エンタープライズとビスマルクがゴー!シュート!!!!する話 作:疾風怒号
原作:アズールレーン
タグ:R-15 ベイブレードバースト キャラ崩壊気味 これをアズールレーンと言い張る勇気 アニメネタあり
Q,エンタープライズ、好きかい?
A,うん、大好きさ★
「退きなさいエンタープライズ、それは私の物よ」
「悪いが私にも譲れない物はある。引き下がるのはビスマルク、貴女の方だ」
食堂の中心で二人のKAN-SENが、今にも火花が散りそうな程の熱い視線をぶつけ合う。
片やユニオンの英雄、灰色の亡霊。机を挟んだ向かいにはかの鉄血の指導者。そんな大物が睨み合いを続けているとなれば、普段は騒がしい筈の食堂が静まり返るのも頷けるというもの。現にグリッドレイは写真を撮るのも忘れて二人を注視し、
閑話休題。エンタープライズとビスマルク、なぜこの二人がこんな事になっているのか。それは机の上に鎮座するある物に起因する。それは…………
プリンである。
「え、プリン?」と思われた読者様も多いかと思うが、机の上に置いてあるのは市販のプリン、プッ○ンプリン一つのみ。間違っても汎用型だったり試作型だったりはしない、全国のスーパーマーケットやコンビニなどで100円そこらで売っているプリンだ。とても美味しそう。
そう、この二人は今まさにプリンを取り合っているのだ!
だが双方共にみっともなく引っ張り合いをする程子供ではなく、だからと言って「はいそうですか」と大人しく引き下がる程お利口ではなかった。いやどれだけプッチ○プリンを食べたいのか、ストレスか?ストレスなのか? エンタープライズはほぼ毎週出番があったせいで休みも少なかっただろうし、ビスマルクに至っては最終回の僅か30秒ほどしか出番が無かったのでやはりストレスだろう、イライラすると甘い物が欲しくなったりする経験は誰にでもある。寧ろ人間らしくて良い、レーション食ったりするより余程健康的に思える、……かもしれない。
え? アニレンの話はNG? しょーがねぇだろアレで放送されちまったんだから(PPTPPC
「こうして睨み合っていても埒が明かないな、ビスマルク」
「……ええ、分かったわ。その勝負受けて立つ。 U-556!」「はいアネキ!」
一体今の短い会話の何処に勝負の申し込み云々があったと言うのか、だが二人の間では通じ合っているらしいので特に問題は無い。さては君達実は仲良いな?
ビスマルクが指を鳴らすと同時に食堂に突っ込んできたゴゴロクちゃんが、一抱えほどのプラ容器のような何かを机に置き、セロハンテープで軽く固定する。勿論これで終わりではない、続けてルアーケースに似た箱の中から『何か』を取り出し、それをビスマルクに手渡した。
対するエンタープライズはたなびくコートの内側に両腕を突っ込み、抜き放ったその手にそれぞれ『何か』を握りしめている。
辺りのKAN-SEN達は示し合わせた様にその場から距離を取り、広がったその場はさながらステージ。いや、此処はステージそのものだ、向かい合うのは歴戦の
此処は母港、取り合うはプリン、向かい合うKAN-SEN、ならば行う事はただ一つ______
______そう、ベイブレードだ。
「えー、突発なので使用ベイは両者一つ! バーストフィニッシュで2ポイント、スピンもしくはオーバーフィニッシュで1ポイントの3ポイント先取で行います! 二人とも、それでいいですか!?」
いつの間にかマイクを持ち出していたU-556に二人が頷いた。
「それじゃあ始めるよ! ファーストバトル、レディー・セット!」
互いに握ったランチャーにベイをセットし、騒めきの中構える。
「スリー!」
ざりり、とブーツが床を踏み締める音。
「ツー!!」
限界まで引き絞られた身体が軋みを上げ、静止する。
「ワン!!!」
空気が歪み、ひび割れると錯覚するほどのプレッシャー。……そして______
「「______ゴー、シュゥゥッッ!!!!!!!!!」」
辺りを真っ白に染め上げる閃光と火花を散らし、二人のベイが勢いよく放たれた!
「速攻で決める!!ヴァルキリーッ!!!!」
《ブレイブヴァルキリー.Ev'2A》
ブレイブリング、ダブルシャーシ2A、
限界近くまで磨耗し、規格外の大径を得たこのドライバーの加速力は全パーツの中でも随一となり、ラバー軸特有のけたたましい擦過音を轟かせ青い戦神がスタジアムを駆ける!
