赤原の守護者と禁忌教典   作:石橋航

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遠征学修、閉幕

「……っ! いきなり何の真似だ、リィエル=レイフォードッ!」

 

 視界の端から弧を描いて迫ってきた剣筋を受け止める。

 眼前でバチバチと迸る火花を収めながら、エミヤは犯人に問いかけた。

 間違いなく致死の一撃、隙を狙った一閃には明確な死の文字が刻まれている。

 あと数秒剣が振り下ろされるのが早かったら、恐らくエミヤはダメージを受けていただろう。

 故に、精悍に問う。

 未だに束縛から逃れられていないというのなら、頭を叩いてでも連れ戻さなくてはならないからだ。

 

「それは、こっちのセリフ……!」

 

 だが、力強く見上げたリィエルの瞳には雫が浮かんでいた。

 表情も人殺しなどというネガティブな感情ではなく、どちらかというと……。

 

「泣いているのか、リィエル?」

「人殺しは、駄目……っ! 確かに、にい……ライネルは悪いことしたと思う。それは許されない事。でも、殺しちゃダメ……! それは、エミヤが教えてくれたこと」

 

 なるほど、そういうことか。

 肩を揺らしてそう答えるリィエルは、恐らく手加減をする暇もなく本気で止めに来たのだろう。

 しばらく見ない間に、随分と頼もしく成長してくれたものだ。

 

「……? エミヤ、どうして笑ってるの……?」

「いやなに、君の成長に感動してしまってね。少し感慨深くなってしまった」

「え? 成長?」

「君の言う通り、人殺しは駄目だ。それは私もそう思う」

「だったら……!」

 

 何をしているんだ。

 その問いをぶつけられる前に、答えを指さす。

 エミヤが指したのはリィエルの後ろだった。

 その指を見るようにして後ろを振り返ると、そこには白目を剥いているライネルが居た。

 

「まさか気絶するとは思わなかったが、逃げようという希望を抱かせないためにも怖がらせておく必要があると思ってね」

「怖がらせる……? でも、さっきのエミヤは……」

「演技に関しては私も捨てたものではないらしいな」

 

 そうニヒルにエミヤは告げた。

 するとみるみるうちにリィエルの顔が紅くなる。

 

「だ、騙された……!?」

「私が騙していたのはライネル只一人だったのだがね。だが、君の救出とルミアの悲鳴で臨場感が高まったことは確かだ。感謝する」

 

 そう言って今度はルミアを見上げた。

 本気で心配していた彼女の事だ、如何なる暴言も受け入れる気でいたが、彼女は安堵の表情を浮かべていた。

 

「───良かったです、先生。」

 

 その言葉に目を見開いた。

 普通はリィエルのように怒られても可笑しくないというのに、安堵の表情を浮かべるか。

 つくづく、彼女の善性には目を引かれる。

 それが歪むことの無い様見守る必要はあるだろうが。

 

「大人だな、君は」

「む。それって、わたしが子供っぽいってこと?」

 

 抗議するリィエルに肩を竦める。

 

「別にそんなこと言っていないだろう? しかし、君に迷惑をかけたのは事実だ。後で苺タルトでもご馳走しよう」

「ん。ゆるす」

「無論、しっかりとした食事の後にだがね」

「……エミヤのなら、大丈夫」

 

 満足そうにリィエルは笑顔を浮かべた。

 その姿に苦笑いを浮かべているルミアにも迷惑をかけてしまった。

 

「ルミアも疲れただろう? 帰ったら、何か食べたいものはあるかね?」

「私も良いんですか?」

 

 驚いたように彼女は目を見開く。

 

「勿論。とはいえ、この話の続きは君の状態を何とかしてからにするか」

 

 普通に話していたが、ルミア=ティンジェルの磔状態に変化は無かった。

 

「リィエル、ルミアの磔を壊してくれ。私はライネルを背負う」

「ん。それは良いんだけど……彼女達は、どうするの?」

 

 確かに、それも考えなくてはいけないな。

 リィエルが彼女たちと言ったのは、ライネルが引き連れていたリィエルの完成品、と呼ばれていた三人だ。

 今は生きる理由を失ったが為か、顔を項垂れて剣の檻の中で大人しくしている。

 

