……眠ってしまっていたようだ。ぐだ男に体を貸している間は、どうにも居心地が良くて少しだらけてしまう。こう、身体を持っている故に感じる痛みや気怠さやその他諸々が全て無くなるので、どうしても落ち着いてしまう。
何回かそれでぐだ男に迷惑をかけてしまったので、気を付けなければな~と思っているのだけど、意思が弱いのであんまりうまくいかないものだ。
「フォウ?フォウフォーウ?」
それはそうと、妙に顔が重い。そして飛行機にいたはずなのに、なぜか寝ころんでる感覚があるんだけど。あれ、ぐだ男どこ行った?
「キュー?フォウフォーウ!」
「きゃぁ!?」
ほ、頬を舐められた!?ガバッと起き上がり、眼を開く。目の前にはウサギだか犬だかわからないフォウと鳴く謎生物、そして……。
「……あの、朝でも夜でもありませんから、起きてください、先輩」
「へ……?」
淡い桜色の髪をした、美しい少女が私を見ていた。
―――――――――――――
「……つ、つまり先輩は拉致同然にここに連れてこられたというわけなんですか!?」
「まあ、うん。ていうかあれは拉致そのものだと思う。参っちゃうよね、ほんと」
「被害者のはずなのにとても軽いですね、先輩」
私のことを先輩と呼ぶ少女、マシュによればこの場所の名称は人理保証機関カルデア。そしてこの施設はレイシフト適性というものが高い人材を欲しているらしく、あの献血でレイシフト適性が高かったらしい私は、無理やりこの施設に連れてこられた、と。
いろいろ唐突な情報が出て頭が混乱するが纏めればこんな感じだろう。
「おそらく、入館時のシミュレートを受けた際に、慣れない霊子ダイブで半ば夢遊状態でここまで来たのだと思います」
「な、なるほど」
夢遊状態っていうか、多分ぐだ男がここまで私の体で歩いてきたんだと思うんだけど……なんで私が起きる前に私の体から離れたんだろ?普段なら、私が寝てても私が起きるまで代わりに体を動かしてくれてたんだけど。
いつだって一緒にいた相棒がいない状況に、少しだけ心細くなってしまう。そんな私の不安気な様子を察したのか、マシュが元気づけるように言う。
「急にこんな場所に連れてこられて、こんな話を聞かされても困ってしまうと思います。けど、安心してください!先輩がこのカルデアに慣れるよう、私が先輩のサポートをします!」
「えっと、それはうれしいんだけど。……なんで先輩?私の立場的に、マシュのが先輩なんじゃ…‥ってわぁ!?」
「先輩!?」
マシュと話していてずっと疑問だったことを口にしようとしたとき、視界の端から見知った顔がにゅっと顔を出す。私を置いてどっかに行ってたらしいぐだ男だ。
ぐだ男は舌をペロリと出し、『やっちゃった☆』とでもいうように頭をコツンと叩く。その様子を見て青筋が立った私は悪くないと思う。
「せ、先輩大丈夫ですか!?もしや、まだ霊子ダイブの影響で体調が……」
「だ、大丈夫!大丈夫だから、うん!それで、私はこれから何すればいいのかな!?」
頭のおかしい人だとか思われたくないので急いで話を逸らす。ぐだ男はいつものように私の横でピタリと待機し、慌てる私の様子を見てニコニコとほくそ笑んでる。この野郎。
「そうですね、今からオルガマリー所長による説明会が行われます。そこでおおよその説明をオルガマリー所長がしてくださるので、それに出席した方がいいと思います」
「そっか。それじゃあ、さっそく行ってみるね。……えーと、案内してもらっていい、かな?」
「勿論です、先輩!」
先導してくれるマシュに付いていきながら、マシュに聞こえないようぐだ男と小声で話す。
「ちょっと、今までどこに行ってたの?なぜか廊下で寝てたんだけど、私」
「アハハ、ごめんごめん。ちょっと用事が出来たからしばらくの間留守にしてたんだ。それで、そっちはあの子と仲良くなったみたいだね?」
「仲良く……なってるのかな?マシュは私に良くしてくれてるみたいだけど、なんで先輩って呼ばれるのかも分からないし……」
「ん~、そうだね。……立香に危険性が全く感じられないから、とか?」
「なんでそれが先輩って呼ぶ理由に繋がるのよ……」
「さあね?あ、ほら立香。あんまり喋ってるとマシュに不審がられるよ?喋るなら俺みたいな男じゃなくて、かわいい女の子と喋りなよ」
人前で喋るとたしかに不気味なので、ひとまず喋るのをやめる。しかし、初対面のマシュに話を振るのは少し気恥ずかしいし、実は滅茶苦茶眠いので話すのをやめると立ったまま寝てしまいそうだ。
「先輩、着きました。……その、本当に大丈夫ですか?」
「へーき、へーき……」
あまり働かない頭を無理やり動かし、マシュに促され空いている席につく。オルガマリー所長というのはこの白髪の美人さんだそうだ。若いのに所長なんてすごいなぁ。
