Unfiltered ーー偽りなく 原作者Aiyumi 作:惣江 羽奈香
Unfiltered Chapter 3
第三章 三日目
九月十一日 日曜日
昨夜明智は久しぶりによく眠れた。ゆっくりと目を開き、日差しに照らされた壁が目に映る。もう、朝だ。仰向きして、明智は昨夜の夢を思い出す。それは現実で起こるはずがない夢だった。夢の中の明智はまだ幼く、純粋な心を持っていた。彼は晶と楽しく遊んでいた。友達みたいに喧嘩した。決して、お互いを嫌っているからではない、単なる勝利への執着による喧嘩。そのあと、仲直りして、また一緒に遊んだ。自分の過去が知られても、何も変わらない。晶は明智のことを心配していると言った。弱さを隠せなかった彼に、泣いても大丈夫だと言ってくれた。
「うん?明智君?」
すぐ隣から晶の驚いた声が聞こえる。この声を聴いて、明智はやっと自分がどこにいるかに気付く。彼は今、晶の隣で横になっている、ここは彼女のベッドだ。
「ああ!」
明智は驚いて、ベッドから落そうな勢いで後ろにさがる。
「あ、晶!ごめん。」
明智の顔は恥ずかしさで真っ赤に染まり、何を言うべきかさっぱりわからなくなる。
「本当に、ごめん。」
明智は視線をそらし、晶と目を合うことを避ける。これは夢の中の晶ではない。明智の恥ずかしい過ちを許してくれる、蔑まされない晶ではない。
「やめてよ。」
晶の声は何処か不機嫌らしい。
「本当、ごめん。何があったかさっぱりわからないんだ。」
明智が座り上げ、ベッドから降りようとする。
「もう、二度とこのようなことが……」
「明智君がここにいたことは知らなかったし、前見た時ここにいなかった。でも、言いたいことはそれじゃない。」
晶は座り上げ、不意に明智の肩に手を伸ばす。
「私が言いたいのは、もう謝らないで、堅苦しいよ。私に謝る必要はない。大体今まで全然気づかなかった。つまり明智君は何もしなかったということ、でないと絶対わかるもん。」
何を答えればいいかわからなくなった明智はその場に凍り付く。晶の手は彼の肩から離れ、頭に向かう。彼女の手の感触に昨夜の夢を思い出させる。あの現実では起こるはずがない夢。でも、なんで、なんで彼女にこんな迷惑をかけても、そう優しく接してくれるだろう。
「6:45」
晶は突然言い出す。明智は一瞬その数字の意味を理解できなかった。その手に持っているスマホを見て、明智はようやく晶は時間のことを話していることを認識する。
「まだ早いね、もう少し寝る?」
「え。」
明智は目を擦りながら言う。
「こんなことが起こった後、できそうにないよ。」
「私も目が覚めた。少し話する?時間つぶさなきゃ。」
不本意ながら明智はその提案を受け入れる。順番でシャワールームを使い、明智は晶の帰りを待ちながら、昨夜のことを思い出そうとする。確か、宿題をやろうとして、それで薬の副作用が回ってきて、眠くなった。そのあとのことははっきり覚えていない。記憶は晶に引っ張られ晩御飯を食べに行くところで途絶えた。
晶が部屋に戻り、ごく自然に彼の隣で腰を下ろす。避けられると思っていたのに。
「晶。」
明智は少し気まずく声をかける。
「昨夜は、その、薬が回ってきて、実は、あまり覚えてないんだ。一緒に晩御飯を食べに行くところまで覚えてるけど、それ以上は何も……迷惑を掛けたなら、マジでごめん。」
今度は晶の爆笑に驚かされる。
「大丈夫だよ、少し拗ねるところはあったけど、全然迷惑なんかじゃなかったよ。」
恥ずかしそうに明智は下に向く。
「ごめん、本当に何も覚えてないんだ。」
「そう……」
なぜか、晶は少しがっかりしているよう。
「ううん、何でもないや、あ、でも、ティシューを返してね。」
「え!」
それがまるで記憶を蘇る魔法の言葉みたい。部屋に置いてあるゴミ箱を見ると、中に大量なティシューが捨てられている。え、あれって、夢じゃなかったの?本当に晶の前で泣き崩れたのか?彼女の慰めと抱擁は現実だったのか。
「なんか思い出した?」
晶の声は明智を自分の考えから引っ張り出す。
「本当に……」
「泣いた?そうだよ。」
「じゃ、じゃ僕が本当にあんなことを……で、君は本当に僕にあんなことを……」
もう何を話すべきかをわからなくなる明智の言葉が成り立っていない。
