蒼き飛翔のイクシロン   作:赤羽ころろ

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Depth2 蒼きツバサ

僕が今見ている光景は何なんだろう・・・・・・。聞こえるのは隊長の怒号と中尉の機体から発せられる救難信号の音だけ。一瞬だった。

 

 僕が軍に入ったのは二年前のこと。父も軍人でちょうど二年前に戦死した。それにより僕が家族を養わなければならなくなった。二歳年下の妹、レイナと母親のために。軍の幼年学校にもともと入れられていた為、父が戦死した後僕は幼年学校を飛び級して士官学校に入りついこないだ首席で卒業した。

 そしてこの第11独立機械化試験班、通称「機械験」に配属された。リヴェイア軍はCAHの開発に成功したがやはりまだ戦術上では航空機や魚雷艇が有効であったためCAHの戦術理論の構築、データー採取、新機体などの開発を目的として「機械験」を設立した。現在12班ありそれぞれが各海でデーターを採集している。僕、カナト・ルベルが所属する11班は主に極東近海で活動している。そして今日、遂に僕の初陣が決まった。

 数時間前、UXENON級11番艦潜水艦「ユーリシャス」格納庫

格納庫に連立する5機の16m程の巨人。RV-03M「オーディ」の腹の中、操作するためのコックピットに僕は居た。初陣で醜態は晒したくない。くさっても首席で卒業したのだから。機体各部をチェックする。モニターには「異常なし」が表示される。メカニックの人達は優秀だ。次はメインカメラとサブカメラの調節、マニュピレータを握ったり指を一本ずつ動かしたりする。CAHにも準備体操は必要だ。

 

「おーいカナトぉ」

 

ふいに名前を呼ばれた。名前を呼んだ彼はタラップを昇りコックピットに入ってきた。

 

「お前さんは念入りだねェ。 まだ使ったことない新品なんだから不具合はねェって」

 

「でも何があるかわからないしやっておいて損は無いよ。 それより君はいいのかいリデット君?」

 

はははっと苦笑して彼はドリンクを渡した。

 

「別に俺はいいさ。 首席君が守ってくれるしな!」

 

「自分の身は自分で守れよリデットぉ・・・・・・」

 

彼、リデット・ビングは士官学校での友人でカナトと一緒に飛び級、学年二位で卒業しカナトと同じ機械験第11班に配属された。

「いやいや上官は部下を守るもんだぞカナト少尉殿?」

 

「茶化すなよ・・・・・・それに一つしか変わらないだろ?」

 

「そうか上官は部下を守るものか」

 

二人の会話に突如別の声が割って入った。

 

「た、隊長殿!? これは失礼しました!」

 

リデットの横から屈強な男が覗いていた。機械験11班の隊長、アズルフ・コーゴン大尉だ。

「よい、さて今日は君たちの初陣だ。 我々がフォローしてやるから安心するがよい」

 

二人の肩をガシっと掴んでいった。

 

「隊長俺らもですかい?」

 

「勘弁してくださいよガキのお守なんて」

 

タラップの下から若い男の声と女の声がした。

 

「まあそういうなレビン、アイズ。 お前らの方が先輩なのだからちゃんと面倒を見てやれ」

 

レビン・スターライズ特務中尉とアイズ・スルーズ中尉、この機械験11班の副隊長と隊員。階級が上のレビンが副隊長かと思いきや人間性の問題でアイズが副隊長である。

 

「へいへいじゃあアイズお姉さまよろしく」

 

「おいレビン、お前ボコボコにしてやろうか?」

 

ひぃーっとレビンの悲鳴が聞こえたところでブーブーと内線が鳴った。

 

「はい、格納庫。 コーゴンだ」

 

「む? 大尉か? 私だ」

 

声の主はこのユーリシャスの艦長、アズエル・サブナック艦長だった。

 

「そろそろ作戦時間だ大尉。 出撃準備願いたい」

 

「ハッ! 了解であります」

 

受話器を元に戻しコーゴンはカナトのオーディ―の前に戻り召集を掛けた。

 

「さて諸君出撃である。 総員準備に掛かれ! 10分後に出撃するぞ」

 

「「「「サーイエッサー」」」」

 

