───君の兄の名は、『シオン』だ。
その一言を聞いたリィエルは、突然頭を抱えてその場にしゃがんでしまった。
何か怖いものから逃れようとする子供のように。その姿は、普段の彼女からは想像出来ない、酷く矮小な存在に映る。
「り、リィエル、大丈夫!?」
心配そうに声をかけるルミア。
しゃがみ込んでしまった姿を見て大丈夫なのか、とこちらに視線で訴えかけてきた。
エミヤはその視線を首肯する。
「大丈夫だ。彼女は今、忘れてきてしまったものを取り戻しに行っている。過去の彼女であれば耐えられなかったかもしれないが、君達と出会った今の彼女なら大丈夫だ」
その言葉に一瞬目を見開いたルミアだったが、すぐに頷いた。
「分かりました。先生がそう言うのでしたら、信じます」
「すまないな、いつも君には心配をかけてしまう。本当であれば、今すぐにでも君を救い出したい所なのだが───」
今なお、磔となっているルミアに謝罪をし、エミヤは眼前でこちらを怨敵の如く睨む青年と、後ろで命令を待つ少女達に視線を向ける。
「シロウ=エミヤァ……!」
「背中を見せられるほど、柔な敵ではなくてね。申し訳ないがもう少しだけ待っていてほしい。必ず君を救い出す」
「ふふっ、そんなに念を押さなくても大丈夫ですよ? だって私は、今も昔もずっと先生を信じてますから」
そう言って仄かに微笑んだルミア。
言葉に何かニュアンス的な意味で違和感を感じたが、エミヤはその疑惑を忘却した。
「君が持つ元来の精神的強さもあるのだろうが、そこまで辛そうでは無くて安心したよ。そのまま、君は気楽に待っていてくれれば良いさ」
「気楽、ですか……? でも、空中で磔にされるって意外と大変なんですよ?」
微笑みながら冗談交じりにエミヤとの会話を楽しむルミア。
彼女の表情にはこの状況を楽しんでいるのではないか、とも思わせられるような心地よさが見えているが、エミヤにとっては笑えない冗談である。
苦笑いをしながらエミヤは結構本気の意図で返答した。
「それは失敬。ならば、全霊を尽くして早急な解決を目指そうか」
少しだけ流れた、日常の声音。
ルミアは安心するように目を細めて、返事をした。
「分かりました、待っていますね───?」
鈴の音のような、耳を撫でるルミアの声を聞き届けエミヤは青年へと向き直った。
為すべき事は定まっている。
一度目を閉じ、心地良い空間から逸脱する。
心象を切り替え、雰囲気をリセットする。
今の空間をそのまま戦場に持ち込むことは許されない。これは穢されるべきものではない。守るべきものだ。
一拍。大きく肺に溜まった二酸化炭素を吐きだし、戦場の空気を吸う。
次の瞬間、開かれた瞳は精悍に研ぎ澄まされていた。
彼は変わらず飄々としながら、ニヒルな笑みを浮かべて問いかける。
「それにしても、随分と良い顔をするようになったじゃないか、『ライネル』。飄々と堅苦しい格好は君には似合わない。その怨念こそ、君の本質だ」
確信と共にその名を発すると、青年は苦虫を嚙み潰したような表情をした。
「貴様、いったい何時から俺の正体を見破っていた……!?」
「見破ったのはついさっき程の事さ。私は案外、一人称というのを大切にしていてね。自分の事を『俺』と言う人間で、シオンの技術を行使出来る天才など、私は一人しか知らない」
忌々し気に舌打ちをする青年───ライネル。
傍らに彼が造り上げたリィエル達を置き、彼は目を剥く。その大きく開かれた口腔からは、さぞこちらへの怨念が籠められているのだろう。
だが、それを耳に入れるのは今ではない。
しゃがみ込んでいたリィエルが、その酷く困惑した表情を浮かべながら思案の海から浮上する。
それを見たエミヤは彼女に声をかけた。
「起きたか、リィエル?」
「ね、ねえエミヤ……『イルシア』って、誰……? みんなが、わたしの事をイルシアって……」
数多の情動が渦巻く瞳、エミヤへと疑問を投げかけた彼女は現実を掴めずにいる。
まるで自分が自分じゃないみたい、そう続けて述べたリィエル。
それは間違いではない。
さあ、ここからはエミヤの仕事だ。
