ぐだ男君と立香ちゃん   作:雷神デス

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ランスロの宝具の解釈とかノッブの宝具についてガバガバだったりとか色々とガバがあるけどこれ以上の物は今の自分には無理なので無理やり投稿です。
帝都聖杯奇譚見たい……ノッブの詳しい描写欲しい……()


閑話 織田信長VSランスロット

 

「ほー、シミュレーションルーム、とな?そんな便利なものがあるんじゃのぉ」

 

「と言っても、ドクターロマンから話は聞いているっていう程度だけどね~」

 

「それと、守護英霊召喚システム・フェイトっていう設備のおかげでサーヴァントは消滅したとしてもカルデアで記憶を保ったまま復活できるようになってるね」

 

「ほうほう、消滅しても平気、と」

 

 

 現在、私達はマイルームで雑談にふけっていた。メンバーはノッブと私、内容はカルデアの不思議設備についてだ。

 ノッブは特にシミュレーションルームに興味があるらしい。こんなものがあれば幾らでも強い兵士が生み出せたのにのぉ、とはノッブの談である。私も使ったことが無いので少し興味があった。

 

 

「せっかくカルデアに来たんじゃ、せっかくだし使ってみるかの!よし立香、ついてまいれ!」

 

「それはいいいんだけど……多分今は先客がいるよ?」

 

「先客とな?」

 

 

 私とノッブがシミュレータールームに着くと、そこにはモニターを見るダヴィンチちゃんとぐだ男がいた。

 ぐだ男はマイルームでの一件の後皆に紹介されたのだが、マシュは少し驚いた後仲良くなり、ランスロットは大して驚かずノッブは「なんかアイデアが浮かびそうじゃなこれ」などと言っていた。

 カルデアの一員としてのぐだ男の仕事は私のメンタルケアのはずだが、特に問題無しと判断された場合は職員の手伝いや、書類の整理などをしているらしい。

 

 

「おっと、立香ちゃんに信長公じゃないか。シミュレータールームを利用しに来たのかな?」

 

「そうなんじゃが~……なるほど、先客というのはあやつか」

 

「だね~。いやー、凄まじいもんだね。冬木では、ランスロットがいたからかなりスムーズに探索ができた。その分、魔力消費がでかすぎるという弱点はある。けど―――」

 

「このシミュレータールームではそれを心配する必要は一切無い、というわけさ。体の調子や戦力の確認のためにはうってつけだ。今は全力時の力がどれほどのものかテストしているんだけど……彼、まだまだ余力を残してるみたいだね。一応現在の難易度が現状出せる最大の難易度のはずなんだけどなぁ~」

 

 

 モニターには、冬木(まだ燃えてない状態らしい)を模した場所で大量の仮想敵を相手にゲームみたいに無双してるランスロットの姿があった。

 仮想敵のレベルは最大、下手をすればサーヴァントとも張り合える敵相手にもランスロットが苦戦する様子は一切無く、手に持った黒く染まった湖の剣で何十もの仮想敵を切り裂いていた。

 

 

「ふむ……のうぐだ男。あの騎士、名はランスロットと言ったか。もし儂とランスロットがやり合った場合、どっちが勝つと思う?」

 

 

 その質問に、ぐだ男は少し考えて。

 

 

「状況によるとしか言えないかな。ランスロットがセイバーとして召喚されていれば、宝具の特効効果が載るけど今はバーサーカー。騎乗スキルは持ってないし、あまり相性が良いとは言えないけど……それが無くても戦国時代の魔王、織田信長の実力は折り紙付き。どうなるかはマスターの腕次第、かな?」

 

「ほほう、なるほどのぅ。技術顧問よ。奴の全力を見たいといったな?」

 

「……ああ、なるほど。了解だ、少し待ってくれ。今いる奴が片付け終わった後で登場させよう」

 

 

 ノッブは不敵な笑みを浮かべ、シミュレータールームの待機室へと進んでいく。

 まあ、つまりはそういうことなのだろう。

 

 

「円卓最強の騎士と戦国時代の覇王って、普通じゃ考えられない闘いだね……」

 

「それが聖杯戦争の醍醐味ってやつだからね。立香、ちゃんと見ておきなよ?自分の使役するサーヴァントの性能を知るのは、良いマスターになるための近道なんだから」

 

「うん。けど、実際どうなるんだろ?ランスロットの凄さは冬木で知ってるけど、ノッブの強さはまだ何も知らないからなぁ……本人から簡単に紹介してもらったけど」

 

 

