蒼き飛翔のイクシロン   作:赤羽ころろ

5 / 8
Depth5 Deprivation

「さあここからは第2ラウンドだ!!」

 

アオイは構えたレールガンのトリガーを引く。雷光とともに発射された弾丸は水面を切り裂く。それはまるで第2ラウンド開始の狼煙とも言えるものだった。

 

数では不利。だがこちらはDCシステムのおかげで性能では有利だ。残り200sec、そのあいだにできるだけ敵の行動択を減らす。それが1番の理想。

 

その時通信が入った。ビギンズノアからだった。

 

『 アオイ聞こえるか?よく戻ってきたな。あとこちらは5分ほどで機関が始動できる。それまで持たせられるか?』

 

「レールガンの残弾があまりない。こいつの固定武器じゃなかなかキツいが・・・・・・なんとかしてみせる!」

 

『 頼んだぞ。こっちもできるだけ急ぐ』

 

レンは通信を切り呼吸を整えた。ここまではある程度自分の予測通り。敵はこちらを本命と見据え狙ってきた。 まだしばらくはデコイはこちらだと気づかないだろう。

 

「コウキ、イクシロンを援護する。魚雷通常弾頭装填、近接信管にしておけ。目標はさっきの新兵だと思われる機体」

 

「了解。ナビ子、装填頼む。弾道はこっちで設定するわ」

 

『 わっかりましたー!!・・・・・・って誰がナビ子ですか!!私にはちゃんとレヴって名前があるじゃないですか!!』

 

「うるっさい!!どっちでもいいわ!!さっさと装填しろ!!」

 

『 はあ!?そんな頼み方ってないじゃないですかぁ?一応私このフネの全部を演算処理してるてぇんさいAIなんですけどぉ!?』

 

コンソールと睨み合うコウキとレヴを怒号が襲った。

 

「二人共!!今は戦闘配備中ですよ!!喧嘩ならあとにしてくださる?」

 

ツバキは呆れながら言った。その顔はかなり怖かった。さすがのレヴもビビったのかすんなりとコウキの言うことを聞き始めた。

 

「装填完了!!注水も終わってる!!」

 

コウキの報告を待ってからレンはモニターにオールグリーンが表示されるのを確認する。

 

「よし、1番から8番撃て!!」

 

「1番から8番発射!!」

 

前方の射出口から8基の近接信管ミサイルが発射されそれぞれ尾を引いてあみだくじのような起動を描き進んでいく。

 

「隊長!!魚雷が!!」

 

『 !!気をつけろお前が狙われている!!』

 

「え!?」

 

不意打ちをくらったリデットは直撃は回避したもののバランスを崩し手に持っていたマシンガンとライトレッグを失いその場に倒れ込んだ。

 

『 リデット大丈夫か!?』

 

「生きてはいます・・・・・・ですが戦闘は出来ないです・・・・・・」

 

コックピットは問題はなかったが爆発による衝撃でバランサーと火器管制システムがイカれていた。離脱もできない。

 

『 よし・・・・・・生きているなら後で回収してやる!!待っていろ!』

 

コーゴンはスラスターをふかしイクシロンに肉薄する。

 

「レビンお前は本命を抑えろ!!!俺はこいつを仕留める!!」

 

「分かりました!!」

 

「しまった!!レン!1機抜けた!!」

 

『 大丈夫だ!もう発進できる!!スペシャリストが来たんでな』

 

レンの口元はにやけていた。何かあったのだろうか。

 

「スペシャリストって・・・・・・?」

 

『 あたしよ!!』

 

声の主はミハネであった。

 

 

 

10分ほど前、ミハネはコロニーの外を見つめていた。爆発音が聞こえ時々コロニーも戦闘の激しさを恐れているかのように震えるように揺れていた。

 

ミハネは考えていた。友達があそこで戦っているのに自分はただ眺めているだけで良いのかと。だが、それは自分が選んだ道でもあった。今更行っていいのか。

 

「でも迷ってらんないよね・・・・・・」

 

その手にはしっかり荷物がぎっしり詰まったカバンを手にしていた。

 

もう誰かを失いたくない。そう胸に誓いミハネは走り出した。

 

 

 

5分前ビギンズノアではトラブルが発生していた。

 

「どういう事だレヴ!?エンジンが始動しないって」

 

『 それが私にも何が何だか・・・・・・多分長年起動来てなかったせい・・・・・・かも?』

 