リィエルは無事、自我を保ちながら過去の記憶を取り戻してきた。
あとはそこに、エミヤの説明が加われば完成だ。
「……一つ、昔話をしよう。年月にして約二年前程度か」
最初はポカンとしていたライネルだったが、唐突に始まった物語に耳を傾ける程彼の怨念は甘くない。
右手を垂直に振り下げる。彼は、それを少女達の出撃合図にしていた。
今回もまた、それを為そうとして───右手が空中で固定した。
「な、何だ───? これは、ワイヤー……?」
「君にも無関係な話ではないのでね。退屈かもしれんが、付き合ってもらうぞ?」
本数は多くない。だが、明確に動作封じを意図とする包囲網を、突破できる術はライネルにない。
強引に引きちぎろうにも、その細い鉄線は壁の頑丈な部分を軸に固定されている。
「何時の間に……!?」
ライネルは驚愕し、次善の策を逡巡するもパニック状態に陥っている脳裏では焦燥感が沸き立つだけだ。
膂力では突破不可能。残念ながら少女達の大剣では彼の腕ごと鉄線を引き裂くことになる。
それを理解しながらも、ライネルは我武者羅に動き続ける。
「クソ……ッ! 何で、外れない……!」
「当たり前だ。それは私より遥か格上の外道魔術師との敵対時を想定した特別製だ。生憎と君のような研究者の膂力で突破できるような代物ではない。少し黙っていたらこちらもこれ以上何かするつもりは無い。大人しく君を解放しよう」
「……チッ。分かったよ、俺はお前の邪魔をしねえ。その代わり、お前も昔話とやらが終わったらしっかり俺を解放しろよ!?」
「無論だとも。最後にこちらも確認だが、それは君の後方の少女達も動かないと見て良いのだろうな?」
「ああ」
渋々頷いたライネルは、それきり黙ることに尽力しているようだ。
宣言通り少女達が動く様子は無い。
では始めるとしようか。
「始まりは天の智慧研究会が運営する研究所、などと言う我々には見逃せない情報を帝国軍は掴み取った事からだったな。当然無視する訳にも行かず、私が現場に駆り出された」
淡々と、口調は一糸乱れぬ旋律のように滑らかに。
悠然と佇むその姿は、もはやだれにも邪魔することなど許さない。
彼の口から紡がれる物語に、タイトルをつけるのならこうだろう。
それは───雪原の大地で出会った
***
「───と、言う訳だ。当時軍人として数々の任務を請け負ってきたが、これほど己が無力を恨んだ事は無い。確かに軍としては研究所を破壊するというノルマを達成できて言う事なしだろう。だが、私としては兄妹を救えなかった、という事実が心に圧し掛かった」
エミヤの口が閉ざされる。
静寂の空間に響き渡る、リィエル=レイフォードの過去。その半生が幕を閉じた。
イレッセの大雪原、そこで繰り広げられたシオンとイルシアが駆け抜けた最期は、終ぞ≪死神≫の手を掴めずにこの世を去った。
「……結論を言おう、リィエル。つまり君の正体は、世界初の『Project:Revive Life』の成功例。シオンの妹、イルシアの『ジーン・コード』から錬金術的に錬成された体を持ち、イルシアの記憶情報である『アストラル・コード』を引き継いだ魔造人間が、君だ」
「じゃ、じゃあ……兄さんは……?」
「……血のつながり、という側面で話せば全くの無関係の人間だ」
確かにリィエル=レイフォードはこの短い期間、同じクラスの仲間と共に歩んだ時間の中で精神的に成長した。
それは常に誰かという止まり木に依存していた過去を乗り越え、一人で飛び立つことに成功した。
とはいえ、一人で飛び立った矢先にこの真実は重すぎる。
突然の情報を処理するように、リィエルは一度顔を伏せる。
「……君からは、何か言う事は無いのか? 最終的に殺害したとはいえ、過去の友の話だ。何か思う事があるのではないかね?」
そう言ってエミヤは視線を下ろしたライネルと、その後ろで剣を担ったまま動かずにいる三人の少女達に目を向けた。
既にワイヤーは断ち切った後だ。
「……何も思う事なんて無い。ただ、一つだけ言う事があるとすれば───リィエル=レイフォード」
「────」