 ノッブ曰く、アーチャーとして召喚された彼女の最大の武器は相性ゲーにあるらしい。

 セイバーとライダーに刺さりまくる騎乗特効を持つ第一宝具と、高い神秘、例えば神性などを持つ相手には致命的になるほどの第二宝具。

 これらの内どれか一つでも刺されば、かなり優位に立って戦闘ができる、らしい。

 

 

「さて、二人とも雑談はそこまでだ。そろそろ始まるぜ?」

 

 

 そして、ランスロットのほかに何もいなくなった倉庫街に新たなサーヴァントが現れる。

 少しばかり目立ちたがりな彼女はコンテナの山の上に立ち、期しくもその対峙はかつてバーサーカーが参加したある聖杯戦争と酷似した状況だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

「―――――」

 

 

 精霊より委ねられた聖剣を片手に、湖の騎士は眼前に立つ強敵を前に唸り声を上げる。

 目の前の英霊がどのような逸話を持つのかは知らず、そしてどのような闘い方をするのかはまるで分からないが、確信できることは一つあった。

 まず間違いなく、この英霊は―――強い、と。

 

 

「いやー、いきなりすまんのう。儂も身体を動かしたいなーって思ってる時にちょうどおぬしがおったものでな。せっかくだからやり合おうと思ったんじゃが……やる気満々みたいじゃな」

 

 

 何も答えず、華奢な体に見合わぬ覇気を放つ少女に剣を向ける。

 今回のマスターとマシュ・キリエライトに宿った英霊の影響により多少狂化が薄れ理性が戻っていようと、それでも自身の本質は暴れ狂う狂戦士。

 円卓最高の騎士である剣士の姿ではなく、物言わぬ狂戦士として呼ばれたのであれば、自身がすべきことは一つ。

 故に、剣士の時であれば少しの戸惑いがあったであろうこの少女を相手にも―――この剣の切っ先が揺らぐことはない。

 今この場に必要なのは、目の前の少女がアーチャーであり、自身がバーサーカーであるという事実だけだった。

 

 

「まどろっこしい言葉はいらぬようで何よりじゃな!さて、異国の(つわもの)よ―――簡単に倒れてくれるなよ?」

 

「arrrrrrrrrrrrrr!」

 

 

 一撃で決着をつけるつもりで放つ全力での跳躍からの上段斬り。

 大地が割れ、爆発が起きたかのような風と共にアーチャーに渾身の一振りを見舞うが、それで倒れるほどの英霊で無いのは分かっている。

 ギリギリと鈍い金属音を鳴らしながら、アーチャーは腰にかけていた刀を抜き、聖剣の一撃を防いでいた。

 

 

「あ、こりゃダメじゃな。白兵戦は無理と見た!」

 

「―――!」

 

 

 いかに名刀と言えど、神造兵装である宝具の一撃を耐えるには無理があった。

 たった一撃でアーチャーの持つ刀は罅割れ、これ以上剣を交えるのは不可能だと悟るや否やすぐにその場を飛び退き自身の宝具である『三千世界(さんだんうち)』を展開。

 宙に浮かぶ大量の火縄銃が騎士に放たれる、が。

 

 

「……傷一つつかんとか、ちょっと出鱈目過ぎんかお主」

 

 

 銃弾の雨を避けながら、時には斬り落としながら、アーチャーに近づいていくバーサーカー。

 流石にいずこかの聖杯戦争で戦ったどこぞの桜色の髪をした剣士のような反則的な移動はしていないが、それでも十分にアーチャーの首元に迫るには足りていた。

 

 

「ぬおお!?ていうか今更ながらバーサーカーなのに魔力気にしなくていいの反則的じゃな!?」

 

 

 自身の両の手にも火縄銃を生み出し、数より質とばかりにレーザーのようにド太い銃撃を放つ。

 通常の弾丸よりも速いそれにバーサーカーは怯む様子も無く剣を盾に突進する。

 普通の剣であれば破壊されていただろうが、バーサーカーが手に持つ剣はかの騎士王が持つ聖剣と同じだけの強度を持っている。

 例え宝具による一撃であろうと、その剣が破壊されることは有り得なかった。

 コンテナの陰に隠れながら逃げ回り、火縄銃で迎撃するアーチャーとそれを追い詰めるバーサーカー。

 勝敗は殆ど決まったと思われた。

 

 

「―――なるほどのぉ」

 

 

 しかし、追い詰められて尚、アーチャーは笑った。

 その笑みにどこか底知れぬ気迫を感じ取ったバーサーカーが一気に勝負をつけようと銃弾が己の鎧を掠めるのも気にせず、防御を捨ててまで攻勢に移る。

 

 

「少しばかり様子見をしたが、うむ。地力では完全に儂の負けじゃネこれ!いやー、勝てる気がしないネ!」

 

