赤原の守護者と禁忌教典   作:石橋航

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成長への道程

「───どうやら、俺達は最大の壁とぶつかっちまったみたいだぜ……!」

 

 頬を伝う汗を指先で拭い、突如出現した目の前の存在を視界に捉える。

 白髪をオールバックで整え、服装こそ魔術講師の衣装だが内面から浮き出る筋肉は彼が歴戦の戦士であることの証左だ。

 普段は後ろから見守ってくれる存在が、今は我らとその立ち位置を逆にして相対している。

 ───握り拳が深くなる。

 楽園を目の前にして、最大の存在。この計画を為すうえで一番危惧した存在が飄々と笑みを浮かべながらカッシュに声をかける。

 

「残念だったな、諸君。とはいえ、ここまで私に見つからず隠密行動を為した事は称賛に値しよう。下手な軍人のそれよりも君達の執念が勝っている」

「……だったら見逃してくれても良いんじゃないですかね、エミヤ先生? ここは先生として、俺達の成長を顧みて的な……?」

「それとこれとは話が別だ、カッシュ。君達の成長が見られたことへの喜びを胸にしまい、私は教師として規則を破る君達を罰する選択を選ぼう」

 

 船頭カッシュは彼我の戦力差を脳裏に叩き付ける。

 後ろで冷や汗を流しながら控える陣容を整理しながら、十中八九失敗するであろう相対の選択を為す。

 

「ほう? どうやら退くつもりはないみたいだな。明日を待つ、という選択肢は無いのかね?」

「当たり前だぜ先生……! この日を数ヶ月前から楽しみにしていた俺達だ。例え先生が相手だろうと、それが退く理由にはならないですよ……!」

「それは、後ろに控える君達も同意見という事かな?」

 

 エミヤはカッシュ以外の全員に問う。

 振り絞るかのような首肯で、全員がその問いに答えた。

 足を震わせ、神と相対するかのような絶望が広がろうとも、ひれ伏すことなく抗う道を選ぶか。

 

「了解した。では、君達の勇気に免じて私に一撃でも与えることが出来れば見逃すことを約束しよう」

「え? ほ、本当ですか……?」

「無論だとも。ああ、もしかしたら私も、内心では君達の事を応援しているのかもしれんな。そこまでして行きたいという執念に屈服しているのだろう」

 

 エミヤは両足を肩幅まで開き、その手に適当な剣を一本投影する。

 その姿を見て生徒達も引っ張られるように戦闘態勢を整える。

 弛緩した空気が切り替わる、音がした。

 

「とはいえこちらも本気で応戦させてもらう。たかが一撃と思っているのなら、その意識は此処で捨てろ。私を徹底的に打ちのめすつもりで挑まなければ、何も為せずに終わることになるだろう。それで良いのなら、私は何も言わないがね?」

「───お前ら、準備は良いな?」

 

 カッシュの声に圧倒されていた生徒達が立ち直る。

 

「元々簡単じゃないってのは皆理解してたんだ。それが、具現化しただけだろ? けど、俺達は一撃を与えれば勝利だ。なら簡単に負けるわけにはいかねえ……! そうだろ、皆!?」

「ああ、カッシュの言う通りだ。なにも倒すわけじゃないんだ。全員が連携すれば、拓けない道じゃない!」

「何たって、普段から俺達はあの人に鍛えられてんだ。その実力を披露するって意味でも好都合だな!」

 

 呼応するかのように準備を整える生徒達。

 その姿にエミヤも笑みを浮かべる。

 そうだ。いつだって人間は、絶望を前にしても進む道を選択できる生命だ。

 

「───来い!」

「負けねえぜ、先生!!」

 

 宵闇に浮き出る月光が地面を淡く照らす。

 飛来する紫電と、それを叩き伏せる火花が地上から月を照らし返していた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「わ、悪いカッシュ……。後は頼むぜ……」

 

 一人一人、漸減的に倒れていく夢を追う者達。

 連携は出来ていた。

 選択は間違っていなかった。

 指示は全員の士気を高める要因になっていた。

 なのに、悉くを凌駕され目の前の存在に一撃も与えることは叶わず、夢の前に倒れ去っていく。

 