その声に応じはしないが目を見るリィエル。
兄であるという欺瞞を貫き通し、そして挙句の果てに記憶上の親族の殺害を認めた男。
リィエルはどんな顔をすれば良いのか分からない。
「お前は間違いなく、『Project:Revive Life』───通称、『
そう言い放ちリィエルの、何か弁解があるのではないかという希望の華を摘み取った。
だが、エミヤにはどうもその言葉には彼なりに優しさがあるのではないかと思ってしまう。
「何だよ、その目は。言っとくが別に優しさなんかじゃない。事実を突きつけただけだ。大方、アイツは今までお前とか、そういう他人に依存して生きてきたんだろうが───ンなみっともない真似を見せるな、っていう俺の暴言だ。それがあの天才シオンが残した存在だったら、尚更だ」
「それを優しさというのではないかね?」
「ハ───嗤わせるな。良いか? これは証明に至る過程だ。オリジナルがあんな体たらくだったら、俺の完成品が最強である証明にならねえだろ? 天才シオンが残した完璧な存在を、俺の完成品が凌駕することで初めてその証明が立証されるんだからな」
ライネルは指を鳴らす。
その瞬間、後ろで侍っていた少女たちがライネルを守るかのように立ち塞がる。
表情には何の感情も見えない。
一度吹き飛ばされた相手だと言うのに、命令を下されたロボットの如く無感情に無機質に大剣を構える。
「だから感情なんてものは余計なんだ。その証明を手伝ってくれたことには、アイツに感謝しないとな」
「ふむ。さて、本当にそうだろうか? 案外感情というのは研究者でも解明できない可能性だと私は思うのだがね? 時にはそれを糧に成り上がる人間が出て来ることも稀ではない。格上殺しの理由には、何時だってその可能性が刻まれているのだからな。君とて、自他共に認める天才に成り上がった原点は感情ではないのかね?」
そう言って見つめるは、今なおライネルの前で屹立する少女達だ。それこそ紛れもなく彼も天才であることの証左。
そしてそれは、成長の証左でもある。
そうだ。人間にはそれがある。赤子の時から全てが出来たなんて人間は一人もいない。
成長という未確認の可能性も、感情という潜在された可能性も。
とても英霊と成り果てたこの身には眩い可能性だ。
霊長の守護者なんてものは、とどのつまりただの掃除屋。
全てを零に帰す最終機構であり、未来の操縦桿を握っている人間には、もうなれやしないのだから。
この過程が間違いではないと確認できたとしても、その可能性は羨ましいものだ。
「……へえ。じゃあお前も、そんな感情に流されてここまで来たのかよ?」
「そう、かもな」
正義の味方になりたいという荒唐無稽な理想も、感情になるのならそうだろう。
成長なんて次元の話は、とうの昔に置き忘れてしまったが。
「そう言われれば、感情ってのも馬鹿には出来ないか。俺も、様々な感情を糧にここまで来たんだからな。始まりは、懐かしきあの日。お前が俺の全てを奪ったあの日、忽然と現れたお前を前に、俺の人生は悉く崩れ落ちた」
両手を開き、また閉じる。
その一連の動作を連綿と続け、己が両手の変わらぬ動作をライネルは見下していた。
「あの日、確かに俺は無力だった。とはいえ、多少の成長を経た今の俺があの日に戻ったとしても、お前には勝てなかっただろうな」
視線の先には泰然としたエミヤが映る。
「お前はさっき、俺を天才と呼んだな?」
「事実だろう」
「事実な訳がない。俺があの日、シオンを殺した後どれだけ追い詰められたか知らないだろ?」
エミヤを映す瞳は、暗澹としたものへ。
そこには眼球が嵌っているはずなのに、無限に続く闇が宿り眼窩がその姿を見せているかに見えた。
「俺はさ、知らなかったんだよ、シオンという男の偉大さを。始まりは確かに俺だった。プロジェクトは俺が考案した。だが、その荒唐無稽なプロジェクトの道中でシオンという天才が手を加える事によって、幻想は現実へと昇華し、いつの間にかそのプロジェクトは事実上