全員が足をピシッと揃え敬礼する。そして素早く解散し各々が準備に入った。カナトはまずパイロットスーツに着替えるためロッカーへ向かった。先にリデットが到着していた。その顔にはやはり落ち着きがなかった。

 

「とうとう初陣だな・・・・・・。 緊張するぜぇ~」

 

「僕には緊張しているようにはみえないけどね。 緊張するのはわかるけど極東地域にはまだCAHを所有しているコロニーは少ないしリヴェイアと敵対しているところは無いから戦闘は無いよ」

 

ロッカーを開けジャケットを脱ぎブーツをロッカーに入れてパイロットスーツを取り出す。脚から入れて全身にぴったりとフィットするサイズ。真ん中のジッパーを首まで上げてブーツを履きヘルメットを手にしロッカーから出ようとした。

 

「ちょっと待ってくれカナト・・・・・・。 これ止まらないんだ・・・・・・」

 

かなり緊張しているのだろう。パイロットスーツの首元を固定するアクセサリーをカチカチとしてなかなか止められないリデット。カナトは仕方なくそれをカチッと止めてあげる。

「まったく本当に緊張しすぎだよ」

 

「首席のお前とは違うんだよ」

 

そして二人は格納庫へと向かった。そこにはすでに他の三人が集まっていた。

 

「すみません遅れました」

 

「うむ問題ない」

 

コーゴンは全員を見渡して言った。

 

「さて全員そろったな。 では作戦概要を説明するぞ。 我々の目的は極東地域のデーター採取とCAHの運用データー収集だ。 作戦時間は約二時間、作戦行動中はフォーメーションを崩さぬよう心掛けろ。 では出撃する。 各員登場せよ!」

 

「了解!!」

 

コーゴンの掛け声とともに全員がCAHに乗り込む。カナトはまずコックピットハッチを閉める。そして各計器が正常なことを確認し体を固定するシートベルトを締め、ヘルメットをかぶる。コックピットはしっかりしまってないと水が入ってくる。潜水艦はCAHを発進させるため一時的に浮上する。正面のハッチが空きCAHは体の半分ほどが水に浸かった状態で射出される。

 

「よしA・コーゴン、オーディ出るぞ」

 

バシュっと風を切るような音がして隊長機が発進していった。続いてレビン機とアイズ機が発進した。

 

「ええっと・・・・・・リデット・ビング准尉、出撃しますっ!!」

 

リデットが出撃し、残るはカナトのみとなった。深く深呼吸し、

 

「カナト・ルベル少尉、オーディ行きます!!」

 

機体の両サイドをレールに固定されたオーディは勢いよく射出された。その勢いでカナトはシートに押し付けられる。学校で対G訓練はこなしていたがやはり本物は違う。目を開けるとそこには一面、蒼が広がっていた。軍に入ってよかったと思ったことはコロニーの外の世界が見れるというところもあった。だがすぐに我に返り機体のホバースイッチをオンにする。軽くペダルを踏み脚のバーニアを使い減速し水面に着地した。

 

「ふぅ・・・・・・危ない危ない」

 

『よしお前らまずは百点だ。 ちゃんとついてこいよ!』

 

「は、はい!」

 

作戦通りカナトはオーディにマルチランチャーを構えさせマガジンを切り替え発射する。デコイは海面に着水し沈んでいく。デコイのセンサーをオンにしデーターを録りはじめる。

 

『こちらレビン、スキャン開始しました』

 

『こちらアイズ、スキャン開始』

 

『えっと・・・・・・リデット、スキャンはじめました』

 

「こちらカナト、スキャン開始しました」

 

『うむ、各員移動開始するぞ』

 

報告が終わると前を行く隊長機が前進を始める。カナトもペダルを緩く踏み込みついていく。水上をスケートして5機のCAHは海上を進む。10分ほどしてアイズが『あれ?』と声を漏らした。

 

『どうした中尉?』

 

『いえ、西の方角に生体反応が出て・・・・・・』

 

西といえば旧日本の方向。今は誰もいないはずだ。

 

『おいおいアイズ、動物とかじゃねぇのかよ?』

 

『違うわよ、これは明らかに人間の反応よ! 男と女が一人ずつ。 隊長どうします?』

 

コーゴンは一分ほど考えて、

 