晶はそれで笑いだす、何か明智も彼女につれて笑い始める。
「夢じゃないと言ったでしょう。」
「晶。」
また泣きそうになる。ここで泣きだし、晶に慰められるなら、昨日のことが現実であると証明させるんじゃないかな。
でも泣く必要はなかった。晶は腕を彼の肩に巻く。
「もう一度言うね、看病ができてよかった、それに、また必要があったら、いつでもやるよ。」
口を大きく開けて、二雫の涙が零れ落ちる。それを手で振り落とす明智の心臓が跳ね上がり、ぬくもりに満たされる。まるで昨日晶に心配していると言われている時みたい。これこそ彼が求め続けていたもの――他人に認められることである。そうだ、彼が探し続けてきたぬくもりは今ここにある。誰かに受け入れられ、誰かに愛されること。ようやく手に入れた。これを探し求めていたが、もう彼にこれを得る資格なんかない。にしても、これ以上の喜びなんて存在しない。
朝ごはんを食べるため明智と晶は一緒にレストランに向かう。食事をしながら、明智は晶に声をかける。
「晶、君はまだ未来を恐れているの?」
「え?」
「前に言ったよね、冤罪をかけられ、二度と名誉を取り戻せない、あるいは、取り戻せてもまたあっという間に失うかもしれないって話。今も、それを恐れているの?」
「時々かな。昔ほどじゃないよ。でも、私は前に進むよ。すべてを失ったわけじゃないし、希望がある限り、屈するつもりはないから。」
恐ろしい考えが明智を襲う。もし、晶は本当に怪盗団の一員で、獅童の罠に嵌められ、彼女が恐れている未来はいずれ現実になる。わずかな一瞬で全てが奪われる。そんなことを考えるだけで、胸が詰まりそうな気がする。彼女にそんなことをあわせたくない、彼女はこんなことにあうべきではない。
「怪盗団。」
明智は小さな声で呟く。
「え?」
何とかごまかすしかない。
「あ、ごめん。ちょっと考え事してた。困難に立ち向かう時、人は諦めるか、何かに思いを託し、頑張り続ける。たとえば、宗教に思いを託す人がいる。晶は怪盗団に思いを託していると言うことかな?」
晶は少し微笑む。
「そうかもね。明智君はどうなの?思いを託せるものはある?」
明智は必死にその答えを探した、しかし何も見つからなかった。今まではそんなことを聞かれるたびに、きれいごとで誤魔化している明智だが、それはそのような言い方は人に良く思われるからに過ぎない。しかし、今の明智はきれいごとを言おうとしない。例え晶はその答えに不満を抱いても、正直に答えたいと思う。
「わからない。」
しかし晶は不満などを口にしなかった。
「大丈夫だよ、答えられないのは別に恥じることじゃない。そもそも、そんな経歴を持っているあなたにとっては、さぞ難しい問題でしょうね。でもね、悪く思わないでほしいけど、怪盗団が希望をもたらさせたいのは、あなたのような人だと思う。」
「希望をもたらさせる?本当に怪盗団はただ名誉などのために行動しているわけじゃないと思う?」
「な!」
晶はかなりびっくりしている。
「そんなこと……、そんなはずないじゃない。」
彼女は慌てて間違いを正そうとする。
「まあ、この人気が今までないほど高まった今、彼らはどう動くかを少し見てみよう。盲目的ファンの要求やランキング結果に従いなら、彼はあくまでちやほやされたく、名声を求める人であろう。」
「私達は怪盗団での話じゃどうしても意見を統一できないみたいね。」
晶はため息をつく。
「でも、素晴らしいものに思いを託せることを願うよ。怪盗団である必要はない。いろんな事があったから、ちゃんと前に向けるための目標があったほうがいいと思う。」
復讐。明智はそのためだけに生きてきた。しかし、おかしいもんだ。まさか今更ずっと欲しがっていたものを手に入れるとは思わなかった。
朝食を済ませて、晶は授業をとりに出かける一方、明智は異世界に向かう。昨日と違って、今日の明智の調子はいい、昨夜はよく眠れたからかもしれない。明智は何の問題もなくパレスをクリアする。
最後のセーフルームに到着した明智は現在の状況を振り返る。ここから残っていることは小早川のシャドウを消すだけだ、そのためにここまで来たからな。でも、すでにほしいものを手に入れた今、もう復讐する必要なんかない、獅童に認められなくてもいい。なら、小早川を殺す意味なんかあるの?