「ついに君一人となったな、カッシュ」

「なあ先生。俺達……何が足りなかったんでしょうか?」

「……答えを言うのであれば、全てだろうな。連携も、選択も、指示も間違ってはいなかった。ただ、それを完璧に熟す実力が伴っていなかった。だが悲観することは無い。全てが足りなくて、全てが揃っているのが、今の君達なのだからな」

「そう、ですか……。ああ、俺も限界かな───」

 

 カッシュは答えを聞いて満足そうに意識を手放す。

 彼を中心とした生徒達の攻撃は、彼らの齢を考えれば間違いなく卓越した代物であった。

 格上殺しすら為し得る程のものだったのはエミヤ本人が保証する。

 後は、年月が彼らの成長を促し、理想に手が届くようになれば、エミヤに一撃を与えるのも不可能ではなくなるだろう。

 立った状態から倒れていくカッシュを、せめて楽に寝かせられるようにと手を伸ばした、その時。

 

「───隙ありだぜ、先生……!」

「何───?」

 

 それを見越したかのようにカッシュの指先から紫電が迸る。

 一瞬は驚いたエミヤだったが、惰性を凌駕し人間の稼働速度を卓越した彼ならば回避も容易だ。

 手を退き、逆の手でカッシュの体を支える。

 

「……マジかよ。俺的には、結構手ごたえを感じてたんだけどな……」

「いや見事だ。搦め手は戦の常套手段だからな。私がそれに慣れていただけで、普通の人間であれば回避は不可能だろう」

「慣れてても、回避できるとは思えないんですが……?」

「かもしれんな」

 

 エミヤに支えられながら地面に仰臥したカッシュ。

 月光の淡い光を浴びて、その先に手を伸ばす。

 

「俺達が先生に勝つのって、この月に手を伸ばすぐらい夢物語なんですかね?」

「どうだろうな。それは、君のこれからの成長次第だろう」

 

 それを聞いて苦笑いを浮かべるカッシュ。

 

「未来の俺、先生に勝てるかな……?」

「勝てるかもしれんし、勝てないかもしれん。ただ、君が成長を望むのであれば、私は全霊で手助けをしよう」

「それは……頼もしいっすね……」

 

 瞼が重くなり、ついにその力に抗えなくなったカッシュは眠りにつく。

 勇敢に勝負を挑んだ彼らに称賛を。

 エミヤはその場に倒れ込んだ全員を抱えると、その場を後にする。

 

「しかし、まさかこの短い期間でここまで成長するとはな」

 

 自分も教師が板についてきたのだろうか。

 生徒の成長に喜びを感じるようになってきた。

 彼らを寝室に置いた後に、戦闘最中に見えたとある不審物の確認に向かうか。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「一応確認しておいて正解だったな。しかし、奴らがこんな手段を選択するとも思えんが」

 

 ホテルの前で鋭い視線を見せるエミヤ。

 その手に握られていたのは、古典的な爆弾であった。

 

「魔力感知に引っかかるのを恐れたか? 確かに建物の構造把握は私の分野だが、魔術に絶対の崇高を見せる奴らが行使する手段とは思えん」

 

 魔力感知を恐れて古典的な手段を選択する、というのはこの世界の普遍的な常識では考えられない事だ。

 魔力感知を凌駕してこそ、本物のテロリスト集団というものだからだ。

 だが常識に当てはまらない行動をして相手の裏をかくという行動自体にそこまでの疑問は無い。

 それ以上に不可解な問題点は、ただ一つ。

 

「相手は私の存在を警戒している───?」

 

 ピンポイントでこのホテルに爆弾を設置する理由なんて、ルミア=ティンジェルを狙う天の智慧研究会絡みの問題に違いない。

 違いないのだが───。

 

「これは、アルベルトとグレンと作戦会議をする必要があるな。あとは、リィエルも起こすとしよう」

 

