ぐだ男君と立香ちゃん   作:雷神デス

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冬木到着&サーヴァント初召喚!
設定はぐだ男の時点でいろいろあれですが、二次創作ということで……()


立香ちゃんは寂しがり/ぐだ男君は神出鬼没

 燃え盛る業火、崩れ落ちる家屋、泣き叫ぶ誰か。

 現実感の無い光景に、あの時の私は何もできなかった。

 分かったのは、たった二つ。私だけがあの火事から助かったこと。そして、私の両親を含む大勢の人が、この火事が原因で亡くなったこと。

 

 誰も助けてくれなかった。誰かに助けを求める方法なんて知らなかった。何の力も持たず、反撃もできず、ただ自分が悪いのだと思い込むことでしか生き延びられなかった。

 両親が残してくれた遺産や祖父母が送ってくれる仕送りで金にはあまり困らなかったが、それ以上にあの火事で助かったのが自分一人であるという事実だけが、私には重くのしかかった。

 

 ずっとずっと、そうやって生きていくのだと思っていた。

 

 

『俺が見れるの?ラッキー、ようやくまともにコミュニケーションが取れるね!』

 

 

 あいつが現れるまでは。

 

 

『ほらほら、涙なんて流さない。藤丸立香は涙よりも、笑顔が似合う女だろ?』

 

 

 私が悲しんでる時も、笑ってる時も、泣いている時も。いつでも一緒にいて、それが当たり前になっていた。本当の名前も、なぜ幽霊になっているのかも、なぜ私にだけしか見れないのかも。全部が全部分からなかったけど、それでも良いと思えるくらいあいつと一緒にいるのは居心地が良くて、救われた気がした。

 

 

『……ごめんね、立香。お別れ、みたいだ』

 

 

 だから、こんな夢は間違いだ。

 

 

『お前なら、この先もずっと俺がいなくたって進んで行ける』

 

 

 ずっと一緒だって、約束したんだ。

 

 

『……バイバイ、立香』

 

「―――私を、置いて行かないでよ!!」

 

 

 

―――――――――

 

 

「フォーウ!!」

 

「……先輩?」

 

「え、あ……」

 

 

 夢から覚める。最悪な目覚めだ。すぐに、周りを見渡して―――ぐだ男がいないことに気付く。

 心臓が早鐘を鳴らし、汗がドッと噴き出す。まさか、そんな。

 

 

「大丈夫ですか!?やはり、初めてのレイシフトの影響で何か異常が――」

 

「いや、大丈夫。……うん、大丈夫、だよ」

 

 

 落ち着け。ぐだ男が私を置いて消えるなんて、あるもんか。あいつがふらりとどこかに行ったことなんて、一度や二度じゃなかったろう。何かが理由で、少しの間離れているだけだ、きっと。

 改めて、周囲を見渡す。落ち着いてみてみると、辺りはどうやらカルデアの管制室ではないようだった。業火が広がるという点においてはあまり変わりないが、こちらは部屋ではなく外、それも見た感じ町のように思える。

 そして、マシュとフォウ君。フォウ君はまあ、いつも通りの謎生物だが―――マシュがかなり様変わりしてる。こう、なんて言うのだろうか。ピッチリとした、露出の多い鎧?みたいなのを着て、巨大な盾を軽々と持っていた。

 

 

「マシュ、その恰好どうしたの?それに、ここは一体……」

 

「はい。先輩もおそらくは混乱しっぱなしだと思うので、説明をしたいところなのですが―――」

 

 

 どこからか音が響く。その方向を見てみると、なんと骨が歩き、そして武器を持ち自分達のところへと歩いてきていた。どんなファンタジーよ、と思うが私の相棒もそんな変わらなかったっけ。

 

 

『GI、GAAA!!!』

 

「先輩……いえ、マスター。指示をお願いします!この状況を二人で切り抜けしょう!」

 

「ま、マスター?指示?」

 

 

 何がなんだか分からないが、なんにせよこの状況を切り抜ける、というのには同意だった。それに、指示にはほんの少しだけ自信がある。私がどれくらい、あの便利幽霊(ぐだ男)を顎で使ったと思っている!伊達に幽霊と長く付き合ってはいない!