『うむ中尉、保護してこい。 もしかしたら漂流したのかもしれん』

 

『了解』

 

アイズは一人隊列を離れ西へ向かった。その後少し間をおいてコーゴンが、

 

『・・・・・・我々も追うぞ。 もしかしたら敵対勢力がいるかもしれん』

 

「了解です」

 

アイズの後を追い残りの4人も西へと向かった。この時まだカナトはわかっていなかった。この後に起きる「運命」に。

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旧日本海域、現在横須賀市の上を通過したところ。生体反応はまだ先だった。

 

『あ、陽が出てきましたね』

 

リデットの声がインカムから聞こえた。時刻は5時に差し掛かっていた。すでに東の方は明るい。

 

「こらリデット気を抜いちゃだめだよ」

 

『へいへい』

 

三十分ほどして生体反応が出た近海へとやってきた。

 

『こちらアイズ、二名確認。 これより保護に向かいます』

 

『了解』

 

アイズ機が先行していく。このまま何も起こらないと思っていた。だがアイズの一言で状況は一変する。

『ッ!? この子達逃げて!? くそ、追いかけます!』

 

「逃げた? 怖がってるのか?」

 

アイズ機は森の奥へと行く。そして、

 

『っきゃぁぁぁぁぁぁ!?』

 

アイズの悲鳴と共に轟音が鳴った。

 

「何!?」

 

『アイズ!? 応答しろ!』

 

アイズ機からは救難信号が発せられていた。

 

『た、隊長レーダーに反応・・・・・・未確認機体(アンノウン)です!!』

 

『なんんだと!? く、各機アイズの救出を最優先だ!』

 

『了解!!』

 

こうして僕の初陣は波乱に満ちたものとなる。

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「行くぞみんなのところへ帰るため、この子を守るために、イクシロン!!」

 

立ち上がった巨人はアオイの想いに応え目の前の障害を破壊した。真正面にはリヴェイアのCAH。

 

「武器、フィッシャーダガー? これか!」

 

モニターに表示された武器をタッチすると自動で左肩の付け根にマウントされた小型のナイフを展開、右手に装備した。

 

「どけぇぇぇ!」

 

脚と肩のスラスターを吹かしCAHの肩関節に刺した。スラスターの慣性をそのまま威力に変えたダガーはCAHの右腕を軽く破壊した。不利だと分かったのかCAHは退却しようと上昇する。がアオイはそれを逃がさない。

 

「まだだ!」

 

右肩の付け根に装備されているもう一つのフィッシャーダガーを展開、逆手持ちにして二刀流でその両足を叩き斬った。その時機体のどこかがCAHに触れたらしく接触回線が聞こえた。

 

『っきゃぁぁぁぁぁぁ!?』

 

「女!?」

 

アオイはそれ以上追撃しなかった。そのまま敵機は落下していき轟音とともに地面にたたきつけられた。砂浜に降り立つと数百m先にCAHが4機確認できた。

 

「やってやる・・・・・・」

 

それは確かにミズキを守ると誓った自分に対しての暗示であった。

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「隊長、あれ・・・・・・」

 

『ああ、よしレビンとリデット、先行しろ! 俺とカナトは後方援護だ』

 

『了解!』『りょ、了解』

 

二機のCAHが方にマウントしてあったマシンガンを装備して牽制しながら接近していく。

 

『くっやはり抵抗があって当然か』

 

「え?」

 

今隊長が言ったことに違和感を覚えたがそんな考えは戦場ではすぐに消え去った。

 

『カナト行くぞ!』

 

「は、はい!」

 

コーゴンの怒号にカナトは咄嗟に反応する。カナトはオーディにマルチランチャーを肩にマウントしマシンガンを持たせた。

 

『くそ、こいつ早い!』

 

リヴェイアの最新機であるはずのオーディが水上戦で翻弄されていた。アンノウンは機動力が高く空は飛べないものの、ジャンプなどを組み込んだ軌道によってレビンたちの攻撃を軽々よけていた。

 

「ぐっ避けろ!!」

 

アオイの声にイクシロンは反応する。今、イクシロンはアオイの体の延長線上にある。考えたことがダイレクトに伝わりそれこそ自分の体を動かしているような感覚だ。

 