「後でアルベルトとグレンに確認しよう。流石に独断では決められないからな」

「……殺されたりとか、しないよね?」

 

 心配そうなリィエルの髪を梳き、力強く答えた。

 

「最悪の場合は、イヴにでも直談判して何とかできないか聞いてみるさ」

「ん。分かった」

 

 そう言ってリィエルはてくてくとルミアの元へ走っていった。

 エミヤは投影した剣を消し、一応様子を見てみた。

 反旗を翻す可能性もゼロではない。

 しかし、彼女たちは微動だにせずその場に留まったままだ。

 

「研究材料としては申し分ない素体であることは確か、か。最悪の場合も克明に考えておく必要もあるか」

 

 しかし、現役時代には幾度も衝突した関係だ。

 良い顔はされないだろう。最悪は、心底恨まれるかもしれないな。

 エミヤは気絶したままのライネルを背負い、その場から動けない三人に声をかける。

 

「動けるか? 君達の主もこうなってしまったのでね。出来れば自分自身の足で歩いてくれると助かるのだが」

 

 そう手を差し伸べると、彼女達は一人で立ち上がった。

 トリガーは何か分からないが、とにかく動いてくれて助かった。

 

「エミヤ、ルミアを解放した」

「すみません。また、助けていただいて……あと、これはお返しします」

 

 

 申し訳なさそうに差し出したのはエミヤの魔術講師のコートだった。

 とはいえ、制服をはだけてしまっている現状で外に出るのは看過できない。

 エミヤは肩をすくめて背負っているライネルを見せる。 

 

「残念ながら、私はコートを纏えない状況なんだ。よって、今は君が使ってくれ。今返されても邪魔になるだけだ」

「───分かりました。ありがとうございます」

 

 

 ルミアは纏っているコートを更に深く着る。

 両手を前でクロスさせ、ぶかぶかなコートの襟を握りしめる。

 

「それでは出発と行こうか」

 

 エミヤの声にルミアとリィエルは首肯した。

 そして、後ろから彼女達がついてきているのを確認して、エミヤは前を向いたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 その後、戦闘を終えたグレンとアルベルトと合流した。

 道中で別れバークスの相手を託したのだが、歴戦の魔導士である彼らであっても苦戦したらしい。

 周囲は焦土と化しており、彼らの服装は煤だらけ。

 目立った外傷がないのは彼らの実力とコンビネーションの好相性が故だろう。

 労いの言葉を互いに交わしながら、その際に背負っていたライネルと、後ろからついてきていた彼女達を引き渡した。

 事情を聴いたグレンは元来の優しさから苦虫を嚙み潰したような表情をしていたが、仕事だと割り切っていた。

 互いに情報を交換した後、もう一度別れることに。

 リィエルやルミアには休息が必要であり、待たせてしまっている生徒達にも無事を報告しなければならないからだ。

 

 そして、山稜の向こうから陽の光が差し込みだした時間帯。

 エミヤ達はようやく旅籠に到着した。

 すると、旅籠の前で生徒達は居た。

 エミヤ達の姿を確認すると同時にこちらに駆け出す。

 

「「「「先生、リィエル、ルミア!!」」」」

「……随分と心配をかけてしまったようだな」

 

 真っ先にこちらに駆け出していたのはシスティーナだった。

 

「良かった、皆無事で!」

 

 今にも溢れだしそうな雫を瞳に溜め、手を振って走っている。

 エミヤは一歩後ろに下がり、リィエルとルミアの背中を押した。

 

「行ってきたまえ」

 

 そして、二人も駆けだした。

 三人の距離がゼロに達した時、抱き合って互いの無事を改めて確認した。

 

「ルミア、リィエル……!」

「ごめんね、システィ」

「ん。別に大丈夫。怪我とかしてない」

「良かった、良かった……! 私、一人で心配で……!」

 

 抱き合いながら涙を流すシスティーナを、ルミアとリィエルが慰める。

 その光景を見ながら、エミヤは感慨深く感じていた。

 遅れてやってくる他の生徒達。

 ルミアとリィエルを囲んで、全員が全員の無事を安堵していた。

 