「何迷っている?」
声が聞こえる。いや、それは彼の考えに過ぎないか。その声はロキ、復讐しか考えていないペルソナだ。
「ここまで来て、やめるとか考えてねんだろうな。今までの努力をすべて無駄にする気か?復讐のためにどんだけの代償を払ったと思ってんだ。どんだけの命を捻り潰した?ここであきらめて、何もかも正義でなくなるぞ。それでいいのか?」
「言い訳するな!」
高潔なペルソナロビンフッドが急に言い返す。
「復讐のため?正義のため?何の正義?こんなの言い訳に過ぎない。覆水盆に返らず、君がやってたことは正義であるはずがない。」
「知ってる。」
明智はだれよりも知っている。
「忘れたのか?」
またロキの声だ。
「こんなとこにやったお前に居場所なんかあるとでも思うのか?お前を受け入れてくれる人はいない。晶もそうだ。真実を知ったら、絶対恨まれるぞ。」
そもそも、獅童に人生をめちゃくちゃにされたから復讐を決めた。でも、彼の命令により、明智はどれだけの人生や命を捻り潰しただろう。本当、獅童以下のくずだな。真実を知ったら晶は彼を受け入れるはずなんかない。
「確かに居場所を失ったかもしれない。愛されなくなるかもしれない。でもお前にはもう失うものなんかないだろう、すでにすべてを失ってしまったからな。」
ロキは言う。
「獅童に苦痛を与えなければならない、あいつは裁かれるべきだ。それをできるのはお前しかいねんだよ。あと少しで……」
それはそうかもしれない、でも今復讐は時間が過ぎるとともに無意味に感じてきた。かつての自分は本当に利己的だな。一人の人間だけを地獄にひき落とすために、何人の人生と命を奪っただろう。獅童を滅ぼすにはあまりにも大きいな代償だ。しかし、今更明智に何ができる。もう取り返しがつかない、手遅れだ。
「もう起こったことはどうしようもできない、でもまだ起こっていないことを止めることができる。」
今度はロビンフッド。
「状況を悪化させない方法くらいわかるじゃない。うまく手持ちの札を操ると何とかなる。少し危ないが、希望を持つと何とかなる。」
「希望、ね。」
明智は小さくつぶやく。
「怪盗団が希望をもたらさせたいのは、あなたのような人だと思う。」
頭の中で晶の話が響く。
怪盗団。その目的は人に希望をもたらす。本当に助を求めている人を救うために存在しているなら、それは間違いなく明智が想像した理想的なヒーローである。長年以来明智はヒーローの訪れを待っていた、しかし、誰も来なかった。でも、彼らが現れた。「遅れてもやらないよりは増し」そういう言い伝えがあったよね、残念ながら明智にとって、もう何もかも手遅れだ。それでも……
晶を思い出す。彼女は罪を擦り付けられ、名誉が葬られた。なんで彼女はそんな目に合わないといけないんだ。彼女は獅童が怪盗団のために用意している罠に嵌められるわけには行かない。彼女は本当に怪盗団の一員であるの話だが。例えそうでないとしても、もし、怪盗団はみんな単なる晶みたいなお人好しなら、彼らを罠に嵌らせるわけにはいかない。
最初獅童と接触し始めた時、このような結末を迎えることになるなんて、明智は想像もしなかった。何等かのやばいことをさせることくらいは考えていたが、この歪んでいる計画や命令に付き合わせることなんて思いもしなかった。怪盗団も同じだ。彼らはこの先何を待ちわびているかに見当すらついていない。誰か彼らが嵌められる前に止めなければ、でないと明智と同じように人生をめちゃくちゃにされる。彼らを助けられる人はどうやら明智しかいない。
ロキは不満げに声を出す。
「どうした、そのアニメヒーローペルソナの話を聞くつもりか?あまいな。もう一度警告する。お前みたいな人が今更何をやっても受け入れられることなんてない。晶だってそうだ、真実を知ったら憎まれるに違いない。」
「構わないさ。」
決心はついている。
「晶のおかげで、俺が本当に大切な物を見つけた。これはほかの人のためだけじゃない、彼女のためでもある。彼女は怪盗団じゃないかもしれない。でもそんなこと関係ない。俺みたいな結末を向かう人は一人で十分だ。いろいろやらかした?もう絶望な未来しか待ち受けていない?それがどうした。何をしても今まで犯した罪を償うことはできないかもしれない。でも、少しでも正しいことをしたい。」
「そういうことか。」