「アオイ、右」

 

「わかってる!」

 

右からマシンガンを連射しながら迫ってくる。動きの感じからまだ戦闘に慣れていないようだった。それはアオイも同じだが生憎、こちらは反応速度が違った。すぐさま上に跳躍。そして後ろに回り込み着地する。

 

「はやく退いてくれ!」

 

アオイは人殺しだけはしたくない、そのため今はできる限り翻弄して相手が退くのを待っていた。がコーゴン達は退く気などなくむしろ作戦で動こうとしていた。

 

『よしアイツを消耗させるぞ。 レビン、アイツを空中に逃がせるか?』

 

『え? ええまあ』

 

『空中に浮いたら俺とカナト、リデットで撃ち落とす。 いくら機動力が高くとも空を飛べるわけではあるまい。 やるぞ』

 

『了解!』

 

同時にレビンが腰からプラズマダガーを取り出し接近戦に持ち込んだ。

 

「こいつ!」

 

アオイはやはり跳躍した。それを見たコーゴンは、

 

『よし、全員一斉射!』

 

コーゴンの合図とともに三機のCAHがマシンガンを連射する。絶え間ない銃声と弾丸がアオイを襲う。

 

「うわ!? 避ける!」

 

前後左右、上下に逃げるが敵の弾幕はやまない。そしていくらイクシロンと言えども限界が来た。そう、機体内部の余剰熱によるオーバーヒートである。

 

「しまった!?」

 

無論、分かってはいたが回避と両立するという思考が追いつかなかった。空に浮く力を失ったイクシロンは只々海に落ちていく。

 

『よし、今だリデット仕留めろ!』

 

『は、はい!』

 

いくら新兵であろうともただ落ちてくる敵を仕留めるのはたやすいこと。そう思い一番近いリデットに指示を出した。リデット機はプラズマダガーを取り出し急速上昇、真正面から向かっていった。

『うおおおおおおおお!!』

 

(ダメなのか・・・・・・)そう一瞬思ってしまった。だがまだやらねばいけないこと、帰らなければいけないあのコロニーに。そして何より今はミズキを守らねば。自分を奮い立たせるようにアオイは叫ぶ。

 

「イクシロンお前の力を貸せぇぇぇぇぇ!!」

 

想いは通じる。アオイの声に反応しイクシロンの双眼は蒼く煌めく。モニターには「D.C SYSTEM」の文字が浮かぶ。それと同時にバックパックの双翼が息を吹き返した。さらにそこから蒼い粒子を煌めかせながら機体の各部が蒼い光を出し輝き始める。

 

『なんだあれは!?』

 

コーゴンの困惑の声すら今のカナトには届かなかった。完全に見惚れてしまっていた。それはあまりにも綺麗で。

 

「蒼きツバサ・・・・・・」

 

それはまるで蒼き双翼を纏っているようだった。そしてレビンが困惑の声を上げる。

 

『隊長! これ見てください・・・・・・』

 

『これは!?』

 

カナトにもデーターが送られてきた。そこには周辺の空気の成分が細かく示されていた。

 

『あの機体が翼を生やしてから空気中の水分がなくなってます!』

 

「そんなことって・・・・・・!!」

 

『もらったぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ!』

 

「ダメだリデット!!」

 

「まだ終われないんだぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

アオイの叫びと共にイクシロンの右腕がリデットのオーディの頭部をがっしり掴み放つ。

 

「ボルトファングッ!!」

 

イクシロンの腕から超高速の超電磁パイルバンカーが射出されオーディの頭部を破砕した。そしてゆっくりと引き抜くとオーディは海にまっさかさまに落ちて行った。

 

「リデット!!??」

 

『レビン、撤退する。 お前はリデットを回収。 カナトは俺と一緒にアイズを回収する。 閃光弾で攪乱しろ!』

 

『了解』

 

レビンは腰から閃光弾を取り出し投げつけた。一秒後、起爆したそれはまばゆい光を出しながら海へと沈んでいった。その間にレビンはリデットをキャッチ、カナトとコーゴンは動けなくなったアイズ機を両脇で抱えて撤退した。

 

「う・・・・・・退いてくれたのか?」

 