「___速い!?」
「貰ったッ!!!!」
ビスマルクが反応するよりも速く、ヴァルキリーの刃が白いベイに届いた。リングとシャーシが重なり合った巨壁の如きそれが、まるで重さなど存在しないかのように相手を撥ね飛ばす。風を切って飛んだベイは、
「オーバーフィニッシュ! エンタープライズさんに1ポイント!」
U-556が手を挙げると同時に食堂中に歓声が沸いた。
まさに一撃必殺、スタジアムに痕が残る加速力もさることながら、それを制御し完璧に攻撃を当てるエンタープライズ自身のテクニックも凄まじい。ビスマルクの右手に収まったベイの、2つある内1つ目のロックが外れている、それを嵌め直しながら、それでも彼女は不敵に笑った。
「流石ね、エンタープライズ。まさか『この子』を吹き飛ばすなんて」
「いや……、今のはバーストさせるつもりで撃ち込んだ。 予想以上の重さと技量、それが噂に聞く『ロンギヌス』か」
感嘆を微笑で受け流して、ビスマルクがランチャーにベイをセットする。エンタープライズがそれに倣ったところで、2回目のカウントダウンが始まった。
「スリー! ツー!! ワン!!!」
「「ゴー!シュートッ!!!!」」
着地と同時にまたもやヴァルキリーが駆動した。スタジアム外周に到達し、残像を伴って急加速する。
「今度はバーストさせ、なッ!?」
だが戦神の刃は宙を斬った。そこにある筈の攻撃対象が存在しない。馬鹿な、ビスマルクのベイの初速は見切った筈。だがアレは
思考を巡らせること数瞬間、白いベイの『角度』に彼女は気付いた。
「そうか、
「その通り。加速させる技術があるなら、加速させない撃ち方もあるッ!」
びしりと手を掲げ、その顔にいっそ無邪気な程の歓喜を張り付けてビスマルクは笑う。対するエンタープライズの表情は苦々しいが、既に彼女は思考を次の一手に向けていた。
(いや、いくら一撃かわしたと言っても、フラット軸が滑って加速できないような角度で撃ち込んでしまえば立て直しは効かない。もう一周加速させたヴァルキリーをぶつければ___!)
エンタープライズはヴァルキリーを通過させ、そのまま再加速させようとした。事実その判断は正しい。
ラッシュシュートは本来、より強くベイを加速させる為のシュート方法だ、軸先が横滑りしその場に留まる状況はラッシュシュートとしては失敗なのである。
彼女が判断した通り大きく傾いたベイは立て直しが効きにくい、仮に立て直したとしても回転力の消耗は避けられない。だからこそ。
「轟け、ロンギヌス」
ビスマルクの声と共に白いベイが急加速した時、彼女の思考は驚愕に塗りつぶされた。
反応はおろか思考すら追い付かない、ただ視線の先で白と紫の閃光が奔り、ヴァルキリーが高く打ち上がる。
《レイジロンギヌス.Ds'3A》
現時点で唯一ドラゴン型のメタルパーツを持つレイジリングを搭載した、破滅の槍の名を冠するベイ。
大きく下方向に張り出す3Aシャーシとレイジリングのメタルドラゴンが重なり合う事によって実現した超低位置打点の槍型アッパー刃、メタル搭載によるそもそもの重量、その全てが相手を貫き弾き飛ばす事に特化しており、半端なベイでは簡単に場外へ運ばれてしまう。
だが、この瞬間エンタープライズを驚愕させたのは、他でもないドライバーだ。
「ラバー軸による加速力、同じくラバー刃で殴り付ける事によって発生する高摩擦攻撃、柔軟性による自滅バーストリスクの低減。確かに、攻撃型ベイの中でもトップクラスの性能ね。……だがそれでも、攻略出来ない訳ではないッ!」
「く……ッ、ぅ……!」
Ev'ドライバーよりも幾らか小回りの効いた動きでロンギヌスがギュルリと回る。目標はヴァルキリーの落下点ただ一つ。
「どんなベイでも、真上真下からの攻撃は想定されていないッ!!!!
轟くは怒龍の咆哮、紫電纏う槍にヴァルキリーが貫かれ、凄まじい激突音と共に
「バーストフィニッシュ!!ビスマルクのアネキに2ポイント!!」
一瞬の静寂に、ヴァルキリーのパーツの落ちる乾いた音だけが響く。そしてそれを呑み込むかのように歓声が沸いた。
「これで残り1ポイント。後は無いわよ、エンタープライズ」
「……なに、次でロンギヌスをバーストさせれば済む話だ。プリンは渡さない」
驚愕に揺れていたエンタープライズの双眸が、猛禽の如く燃える。収まりかけた火花が、再び激しく散りばめられる。
戦いはまだ、始まったばかりだ。
遂にロンギヌスの圧倒的なパワーに追い込まれたエンタープライズ。だがそんな逆境の中にあってこそ、彼女の"グレイゴースト"たる力が覚醒する!
バトルの行方は、そして一切出てこなかった指揮官の思惑とは!
次回!ベイブレードバースト アズールレーン、『輝ける翼、ゴールドターボ』
来週も見逃すな、ゴー、シュート!!!!
続かない