「くそ・・・・・・おやっさん何とかできないのか!?」

 

「そんなこと言ってもなあ・・・・・・機関系は完全に専門外だから俺にはなんとも」

 

おやっさんは通信越しに困り気味にいう。その時突然ブリッジのドアが開いた。

 

「そういうのは私に任せてくれないかしらね。スペシャリストにおまかせありってね」

 

「な、お前なんで!?乗らないんじゃ?」

 

レンは予想外の出来事にかなり慌てていた。ミハネはドッと重い荷物を下ろし工具箱を手に機関室へと走っていった。

 

「さすが我が姉貴。ジュン出航準備しろ!」

 

「OK!!こっちはもう、大丈夫さ!あとはあいつがどうにかしてくれたら」

 

『 こちら機関室!終わったよ!!どうやらしばらく起動してなかったせいでイグニッションキーが作動してなかったみたいだ。あとは好き勝手やってどうぞ!!』

 

これで全ての条件は整った。レンは勝ちを確信した。

 

 

 

そして現在。

 

 

 

アオイは困惑する。

 

「お前乗らないって言ってたじゃないか・・・・・・?」

 

『 アホな弟を放っておけるわけないでしょ!?それに1人で残されるのもやだしその娘のこともあるしね』

 

ミハネもミハネなりにミズキのことを考えていたようだ。

 

『 いい?出航したら全速力で潜行しつつ戦闘域を離脱するわよ!遅れないでね!』

 

それだけをいうとミハネは通信を切ってしまった。

 

「だそうだ!!ミズキ、ここを切り抜けるぞ!」

 

「任せる。私はあなたを信じている」

 

ふとミズキが発したその言葉にアオイは少し嬉しかった。信じていると言われた男がここを乗り切らないわけには行かない。だが、システムももうすぐ終了、レールガンの残弾も少なくこの距離ではどのみち当たっても自分にもダメージが入る。ダガーを取り出そうにも両腕が掴まれ塞がれているこの状態では・・・・・・。

 

そこへ突然通信チャンネルが開いた。そこにはアズマが居た。

 

『 アオイくん!これからそちらに武器を射出する!!ビギンズノアに搭載されていたものを解析のためにコロニーに保管していたものだ!!座標は君の真上を通過するように設定した!!あとは君次第だ!!』

 

「アズマさん!!よし!!」

 

「アオイ6時方向からくる・・・・・・!!」

 

モニタに拡大されて表示される。射出されたのは三叉槍であった。ここさえ切り抜ければチャンスはある。

 

「なら、多少の無理はしないとな!!ミズキちゃんと掴まってろ!」

 

「うん・・・・・・」

 

ミズキはアオイの腕をしっかりと掴む。

 

「うおおおおお!!」

 

「なに!?」

 

アオイはフットペダルを踏み込み跳躍した。

 

DC.システムを発動したイクシロンの推力は並のCAHの推力をはるかに超えていた。

 

あまりの推力にコーゴンは振り落とされる。コーゴンを振り払ったアオイはそのまま上昇する。

 

「軸合わせ、相対速度合わせ・・・・・・いけるか!?」

 

軸の上に機体をあわせる。膨大な推力と言ってもそれほど長く滞空できる訳では無い。モニターには到達まで5secと表示されていた。

 

「させんぞ!!」

 

振り払われたコーゴンは体勢を整えて1度着地しマシンガンを撃ちつつ上昇する。

 

「ぐっ!!お前は少し黙ってろォォォォ!!!」

 

三叉槍をキャッチした勢いを乗せ期待を思いっきり捻り投擲する。D.Cモードの大出力から繰り出されるその攻撃はレールガン並みの弾速でコーゴンのオーディの左肩と胸の間の関節に突き刺さった。その衝撃はとてつもなく重く長年戦ってきたコーゴンでも気を失いかけた。

 

「ぐぉぉぉ!?」

 

危険を知らせるアラートが鳴っていた。今の攻撃で左腕が使えなくなったことを報せていた。それをアオイは見逃さない。

 

「うおおおおぉ!!!」

 

落下するオーディの上に着地し三叉槍を掴む。衝撃と落下してきた勢いによって突き刺さっていた槍が貫通する。左肩から先が崩れ落ちアオイは槍を引き抜く。

 

「グレイブモード!!!」

 

三つに分かれていた鋭い先端が1つの両刃の刃になる。

 

「だぁぁぁぁ!!」

 