ロキはがっかりしている。
「本当にあまい奴だ。ここまでしてきたこと、俺がしてきたことを全部なかったことにするというのか?じゃ、俺はどうすんだ!」
「何バカのことを言ってる?お前も一緒に来るんだ。この罪を犯した俺の一部だ。俺は自分が何をしたかを知ってる、お前の存在を否定することはできない。そうでないと、この罪を背負うこともできない。」
「吾は汝、汝は吾か。そうか。」
そう言いながらくすくすと笑うロキは拒絶されていないことに喜んでいるらしい。
「なんかあの晶という女に似てきたな、お前。洗脳されてんな。」
そうかもしれないなと思いながら明智は微笑む。
葛藤しなくなった明智の心が落ち着いた。いや、ある程度落ち着いたと言ったほうが正確かな。少なくともこれからどうするべきかを考える余裕ができた。
小早川のシャドウはこの先の部屋の中にいる。明智は嘲笑い、決然と目の前の扉を見つめる。どうやら、思ったより早く獅童を裏切ることになる。そう思いながら明智は扉を開け、部屋の中に向かう。
黒い仮面を被っているペルソナ使いを目にして、小早川のシャドウは怯えて後ろに下がる。
「ああ、君は!そうか、わかったぞ。メディアの騒ぎ。君がここにいるということは……彼が…」
「お前を消したい?その通りだ。」
ぽっちゃりしている男のシャドウがまた怯えながら一歩下がる。
「でも、俺はそんな気がないね。」
明智は言い出す。
「もう悪党と手を組むとどうなるかわかっただろう。俺もそうだ。だったら、俺と取引しない?」
「な、何を言い出す?」
シャドウが目を丸くして聞く。
「お前、獅童のことをちくるつもりだよな。」
「そ、それは……」
「やめとけ、少なくとも、今はやめろ。そんなことしても無駄だ。潰されるだけだぞ。あいつは警察の方まで手が回っている。やつを縄に付けるには公衆を頼るしかない。公衆が警察にプレッシャーをかけ、逮捕せざるを得ない状況を作るのが一番だ。でも、それは一日二日にできることじゃない。」
「わからない。本当に彼に狙われているなら、いずれにせよ殺されるじゃないか。」
「だから隠れるのさ。」
この土壇場の計画がうまくいく保証なんてどこにもない。そもそも認知をどうやって変えることすらわからない明智に、ほかの方法を思いつくこともできない。
「死んだふりをするんだ。」
「死んだふり?」
「現実世界の自分を影響して、廃人化されたように見せかけ、入院する。時に廃人化されても死なずに済む人はいる、まあ、死亡したとはあまり変わらない状態だけどな。そのことは獅童も知っている。そう思わせれば、もうお前に構うことはないだろう、俺の裏切りも気付かない。それで時が来て、あいつの罪が明るみに出た好きに告発していい。」
「彼の罪が明るみに出た好きに?待って、君、もしかして彼を怪盗団のターゲットにしたいのか?」
シャドウはそう聞く。
「そのつもりさ。」
中らずと雖も遠からず。怪盗団から改心のやり方を聞き、それを明智自身が実行する。とりあえずそういう計画を立てている。これまで、復讐する前に怪盗団が獅童のことを気付き、復讐を成し遂げることができなくなるとを心配していたが、今彼はそう思っていない。彼は怪盗団をこの件に巻き込みたくない。それは復讐やプライドなどとは関係ない。怪盗団は彼と違い、まだ輝いている未来を持つ、獅童みたいなクズを相手にして、それを失うのは惜しい。
「わかった、やってみるよ。生きるためにこの方法しかないし。」
小早川のシャドウがその提案を受け、姿を消した。恐らく現実の自分に戻っただろう。
こんなの初めて見た。計画がうまくいくことを祈るしかないと明智は思う。
部屋の後ろにあるもやもやの何かが膨張し、炸裂した。部屋が激しく揺れ、壁が崩れていく。何が起こったかもわからないし、計画がうまくいっているかどうかもわからない。唯一わかっているのはこのパレスは崩れ落ちている、逃げないと。
***
今日の授業も終わった。しかし明智はまだ帰っていない。彼が泣き崩れたことを思い出し、晶は何かに引っ掛かった。明智は自分の問題を一言も打ち上げていない。
「もし君が僕の心の中をのぞくことができたとしたら、好きになるわけがない。」
彼はそう言った。
そこで晶は思いついた、心を確認する方法はある。彼女はスマホを取り出し、明智の名前を異世界ナビに入力した。