「まあ、当然といえば当然か。死者の蘇生など、一言で表せるような事象ではない。とはいえ、それを己が成長してここまで再現して見せた君も紛れもない天才だろう? 魔術講師をやっているとはいえ、魔術師としては凡人以下の私から見れば、何れの人間も天才さ」
エミヤは素直にライネルの才能を認めるが、彼の行動を許容した訳では無い。
先日研究所でシスティーナ達に返答したように、死者を蘇生するには多大な犠牲が必要だ。
そして、ここには三人のリィエル───いや、イルシアをオリジナルとした新たな生命。
その過程で、何人の犠牲が生まれたのか。
「ああ、そういえばお前は魔術行使に関しては凡人以下か。知識はあるのに、それを再現することは叶わない。まるで昔の俺みたいだな」
「残念ながら最後の一言は違う。再現することに拘泥し奇跡を実現したのが君で、再現を諦め新たな道を模索するのが私だ。まあ、いずれにせよ成長を経てここに立っている。如何にも人間らしいじゃないか?」
「……そうか。俺達、実は似てる所が色々とあるかもしれないと思ったんだがな」
「それはないな。逆に、私達はそれぞれ対極を往く者ではないだろうか?」
奇跡に拘泥し、犠牲を許容するやり方は、今のエミヤには不可能だ。
答えを得た以前の彼であれば、別の返答があったかもしれないが。
否定したエミヤをライネルは嘲笑うように口を開く。
「いーや。案外そうでもないかもしれないぜ? 俺達はあの日に同じ無念を抱いてここまで来てるんだ、そこは同じだろう。まあ内容は、強いが為に弱者への無力をお前が抱き。弱者が為に強者への無力を俺が抱く、か……いやいや最高だなぁ、おい。やっぱり───何処まで言っても、俺とお前が交わることは無さそうだ」
雰囲気が一変した。
ネガティブな感情を糧に、彼は障害を取り除く。それは今も昔も変わらない。
エミヤもまた、双剣を構える。
「無論だとも。君のような努力をすれば奇跡を実現してしまうような天才に、私の歩みは理解出来ない」
「お互い様だろ? お前にも俺の歩みを理解出来る訳が無いんだからな! 行け、俺の
その言葉を嚆矢に、今までライネルを守るように立っていたリィエル達が駆け抜けた。
蒼き稲妻は怒涛を突き、赤原の守護者は身構える。
───ガギンッ!
飛来する三人の稲妻を、エミヤもまた全経験を込めた往なしで受け止める。
互いの鉄が一度、二度と接合するたびに戦火の華が舞い散る。
「いい加減くたばれよ、もう死んでもいいんじゃねえのか───!?」
怒号の問いに、エミヤはニヒルな笑みを浮かべた。
死んでも良い。その一言は、エミヤの集中を独り占めするのに最適だ。
皮膚を焦がす火花も、猛追する少女達も、祈るように見つめる少女も、答えを見失っている少女も、今は視線に収まらない。
───なるほど、故に死神か。
エミヤの視線は一点にのみ注がれている。
それこそ、怨嗟を糧にここまで這い上がってきた青年の叫びだ。
「フッ……もう死んでも良い、か。随分と面白い事を言うじゃないかライネル」
「な、面白い事、だと……?」
一歩、また一歩。その足が止まる事は無い。
その姿は誰が言ったか死神の如く。
泰然と不滅で不屈の精神は、如何なる逆境だろうと折れる事は無い。
味方からすればこれ以上頼もしい背中は無く、敵からすればジリジリと迫ってくる死の具現に恐怖を抱く。
右からの薙ぎを往なし、左からの突きを弾く。
「───っ!!」
二人を突破した果てに裂帛の気迫で、一人が正面に立つ。
リィエルと同じ顔をする少女に、そんな顔はさせたくなかったが。
それでもこの足は止まれない。ニヒルに吊り上がった口角は、収まりそうにない。
「殺せ───ッ!!」
ライネルの言葉に呼応し、少女は十字剣を振り下ろす。
そこには決心も、悲痛の覚悟も、機械的無感情も存在しない。
彼女の表情は、紛れもなく恐怖に染まっていた。
ライネルは余計な感情は取り除いた、と言っていたがそれは間違いだったようだ。
彼の不手際か、もしくは奇跡が舞い降りたか。
「フ───ッ!!」
とはいえ、恐怖と共に振り下ろされる大剣に、殺される程この命は安くない。
「───っ!?」
