一応、「朝の事のみを書いて、前夜の事を想像してもらう」というコンセプトです。少し書き直すかも知れないです。
トントントン、とリズミカルな音がかすかに意識に届いてくる。味噌汁の匂いがする。
「ん~、由良ぁ~?」
彼女に伸ばしたつもりの手が壁に触れてしまう。孤閨の寂しさに急速に目が覚めていく。
そのまま起き上がろうとして自分が裸なのに気づき、慌てて素肌にタオルケットを巻いた。
匂いをたどっていくようにしてキッチンを覗くと、由良が素肌にワイシャツ、エプロンという姿で味見をしていた。小皿を口に付けた彼女と目が合う。
「あら。おはよう夕張。早起きさんね」
いたずらめかした物言いに、なぜか顔が熱くなってきた。何か言い返そうとしたが、向かい合うと何も言えなくなってしまった。
「お味噌汁作るから。待っててね」
はいともいいえとも言えず、由良に気づかれない時間だけ、彼女に見とれてからテーブルについた。
「具はー?」
「油揚とお豆腐」
「やった!」
他愛ないやりとりを交わすうちに、由良がお盆にお椀を2つ乗せて運んできた。お盆をテーブルに置いてから、そっとお椀を夕張の前に置く。
「はい、どうぞ」
「・・・・・・ありがと」
由良の入れてくれたお味噌汁をいただく。ちょうどいい塩味が、どういうわけか甘く感じられた。箸でつまんだ豆腐を口に入れるとさらに甘みが広がる。次は油揚げの歯ごたえを楽しむ。もう一口すすってお椀越しに由良を見れば、彼女もお椀に口を付けている。エプロンを外して露わになった胸元の白さに目が釘付けになってしまった。
「座っててとは言ったけれども、タオルケット巻いたままだし顔も洗ってなかったの?だらしないんだから。髪もちゃんと梳きなさいよ」
お小言に、ぷう、と夕張は頬を膨らませた。
「酷い。昨日はあんなに好き、って言ってくれたのに」
「ちょっ、ばっ、何言ってるの!あれはそういうのだし」
「そういうのってなに?」
「わかるでしょ、莫迦」
上目遣いの夕張と顔を真っ赤にした由良がしばし見つめ合う。夕張の探るような表情も由良のしかめっ面もすぐに溶けていき、えへへと照れながら笑いあう。他人の目を気にせず、由良と見つめあうことができるのが、たまらなく嬉しかった。
「昨日、良かったね」
「良かった?ちょっと何言ってるの、そんなこと」
また由良の顔が朱に染まった。赤外線の熱すら感じそうな勢いだった。
「そういう意味じゃなくて、こういう関係になれて良かったねって」
「ああ、そういうこと、よかったね・・ね?」
「うん」
「私のこと好きって言ってくれた由良は、かっこよかった」
「真っ赤になった夕張も可愛かったよ」
何を話してるんだろうと恥ずかしくなって、お互いの顔を見られなくなってしまう。
昨日までとは全然違う朝になった。これからも何にも変わらないけれど、全く新しい日常が続くのだろう。これからは由良といっしょなのだから。