 そして、ギイブルとカッシュがこちらに近寄ってきた。

 理由は大抵お見通しだ。

 だが、二人はエミヤの隣に並んだだけで特に何も言いださなかった。

 しばらく三人でクラス全員を見渡していた。

 

「……訳は問わないのか?」

 

 たまらずエミヤは声をかける。

 だが、二人はそれぞれの反応を返しながらも結局理由は問わなかった。

 両手を頭に後ろに持ってきて、笑いながらカッシュは言う。

 

「確かに気にならないと言えば嘘になります。とはいえ、俺達はエミヤ先生を信じてますから。なので、俺達が事情を話すに値するようになったら、先生から教えてください。ま、今回は爆弾物調査としておきますけどね」

「私から、か。それは随分と遠い道のりだと理解しているのか?」

「勿論。でも、俺達も頼られたリィエルみたいに強くなって見せますから。な、ギイブル」

 

 突然話を振られるも、眼鏡をクイッと上げながら彼は答えた。

 

「───当たり前だ」

 

 そう力強く答えてくれた。

 確かにその返答は心強い。

 

 強くなりたいと思うのは普通だ。

 その感情を抱いたのは自分自身だってそうなのだから。

 しかし、その強さが適切な道で振るわれるようにと、エミヤは願わざるを得ない。

 戦争だなんて人殺しの道具ではなく、人々を照らす輝きとして在り続けてほしい。

 そして一番は、彼らに真実を伝えてこちら側に引きずり込むだなんてことがないことを願うばかりであった。

 

 空を仰げば憎たらしいほどに快晴だ。

 これは海日和だな、と考えエミヤは一歩前に出る。

 

「皆聞いてほしい。まず一つは、詳しい話もせずに飛び出した事を謝りたい。君達の心配は当然だ。説明責任を放棄した私に全責任がある」

「別に良いですよ。先生達にも何かやらなければならないことがあったんでしょうし」

 

 謝罪したエミヤにシスティーナがそう言った。

 他の生徒もまた納得してない部分はあれど、各々解決策を見出したようだ。

 本当に自分には勿体ない生徒達だと改めて感じる。

 彼らに感謝を述べながら、エミヤは声を上げた。 

 

「感謝する。それでは、旅籠に戻ろうか───」

 

 その言葉に呼応して、生徒達の緊張感も少しずつ解き放たれていった。

 リィエルやルミアを囲い、全員笑顔で戻っていく。

 その後ろ姿を見て、エミヤもまた日常へと戻る───。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 その後、白金魔導研究所での一件は不慮の事故として片づけられるも只事では済まなかった。

 研究所所長のバークスの『失踪』に、突如として下された稼働停止命令。

 島に滞在している人間に対しても退去命令が出されるなど、現在エミヤ達の周囲では慌ただしく人間が動いていた。

 そんな事態にまで発展すれば当然遠征学修なんてやっている場合ではない。

 当然中止との運びになり、早急な本島への帰還が命じられた。

 

 とはいえ、一気に人間を島から退去させることは出来ない。

 よって優先順位が設けられ、エミヤ達は束の間の時間を過ごしていた。

 特に何の予定も無い一日。それをどう過ごすかは各々の判断に任せていた。

 だが、全員が海に行く運びとなり、そしてエミヤもまた、海へ向かっていた。

 美麗な水面に囲まれて、埠頭を歩く。

 

「ふむ、この辺りかね」

 

 ニヒルな笑みを浮かべ、サングラスを外す。

 爛々と輝く日照りに煽られながらも、戦場に行くのは怖くない。

 ラフな格好で場所を定めたエミヤは早速肩に担いでいたクーラーボックスを下す。

 そして、後ろから迫る人影に声をかけた。

 

「───全て片付いたか」

「ああ」

 

 エミヤが歩いてきた埠頭から近づいてくるのはグレンとアルベルト。

 互いに民間人のような格好で変装をしている。

 だが、服装と違って話す内容は深刻だ。

 

「事後報告は聞くか?」

「手短に頼む」

 

 そしてアルベルトから報告を受ける。

 

「ライネルに関しては重大な情報は持っていなかった」

「当然と言えば当然だな」

 