「時間通りとは行きませんが、全員揃ったようですね。特務機関カルデアにようこそ。所長のオルガマリー・アニムスフィアです」
「あ、友達いない説がある所長だ」
「……!」
あ、あっぶない!?急に何を言い出すんだこのぐだ男は!たしかにきつそうな性格で友達少ないかもしれないが……!不意打ちで変なことを言うのはやめてほしい、ほんとに。
「……次の遅刻は許しません。私の命令は絶対ということを覚えておくように」
しまった、吹きだしかけたせいで睨まれた。おのれ、ぐだ男のせいだ。だがおかげで意識は覚醒した、これならなんとか説明が終わるまで堪え……。
「では話を戻します。あなた達は各国から選抜あるいは発見された……そこのあなた、なんでそんな笑いを堪えているのかしら?」
「い、いえ……!そんな、ことは……!」
こいつぅ!?所長の腹から真顔で出てくるんじゃない!なんだ、なんでこのタイミングで私を笑わせようとするんだ!?ダメだ、これ以上何か来たら堪えられない……!
「呆れたわ。どうやらあなたはこの状況を理解できていないようね?いい、あなたは何千、何万の確率の人間の中で幸運にも~~~~」
不味い、所長の話が全然頭に入ってこない。ぐだ男が次何をするのかに意識が割かれる。おのれ、こいつ一体何をするつもりだ。
ぐだ男はおもむろに何かを思いついたように、所長のほぼ真後ろに立つ。そして、一歩、また一歩と所長に近づき、その身体をくっつけさせ。
「女体化した俺」
「ぶっはぁ!?」
顔だけ突き出し、オルガマリー所長の体にぐだ男の頭がくっついているとかいう状況に思わず噴き出した私は、その後所長にびんたされて追い出されました。
――――――――――――――――
「だ、大丈夫ですか?先輩」
「大丈夫だよ、マシュ。滅茶苦茶痛いけど」
横で爆笑するぐだ男を思い切り殴りたい衝動に襲われながらも、なんとか耐え忍ぶ。お前家に帰ったら覚えとけよ、ゲーム全部捨ててやるからな。
何はともあれ、私は最初のミッションとやらから外され自室待機を命令されてしまった。マシュに案内され、自室に向かっている途中だ。
「それにしても、なんであそこで笑ってしまったんですか?私には笑う要素が分からなかったのですけど……」
「あーいや、ほら。思い出し笑いというか、なんというか。人には笑いたくなる時があるものなんだ」
「なるほど、そうなんですね。勉強になります!」
あれ、鵜呑みにしちゃった?なんだか幼い子供をだましているみたいでとても罪悪感が……!
「わー、悪い大人だぁ」
シャラップ元凶。
「お待たせしました、こちらがマイルームです。できれば状況説明をしておきたいのですが……」
「ああ、いいよいいよ。適当な人に聞くから。あの部屋に戻らなきゃいけないんでしょ?マシュはたしか、えーと」
「Aチームですね。先輩に負けず劣らず、個性豊かな人が揃っていますよ」
「わー、私もうマシュから変人認定受けてるんだ~」
「ふふっ。それでは、私はこれで。運が良ければ、またお会いできると思います」
「うん。またね、マシュ」
さて、マシュと別れたしこいつに散々文句を言ってやろう。ここに来てからの災難は9割こいつのせいだ、許してもらえると思うなよぐだ男……!
そう意気込みを新たに扉を開けると。
「はーい、入ってまー……ってうぇええええ!?誰だ君は!?ここは空き部屋だぞ、僕のさぼり場だぞ!?誰のことわりがあって入ってくるんだい!?」
……そこには、白衣を着た男性がおかし片手にくつろいでいる姿があった。
「女の子の部屋でくつろいでいる男。なるほど、ギルティ!」
「もしもしポリスメン?」
「ちょっと!?」
怪しい男を見かけたら110番、これ常識です。
レなんとかさんがなんでいなかったのか?
なんででしょうねHAHAHA。
ニ騎目のサーヴァント、誰がいい?
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佐々木小次郎(セイバー)
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織田信長(アーチャー)
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マンドリカルド(ライダー)
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岡田以蔵(アサシン)
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アンリマユ(アヴェンジャー)