これアスカ迎えに行くか本気で悩むくらい無視できない票があるなぁ。どうする?
取り敢えず再び勢い任せで読者を篩に掛けるクソ作者です。しかしまぁ、こうなるくらいヤバいのだ。
『ヤシマ作戦発動、陽電子砲発射準備! 第一次接続開始!』
『了解。各方面の一次及び二次変電所の系統切り替え』
『全開閉器を投入。接続開始!』
『電力供給システムに問題なし!』
『周波数変換容量、6,500万kwへ増大』
『全インバーター装置に異常なし!』
『第一次遮断システムは、順次作動中』
『第1から第803管区まで、送電回路開け!』
『電圧安定、系統周波数は50ヘルツを維持!』
無線を指揮車と繋いでいるから聞こえてくる陽電子砲発射シーケンス。見た目が新劇仕様だから情報量も凄まじいのか。旧劇でもこれだけの作業量だったのか。
『第二次接続』
『新御殿場変電所、投入開始』
『新裾野変電所、投入を開始』
『続いて新湯河原予備変電所、投入開始』
『電圧変動幅、問題なし』
『第三次接続』
『了解。全電力、二子山増設変電所へ』
『電力電送電圧は、最高電圧を維持』
『全冷却システムは最大出力にて運転中』
『超伝導電力貯蔵システム群、充電率78.6%』
『インジケーターを確認、異状なし』
『フライホイール回転開始』
『西日本からの周波数変換電力、最大数をキープ』
『第三次接続、問題なし』
『了解。第四、第五要塞へ連絡、予定通り行動を開始。観測機は直ちに退避』
第3新東京市は盆地となっている。迎撃要塞として第3新東京市を囲うように要塞陣地が存在している。第3新東京市へ向けて最大火力を投射出来る様に建設されているその要塞郡から先ずはVLSによる飽和攻撃が開始される。
ラミエルはそれをATフィールドで耐え、要塞のVLS陣地を荷粒子砲で薙ぎ払った。
『第三対地攻撃システム、蒸発!!』
『悟られるわよ。間髪入れないで。次!』
今度は艦載用の12.7cm砲による攻撃だが、それもATフィールドで防ぎ、反撃で黙らせる。
『第二砲台、被弾!』
攻撃はすべて防御して、攻撃座標を計算して撃ち返しているのか。
『第八VLS群、蒸発!』
『第四対地システム、攻撃開始!』
『第六ミサイル陣地、壊滅!』
『レーザー砲射群、第3波、発射します!』
『続いて第七砲台、攻撃開始!』
新劇の様に形を変えたりしてはいない。防御してからの反撃と、堅実な方法での攻撃。ならば一撃で倒せる可能性もある。
『陽電子加速器、蓄積中。プラス1テラ』
『収束回転数は3万8千をキープ』
『圧縮密度、発射点へ上昇中』
『送電損失、増大!』
『電圧稼働変率、0.019%へ』
『事故回路を遮断!』
『切り替え急げ!!』
『電力低下は許容数値内』
『系統保護回路、作動中。復旧運転を開始!』
『第四次接続問題なし』
『最終安全装置、解除!』
『安全装置解除、ヒューズ装填!!』
『射撃用諸元、最終入力を開始!』
『地球自転、及び重力の誤差修正、+0.0009』
『射撃盤、目標を自動追尾中!』
『陽電子加速中、発射点まであと0.2…、0.1』
『第五次最終接続!』
『全エネルギー、超高電圧放電システムへ!!』
『第1から第9放電プラグ、受電準備よし!』
『陽電子加速管、最終補正』
『パルス安定。問題なし』
無線に耳を傾けながら新劇の場面をイメージしつつ思うことは1つ。戦自研の協力もあって完成した大型陽電子砲だ。一発で当てて欲しい所だが。
『8…、7…、6…、5…』
ラミエルがバカスカ撃たれているのに反撃を止めた。ATフィールドでの防御は健在。四方八方から撃たれ続けていても反撃をしない。
まさか──!?
「シオン! ATフィールド全開、衝撃に備えて!!」
『2…、1…!』
「え…?」
『発射!!』
叫ぶと同時に陽電子砲と、ラミエルの荷粒子砲が発射された。
二つの砲撃は芦ノ湖の上で互いのエネルギーが干渉して捻れながら交差。ラミエルの砲撃は下二子山に着弾した。
此方が狙われていると解った時には既に動いて陽電子砲と放電システムを守れる位置に着いてATフィールドを全開にしていた。
それでも凄まじい揺れと衝撃波に倒れ込みそうになる。
此方の攻撃もラミエルより大分手前に着弾している。ミスったのだ!
