの逸話を持つ英霊です」
「なんと……!」
黒いジャンヌ―――竜の魔女は自身の居城たるオルレシアンに戻り、側近たる男と今後の作戦を話し合っていた。
男の姿は不気味な色のローブを着用し、眼を広く剝く蛙顔をした恐ろしい風貌の巨漢。彼は少し考える素振りを見せた後、竜の魔女に進言する。
「であれば、あの騎士に対して相性の良いサーヴァントを宛がうしかないでしょう。ファフニールが倒されたとなれば、大きな損失を生みます。しかし、我らが召喚した英霊の中で湖の騎士に相性がいいサーヴァントと言うと……」
「問題ありません。いないのであれば、また呼べばいいのです。ジル、召喚の準備を。新しいサーヴァントを呼びましょう」
「承りました、ジャンヌ。しかし、一体どのような英霊を召喚するおつもりで?」
「ふふ、簡単なことよジル。あの騎士がかつて王を裏切り、国の崩壊を作った男であるならばそれを恨む者も数多いでしょう。であるならば―――」
そうして、新たなるサーヴァントの召喚が実行される。召喚されたクラスは―――バーサーク・ランサー。
堅牢な鎧に身を包み、美しい白い手を持つ彼女は、狂わされ濁ったその目で自分を呼び出した主を見る。
その様子を見て、竜の魔女の口は邪悪に口を歪めた。
――――――
「―――ふぅ。はい、ここまで来たら安心かしら?」
「みたいだね。いやー、ヒヤヒヤしたよ!マリアがいきなり突進していくもんだったからね。といっても、あの状況ではそれが正解だったようだけどね」
私たちは現在、戦闘した場所から少し離れた森の中で休憩していた。
ピンチな場面で助けに来てくれたサーヴァント、ジャンヌ・ダルクとアマデウス・モーツァルトとマリー・アントワネットは自己紹介と事情の説明を行ってくれることになった。
「それじゃあ、まずは私からね!先ほども名乗りましたが、私の名前はマリー・アントワネット。召喚されたクラスはライダーです」
「そして僕の名前はさっきマリアが言ってくれたように、アマデウス・モーツァルトだ。クラスはキャスターだが、戦闘能力には期待しないでくれ。何せ、多少魔術を齧っていたとは言え戦士や王様じゃなくて音楽家だ。僕は天才だが、闘いなんてのは専門外でね」
「えーと、たしか……フランス王妃と、レクイエム作った人、だよね?」
「だね。ほかにも色々逸話とかはあるけど、それは俺があとで説明するよ。真名やクラスも大事だけど、俺としてはまずなんで助けてくれたのかとか、そういうのを説明してほしいかな」
「おいおい、そう焦るなって人形君。説明がいる存在としては、君の方も大概だと思うけど?」
「コラ、アマデウス!そんな言い方はダメよ。今は竜の魔女を倒すために協力しなくてはいけないのだから」
「……ま、そうだね。それじゃ、そっちの自己紹介もお願いできる?僕たちはまだ君たちが何者かも知らないんだよね」
マリー・アントワネットにたしなめられ、渋々と言った感じに丁寧に対応するアマデウス。彼はぐだ男を見て何か思うところがあるのか、ぐだ男に対して少し辛辣に接しているように思える。ぐだ男もそれに対し気にする様子も無く、まるでこうなることが当然だろうという風にアマデウスと接している。少し違和感を覚えたが、ひとまずは言われたように自己紹介をすることにした。