 何か、嫌な予感がする。

 もしかしたら、天の智慧研究会以外にも動いている勢力が存在するのか。

 それも含めた情報共有と今後の行動について一から話す必要がある。

 あとは、念のため明日彼の研究所を調べてもらうとしよう。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 爆弾を見つけたエミヤは三人と共に会議を行い、天の智慧研究会の策略に対抗するための布陣を整えることにした。

 周囲を警邏していたアルベルトには、グレンと共に白金魔導研究所へ情報収集や万が一の場合に備えた罠を張りに向かってもらった。

 リィエルは徹底的にルミアの周囲で護衛。

 エミヤはアルベルトの周囲への警戒を引き継ぎつつ、ルミアの護衛をリィエルと共に為す。

 そうして各々為すべき事を脳裏に叩き込み、次の日。

 絶好の日照りがエミヤ達を迎えていた。

 

「言っただろう、カッシュ。明日を待てないのかとね。それに、これは君が質問したことだろう?」

「まさかこんな楽園が、何もせずとも俺達を歓迎してくれるなんて……!」

「君達もだ。目の前の宝に目が眩むのも理解できるが、もっと広い視野を持つことだな」

 

 その日は予備日という事になっていたので、各々自由な時間を過ごすことが許される。

 その為全員で海に向かったのだが、目の前に広がる女生徒達の水着姿に感涙するのは昨日雄姿を見せた男子諸君だった。

 わざわざエミヤと戦わずとも待ち受ける楽園を捉えられなかった彼らは、少しは昨日の事を無駄な事とするのかと思ったが───。

 

「まあ、でも先生と戦えてよかったです。お陰で俺達もまだまだって理解できましたし。心のどこかで、あの魔術競技祭の経験から自己評価が高くなってた節もあったので」

 

 敗戦から学びを見つけようとする姿勢は、成長というのだろう。

 

「そう考えてくれるのであれば、私も君達の相手をした甲斐があったものだ。では、昨日の分まで遊んでくると良い」

 

 その言葉に元気に返事をした彼らは既に水着の格好になっていたという事もあり、全速力で蒼き楽園へ向かっていった。

 常夏の熱気を吹き飛ばす元気にエミヤは苦笑いを浮かべながら、地べたに置いていた釣り道具を持ち上げる。

 

「君は水着に着替えないのだな、ギイブル」

「当然でしょう。本来、僕らは遊びに来たわけではないんですから」

 

 さも当たり前のように魔術学院の制服姿で木陰で日光を遮蔽していたギイブルは、一人で幹に寄りかかりながら本に視線を落としていた。

 

「確かにその通りだが、時には息抜きも必要だろう。どうだ? 釣りには興味無いかね?」

「興味無いですね」

「む。それは残念。君が付き合うと言うのなら、簡単な質問程度なら答えても良いと思ったのだがね」

 

 そう言って去ろうと背中を向けるエミヤを、ギイブルは苦虫を嚙み潰したような表情をして呼び止めた。

 対してニヒルな笑みを浮かべて振り返る。

 

「何かね?」

「さっきの言葉、僕の質問に答えるって本当ですか?」

「無論だ。簡単なものに限らせてもらうが、授業への質問や君の戦闘スタイルに対してのアドバイス程度なら付き合おう」

 

 エミヤは釣り道具の一式をギイブルに差し出す。

 最初は己が持っていた本と、エミヤの言葉の狭間で揺れていたが、最終的には釣り道具を受け取った。

 

「有意義な時間でなければ、すぐに釣りを切り上げますから」

「了解した。君を飽きさせることの無いように尽力しよう」

 

 釣り道具を手に持った二人は近くの釣り場へ向かっていった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「あんまり離れないんですね。お陰で釣りに全然集中できないんですけど」

「では、何時如何なる状況だろうと集中の手順を履行出来るようにならねばな。ほら、私は既に当たりを引いたぞ……!」

 

 そのまま「フィーーーーッシュッ!!」と声をあげて釣竿を引き上げる。

 横からの呆れたような視線は無視だ。

 少し遠くではしゃいでいた一部の生徒達からも驚いたように見られたが、犯人がエミヤと分かると苦笑いを浮かべて各々の遊びへ戻っていった。

 