でも候補を見つからなかった。明智にパレスはいない。それ思い晶はほっとする。明智の心はまだそれほど歪んでいない。例え本当にシャドウが存在しても、メメントスで解決できる……はず。
ドアの開けることが晶の調査を止めた。慌ててスマホをしまい、笑いながら部屋に入ろうとしている明智に挨拶する。
「お帰り。」
明智は少し驚いているように見える。
「あ、少し驚いたよ。一人暮らししているから、お帰りと言ってくれる人がいないんだ。そうだ、晶、これ。」
そう言いながら明智はティシューを晶に渡す。
「ティシューを返してて言われたから。」
笑いをこらえなくなり晶は爆笑する。
今回明智はいつもみたいに恥ずそう顔をする代わり、一緒に笑い出した。
「笑うと思ったよ。」
「少し私のことがわかってきたみたいね。」
と晶は微笑む。
「友達になれると言ったでしょう。」
「これでやっと友達ができたと言える。」
やっと友達ができた、唯一の友達だ。これはいいことであるが、その言い方は悲しい。少しでも雰囲気を楽にしたく晶は言い出す。
「これで私に探偵の友達がいると言えるね。かっこいいじゃない?」
それを聞いて明智は嬉しそうに笑いだす。
昼ごはんの食べるため、下のレストランに向かった二人は、テーブルでおしゃべりをしている。
「事件のことは順調?」
と晶は聞く。
「個人的には解決したと思うよ。これで終わるといいけど。そっちは、授業はどうだった?」
「面白かった、早めに申請して、修学旅行を休んだ甲斐があったよ。」
「なんの授業だ?」
「起業に関する話だよ。」
と晶は説明する。
「簡単にまとめると、どうやって自分の会社の事業を選ぶ、どうやって事業を始める。あとは必要としている書類や全体的の流れみたいなことかな。そのほかは始まったら、どうやって社員や客人と接するなどの話。結構勉強になったよ。今日先生は奥村フーズが社員に過重労働させていることを例にした。それが本当かどうかはわからないが、社員をそのような感じで接してはいけないといった。」
明智はなぜか緊張している。
「君はそんなことをするはずがない。君は優しいから。」
「それは保証する。私は社員も客人も喜ぶ会社を作りたい。でも正直に言うと、まだ同のような事業をしたいかすらわからないよ。始めるにもまだ早い。どのみち高校から卒業して、大学に入った後の話になるから。今はとりあえずルブランで接客の勉強から始めたほうがいいかな。」
「ゆっくり決めていい。まだまだ時間はあるから。幸運を願うよ。」
明智は少し恥ずかしそう。
「本気で言っているからね。」
「ありがとう。」
恥ずかしそうな明智を見て笑いそうになるが、それを堪える。セレブ仮面を外した彼、その本気さはちゃんと晶に伝わった。恥ずかしくなる理由は晶にはわからないけど。
昼ごはんを経て二人はチェックアウトの準備を行うため部屋に戻る。荷物をまとめた二人はホテルを後にして、同じ電車で東京に向かう。日曜日であったが、二人は運よく席を見つけ、隣同士で座ることにする。
東京まではかなり時間がかかるため、明智は宿題を取り出し、それを済まそうとする。宿題をやる明智を見て、晶は思う、彼は一体なぜ変わったんだろう。セレブ仮面を外し、楽にしていそう。薬を飲む前の明智とそのあとの明智はまるで別人みたい。
一時間後明智は宿題をかばんに戻す。
「終わった?」
「あと少し、でも今やる気でなくて。」
「さぼってるの、探偵君?いい成績を保つ話はどうしたの?」
「やらないと言ってない。明日締め切りじゃないし、あとでやるよ。」
「だって、昨日宿題に頑固だったから、絶対できるだけ早く宿題を済ませるタイプな優等生だと思った。」
明智は驚きで目を丸くする。
「あれも夢じゃなかったのか?」
「当然、恐らくあなたが覚えていないことも起きていたけど。」
恥ずかしそうに頭を下げる明智。
「取り乱したところを見せた。ごめん。」
「謝らなくていいといったでしょう。正直昨日のことは面白かったし。本心のままで動いているよね、テレビの演技とは大違いだ。ありのままの自分を見せただけだよ。悪いことじゃないし、どっちかというと、そういうあなたの方が好きだよ。」
その話を聞き明智は黙り、ため息をつく。
「実際今まで、本当の僕を受け入れてくれる人がいなかった。だから僕は礼儀正しく、いい子のように振る舞う。人前では常に模範生であり続ける。」