 

 ケラケラと笑いながら、自身の首筋を狙った一太刀を壊れかけの刀で受け流す。

 刀は耐え切れずにガラス細工のように破壊され破片が飛び散るが、アーチャーは仕事を果たした愛刀の柄を褒めるように撫でた後、真の切り札を開放するために己が身に宿る魔力を開放する。

 

 

「種は割れた。お主のその剣の強さのな。察するに、その宝具は自身のステータスを向上させる効果とかがあるんじゃろう。そしてその宝具の効果に加え、狂化によるステータス上乗せにダメ押しとばかりに剣技は鈍らず、いやーマジで反則級じゃネ!最強の騎士と呼ばれるに足りる奴じゃ」

 

 

 ―――周囲一帯が火に包まれる

 

 まるで現在のマスターとともに駆け抜けた冬木のようになっていく様子に、バーサーカーの長年の経験で培った第六感が危険を告げる。

 このままでは不味い、なんとかしなければ負ける、と。

 だが、それを気づいたところでもう時は遅く、そしてそうなるようにアーチャーは戦場を整えた。

 気が付けば港湾区画から少し離れた河川敷近くまで誘導され、隠れられる場所も無くアーチャーの宝具から逃げられない場所まで誘き出されていた。

 

 

「だからこそ、残念じゃったな。その力こそが命取りよ」

 

 

 バーサーカーは気づく、自身の霊基が歪み、燃やされ、存在を保つことすら容易ではない状態になっていることに。

 そして、アーチャーの身体が神秘を殺す炎に包まれ燃え盛っていることに。

 

 

「三界神仏灰燼と帰せ―――」

 

「■■■■■!!!!」

 

 

 発動される前に勝負を付けなければならないとバーサーカーは理解し、自身の宝具である無毀なる湖光(アロンダイト)の真名を開放する。

 赤黒く染まった魔力が剣から発され、過負荷によって漏れ出た光はその剣が人間によって作られたものでは無いと示しているかのようだった。

 自身の全力の宝具を叩き込むため、地を蹴り剣を掲げ、そして―――。

 

 

「――――!?」

 

「我が名は第六天魔王波旬、織田信長なり」

 

 

 ―――バーサーカーの宝具は、たしかにアーチャーに命中した。アーチャーが左腕で受け止めようとしたが、腕ごと両断することも可能なはずだった。

 しかし、ありったけの魔力を注ぎ込んだはずの無毀なる湖光(アロンダイト)は鮮烈な笑みを浮かべる目の前の少女の腕の薄皮一枚すら切り裂けなかった。

 剣から漏れ出ていた光は消え失せ、周囲は完全にアーチャーの支配下と化した。

 

 

「さあ―――三千世界に屍を晒すが良い」

 

 

 ダメ押しとばかりに、周囲に展開された三千丁の火縄銃。

 これより、魔王の蹂躙が始まる。

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

「―――すごい」

 

 

 私はその光景に思わず息を呑んだ。

 あのランスロットが碌に反撃することもできず、追い込まれている。

 鎧が砕け、血が流れ、灼熱の世界から逃げ延びようと必死に動くが、その動きも今までのものと比べて格段に落ちている。

 それでも尚、食らいつき隙を伺ってるのは流石だが、これは……。

 

 

「彼女の宝具は神性と神秘を殺す、対神性特化の固有結界に似た空間を形成する宝具ということか。うん、無茶苦茶だね。相性ゲーにも程がある」

 

「固有結界?」

 

「魔術の最上級、術者の心象風景を形にし、現実に侵食させ塗りつぶす魔法に最も近い大魔術―――と言っても分からないかな?」

 

「簡単に言うと、自分の有利な空間に相手を閉じ込めるってことさ。色々と制限もあるし、強いかどうかは物による。だけど、この宝具は殆どの強力なサーヴァントに対し、強力な切り札になり得るものだ。彼女の場合、神性や神秘が濃い者ほど弱体化……下手すればそのまま消滅なんてこともあり得る、とびっきりのものだね」

 

「……それじゃあ、ランスロットは神秘ってのが滅茶苦茶濃いってこと?」

 

「ランスロットに宿る神秘は確かに高いが、それだけじゃないね。ランスロットがそれに気づけば、まだ勝負が分からないけど……今のランスロットのクラスはバーサーカーだ」

 

「バーサーカーのクラススキル、狂化は複雑な思考をできなくするデメリットを持つ。ランスロットは戦闘に関する技量は失われないけど、戦術に関しては別だ。狂化されて尚卓越した戦闘能力が発揮できると言っても、撤退するべきか否か、相手の弱点が何か、そういうことを考える能力が失われるというのは、マスターからの指示がないこの状況では致命的だね」