 据えられている地位を考えれば無理もない。

 そもそも斯様な情報統制をしっかりと行っているからこそ、天の知恵研究会は今の今まで存続しているのだから。

 

「そして、リィエルのレプリカの事だが───」

 

 一度話を止めてから、アルベルトは続けた。

 

「───俺が何よりも信頼する者の元へ送り届けた」

「おい」

 

 グレンが呆れたように声を上げるが、アルベルトは無視を貫いている。

 

「ほう? アルベルトが信頼する者、か。君がそう断言できる人間が軍に居たとはな」

「ああ、居たとも」

 

 まあ、それを聞ければ安心だ。

 少なくとも実験に利用されるなどと言った未来は待ち受けないだろう。

 

「因みに、イヴからの了承も得ている」

「イヴからの了承だと? よく得られたな」

「少し苦労したがな」

「……苦労、ね」

 

 肩を竦めるアルベルトと、ジト目のグレン。

 その対照的な反応が気になった。

 

「グレン、先ほどから煮え切らない反応をしているがどうした? 何かあったのか?」

「いーや、別に何もねぇよ。ただ、こいつの老獪さに恐れ戦いていただけだ」

 

 老獪、だなんて言葉が出るほど年は取っていないだろうに。

 ま、何時ものじゃれあいだろう。

 

「それでは報告は終了だ。それと、イヴが偶には顔を見せに来いと怒っていた」

「承知した。時間があれば彼女の元を訪れよう。辿り着けるとは限らないがね」

 

 易々と軍には入れる立場ではない。

 招集されればまだしも、勝手な理由では民間人以上に侵入難易度は跳ね上がる。

 そして、それを無理矢理突破する気も理由も無かった。

 

「その報告さえ聞ければ十分だ。イヴも喜ぶだろう」

「果たして、喜んでくれるかは疑問が残るがね」

「そこに関しては心配する必要ねぇよ。後はエミヤが来てくれるかどうかだ」

 

 グレンが断言してくれたが、厄介払いのような形で軍を一時的に抜けている人間に上司が良い顔をするだろうか。

 まあ、実際に一度会ってみるのも悪くは無いのか。

 

 そしてアルベルトとグレンは背を向けた。

 これで会話は終了だ。

 今は互いに違う立場、長居すべき関係ではない。

 だが、最後にアルベルトの足が止まった。

 

「それともう一つだけ───『禁忌教典(アカシックレコード)』について何か知っている事はあるか?」

 

 一瞬身体が硬直する。

 

「過去から幾度も聞いたことはあるが、意味までは未だに把握できていない」

「そうか。軍としても最重要事項として追っている内容だ。何か掴めたら報告してほしい。無期限の停職処分を受けている人間に言うべき事では無いと理解しているが、頼みたい」

「勿論、我々は仲間だ。情報の独占などという真似はしない。確証の持てた情報は必ず話す」

 

 それだけを言うとアルベルトは帰っていった。

 

「ま、本当に遊びに来るんだったら、お茶ぐらいは出すぜ。俺のじゃねぇけどな」

 

 グレンも一言残してアルベルトの背中を追っていく。

 しかし、禁忌教典……か。

 

「確か、元素からのすべての事象・想念・感情が記録されている宇宙概念とあちらの世界ではあったな。しかし、こちらの世界ではどうなのか……」

 

 しかし、似たような概念がこの世界にもあったとすれば『天の知恵研究会』が血眼で探す理由に足るだろう。

 無論違う理由も十分にあり得る。

 エミヤが知っている知識はあくまで異世界の代物である。

 故に、誰にもこの話を共有できないのであるが。

 

「しかし、時間を縫って模索する価値はあるか……」

 

 そうやって思考の海から浮上した時だった。

 埠頭の反対から来る、三人の足音に振り返った。

 すると、システィーナ、ルミア、リィエルの三人がこちらに向かって走っていた。

 何かあったのだろうか。そう思いエミヤは立ち上がる。

 それと同時に三人もエミヤの元に辿り着いた。

 

「───ようやく見つけました、先生。ふふ、リィエルの言ったとおりだね」

「ん。エミヤの事はよく知ってる」

 