「では、私から。シールダー、マシュ・キリエライト。人理保障機関カルデアの職員にして、先輩の第一のサーヴァントです!と言っても、英雄の力を借りているだけなのですが……」
「うむ!では、次は儂じゃな!儂の名は織田信長。第六天魔王、魔王のクラスにて召喚された織田信長よ!……え、ちゃんとアーチャーって言えって?わかるからええじゃろそんなもん」
「……raaaans……root……」
「あ、この人はサー・ランスロット。バーサーカーで召喚されているので、喋ることはできませんが理性はちゃんとあるので安心してください!」
フンス、と少し誇らしげに名乗るマシュ。少しふざけながら名乗るノッブ。そして名乗ろうとするも唸り声しか上げられず、代わりにマシュに言ってもらうランスロット。最後に、私とぐだ男も名乗りを上げる。
「俺はぐだ男。立香のメンタルケアのために作られたロボットだよ~。よろしくね」
「えーと、私は藤丸立香って言います。カルデアで、マスターをやってます」
「マシュに信長にランスロット、ぐだ男と立香ね!よろしくね、皆!」
「よろしくお願いします、マリーさん」
「……今のマリーさんっていう呼び方、とても良いわ!」
各々の自己紹介が終わり、最後に白いジャンヌ・ダルクへと視線が集まる。ジャンヌは少し迷った後、意を決したように口を開いた。
「ルーラー、ジャンヌ・ダルク。その……恥ずかしながら、英霊としての自覚が少し薄いです。私が知っているのは、オルレアンがジャンヌ・ダルクを名乗るもう一人の私……便宜上、竜の魔女と呼びましょう。彼女がこのオルレアンに脅威をもたらしているということ。そして、私はそれを排除するために呼ばれたのだと、漠然と理解しているだけです」
「まあ!あなたがあの聖女ジャンヌ・ダルクなのね!生前から一度は話したかったと思っていたの。会えて嬉しいわ!」
「……私は聖女などではありません。私は自分の信じたもののために旗を振って、そして己の手を血で染めました。勿論それに後悔はありません。ですが、私は自分の行いがどれほどの犠牲を生むのか理解していなかった。自分の理想のために夢を見た田舎娘は、流れる血を見てもそれでも畏れることはなかったのです。……そんな私が聖女など呼ばれても、私自身が最も納得できません」
「たしかにそうかもしれないわ。けど、あなたが歩んだ道は、そしてあなたが作り出した物語は真実です。そしてそんなあなたを見て、私達は憧れを抱き、そしてあなたを忘れないのです。フランスの英雄、ジャンヌ・ダルクという名を。けれど、自分のことを聖女ではないというのであれば私もそれに倣いましょう!私はあなたのことをジャンヌと呼ぶから、あなたも私のことは是非マリーちゃんとお呼びになってくださいな」
「いえ、それは……。……分かりました。けど、流石に馴れ馴れしすぎるのでマリーさん、とお呼びさせていただきますね?」
「ええ、それでも構わないわ!」
流れるようにぐいぐいと相手に踏み込み、そして相手の心を開かせたマリー・アントワネットの手腕に思わず感嘆する。初対面の人間をああも褒め称え、そしてすぐに距離を縮めるなんて私にはとてもできないことだ。それに加え、彼女のそれには一切の悪意がない。あれがベルサイユの華と呼ばれた、マリー・アントワネットのコミュ力か……!