「礼儀正しくて、いい子?え?まさか本当の明智君ってわがままな子だったりするの?」
彼はふっと笑う。
「正直に言うと、わからないんだ。長い間その模範生の仮面を被り、もう本当の自分はどんな人かがわからなくなってきた。」
「そんなの悲しすぎる。」
思わず彼を同情したくなる。
「確かにすべての人はありのままの私達を受け入れてくれるわけじゃない、時に自分を貫くと面倒なことに巻き込まれることもある。そもそも私が自分を抑えていたら、冤罪なんかに擦り付けることなかったかもしれない。私は犯罪の場面に立ち会った結果このざまだ。無視できなかった、あの人を助けたいと思った。体が勝手に動いて、私が正しいと思っていたことをした。その結果がこれ。」
少し悲しく微笑み晶は言う。
「でも後悔してないよ、考えなしのロボットになりたくないから。」
「え?ロボット?」
「人はそれぞれの長所や短所がある、それが人の持ち味と私は思う。もしみんなのみんながくだらない規則に従って、全く同じようなことをして、自分の特別なポイントを隠して生きていくと、思考できないロボットと変わらないじゃない。」
「確かに。」
明智はその話に賛同する。
「でも晶、君は強いね。あんなことがあっても、君は君のままで変わらない。僕にこんなようなことが起こったら、多分この一生思考が存在しないロボットのままで生きていくことを選ぶ。君みたいな強ささえあれば、僕も……」
彼はその先の言葉を口にしなかった。
「あなたも?」
晶は問う。
明智はまた話を逸ら。
「ごめん、この話はしたくない。」
「わかった。」
明智が抱えている問題を知りたいとはいえ、言いたくないなら晶も根掘り葉掘り探るつもりはない。
「覚えてるかどうかわからないけど、私は曲げずでいたのは周りの人達のおかげ。あなたにそれが欠けていたかもしれない。」
晶は手を伸ばし、彼の腕をつかむ。
「でも恐れることはないよ、やんちゃで、わがままな探偵君。これから、私があなたの隣にいるから。友達でしょう?」
明智は感動しているらしい。
「君の優しい言葉に感謝するよ晶。その助けようとする意志も非常に素晴らしい?」
何かを真剣に考えているように言い出す。
「自分から僕を助けたいと思った人がいなかったから、僕もほかの人を助けようとしなかった。でも、今は少しわかってきたような気がする。僕も助けたい人ができた。」
深くため息をつき明智は続く。
「晶、君と出会えていろいろ考えないといけないことができた。だから、宿題の提出に間に合えなかったら、君のせいだからね。」
「おや、これってさぼりの言い訳かな?」
晶は軽く肘で明智にあたる。
明智は思わずに笑い出す、それを見て晶も笑う。こんな雰囲気の中で、電車は前を向いて走り続ける。
***
渋谷に到着して後、明智のスマホが急に鳴り出す。
「またインタビューだ。」
電話を切って明智は晶に言う。
「いつ?」
「一時間以内にスタジオに向かい収録を行う。今夜放送するらしい。なんか行かなくていい言い訳考えてくれる?」
「え?テレビ出演は人気を集めるから、楽しんでると思ってたけど、行きたくないの?」
「実はそんなに好んでないよ。でも行かなくちゃ。スタジオからの電話はいつもすべてが決まったと意味している。断れないんだ。」
「今夜放送するんだっけ?」
「そう、いつもと同じだような話をするだけだから、見なくてもいい。」
「また怪盗団の悪口?」
「ちょっと。」
明智は手を挙げ自分のため弁明する。
「僕は彼たちは正義の味方であるかどうかはわからない、とその真の目的は知らないとしか言ってないよ。あとは悪いことに改心の力を使うかもしれないから、危ないので早く捕まえないといけない。仮説にすぎない、悪いこと何一つ言ってないよ。」
「わかった、わかった。」
晶は彼を止める。
「悪口じゃない、でもあなたの意見は変えてないよね。」
「僕の推測を覆すような証拠が現れるまで、僕は自分の観点を変えるつもりはない。僕がインタビューで話したことに不満を抱いているのはわかる、だから見なくていいと言った。」
「これからも一緒にいると、あなたの考えを変えることができるかな?」
もう変えてくれたよ。そう明智は思う。でもそれを晶に話せない、彼は冷たい嘲笑いで晶の問題を答える。