 

 

「分かった!行くよ、マシュ!」

 

「はい!」

 

 

 戦闘などしたことは無いが、ぐだ男がやってるアクションゲームを見てなんとなくだがやり方は分かる。まず、マシュの武器?はあの大盾らしい。

 それに対し、あの骨……スケルトン達が持っているのは剣。そして見るからにボロボロなあの刃が、マシュの持つ盾を壊せるとは思えない。ならば。

 

 

「マシュ、まずは盾を構えて突進!その後、相手に背後を取らせないように動いて!」

 

「―――!了解です!」

 

 

 ボッ!音にすればそんなくらいの勢いで、マシュが地を蹴りスケルトン達に突進する。猪も真っ青なその一撃を喰らったスケルトンの内1体は、バラバラになり砕け散る。

 続く2体目がマシュを切り裂かんと剣を振るが、前方からの攻撃ほど受けやすい物も無い。簡単にそれを防ぎ、剣を弾き盾で殴りつける。

 かかった時間は5秒、いやもっと短いか―――瞬殺だった。

 

 

「ふぅ、戦闘終了。不安でしたが、なんとかなりました。素晴らしい指示でした、マスター」

 

「う、うんお疲れ。けど、今のは一体」

 

 

 明らかに、人間の出していい力ではなかった。まるで漫画やアニメのような強さ。あのスケルトン達はあまり強そうには見えなかったが、それを抜きにしてもマシュの戦いは常軌を逸していた。

 

 

「はい。それは、私が―――」

 

『ああ、やっと繋がった!もしもし、こちらカルデア管制室だよ!聞こえるかい!?』

 

「あ、ドクターロマン!」

 

『立香ちゃん、やっぱり君もレイシフトに巻き込まれていたんだね。コフィン無しでよく意味消失に耐えてくれた。けど、マシュ!その恰好は一体!?』

 

「はい。この恰好は―――」

 

『ハレンチすぎる!僕はそんな子に育てた覚えが無いぞ!?』

 

「は、ハレンチではありません!これはいろいろ事情があって―――」

 

 

 その後のマシュやロマンからの説明を簡単にまとめると、マシュがああなったのはとある英霊という幽霊の上位互換みたいな存在から力を借り、その結果マシュ自身がサーヴァントというのになったというものだった。ちなみに幽霊の力を借りられるのはマシュだからであって、私じゃダメらしい。ぐだ男の力を借りて戦うとか面白そうと思ったのは内緒だ。

 

 

『なるほど、しかしマシュがサーヴァントになったというのなら話は早いね。立香ちゃん。今現在、マスターとして活動できるのは君しかいない。君には、マシュのマスターとして……そして、人類最後のマスターとしてその特異点で活動してもらわなきゃならない』

 

「えっと……」

 

『何も説明できず、こんなことになって申し訳ない。けど、安心してくれ!君はサーヴァントという、人類最強の兵器を持っている』

 

「あの、ドクター。人類最強、というのは言い過ぎかと。他のサーヴァントの方ならともかく、宝具を使用できない私では……」

 

『立香ちゃんにサーヴァントがどれほどの存在かを理解してもらえればいいんだ。ただし、サーヴァントには弱点がある』

 

「弱点?」

 

『サーヴァントは、魔力の供給元となる人間……マスターがいなければ消えてしまうんだ。君はマシュと契約を結び、マシュのマスターとなっている。それはつまり、君がいなければマシュが活動できなくなるということだ』

 

「すいませんドクターロマン!ほとんど分かりませんね!」

 

『うん、だろうね!ごめんね!?ほんとなら色々説明したいんだけど、どうやらシバが安定してないみたいだ!もうすぐ通信が切れる!』

 

 

 うん、相棒の存在である程度怪奇現象に慣れてる私だけど色々と新ワードが多すぎるからね!一気に理解できるわけないでしょこんなの!自慢じゃないけど私はぐだ男より勉強は苦手なんだぞぉ!