 

「バーサーカーはある意味、どのクラスよりもマスターの技量が問われるクラスだからね~」

 

「なるほど……」

 

 

 ぐだ男の言う『それ』が何なのかは分からないが、つまり今の状況はランスロットにとって致命的に悪いということは分かった。

 狂化のデメリットである技量低下を防げるランスロット凄い、と思っていたが、狂化とはそれほど簡単にデメリットを打ち消せるような安いものでは無いらしい。

 

 

「……うん、そろそろ決着が付きそうだ」

 

 

 モニターを見ると、ランスロットは既にボロボロの状態なのに対し、ノッブは傷を一切負っておらず、現在の優劣は誰が見ても明らかだった。

 ランスロットは燃え盛る町の中を逃げ続け、森の中にある城のような場所まで追い詰められていた。

 

 

「……あ」

 

「ん?」

 

 

 モニターを見ていたぐだ男が何かに気づいたように声を上げる。

 

 

「ねぇダヴィンチちゃん。シミュレーション内のステージを指定したのって、ランスロット?」

 

「ん?ああ、軽く意思疎通はできたからね。ある程度場所の指定なども彼自身に行わせたけど……それがどうしたんだい?」

 

「あーいや……そっか、この冬木は、1994年の……だとしたら、アインツベルン城には……」

 

「……おーい、ぐだ男~?」

 

 

 ブツブツと小さく、何かを確認するようにモニターをいじくり何かを確認している様子のぐだ男。

 それらが終わった後、ぐだ男はふぅ、とため息を付く。

 

 

「……あー、そっか。精霊の加護……危機的局面で優先的に幸運を呼び寄せるスキル。それが発動したのか?」

 

「えっと、どゆこと?」

 

「ん~……見てれば分かると思うよ?……ほんとに理性無くなってるのかなあのバーサーカー」

 

 

 そして、ランスロットとノッブの模擬戦は最終局面を迎えていた。

 

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「よく耐えたものじゃのぉ。こんな場所まで逃げ込むとは……じゃが、魔力を気にしないでいいのは儂も同じじゃ。幾ら時間を稼ごうと、儂の宝具が時間切れになることなぞ無い」

 

 

 宝具の影響でほぼ全裸のアーチャーが、城を前に肩で息をするバーサーカーに向け三千丁の銃を展開する。

 宙に浮かぶすべての火縄銃が一斉にバーサーカーに銃口を向ける光景に、バーサーカーは何を思ったのか兜が割れ露出した口元に笑みを浮かべる。

 

 

「終いじゃ」

 

 

 そして、銃が火を吹く―――その一瞬前に、バーサーカーは己の手に持つ宝具をアーチャーに向け投擲した。

 だが、それにもはや力が残っていないのを知っていたアーチャーは宝具ごとバーサーカーを蜂の巣にしようと一斉に銃弾を浴びせた、が。

 

 

「……何?あやつめ、どこに……」

 

 

 土煙が晴れた後、ランスロットの姿はどこにも無かった。

 ダヴィンチから終了の合図が出なかったことから、まだ生きているのは間違いない。

 本来であればすぐにでも気配を察知し追いかけることができただろうが、アサシンの気配遮断を使っているかの如く気配を察知することができない。

 いや、気配はするがまるで墨汁をぶちまけ滲ませたかのように周囲一帯に気配が拡散しており、この屋敷のどこかにいるということしか分からないのだ。

 バーサーカーの3つある宝具の一つ、『己が栄光の為でなく(フォー・サムワンズ・グロウリー)』の効果によるものだが、アーチャーがそれを知る由は無い。

 

 

「まあ良い。ここにいるのは分かるのであれば―――燻りだすまでよ」

 

 

 城に隠れたのであれば城ごとぶち壊せばいい。

 中に隠れているバーサーカーにトドメを刺すため、アーチャーは城を火縄銃で取り囲み絶え間なく銃弾を浴びせ続ける。

 幾多もの銃弾により破壊されていく城壁の中で、僅かに見えた黒い煙のようなものをアーチャーは見逃さなかった。

 

 

「そこか」

 

 

 制圧射撃が集中砲火に切り替わり、大量の銃弾が石の壁を破壊する。

 煙が晴れ、隠れていたバーサーカーの姿が露わになっていく。

 

 

「……いやいやいや、ちょっと待てお主」

 

 