「ボッチの立香や俺じゃ、とても真似できないねあれ……少し羨ましいなぁ」
「う、うるさいなぁ。……まあ、事実だけどさ。私もあんな風になれてたら、友達とかいたのかな」
「ん~……その場合、時々虚空に向かって喋りだす変な奴っていうマイナスイメージがあるから、俺と喋る頻度を減らした上であんな風にできればワンチャン?」
「ならいいや。友達なんていなくても困らなかったし」
「マシュやサーヴァントにはあんなに仲良くなれるのに、なんで普通の人とは仲良くなれないのかなぁ……」
あまり長々とこの話はしたくないのでさっさと打ち切る。それに、ぐだ男がいなかった時期から私には友人なんて一人もいなかった。小学生時代はそれなりにいたと思うけど、引っ越しや親のことでそれ以降会うような人もいなかったし。中学生時代もまあ、あまり思い出したくもない記憶でいっぱいだ。私は初めから、友達とかを作るのには向かない性格なのだろう。
そんなことを考えている内に、アマデウスが説明をしだした。
「ふむ……おそらく、彼女も僕らと同様このオルレアンで起きた異常事態を解決するために聖杯に呼び出されたんだろうね」
『聖杯に?それはどういうことかな』
「僕もマスターが存在しないのに召喚された理由は分からなかったんだけど……」
そこから、アマデウスによる説明が始まった。
簡潔に纏めると、マスターがいないにも関わらず召喚されたサーヴァント達は、竜の魔女が所有していると思われる聖杯に呼び出された、野良サーヴァントと呼ばれるものらしい。通常より魔力配給は受けられないが現界する程度の魔力は与えられ、この地で起きている異常事態を解決させるために抑止力の介入により召喚されたのだとか。
こちらの事情はドクターロマンが一通り説明してくれた。アマデウスはふむと頷く。
「なるほど。ことは重大なようだね」
「フランスだけの問題ではないというのであれば、これは益々負けられません!」
「とは言っても、戦力差はなかなかに大きいからねぇ。それに加えて、あまりよろしくないニュースもある」
『よろしくないニュース?』
「サーヴァント以外にも脅威があるということだ。僕らが情報収集している中で、巨大な黒い竜が目撃されたという情報があった。ワイバーンのような亜竜ではなく、正真正銘本物のドラゴンがいるということさ」
『そんな!もしそうなら、サーヴァント以上の強敵だ。竜は幻想種の中でも最強格。それを打倒するには、竜殺しの逸話があるような英霊じゃない、と……あ、いたねそういえば』
そう言って、ドクターロマンはランスロットを見る。
「ランスロットって竜殺しの逸話があるんですか?」
『正確には火を吹く大蛇を殺したという逸話だけど、その逸話がランスロットの
「ほんと色々できるね、ランスロット」
「まあ円卓の騎士、それもその中でも最強の騎士だったからね。対サーヴァント戦では切り札みたいなものだしね。燃費は最悪に近いから、全力を出せる時間は限られてるけど。それに加えて、マスター殺しをなんとかできるマシュもいるし、大群相手にはノッブがいる。大抵の相手はどうにかなると思うよ?」
『アハハ、けどあんまり油断はしないようにね。サーヴァントには相性というものがある。もしランスロットや信長公に相性の良い敵をぶつけられたら……』
「ええ。それに加えて、竜の魔女も私と同様に、ルーラーのクラススキルを所持しているはずです。真名看破により、ランスロット卿が竜殺しの逸話を持つことも知っているはず。であれば、何らかの対策を立ててくるでしょう」
『ああ、そうか……。やっぱり一筋縄ではいかないね。ひとまず、今日のところは休んで―――!?皆、話の途中だけどワイバーンだ!どこかで戦闘しているようだ、急いで様子を見に行ってくれ!』
「ッツ!?了解です、ドクター!先輩、行きましょう!」
「うん!ぐだ男、乗って!」
ドクターロマンの案内に従い、戦闘が行われているという場所に駆けつける。そこでは、ワイバーンを相手に苦戦している様子の騎士達の姿があった。
騎士たちを率いている隊長格らしき人は戦えているけど、ほかの騎士はワイバーンに怯んでしまっている。このままでは全滅してしまうだろう。