 

 

『いいかい、二人とも。そこから2キロほど移動したところに霊脈の強いポイントがある。そこでなら通信も安定するだろうから、まずはそこに行ってほしい。いいかな、くれぐれも無茶な行動は控えるように。こっちでもできる限り早く電力を―――』

 

「……通信、途切れました」

 

「フォウフォウ」

 

「……えーと、とりあえず指示された場所に行こうか、マシュ」

 

「はい。これからもよろしくお願いします、マスター」

 

 

 ……やっぱり、視界の端であいつが茶々を入れてこないと落ち着かないな。

 

 

 

―――――

 

 

「キャアーーー!?」

 

 

 マシュ、フォウ君と一緒に指定されたポイントに向っている途中、甲高い女性の悲鳴が聞こえた。この声、たしか管制室で聞いた事がある。所長だ!

 

 

「急ぎましょう、先輩!」

 

「うん!お願いねマシュ!」

 

 

 マシュに抱えられ移動した先には、やはりというかスケルトン達に追いかけられている所長の姿があった。生き残りが私たち以外にもいたことに少しホッとする。

 

 

「なんでなの!?なんで私ばっかりこんな目に合わなきゃいけないのよ!レフ、助けてレフ!いつだって貴方が助けてくれたじゃない!」

 

 

 大事な人に助けを求める姿が、大事な人が隣にいない恐怖が。今の自分と重なった。

 うん、このまま見ていられるわけもない!

 

 

「マシュ、GO!」

 

「はい!」

 

 

―――――

 

 

「ちょっと、なんで貴女みたいな一般人がマシュと契約してるの!?サーヴァントと契約できるのは一流の魔術師だけ、それがなんで私の顔見て笑うような子が!手の令呪を見せびらかして、そんなに私に自慢したいの!?」

 

 

 助けたらなぜか怒られました。私はあなたの顔を見て笑ったのではなく相棒の姿を見て笑ったのです、と訂正したいけど頭のおかしい人と思われるだけというジレンマ。おのれぐだ男!

 あと今更だけど、手に赤い模様がついていた。いろいろと大変すぎて気づかなかったけど、これは令呪というらしい。

 

 

「お、落ち着いてください所長!経緯を説明しますと―――」

 

 

 マシュが簡単に私たちにがここに来た経緯を説明する。それを聞いて、納得はしていないがとりあえず矛先を納めてくれたようだ。

 

 

「……なるほどね。だいたいのことは理解したわ。それで、カルデアと連絡を取るためにベースキャンプを探していて、ここにたどり着いた、と。……あなた達と私がここに来れた理由は、コフィンに入ってなかったから、でしょうね」

 

「というと?」

 

「コフィンにはレイシフト成功率が95%以下になると電源が落ちる機能、要はブレーカーがあるの。あの事故でそれが95%以下になったことで、コフィン内のマスター達はここに来ることはなく、コフィンの外にいた私たちが生き残った、ということなのでしょう。おそらく、ここにいるのは私たちだけよ」

 

「流石の推理です、所長」

 

「頼りになります!」

 

「ふ、ふん!あなたと違って私はエリートだからね!ここが違うのよここが!」

 

 

 トントン、と頭を叩くオルガマリー所長。なるほど、この人との付き合い方が分かったぞ。褒めておけば機嫌が良くなるからおだてれば割と良好な関係を築けると見た。かわいい。

 あとこれは本人に言ったら怒られそうだけど、大事な人との関係がすこーしだけ似てる気がする。この人と相棒トークをすれば案外仲良くなれるかもしれない。

 

 

「何はともあれ、藤丸立香。あなたにはここから私の指示に従ってもらいます。マシュ、盾をこの地面に設置しなさい。宝具を触媒にして、召喚サークルを設置するわ」

 

「了解しました、所長」

 

 

 でかい盾、宝具というらしいものを地面に設置する。すると盾を中心に青い魔法陣のようなものが広がり、クルクルとその魔法陣が回り始める。

 