「ふむ。あまり大物では無かったか」

 

 エミヤはそのまま釣った小魚を海へ帰す。

 ここには遊漁として来た為、キャッチ・アンド・リリースの精神で臨ませて頂く。

 

「僕だって……!」

「その調子だ。君とて、いつまでも私にやられたままでは癪だろう?」

「ええ、癪ですよ……!」

 

 ギイブルは己の世界に閉じこもる。

 淡々と、されど熱意に溢れた彼の心火を灯す事に成功したようだ。

 あとはこれを自分で引き出せれば言う事は無い。

 

「そう言えば、聞きたいことが一つだけ」

「何かな?」

「……僕の戦闘スタイルについて、アドバイスがあるって言ってましたよね?」

「言ったな。それが?」

「先生には、僕の最適な戦闘スタイルが見えているんですか?」

「見えているとも言えるし、見えていないとも言えるな」

 

 それを聞いてガクッと肩を落とすギイブル。

 

「な、何ですかその漠然とした回答は……!?」

「君が目指すべきスタイルをする魔術師を、以前育てた事があってね。完全にそれを模倣すれば君も強くなれるという確証はないが、間違いなく今よりかは一歩前に進むことは出来るだろうなという憶測の状態でね」

「僕が目指すべき、スタイル……?」

「ああ。君の長所は全体を俯瞰し、彼我の戦力差を測り、最適の攻撃法を完璧なタイミングで放てる所だ。それ故想定外の場面では弱いという弱点があるが、それも今後改善していけば良い」

「それで、具体的に言えば?」

「君の最適なポジションは中距離だ。故にそこを確保できるスタイルが一番良いだろう。具体的に言えば、ゴーレムに相手の妨害してもらい、そこを安全なポジションから阻害・狙撃するというスタイルが、一番君の長所が輝くと私は思っている。または、近距離が得意な相棒でもいれば良いのだがね。先ほど言った三つの長所を併せ持つ君は、カバーリングに優れている」

 

 最初は半信半疑で聞いていたギイブルも、真剣に語るエミヤの瞳に吸い込まれていた。

 間違いなく、ここは手放してはいけない時間だと理解したようだ。

 

「残念ながら、僕にはそんな相棒は居ないので前者になりますね」

「そうだろうか? 私的にはカッシュと組み合わされば面白いコンビになると思っているのだがね」

「カッシュと、ですか……」

 

 途端に嫌そうな顔をするギイブル。

 だが、互いに逆ベクトルの在り方ながらそれが衝突することの無い二人は間違いなく良いコンビだろう。

 なにせ、今エミヤはギイブルの姿にアルベルトの影を重ねている。

 グレン・アルベルトコンビと似て非なる名コンビになるのではなかろうか。

 

「生憎と私には魔術の素養が無くてね。だが、何時か君にはとある高等技術を覚えてもらいたいと思っている」

「それは一体?」

時間差起動(ディレイ・ブート)だ。用意周到な君には、似合いの技術と思うのだがどうだろうか?」

「───」

 

 ギイブルがその問いに返答することは無かった。

 だが、それがネガティブなものではない事は理解している。

 彼自身まだ整理がついていないのだろう。

 故に、彼に時間差起動(ディレイ・ブート)を習得してもらうのは、もう少し先の未来となりそうだ。

 

「もし己で整理し、本当の答えを見つけることが出来たなら、私の元へ来ると良い。その時に、私は君にそれを仕込む前準備を施そう」

 

 ギイブルは静かに頷く。

 しばらく静寂が周囲を支配する時間が続く。

 すると、後方から何やら声が聞こえてきた。

 

「あっ! 先生、ここにいらっしゃったんですね!」

「どうした、三人共。もしかして、何かあったか?」

 

 後ろを振り返ったエミヤの前には水着姿のルミア、リィエル、そして少し後ろからシスティーナが居た。

 駆け寄る姿から緊迫した状況でない事を悟り、自然と周囲に誰も居ない二人のみの場所へ来た意図を問う。

 