手首を回転させた勢いでオーディの首を撥ね蹴り飛ばす。

 

「ぐぉぉおぉぉ!??」

 

蹴り飛ばされたコーゴンのオーディは水面に叩きつけられ激しい水しぶきとともに沈黙した。

 

残るは2機。一機は先程引き離したからまだ追いつかないはず。

 

「次!」

 

ビギンズノアに向かった一機をアオイは全速力で追いかける。

 

「後ろから!?隊長が抜かれたというのか!?・・・・・・しかし!」

 

レビンは方向を変えアオイを迎え撃つことを選択した。

 

「俺だってな、伊達にこの階級なわけじゃないのさ!」

 

射程内に入ったイクシロンをロックオンしマシンガンを連射する。

 

「そんなもの!!」

 

アオイは軽く避けてみせる。

 

「ほぉ・・・・・・しかし!!」

 

レビンはロックオンを外しマニュアルで照準をつける。

 

「お前の癖は理解した。やはり素人!!」

 

アオイの行動パターンはこうだった。攻撃が来た場合まず右に避けさらに攻撃が来た場合上昇、そして緩く左に下降しつつ直進して接近してくる。

 

レビンはマシンガンの銃口を正面、マルチプルランチャーの照準を右、榴弾砲の照準を上昇する位置に設定した。

 

「さあ、避けてみろ!」

 

トリガーを引く。マシンガンの銃口が火を噴く。そして少し間をあけマルチプルランチャー、榴弾砲の順番で発射する。

 

「またマシンガン!?同じ攻撃なんて!!」

 

アオイはスロットルを右に倒す。そしてそこへミサイルが飛んでくる。

 

「何!?」

 

咄嗟にホロシールドを展開。なんとかダメージは防げたが熱の蓄積率が上がった。DCモードもあとすこし。熱が蓄積されるのは痛手だった。

 

「くそっ」

 

アオイはペダルを踏み込み上昇する。そこへ吸い込まれるように榴弾が飛んでくる。

 

「しまっ・・・・・・!?」

 

シールドを展開するのすら間に合わない。いくらイクシロンとは言えども榴弾の直撃を受ければ確実に損傷する。しかしそれは命中することなく撃ち落とされた。

 

「なんだ!?」

 

コロニーの上の方、作業用の工作機がレールガンを構えていた。

 

「アオイくん大丈夫か!」

 

「アズマさん!?」

 

「残り少ないがあと3発はある。今から君を援護・・・・・・」

 

『 2度もさせると思ったか?』

 

工作機に先程片腕と頭部を失ったコーゴンのオーディが接近していく。

 

「アズマさん逃げて!」

 

『 リヴェイアに歯向かうとは馬鹿なことをするものだ。貴様を連行する』

 

工作機のコックピットを潰しアズマを引きずり出す。

 

「ぐっ・・・・・・」

 

『 カナト、リデットを回収しろ。レビン後退だ』

 

『 了解です』

 

レビンは残っていたミサイルを撃つと反転して急速離脱した。

 

「待て!!」

 

アオイはシールドを展開しつつミサイルを受けきり、最大出力でレビンを追いかける。しかし、D.Cシステムのタイムオーバーと同時に機体の負荷が限界値を超えシステムがダウンする。

 

「アズマさぁぁぁぁぁぁん!!!!!」

 

レーダーからは既に機影が消えレールガンは射程外を示していた。

 

「ちくしょう・・・・・・!!あああぁぁぁ!!」

 

アオイは握りしめた拳をコンソールに叩きつけた。

 

「アオイ・・・・・・」

 

ミズキはそんなアオイにかけられる言葉もなくきゅっと自分の手を握りしめた。

 

鮮やかな夕陽がイクシロンを照らしていた。

 

 

 

数分後再起動したイクシロンはビギンズノアまでたどり着き回収された。コックピットを降りるとミハネがいた。

 

「ミハネ・・・・・・その・・・・・・」

 

「いいんだ。アオイが悪いわけじゃない。父さんが自分でやったことだ。それに死んだわけじゃない。だからそんな顔しないで」

 

ミハネの目には涙が滲んでいた。それでも笑うミハネにアオイは強く罪悪感を感じた。

 

「・・・・・・この後どうする?」

 

全員が揃ったブリッジは少し狭く感じたがそんなことは今は二の次だ。

 

「本来の通りミズキをリヴェイアから守るために逃げるか親父を助けに行くためにリヴェイアに飛び込んでいくかだ」

 