 

「これは、カルデアにあった召喚実験場と同じ……」

 

『シーキュー、シーキュー。もしもーし!よし、通信が戻ったようだね!これで―――』

 

「ちょっと!なんであなたが指揮を執ってるのよ!レフは、レフはどうしたのよ!?」

 

『げぇ、所長!?』

 

 

 その後、ドクターロマンがキレられたり情報交換が行われたり所長が指示出したりドクターロマンがキレられたりした。

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

「さて。ひとまず、この特異点を調査することになったけど。……マシュ一人だと、少し戦力が心配ね。少し不安が残るけど、サーヴァントをもう一騎召喚しましょう」

 

「サーヴァントを召喚、ですか?」

 

「藤丸立香。サーヴァントについてはどれくらい知識があるかしら?」

 

「てんでさっぱりです!」

 

「でしょうね」

 

 

 所長がため息をつく。申し訳ないが、一から説明してくれないと何も分からないので説明してもらう。

 サーヴァントとは魔術の中でも最上級の奇跡、神話や伝説で語られる英雄を召喚し使い魔として使役し、兵器として運用する超すごい儀式らしい。

 

 

「凄いざっくりにまとめたわねあなた。クラスの説明とかちゃんと聞いてた?」

 

「聞いてましたけど、あんま理解できませんでした……」

 

「しょ、しょうがないですよ先輩!色々と難しい魔術用語が多かったですしね!」

 

「ちょっと!それ私の説明が悪いってこと!?……まあ、いいわ。藤丸立香、まずは召喚サークルの中心から少し離れた場所で、私が言う詠唱を唱えなさい」

 

「所長がそのサーヴァントを召喚すればいいのでは……」

 

「触媒も設備も無い場所でサーヴァント召喚なんて私がするわけないでしょう?サーヴァントの中にはマスターの命令に反する英霊もいるし、触媒が無いとそういう英霊も召喚される可能性が出てくる。私のような魔術師には、最高の環境が整って初めて―――」

 

「所長はマスター適性が無いので、サーヴァントを召喚することが難しいんです」

 

「ちょっとマシュ!?」

 

 

 適性とかがあるんだな、と納得しながら怒るオルガマリー所長をなだめ、詠唱を行う。

 ゆっくりと、所長の詠唱を真似し腕に力を籠める。不思議な感覚が手に集まり、何かが焼けるように熱くなる。少しだけ苦痛が出るが、それを堪え詠唱を続ける。

 

 

「抑止の輪より、来たれ。天秤の守り手よ―――!」

 

 

 ―――右手の令呪が光り輝く。

 

 魔法陣の中心に表れたそのサーヴァントは、黒い鎧を身にまとう騎士。殺意と憎悪によって身を焦がし、ただ一つの目的のためにあらゆる全てを打ち砕く狂気に身を落とした最高の騎士。

 そう、それは―――。

 

 

「Arrrrrthurrrrr!!!」

 

「わああああああああ!?なんかすっごい何かを吸い取られてる気がする!?なんかすっごいだるい!?」

 

「ば、バーサーカー!?落ち着いてください、先輩!とりあえず真名の確認などを……!」

 

「ちょっと、暴れさせないでね!?令呪使ってでもさっさと沈めなさい!」

 

「アハハ、ランスロットかぁ。大変そうだね~」

 

「いやいつの間にいたの!?」

 

 

 いつの間にか私の後ろにいたぐだ男に怒鳴りながら、私は何か……多分魔力ってのが吸い取られる感覚で本日三度目の眠りについたのであった……。

 

 

 




というわけで初サーヴァントは魔力ものっすごい勢いで吸ってくるバーサーカーでした。
頑張って生き残ってね、立夏ちゃん!

ニ騎目のサーヴァント、誰がいい?

  • 佐々木小次郎(セイバー)
  • 織田信長(アーチャー)
  • マンドリカルド(ライダー)
  • 岡田以蔵(アサシン)
  • アンリマユ(アヴェンジャー)

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