『敵シールド、ジオフロントへ侵入!!』
『第二射急いで!!』
『放電システムを再調整!』
『ヒューズ交換、再充填開始!!』
『砲身冷却開始!!』
『送電システム最大出力を維持!』
『各放電プラグ、問題なし!』
『射撃用諸元、再入力完了!』
急ピッチで進められる二発目であるが、それよりも向こうの方が早い!
『目標に再び高エネルギー反応!!』
『マズい!!』
『エネルギーチャージのサイクルが早すぎる!?』
「こなクソおおおおおーー!!!!」
マヤさんとミサトさん、リツコさんの叫び声を耳に、陽電子砲の正面にジャンプして盾を構えて直撃に備える。
だが衝撃はやって来ない。
「零号機!?」
盾を構えている初号機の前に零号機が割り込んでいた。
シールドでラミエルの荷粒子砲を防ぎ切る。ATフィールドの重ね掛けと新劇仕様の防御装備だ。旧劇仕様のラミエルで助かった。
そう思った時、ラミエルに変化が訪れる。その正八面体の身体を開き、星型正二十面体に変形したのだ。
「なンてインチキ!?」
ATフィールドを全開にして零号機と初号機、二つの盾を重ね合わせる。瞬間、エントリープラグにまで響く轟音と、外気からの熱を感じる。
「うぐぉぉぉおおおお!!!!」
「きゃあぁぁぁ!!」
ATフィールドで辛うじて反らした荷粒子砲は隣の下二子山を半分消し飛ばした。それでも照射が続く砲撃に零号機の持っていた盾は早々に砕け散り、初号機の持っていた盾も溶けはじめていた。
「盾が保たない!! まだなのミサトさん!?」
『あと20秒!!』
『お願いシンジ君、耐え抜いて!!』
「無理難題をおっしゃるっ!!」
もう盾も溶けきりそうでこのままだと機体で受け止める事になる。だけれど零号機も初号機も機体で受ける事なんてやったらパイロットに深刻なダメージを負う事になる。
背に腹は代えられない。
「仕方がない! シオン、やれぇぇぇぇっ!!!!」
「ええ、っ、はあああああ!!!!」
レンとレイ──零号機を守るためにはこうするしかない。
シオンとシンクロし、エントリープラグのインテリアが沈んで行くのが判る。
初号機の頭上に光の輪が生じる。ヒトに戻れなくなっても構わない。それでも、守りたいものがあんだ!!
左腕を突き出し、ATフィールドが完全にラミエルの砲撃を抑え込む。守る様に零号機を右腕で抱えて。
左腕を払い、荷粒子を薙ぎ払う。
『第二射、発射っ!!』
荷粒子砲が突き抜けた空間を、今度は陽電子砲が真っ直ぐ突き抜け、コアが剥き出しのラミエルを直撃した。
コアを砕かれたラミエルは大炎上しながらその身体を第3新東京市へと沈めて行った……。
◇◇◇◇◇
彼の温もりを感じる。強いココロを感じる。
「ダメ…!」
振り向けば背中からATフィールドの翼を生やす初号機が見える。
その中に彼の想いを感じる。けれど存在を感じる事が出来ない。
グオオオオオオオーー!!!!