ゆっくりと目を開けるとそこには波の音しかしない静かな海だけだった。アオイはここになって初めて自分の手が震えていたことを自覚した。そしてとなりにいた少女はいつの間にか気絶していて静かな寝息を立てていた。

神薙アオイはひとまずミズキを守ることに成功した。

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戦闘が終わった後の島は荒れ果てていた。木々は倒れ燃えていた。ミズキの小屋も少し損傷していた。

 

「君も来るだろ? こんなところで一人じゃあれだし」

 

「・・・・・・そうだな」

 

ミズキは大きな鞄を取り出して支度を始めた。アオイは小屋の中を見渡す。するとミズキの机に写真が置いてあるのに気付いた。真ん中に居るのはミズキだろうか。おそらく父と思われる人物と母親、そして姉と一緒に映っている。250年前のものだろうが色あせていなかった。

 

「これ君の家族?」

 

「多分・・・・・・な」

 

そしてそれをアオイから奪い鞄の中に入れた。

 

「私は準備できたぞ。 お前はどうする?」

 

「ん? ああオレはちょっとガレージ見てくるよ。 先に行っててくれ」

 

アオイはそう言いガレージへと向かった。

つい先ほどまでここにイクシロンが居た。そして250年の時を経てアオイが起動させた。ここに来た理由はまずイクシロンに関するものが無いか調べるため。そしてミズキのことが何かしらないかを調べるため。本棚らしきものはあったが書物などは一切なかった。だが一つだけ少し錆びたジュラルミンケースを見つけた。

鍵は開かなかった。仕方なくアオイはそれをもってミズキの元へ向かった。

 

「なにかあったか?」

 

「これだけ。 さあいこうか」

 

二人はコックピットに乗り込んだ。荷物を積んでも中はまだ広かった。先ほどと同じ手順でイクシロンを起動させる。

 

「ところでどうやってお前のコロニーまで行くつもりだ?」

 

「泳ぐんだよ。 こいつは超高深度海洋探索型人型兵器なんだろ? 泳ぐのは十八番だろ」

 

そして海に入っていった。各スラスターがフィンモードに切り替わり海の中をすいすいと進んでいった。

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お兄がいなくなって四日。いまだ何の続報もないまま学校に行ってお風呂に入り寝てまた学校に行くという日常を繰り返している。

つい三日前にレン兄とお兄と一緒に見た夕焼けを一人で見ている。ミハ姉も元気そうに振舞ってはいたけど心の中じゃ泣いてるんだろう。

 

「お兄早く帰ってきてよ・・・・・・」

 

「呼んだか?」

 

ふと後ろから懐かしい声がした。バッと振り向くとそこには自分の兄が居た。一瞬夢かと思った。幻影かとも思ったがあれは紛れもなく自分の兄だ。

 

「お兄ぃぃ!」

 

そう確信した時にはもうアオイに抱き着いていた。涙なんてお構いなしに。

 

「もう馬鹿じゃないの! 今までどこほっつき歩いてたのさ!」

 

「あー・・・・・・その悪かったな」

 

バカバカと繰り返していて気づく。兄の後ろにいる女の子はだれだと。

 

「えーとぉ・・・・・・お兄? 行方不明の間に何があったのかしら?」

 

「あーそれはだな・・・・・・あとで話すからとりあえずこいつ連れて家に帰っててくれ。 オレおやっさんのとこ寄っていくから!」

 

「え!? ちょっと!」

 

兄はそそくさと行ってしまった。そして砂浜には見知らぬ美少女と二人きりで残されてしまった。

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「お前いなくなったと思ったらなんか厄介ごと抱えてきやがったな?」

 

「あー分かります?」

 

「あたりめぇだ。 こんなもん預かってって言うんだからな」

 

さきほど海中からクレーンで引っ張り上げて現在は工房の倉庫に入れてあるイクシロンを見上げてコースケはあきれ顔で言った。

 

「こいつはCAHか? でもなんか違う見てぇだな」

 

「うんとりあえず今はこいつが超高深度海洋探索型人型兵器ってことぐらいしかわかってない」

 

「そうか・・・・・・」

 

そこへずかずかと歩み寄ってくる少女がいた。

 

「この馬鹿ヤロウ!」

 

「いってぇぇぇぇぇぇ!?」

 