そうするしかない。テレビで怪盗団のことを批判することで、獅童に歪んだ計画が順調に進んでいると思わせる。あとは手遅れになる前に、怪盗団をこの混乱な事態から救い出す。
「じゃ。」
晶は譲る気持ちが全くないらしい。
「どっちが正しいか勝負だ。」
「自信満々だね。どこからそんな自信がわいてくるのかな?甘い信念か、それとも君はほかの人が知らない何かを知っているか?」
僕も君が知らない情報を握っているけどね。そう思いながら明智は小さく笑う。
「どっちが正しいかは時間が教えてくれる。」
「じゃ賭けよう?」
晶はやんちゃな微笑みを見せる。
「私が勝ったら……うん、明智君にやらせたいことを考えておくよ。」
晶が負けるはずがない、明智はもう知っている。晶からどんなことをさせられるだろう。
「いいだろう、受けて立つ。でも後悔することだけは言い出せないでね。」
「後悔?なぜ後悔するの?」
ふっと晶は真実を知ったらどんなことになるだろうと思わずに考え始める。お休みのキスも親切してくれたことも、後悔し、怖がるだろう。でも明智はもう決めた。憎まれても、もう友達ではなくなってもかまわない。これはやらなければならない。何としても取り返しがつかない事態になる前、怪盗団をこの混乱の認知世界から引っ張り出す。彼らが自分みたいに未来を失わせたくない。それが明智にできる唯一のことである。
「明智君?」
その声が明智を自分の考えから引っ張り出す。さっきのことを説明できるはずがない。
「いいえ、なんでもない。」
「あ、明智君も私にやらせたいことを考えてね。」
「わかった。」
負けると知っていながら明智は答える。スマホをちらとみる。
「もう遅い、行かなきゃ。」
「あ、連絡先教えて。」
晶は言う。
それを聞いて明智は実に嬉しい。二人は連絡先を交換する。
「これで何か必要があったらいつでも私に連絡できるね。」
「そっちもね。」
躊躇しながら明智は答える。
「晶、ありがとう。僕のためにいろいろしてくれて。僕に何かできることがあったら絶対教えて、できるだけ手伝うから。」
「ありがとう、明智君が忙しいのは知ってる。だからあまり迷惑をかけないようにする。」
彼女は笑いながら言う。
「そうだ、もう行かないといけないよね。また機会があればはなそう。インタビュー頑張って、またね。」
明智は悲しそうに晶の後ろ姿を見つめる。この平和で儚い瞬間が終わった。これからは新の危険な任務を遂行しないといけない、本気を出さないと、これはおそらく最後の任務だ。
***
その夜、晶は双葉、モルガナ、惣次郎と一緒にルブランで話をしている。付いているテレビをバックグラウンドをして、元気をつけてくれるカレーを食べている。明智のインタビューが放送されたのはその時だ。
「またあのくそ探偵だ。口を開けて自爆しろ!」
双葉が不満そうに言う。
晶は何も言わなかった。
「最後の最後、誰も予想していなかった時にメジェドを倒すなんて。」
MCの人は誇張の口調で言う。
「明智さんは怪盗団の行動に驚きましたか?」
「僕もそうなるとは思いませんでした。」
その一言だけ。
「おや?それ以上コメントなしですか?もしかして、慎重に行きたいのでしょうか?」
MCはそう尋ねる。
「ネット上のブーイングも想定外だったかしら?」
このMCは明智をめちゃくちゃ嫌っているか、それとも公衆にあわせて、それを装っているに違いない。今の世間では明智を嫌っている人が多いから。
「それはそれは、もう何を言うべきかわかりませんよ。まだショックから回復していませんので。」
少し下手な冗談で不満を隠そうとする明智。
「怪チャンのランキングでは奥村フーズの社長さんがトップになっています。つまり公衆は怪盗団を奥村さんに改心させたいとのことらしいですね。明智さんは彼らがそれを従うと思いますか?」
「それはわかりませんよ。今彼らの人気が高い、名誉を求める人にはファンの要求にこたえないはずがありません。でないと人気がさがるじゃないですか。でも今有名になったから、逆に好き放題やりだす可能性もありますね。」
「好き放題でスか。そう言えば、明智さんは改心と最近の廃人化の関係性に気付いたと言いましたよね。廃人化も怪盗団の仕業と思いますか?」