初号機が、吼える。
「ヒトの意思……。ココロをカタチとするモノ。そう、彼は……」
わたしの背に居るわたしがそう呟いた時、零号機の腕を動かして、初号機の手を握っていた。
思い起こすのはこの手の温かさ。温かい手に触れた事なんてはじめてだった。
わたしから感じるココロも、わたし以上の強い想いだった。
ワタシのココロがわたしとひとつになって、
彼とひとつになりたい、けれどもそれは彼が居るから感じられるモノがある。
彼に消えて欲しくない。この手で感じた温もりを、感じさせてくれる温かさを失いたくはない。
想いを叶える為にひとつになる
今、解った。わたしは恐かったのだ。わたしはワタシとひとつになって消えてしまう事が恐くて、ワタシを拒絶した。
ワタシは解らなかった。ひとつになることがどういう事なのか。寂しいから、ひとつになりたかった。
でも/でも──。
彼が教えてくれた。
「そう、
そう。もう、恐くはない。恐怖を感じる必要はない。
温かい想いが、恐怖を溶かして行く。
初号機の手を引く。ヒトとしての彼を強く思って、初号機へと送る。
背中のATフィールドが消えていく。
力なく崩れる初号機を抱き抱える。
「…ただいま」
「おかえりなさい」
初号機とひとつになってしまった彼が還ってきた。
エントリープラグの中に4人も入っているから少し窮屈に感じる。
「伝わったよ、2人のココロ」
そう言って彼はわたしとワタシの頭に手を置いた。
わたしとワタシは、同じだけれど違う。わたしはわたししか居ないのだと、この手は教えてくれる。
「むぅ……。もう少しシンジとひとつになってたかったのにぃ…」
そしてもう1人増えたわたしは──良く解らない。
「それで世界が滅んだら目も当てられないよ」
「シンジは私とひとつになるのはイヤなの?」
そう言ったわたしは彼に悲しそうな顔を浮かべていた。
「1つにならなくてもひとつになる方法なんて幾らでもある。そうしてヒトはひとつになって互いを想いあって来たんだ」
頭の上から彼の手が離れようとする。その手を慌てて掴んでいた。
「レイ……?」
何故わたしはこの手が離れるのを止めたのだろうか。
「イヤ…」
そう、イヤだから手を掴んだ。
離れた手を、元の位置に戻した。
「レイもワガママを言うようになったか……」
そう彼は言って、乗せられた手はまたゆっくりと動き出した。
「ズルい! 私もぉ!!」
「レン?」
「ええ」
そう言葉を交わして彼はワタシから手を退けて、もう1人のわたしの頭に手を乗せた。
「んっ……ふふっ…」
もう1人のわたしは彼に撫でられて笑った。何故笑うのだろうか?
「そんなの決まってるわ。気持ちが良いから」
気持ちが良いとヒトは笑うのだろうか?
「そうね」
そう。なら、この感情は気持ちが良い、というものなのだろうか。
「……よし。帰ろうか」
「ええ」
「はぁ…。もう少し撫でてよぉ…」
「あとで、ね」
彼の手が離れてしまった。でも帰らなければならないのも事実だ。でも寂しい。
帰ればわたしはひとりだけ。
「レイ…?」
わたしは、彼の手をまたつかんでいた。
「帰りたくない…」
「どうして?」
「ひとりは…、イヤ…」
「……わかった。一緒に帰ろ」
彼から伝わる想い。それが心地よくて、わたしは笑った。
◇◇◇◇◇
使徒の攻撃を防ぐ為に初号機は背中から光の翼を生やした。強力なATフィールドを展開して使徒の攻撃を防ぎ切った。
陽電子砲で使徒は殲滅された。
だがその代償は──人類の滅亡へのカウントダウンだった。
「ちょっと、どうなっているのよリツコ!!」
「信じられません、形状制御のリミッターが外れています。解析不能…」
「エヴァの擬似シン化第1覚醒形態。ヒトの想いがカタチとなる姿。ヒトを超え、神に近い存在へと変わっていく……」
「それって…!?」
「彼の想いがヒトの域に留めていたエヴァを覚醒させてしまったのよ」
そう、エヴァの心に触れる事の出来る彼だから出来てしまうエヴァの覚醒。
作戦前だというのに初号機からユイさんと最初に出会った碇シンジ、そして初号機の心と共に還ってくるなんて事をやらかしてくれたばかりだというのに。
「天と地の万物を紡ぎ、相補性の巨大なうねりの中で、自らをエネルギーの凝縮体に変身させているんだわ」
初号機の翼が四枚へと増え、虚空に穴が空いていく。
「純粋にヒトの願いを叶える。ただそれだけの為に…」
それに呼応する様に、初号機の手を掴んだ零号機の頭上にも光の輪が顕れる。
「この世界の理を超えた、新たな生命の誕生……。代償として、古の生命は滅びる…」
「翼……。15年前と、同じ……!」
「そう、セカンド・インパクトの続き、サードインパクトが始まる。世界が終わるのよ……」
初号機と同じく背中から翼を生やす零号機。彼が選んだのは、彼女だったようね……。
つづく。