華奢な体と共に弾き飛ばされた少女は、地面に横たわったままエミヤの進行を許す。
既に両者を隔てる障害は無くなった。
エミヤの視線の先には、曇りなくライネルが映る───。
「ひッ!? な、何やってんだお前ら!! お前らはあの、リィエル=レイフォードと同じ能力が備わっているんだぞ!? それが三体も居て、この体たらくかよ!?」
ライネルの叫びに応えられる音は無い。
静寂の空間に、悲痛の叫びが木霊する。
「立てよ!! お前らは、そんなに弱くないだろ!? お前らは俺の
「───残念だよ、ライネル」
エミヤの言葉に、空間が静寂に包まれる。
怒号にも似た懇願を述べていたライネルは、その一言で覇気を失った。
「君の敗因は、その勘違いだ」
「勘違い、だと……?」
「そうさ。確かに元は同じかもしれない。リィエル=レイフォードも、今君を守ろうと奮起する少女達も、元は同じ『アストラル・コード』から生まれた。だがな、リィエルには二年間という成長の歩みがある。対して彼女達にはそれが無い」
「は……? 成長、だって……?」
ライネルは、肩を落とす。
「成長、成長か……。ンな人間らしい事、あの
「彼女は、君と同じように人間なのだから当たり前だ。無論、そこに居る彼女達にも可能性は秘められている。まあ、二年の差を埋めるのにこの戦いは短すぎるがね」
足音は止んだ。
エミヤはライネルの前に立ち、その剣を振りかぶる。
「───さあ、過去の清算をしよう、外道魔術師ライネル。残す言葉は、もう無いか?」
ハッと上げた顔は、既に覇気など宿っていない。
皮膚が千切れんばかりに瞳は見開き、唇は悔しさのあまり歯を伴って鮮血に濡れている。
それを見降ろすエミヤの瞳に、一切の痛痒は無い。
あまりに慣れた光景だ。これもまた、作業の一つと考えてしまっているのだから、当然か。
「ぉ、お前ら───!! こいつを殺せ───ッ!!」
「それが最期の言葉か?」
問いと共に、エミヤは中空を左手を薙ぐ。
瞬間、肉薄せんと立ち上がっていた少女達の周囲を囲うように、巨大な剣が空中から突き刺さった。
無論普通に使ったのであれば、この程度の拘束、彼女達には無力なのだろうが。
「───っ!?」
大剣でエミヤの剣を破壊しようとした少女達が驚愕する。
障害を突き破って肉薄する未来が見えたのだろうが、現実はその障害である剣を薙ぎ払うこと叶わず逆に剣が弾かれてしまった。
その剣の名は───
神話上に記される数多の剣の中で、不滅の刃を以てその銘を後世に残した名剣だ。
エミヤの投影物である以上必ず毀れないという訳では無いが、それでもその強度は本物だ。
その刀身にエミヤは強化魔術を付与し、リィエルの膂力に耐え得る剣を一瞬で用意した。
当然無茶なシナリオであったし、少女達が偽りの名剣を突破する可能性も十分あった。
それでもこの瞬間の勝者は───エミヤだ。
「な、何だよ、その剣は……?」
「さあな、これから死に行く君には不要の知識だ。君の言葉を借りるのであれば───あの世から現世を見上げる時にでも、知れば良いさ」
救援が望めないと分かったライネルは、遂にその命脈が断ち切られるのを受け入れた。
「ま、待ってください、先生───!」
ルミアの叫びが脳髄に響き渡る。
それでもエミヤは、振りかぶった右手を振り下ろそうとして───。
───視界の端で、弧を描く閃光が迸る。
前の投稿はいつだったか、忘れてしまった今日この頃。まずは、お待たせしてしまい申し訳ございません!
本当はもっと早く投稿できる予定だったんですが、思った以上に区切った場面が悪かったようで。過去最高な投稿前の加筆修正量となってしまいました。この流れを次回以降も継承して投稿すればそんなことなくなるぞ、と自分自身に喝を入れます。
そろそろ終わりも見えてきた、第四巻。具体的な話数は言えませんけど、終わりが見えてきました! 大事な事なので二回言いました。こんな所で区切れませんね!
有難いことにこの話を投稿するに伴ってモチベーションも回復してきたので、次回はもう少し早くお届けできると思います。それまでお待ちいただけるのであれば幸いです。