「マシュ、ノッブ、お願い!ランスロットは悪いけど待機で!」
「arrrr……」
「うん、ほんとごめん!実はさっきの戦闘で結構疲れてるんだ!」
「まあ、あんだけ大立ち回り繰り広げてたらね……。宝具も使用しっぱなしだったし」
「燃費が悪いバーサーカーはそこで待っておれ。なーに、別に全部倒してしまっても構わんのじゃろう?」
「さっきはランスロット卿ばかり活躍してましたし、今回は出番をもらっていきますね。マシュ・キリエライト、突貫します!」
「ジャンヌさんとマリーさんとアマデウスさんもお願い!」
「了解です!」
「えー、彼女たちだけでいいんじゃないの?僕は弱いぜ?」
「愚痴ばかり言ってはいけないわ、アマデウス。さあ、行きましょう!」
一匹のワイバーンがこちらに気づき炎を吐くが、マシュがそれを盾で受け止め、炎を受け止められたことで少し硬直した隙にジャンヌが首に旗を突き立て仕留める。
他のワイバーンも強敵の存在に気づき一斉に襲い来るが―――。
「~~~~~♪」
「ほーら、コンサートの時間だ!即興だが君たちの耳には勿体ない位の出来栄えさ!」
「お、なんじゃ面白い演奏じゃの。であれば、儂からは火縄銃の合唱でもくれてやるかの。ほれ、世の中にはコップで演奏することもあるらしいし?」
マリーの歌と、アマデウスの魔術を交えた演奏によりバタバタと地面に落ちていく。撃ち漏らしもノッブが処理していき、ものの数秒でワイバーンの群れは全滅してしまった。
その様子を茫然と眺める騎士達だが、騎士の隊長と思われる男がハッと気づいたようにジャンヌを見る。
「ま、まさか貴方は。ジャンヌではありま―――」
パシッ、と何かをつかむ音がその場に響き渡った。
その音がする方向を見てみると、ジャンヌの前に立ちはだかったランスロットが、騎士の一人が投げたらしい石を片手で掴んでいる姿があった。
「竜の魔女、ジャンヌダルク……!貴様のせいで、我らの故郷、が……!?」
「―――」
ランスロットは凄まじい怒気を放ち、石を投げた騎士に視線をやる。騎士達はその気迫にたじろぎ、一歩後ろに下がる。
しかしジャンヌはそんなランスロットの前に出る。
「構いません、ランスロット卿。お気遣いは不要です」
「……」
「き、貴様が蘇ったせいで!故郷は竜の群れに焼かれ、家族も失った!幾人もの戦友は死に、そして今なおこの惨劇は続いている!全て、貴様のせいだ!!」
「やめろ貴様達!彼女は我々を助けてくれたのだぞ!」
怒りで我を失っている騎士達は、今にもジャンヌに襲い掛からんと息巻いている。ジャンヌはそれを少し悲しそうな顔で見つめ、踵を返す。
「行きましょう、皆さん。……この場にいては、皆さんも巻き添えを食らいます」
「けど……事情を説明しなくてもいいの?」
「事情を説明したとしても彼らが納得するとは思えません。彼らが混乱するだけでしょう。それに……」
ジャンヌは少し微笑み、優しい顔で言う。
「彼らが私への憎しみで立ち上がるというのであれば、それでも良いかと思えるのです。馬鹿な考えだとは分かっていますけど……それがきっと、私にとって何よりも大切なものだと思えるから」
「……そっか。分かった、それじゃあ―――」
「立香、下がって!」
ぐだ男が急に私の手を引っ張り、マシュが私の前に飛び出し盾を構える。私がさっきまでいた場所に小さな渦が発生し、それが弾け爆発する。
それは地面を抉り、私を庇ったマシュは後ろに吹き飛ばされる。爆発が収まるとそこには小さなクレーターを作られていた。もし私があれの射程範囲にいたら、と思うとゾッとしてしまう。
「流石にこれくらいは防げるみたいね。マスター殺しはあまり好きではないので安心しました」
声がする方を見ると、そこには青く長い髪をなびかせる、竜の魔女に付き従っていたサーヴァントの一人がいた。
青い髪のサーヴァントは手に持った錫杖のようなものを構え近づいてくる。
「……あなたは」
「初めまして、オルレアンの聖女、ジャンヌ・ダルク。あなたを試しにやってきました」
聖女のような美しい笑顔で、そのサーヴァントはジャンヌを見た。
強すぎるサーヴァントを召喚しちゃったから難易度少しアップです。
ランスロット相手にするとかこうでもしなきゃやってられないよね。