 その姿に、アーチャーは思わずシリアス顔を崩し冷や汗を流す。

 バーサーカーの手には、小さい球体が握られていた。

 バーサーカーが城内のとある部屋で見つけた、とあるマスター(魔術師殺し)が第四次聖杯戦争の間保管していた大量の火器。

 その内の一つ、そのままでも人体には過剰なほどの火力が秘められたその手榴弾(グレネード)騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)によりDランク相当になったそれの安全装置を。

 

 

「ちょ、おま!?」

 

 

 ピン、と小気味よい音を出し、抜いた。

 その瞬間、辺り一帯が爆炎に包まれ、屋敷が崩壊していく。

 爆炎の中から咳をしながら出てきたアーチャーの身体は、予想外の攻撃により大きなダメージを受けていた。

 

 

「ふざけんなお主現代兵器使うとか反則じゃろ!?ていうかなんでこんな場所にそんなもん置いてあるんじゃ!」

 

「arrrr……」

 

 

 爆炎の中から、アーチャーと違い大したダメージを受けていないバーサーカーが狙撃銃と拳銃を両手に持ち現れる。

 スキル天下布武により、神秘の薄い物に対しては宝具やスキルの効果が薄れてしまうという弱点を持つアーチャーにとって、現代兵器を扱う英霊は天敵そのものだった。

 ましてや、神秘の塊(アロンダイト)を投げ捨てたことで神秘の濃さが薄れてしまい、ある程度アーチャーの宝具効果を逃れることができた最強の騎士を相手にするという状況に立ったアーチャーは。

 

 

「……いや無理ゲーじゃろ」

 

 

 半ば諦めの苦笑を浮かべながらも、最後まで戦うことにしたのだった。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「あれズルくないかの!?自分に有利なステージ選んで戦うとか、この円卓の騎士こすい!!」

 

「arrrr……」

 

 

 ランスロットの勝利という結果に終わった模擬戦の後、ノッブがランスロットの肩を叩きながら終盤の展開について抗議していた。

 ダヴィンチちゃんによるとあのステージはランスロットはかつて参加し、衝撃的な出来事があったことで脳裏に薄っすらと刻まれたとある聖杯戦争時の冬木市だったらしい。

 銃火器を使うマスターがその聖杯戦争に参加していたのは知っていたため、そのマスターの拠点であったあの城に行けば銃火器を手に入れられる見込みがあると踏んであそこに行ったのだとか。

 結果その予想は的中、ノッブに対して有効打を与える武器を手に入れたランスロットの形勢逆転という事態に繋がったそうだ。

 

 

「めーちゃくちゃ悔しいんじゃが。勝てそうだったのにインチキ宝具とステージギミック使われて負けるの悔しいんじゃが~」

 

「ほらほら、ランスロットも困ってるんだし拗ねない拗ねない。実際、あのランスロット相手にあと一歩ってとこまで追い詰めたのすごいと思うよ?」

 

「うんうん。ランスロットは騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)があったことに加えて、何故かあの状況下における最善手を打てるだけの理性がなぜかあったことで成立した結果だから、普通はあそこでノッブの勝ちだった。……ほんとなんであそこまで賢く立ちまわれたんだろ」

 

 

 そんな風に雑談していると、扉が開き職員の制服を着たマシュがやってきた。

 

 

「あ、皆さん!ここにいたんですね。今ドクターロマンが隠し持ってたお菓子でお茶会することになったんですが、皆さんも一緒に来ませんか?」

 

 

 ニコリ、と華のような笑みを浮かべるマシュに、ランスロットはどこか嬉しそうに応じた。

 まるで娘の成長を眺める父親のような優しい目に、ノッブとぐだ男は納得したように頷いた。

 

 

「あれか。娘にかっこ悪いとこ見られたくなかったとかそういうのか」

 

「だろーね。多分それのおかげで狂化の効果が少し落ちて、あんな戦い方できたんじゃない?」

 

「納得いかんのじゃが~!よしランスロ、お茶会終わったらもっかいやるぞ!最初から全力で行けば多分行けるじゃろ!」

 

「さーて、私もちょっと休憩しようか。ロマニが隠していたお菓子だ、格別に美味しいだろうからね」

 

 

 ノッブが騒がしくランスロットに絡み、ダヴィンチちゃんは伸びをしてお茶会がある場所に向かう。

 そしてマシュは、私に手を差し出して笑う。

 

 

「さあ、先輩もご一緒に!」

 

 

 その笑顔に思わず頬が緩みながら、私はその手を取ったのだった。

 

「うん!」

 

 

 

 

 

―――

 

 

「……うん。この二人なら、きっと大丈夫」

 

 

 最後にぐだ男が言った言葉の意味を、この時の私は理解できずにいた。

 

 

 


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