アオイは頭をおもいっきり殴られた。振り返るとそこにはミハネが居た。

 

「もうどこ行ってたのさ!」

 

「あー悪ぃ・・・・・・ちょっとね」

 

するとミハネは持っていたスパナを降して言った。

 

「本当に心配したんだから・・・・・・」

 

「・・・・・・ゴメン」

 

アオイはただ謝るしかなかった。そして思い出したようにコースケにジュラルミンケースを渡す。

 

「これ鍵が錆びてて開かないんだ。 無理矢理でもいいからあけておいて」

 

「? ああ。 っておまえどこ行くんだ?」

 

「アズマさんとこ。 ちょっと事情説明してこねぇと」

 

「なら俺も行こうかな」

 

上の方から声がした。見上げるとそこにはよく知る少年がいた。

 

「レン? お前どうして」

 

「ああヨーコに聞いた。 親父に会うんならお供するぜ」

 

「ならアタシも行く。 なにがあったか把握したい」

 

はあっとアオイは嘆息して

 

「わかったよ。 行こうぜ」

 

そして三人は工房を出て役所へと向かった。

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「って訳です。 すいません厄介ごと持ちこんじゃって」

 

役所の最上階、組合長室にアオイ達は居た。本来なら予約などの手続きをしていないとダメなのだが事態は急を要したのでレンに言って急遽、面会の時間をもらった。

 

「ふむ、西暦の少女か。 それでアオイ君の顔はバレてるのかね?」

 

「多分バレてます。 リヴェイアなら他のコロニーのサーバーに侵入することなんて造作もないことでしょうから。 全部のコロニーの管理サーバーにアクセスして俺を見つけ出すなんてすぐですよ。 しかも奴らこの近海にいますからすぐ来るかもしれません」

 

「そうか・・・・・・それは困ったな。 だが君の頼みだ。 協力しよう」

 

そしてアズマは腕を組み言った。

 

「そういうわけでこういう方法はどうかな?」

 

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「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

神薙邸。現在とてつもなく気まずい状況であります。とりあえず帰ってお茶は淹れたがそれからは特に会話すらない。

 

(お口に合わなかったかな・・・・・・? なんか育ちがよさそうだもんなぁ・・・・・・)

 

ヨーコがミズキをまじまじと見ていると、

 

「おいしい・・・・・・」

 

「ふぇ?」

 

今美味しいと言ったか?言ったよな? なぜか途端にテンションが上がって今まで聞きたかったけど聞けないことを切り出した。

 

「あなた名前と歳は!?」

 

「え? えぇっと名前は東雲ミズキ・・・・・・。歳は16・・・・・・」

 

突然しゃべりだしたヨーコに戸惑いながらミズキは答えた。

(あ、年上かぁ~・・・・・・)

そしてヨーコは一番聞きたかったことを聞いた。

 

「ミズキさんはお兄と・・・・・・そのどうゆう関係なの・・・・・・?」

 

「お兄・・・・・・ああアオイのことか。 ただたまたま私の家に流れ着いただけだが?」

 

(流れ着いた・・・・・・?)

とにかく頭の中が無茶苦茶になっているヨーコはあることに気付いた。外が何やら騒がしいのだ。ドアを開けて外を見る。するとちょうど目の前を森宮ツバキが通った。

 

「あ、ツバキ姉、どうしたの?」

 

「あ、ヨーちゃん。 よくわからないけどこれから見に行ってみるところなの」

 

「そっか。 私も行く。 ちょっと待ってて」

 

一度家の中に戻り髪型を確認して外に出ようとした。すると、

 

「私も行く」

 

「え!? あ、うん」

 

ミズキもつれて外に出る。家の中からもう一人少女が出てきたことにツバキは驚いていた。

 

「あの・・・・・・誰?」

 

「あーなんかお兄が遭難した先であった人」

 

ふーんと頷くもそこでツバキは気付く。

 

「え!? アオイさん生きてたの!?」

 

「あれ知らなかったの?」

 

アオイのことを説明しながらヨーコたちはコロニーの外が見える場所まで行く。そこにはたくさんの人だかりができていた。

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「そういう訳か。 なら協力してやるよ」

 

イクシロンのコックピットから手を振りながらコースケは言った。

 