レンはコーヒーを飲みながら言った。出撃する前にみた資料、それに書いてあったことをもしリヴェイアが知っているとしたらミズキが狙われる理由もつく。リヴェイアのデータベースは超膨大な情報を記録していると聞く。イクシロンを狙うのもミズキを狙うのもイクシロンを戦力として使うためだろう。オーバーテクノロジーの結晶であるイクシロンがリヴェイアに渡り技術がコピーされ優秀なパイロットがいた場合最悪な結果となる。そしてイクシロンを起動するためにはミズキが不可欠。

 

「俺はミズキを護るために親父を捨てる」

 

「お前・・・・・・本気か?」

 

あっさりと自分の親を捨てる選択をしたレンをアオイは睨む。

 

「もちろん本気だ。そもそも親父だってわかっててやった事だ。ミズキを護ることを自分の命より優先したんだ。俺らはそれを尊重すべきだ」

 

「アタシも賛成。父さんには悪いけどね」

 

「ミハネまで・・・・・・」

 

答えは簡単なはずだ。イクシロンがリヴェイアに渡り量産された場合を考えれば。今より戦争は悪化しリヴェイアに占領されるだろう。でもアオイは決められずにいた。その時だった。ミズキが口を開く。

 

「私は助けに行って欲しい」

 

「ミズキ・・・・・・」

 

「ミズキ、君は自分の価値を分かってるか?この混迷した時代にとって旧世紀の人間はその人自体がロストテクノロジーの塊みたいなものだ。ましてや君は旧世代の技術の結晶であるイクシロンを動かせる。さらになにやら特殊案件の中心人物だ。君一人で世界がひっくり返るかもしれないんだぞ」

 

レンは鋭い目つきでミズキを睨むがミズキは既に覚悟を決めている目をしていた。

 

「ああ、分かっている。でも私の事はアオイが護ってくれる。そう信じている」

 

「ミズキ・・・・・・」

 

「だとさアオイ、お前はどうなんだ」

 

「・・・・・・俺はミズキを護ると誓った。だからその約束は果たす。けどアズマさんも助ける。それが答えだ」

 

レンははあ、とため息をつくと「ははは・・・・・・!!」と笑いだした。

 

「やっぱりな。お前ならそう言うと思ってさ。で、親父を助ける理由は?」

 

「人を助けるのに理由なんか要らないだろ?

 

 

「その通りだ。そういう事だ他のみんなはいいか?」

 

ツバキ、コウキ、ジュン、ヨーコ、ミハネはもちろんと答えた。おやっさんも「俺はあくまで保護者だから」と特に何を言うわけでもなかった。

 

「じゃあ、決まりだな」

 

レンはそういうとキャプテンシートに座り直す。

 

「よし、メインエンジン始動。微速前進、ビギンズノア発進!!」

 

ゴゴゴゴ・・・と音を立てエンジンが始動する。

 

「微速前進!!」

 

ジュンが復唱しビギンズノアは進み始める。小さくも大きな1歩。大いなる旅路の始まりである。

 

 

 

冷たい監獄の中アズマは静かに座っていた。特に手足を固定されるわけでもなかったので意外と快適である。恐らく手錠などかけなくともこの海の中だ。脱走はしないと考えたのだろう。

 

コツンコツンと誰かが近づいてくる音がした。配給は先程来たばかりだった。意外としっかりしたものを食べさせてもらえた。腐ってもコロニーの長だからだろうか。相手が誰かわからなかったのでとりあえず顔を下に向けて少し悪態をついてみた。

 

「こんな時間に何の用かな?私はそろそろ寝ようと思っていたのだが」

 

「その癖、昔から変わってないな」

 

その声ですぐに誰かわかった。アズマは少し笑いながら顔を上げた。

 

「よお、久しぶりだな、コーゴン」

 

顔を上げたその先にはかつて共に世界の平和を目指した友がいた。

 

 

 

 




どうも作者です。今回でイクシロンは貯蔵分終了です。次回からは新編を公開していきます。これすなわち定期更新終了なのです。いろいろ工夫して早めに更新できるようにしますのでどうぞお楽しみに。

次回予告
久しぶりだな、その言葉は友の再会を意味する言葉。アズマとコーゴン二人の別れは数十年前、聖戦と呼ばれた戦いにあった.
次回蒼き飛翔のイクシロン
過去と記憶と
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。