「それはまだわかりません。でも廃人化も改心も不明な理由による心の急変ではあります。怪盗団は廃人化と関係しているかどうかをはっきりするには待つしかありません。遅かれ早かれ彼らは本性を現す。それまで彼らを評価するのは難しいでしょう。でも一つだけはっきりと言えることがあります。」
「それとは?」
「何があっても、最後に正義は必ず勝つ。」
「チェ。」
双葉はそれを全く信じていない。
「正義?待ってろよ、正義をあいつに見せつけてやる。」
でも明智は少しおかしい、彼が変わった。100%セレブ仮面を発揮していない気がする。言った通り自分の意見を曲げていないとはいえ、普段より慎重になっていて、無駄口も少ない。最後の一言を言っている時、彼の目には光が点したのは単なる錯覚だろうか。いつもの話なのに、いつもとの感じが異なる。
「晶?」
晶が心ここにあらずを気付いた双葉や呼びかける。
「何?」
「聞いてる?別に何かを聞けなかったわけではないけど。」
双葉は後ろに立っている惣次郎に聞こえないように呟く。
「今やるべきことは、あの探偵が間違ってることを証明して、あいつに私達の正義を見せつける。だろう?」
「当然よ。」
晶は決意した。明智に自分が怪盗団に対する考えが間違っていることを思い知らせてやり、彼の人生に希望をもたらす。これで賭けにも勝てる。だったら彼に普段やらないことをやらせてみるのがいいかも。また薬を飲ませるのもいい案かもしれない。セレブ仮面を被ている明智と違って、偽りのない明智はかわい過ぎて、いじる甲斐がある。
これでこの「偽りなく」の話が終わりました。読んでいただいてありがとうございました。正直最初はこの文章を投稿することに迷っていました。明智は論争の多いキャラクター(その過去故、同情する人もいれば、行いにより恨む人も少なくない。)ここでShiranai Atsuneさんに感謝を申し上げます。その支持があったからこそこの女性暁(晶)と明智の話があります。そのため投稿した話でもあります。
コメントを書いていない方もありがとうございます。コメントを書くのは難しいですね、私も同じです。好きな文章のためにコメントを書きたくても、何を書けばいいかわからない。1時間をかけてコメントを直したこともあります。結果的にコメントを書かないことが多い。それは作者に取ってとっても大切なことであるのはわかります。(本当申し訳ございません。)
明智のパレスのことなんですが。認知は歪んでいます、それはパレスが持つことになりますが、ペルソナ使いはパレスを生み出せません。自分の一部を拒否したら話は別になります。その場合ペルソナはシャドウに変わります。例えば、明智がロキを拒むことになったら、恐らくパレスらしきものが現れるでしょう。P4みたいに。でも彼はそうしなかった、(吾は汝、汝は吾。P4みたいね。)それに改心できているから、もうパレスが形成されることはないと思います。
晶は現実世界で明智を改心させたことを想像できませんでした。私も同じです。最初は甘い話を書きたかっただけ、改心のことは考えもしませんでした。でも、書いている間起こっちゃいました。( ´∀` )
もう一つ想定外のことは、続編を書きたくなってきました。興味があればぜひ見てください。
また続編で会いましょう。
訳者より
ここまで読んでいただいて誠にありがとうございます。
この度は私が初めて和訳を挑戦した文章となります。今まで中国語の訳をやっていますが、和訳は難しいです。でも楽しかったです。
私はaiyumiさんの文章で明智というキャラクターを好きになったと言っても過言ではありません。その文章を見て、より多くの人に見せたいと思い、白々しく連絡しました。aiyumiさんは本当に心よくして、翻訳の許可をくださいました。この二年間は毎週中国語の訳を行い、最終的に追いついたから和訳を挑戦したく、こちらで投稿させていただきました。私の下手な翻訳を付き合っていただいて本当に感謝の気持ちいっぱいです。それに普段は忙しいから和訳がなかなか進めなくて、いつも皆様にお待たせいたしました。これから続編の翻訳を始めるつもりですが、今以上に忙しくなるため、恐らく投稿は2021年の春になります。ちなみに続編の章はどんどん長くなっています。ぜひ楽しみにしていただければ幸いです。では、また2021年の春、続編でお会いすることができると願っております。