 そう言ってリィエルは胸を張った。

 

「私を探していた、ということは何かあったか?」

「いえ、ただ一緒に遊びたいなと思いまして。システィが先生も居た方が面白いと言っていて、それに私とリィエルも賛同したんです」

 

 本当なのか、とエミヤはシスティーナを見た。

 すると彼女は顔を背けたまま話してくれた。

 

「……ただ、私は先生と決着をつけたいだけです。あの勝利は、完全な勝利とは言えないので」

 

 それはビーチバレー大会の事だろう。

 とはいえエミヤは逡巡する。

 

「私は構わないが、君達とて偶には教員の居ない時間が欲しいのではないのかね?」

「そんなことないですよ。それに、先生が居ればもっと盛り上がると思うので」

「ん。わたしもエミヤと遊びたい」

 

 余計な配慮であったか。

 エミヤは口元を歪ませ、三人に向き直った。

 

「───承知した。それでは、私も全霊で臨むとしよう」

「良かったです、それでは早く行きましょう! 皆待ってますから」

 

 そして、エミヤは歩き出す。

 空には赫々と輝く太陽が居て、動く影は躍動する。

 

 未だに解決の糸口は見出せていない。

 それでも、今はこの日常を謳歌しよう。

 英霊エミヤがこの世界に召喚された、その事実だけで平穏は必ず破られるのだから───。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「───さて、これはどういう事だろうか」

 

 エミヤは現在、遠征学修から自宅に戻っていた。

 そこは形式だけの家であり、そこまで愛着は抱いていない。

 特別な物もないし、必要最低限の代物だけを揃えている。

 そんな質素な空間に、突如あり得ないものが忍び込んだ。

 エミヤであっても思わず声を出さざるを得なかった状況、それがこれだ。

 

「なぜ、君達が居る……?」

 

 それは、玄関前で静かに待っていたリィエルの完成品としてライネルに作られた彼女達であった。

 三人はエミヤの帰りを確認すると頭を下げ、その中の一人が紙を取り出して渡してきた。

 

「紙? メッセージか」

 

 エミヤが見るとそこには、『言った通り一番信頼できる人物の元へ向かわせた』とアルベルトの字で書かれていた。

 事実を理解するとグレンが変な反応をしていた理由も分かった。

 思わず頭を抱えるも、紙には続きがあった。

 

「『すまないが、お前が預かってほしい。そこが一番安全だ。あまりにも異質な存在が故に、軍に置いておくと危険だろう。流石に再び護る事は出来ない』……まあ、当たり前か」

 

 リィエルが認められたのは特例だ。

 しかし、三人もいれば一人くらいなどという考えを持つ人間も絶対に居るだろう。

 最後には不可能であれば戻してくれて構わないと書いてあるが、その選択肢を選んだ結末ぐらいエミヤにも理解できる。

 

「……今日から三人分の食事を作らねばな」

 

 故に、その決断をエミヤは下した。

 玄関で待っていた三人に話しかける。

 

「君達、食事は出来るかね? そもそも、会話ができるかも怪しいか」

 

 彼女達の口から言葉が溢れる事は無かった。

 しかし、聴覚は正常に稼働しているようでエミヤの言葉に首肯する。

 

「そうか。では待っていたまえ。今食材を買ってこよう」

 

 そしてエミヤは家を後にした。

 

 エミヤが彼女達を預かる。

 後に『エミヤ部隊』と呼ばれ敵から恐れ戦かれる戦力となるのだが───。

 それはまだ、少し先の未来の話。

 

 そして彼は知らない。

 現在進行形で、物語の舞台は着々と整えられていることを。

 

 エレノアの確保失敗、それは彼が今回犯してしまった大きな失態なのだと。

 未だに、気付かない。

 

 




 お久しぶりです。この度、要望がありましたのでこの作品を再公開することにしました。突然失踪するような形になってしまい申し訳ございません。
 今回、変な形で終わってしまった第四巻を無事終了させることが出来ました。そして、これから第五巻が勿論始まります。私としても前向きに投稿を考えてはいますが、時間の関係で厳しい状況が続くかもしれません。ですので、気が向いたらこの作品に訪れていただければ幸いです。
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