「ありがとう、おやっさん」

 

アオイもイクシロンの足を調べながら言った。現在イクシロンは片膝立ち状態でガレージに収容されていた。今二人でこの機体の手掛かりがないが調べているが今のところ何の手がかりもない。そこへミハネが息を切らし走ってきた。

 

「アオイ大変!」

 

「は?」

 

ミハネに連れられてやってきたのは外が見渡せる場所。すでにたくさんの人がいた。

 

「ほらあれって!」

 

「! こないだのCAH!? もう嗅ぎ付けて・・・・・・」

 

一機減ってはいたが紛れもなく旧日本でアオイ達を襲った部隊だった。そしてスピーカーにして何かをしゃべりだした。男の声だった。

 

『コロニー組合長はいるか?』

 

そう繰り返していた。それを10分ほど繰り返したところでアズマが来た。

 

「私がこのコロニーの組合長の楠アズマだ。 なにか用か?」

 

CAHのカメラアイがレンズを絞るように動く。

『このコロニーに神薙アオイという少年が居るはずだ。速やかにこちらに引き渡して頂きたい』

 

「・・・・・・アオイなら四日前に死んだよ。 まだ若かったのに。 それに仮にこの場にいたとしても貴公らのような連中に渡すわけにいかん」

 

数秒の沈黙の後コーゴンは再び口を開いた。

 

『いや、我々は数時間前、神薙アオイを旧日本地区にて確認した。 それに我々は彼と一戦交えた。蒼いCAHと蒼い髪の少女も一緒だったはずだ』

 

「二度も言わせるなアオイは死んだんだ。 これ以上干渉するならばこちらもそれ相応の手段をとるぞ?」

 

『あくまでシラをきるつもりか。 ならばいいだろう。 我々も実力行使しかないようだ』

 

コーゴンは声に力を込めて言った。そして、四機のCAHはそれぞれ手持ちの銃器を構えコーゴンは言った。

 

『あと10分待とう。 それまでに神薙アオイと蒼い髪の少女、そして蒼いCAHをこちらに引き渡せ。 さもなくばこのコロニーを破壊する。 賢明な判断を求む』

 

何故この人たちはアオイの存在を隠すのだろうか?今、兄は生きている、生きて戻ってきたというのに。ヨーコの頭には疑問しか浮かばない。それを掃うため兄に直接聞こうとしたが隣を振り向いたときすでに兄の姿はなく、それどころかミズキまで消えていた。

 

「ちょ!? お兄!?」

 

アオイはすでにコースケの工房にいた。

 

「なぁこれ本当に使えるのかよ?」

 

「規格はあってる。 三年前の骨董品だが問題は無いはずだ」

 

アオイはコックピットに座り正面のモニターを見ていた。イクシロンの右手、そこにはイクシロンの半分ほどの長さの巨大な重火器が握られていた。対CAH用レールガン、三年前リヴェイアが進行をはじめ、各コロニーでは既存のロボティクス・アーマーを武装化しようという案が出た。が、実際この辺境のコロニーには来ないだろうということになりコースケが保管していたのだった。

 

「だが気をつけろよ弾は限られてるからな。 それとお前に頼まれてたやつ、解除できたぞ。 終わったら見せてやる」

 

「ああ、了解。 イクシロン出すぞ!」

 

それと同時にミハネがコロニー外壁の扉を開けた。敵のCAHがいる方向とは逆の位置だ。ミハネは続けてクレーンの昇降用レバーを下におろす。するとイクシロンをぶら下げているクレーンがコロニーの外へと出てイクシロンは宙吊りになった。

アオイはコックピットハッチを閉めた。

 

「じゃあおやっさんあとはよろしく!」

 

「ああ、わかってる」

 

そしてイクシロンは水しぶきを上げ水中へと姿を消した。

********************************************

『さて、十分たった。 答えを聞こうか』

 

「もうわかっているのだろう? もちろんNOだ」

 

コーゴンは「はあ」とため息をついた。そして冷たく言い放つ。

 

『了解した。 では手加減はしない。 全機聞こえていたな? 砲撃準備用意』

 

カナトはトリガーに指を掛ける。そして言い聞かせる。「これは正しい」と

 