「突然ですが、先生。どうですか、この水着似合ってますか?」

 

 そう言って無邪気に目の前で一回転するルミア。

 感想を述べろ、ということなのだろう。

 エミヤは少し考えるようにしてルミアの姿を見る。

 彼女は青と白のストライプ柄の水着を纏っているが、それは互いの魅力を相殺することなく魅力を引き立たせている。

 元来のスタイルの良さも相まって、その水着は彼女にしか似合わないのではないかと錯覚してしまう程だ。

 これは、ギイブル達には目の毒なのではなかろうか。

 

「とても可愛いよ、ルミア。君にはその明るい色が似合うな」

「ふふっ。ありがとうございます。じゃあ、リィエルの水着はどうですか?」

 

 ルミアが背中を押し、一歩前に出るリィエル。

 彼女は世間一般的なスクール水着を着用していた。

 スクール水着越しに映し出された引き締まった体のラインは、彼女の魅力として映るだろう。

 

「……もしかして、似合わない?」

 

 返答が遅れたエミヤへ心配そうに首をかしげるリィエル。

 

「そんなことは無いとも。とても似合っているさ、リィエル」

 

 エミヤの答えを聞いたリィエルは静かに「そう」と質素に答えるも嬉しそうな表情をする。

 

「それで、君達がここへ来たのは単に私の感想を聞くためだろうか?」

「あ、実は皆でビーチバレーをやろうって話になったんですけど」

「なるほど。では、私も参加させてもらおうか。君はどうだろう、ギイブル? 一人で釣りをするのも趣があることとは思うがね。体を動かす事も大切だ」

「……分かりました。僕も参加しますよ」

 

 渋々、という形で参加を承諾したギイブル。

 それを聞いたエミヤはルミア、リィエルと共に皆が集まる側へ移動する。

 その道中で。

 

「システィーナ。君は何のために、私達の所へ?」

「特に理由は無いわ。まあ、保護者みたいなもんよ」

 

 なるほど。一応納得した。

 っと、そう言えば一つだけシスティーナに言っていない言葉があったな。

 

「そう言えば、君の水着も良く似合っている。君を引き立たせるのはやはり、白が一番だな」

 

 白を背景に、花柄のお淑やかな水着だった。

 個人的に彼女のテーマカラーは白、なので実に似合っている水着であった。

 流麗なラインを描く体は、何にも染まっていない純白を思わせる。

 突然エミヤがこんな事を言ったのはルミアとリィエルにだけ言って、システィーナには言わないのは不公平感があるという理由からだ。

 だが、唐突にそんなことを言われた本人は困惑気味に一歩二歩後退りをする。

 

「え……? もしかして、新手のナンパ?」

「待て、そんな目で私を見ないでくれ。これは私の本心だ。決して疚しい気持ちで言ったわけではない」

「……ま、そんな感じだとは思ったわ。ですが、そう言う言葉は私じゃなくルミアに言ってあげて下さいね」

「? どうしてそこでルミアが登場する?」

 

 ごく当然の疑問だろう。

 不平等感を感じたのでエミヤはシスティーナに本心からの感想を伝えたのに、そのベクトルをルミアに向ける理由が分からない。

 

「理屈じゃなくて感覚で理解してくれると助かります。私よりもあの子の方が、先生と一緒に居たいでしょうし」

「そうか。とはいえ、システィーナとの時間を蔑ろにするつもりは無い。勿論ルミアとの時間も大切にするが、君も私の生徒なのだから、遠慮する必要は無いんだからな」

 

 するとシスティーナは瞠目した。

 そのあと赤面した顔を隠すように視線を背ける。

 

「……あ、ありがとうございます」

 

 その後ビーチバレー会場である砂浜まで会話することは無かったが、心地悪い静寂では無かった。

 




 気付けば既に12月。前回の更新から随分と遅れてしまい申し訳ございません。
 今回は今後の展開に必要な切欠を二人の男子生徒に与えました。これがどう作用し芽生えるのかも、楽しみにして頂ければ幸いです。
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