「大義のため、平和のために・・・・・・ゴメン!」

 

そしてマシンガンが火を噴いた。が、あたったのはコロニーではなく蒼穹の空だった。確かにコロニーをとらえていたはずの銃口が空をむいていた。

 

「なっ!?」

 

モニターに映ったのは旧日本海域で遭遇したあのCAH。その手がカナトのオーディの右手をがっしりと掴んでいた。

 

『くっ・・・・・・やはり隠れていたか蒼いの!!』

 

『そうか・・・・・・コロニーを守るためか。 だが君はわかっていないぞ? 今自分がどういう状況下にいるか』

 

コーゴン達の銃口はコロニーに向かっていた。それを見た蒼いCAHは一瞬沈黙したがすぐに動く。

 

『なっ!?』

 

カナトが驚愕する。その蒼いCAHは守るべきコロニーに銃口を向けたのだ。

 

(頼むぞおやっさん)

 

アオイは心の中で祈りつつ引き金を引いた。

ドシュッ

甲高い音と共に雷光を発しながら弾丸はコロニーに当たった。カナト達にはそう見えた。だが実際は防波用シールドを応用してアオイがそれを狙って当てただけである。

 

『こいつ! 自分のコロニーを・・・・・・』

 

『カナト応戦しろ!』

 

カナトは全身のバーニアを吹かし振り払おうとするががっしりと組みつかれていて離さない。その時ふいに通信が入った。

 

『そっかお前カナトっていうのか・・・・・・』

 

「何!? お前は!?」

 

その声には聞き覚えがあった。コロニーのデーターベースで見た神薙アオイの声。

 

『さて続きはもう少し離れてしようか!』

 

「ぐっ!! おまえええええ!」

 

イクシロンはバックパックのスラスターを吹かしカナトのオーディ―ごと沖に出た。

 

「貴様、僕たちを騙したのか!」

 

『コロニーのみんなには迷惑を掛けたくなかったんでね。 ああいうことにしてもらったのさ!』

 

「くっみんなグルってことか・・・・・・」

 

ギリっと奥歯をかみしめ感情のまま機体を操作した。

 

「卑怯な! お前らはそんな非道なことをするのか!!」

 

『非道なのはどっちだ! 他のコロニーを侵略して、たくさんの人を殺してるお前らが!』

 

「平和のためだ! それをわからないお前ら等に!!」

 

『犠牲の上に成り立つ平和なんて!!』

 

アオイは照準を合わせレールガンを発射する。それはカナトのオーディの足元を掠め、水しぶきを立てる。カナトはマシンガンを構えさせイクシロンめがけて発射する。イクシロンは空中から水面に着地する。そこへ弾丸の雨が降り注ぐ。

 

「うわ!! っまだだ!」

 

アオイの声に呼応したのかイクシロン両手を前にかざした。すると光の障壁が現れ弾丸を防いだ。

 

『なんだあれは!?』

 

「ホログラフィックシールド?」

 

学校の授業で習った気がする。西暦時代の遺産、まだ残っていた一部の資料から判明した技術。だが現代の技術では再現できなかった。それが再現できるこの機体はやはり西暦時代のCAHということなのだろう。

 

「すごい・・・・・・傷一つない」

 

『くそ、こいつ!!』

 

攻撃を防がれたカナトはムキになってマシンガンを乱射する。気づけば弾数を示すゲージはゼロになっていた。マシンガンをすてプラズマナイフを取り出し切りかかる。

 

「お前、いい加減に!!」

 

『まだ引き下がれない!!』

 

二人の少年の叫びは蒼き蒼穹へとこまだした。

 

 




あとがきって何かいたらいいかわかんないよね。ども、ころろです。第2話、もう一人の主人公カナト・ルベルの登場です。なろうで掲載していたものに現在の設定とは矛盾だったりキャラの性格が現在と違ったりしたので加筆修正してあります。これは一話もかな。第一部が終わるころにはキャラ設定画とかメカとか出したいと思います。それではまた次回であおいしましょう。

次回予告

再びイクシロンにのりカナト達と戦うアオイ。その手に残る殺意の恐怖。そして決意を固めたアオイたちにアズマが託したものとは。
次回、蒼き飛翔のイクシロン
「始まりの箱舟」
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