理由は自由奔放な人ですからわかりません。
この小説はただ書きたかっただけです。
イスラエルの魔術王を知っているか。
ソイツはダビデ王の不義の子であり、彼の死後、王位継承のライバルたちを打倒して王となった英雄とも言われる男だ。
ある時、神がソイツの夢枕に立ち、「何でも願うものを与えよう」というと、その王は民草を統べる為の知恵を求めた。
神はこの信仰心に満ちた答えを喜び、無限に近い知恵を与えたという。
またエルサレム大神殿の造営で工期の遅れに困り果てた王が神に祈りを捧げると、大天使ミカエルが現れて、あらゆる天使と悪魔を使役できる指輪を授けた。
ここまで言えば分かっただろう。
イスラエルの魔術王ことソロモン。
知恵者のシンボルとなったソロモンの指導のもと、イスラエル王国は全盛期を迎えるが、その晩年、国民に重税を課し、自身は享楽と異教の偶像崇拝に耽ったため財政が破綻した。
彼の死後、イスラエルは南北に分裂し、衰退の道を歩むのだった。
「ガッカリしたか?幻滅したか?」
大広間の玉座に座りながら男はワインのボトルは揺らして中身のワインの波の音を聞いていると周りの異形の化け物たちが地に伏して平伏した。
暗闇の中に数個のランプが浮かび上がっており蝋燭の光がゆらゆらと光源を作り上げ、男と化け物を照らしている。
「それが
男の右手の人差し指には真鍮と鉄で作られた美しい指輪が着けられており異形の化け物たちをその指輪で
そして男の名を物語る物でもあった。
「さて、貴様ら
男が懐から取り出した手紙にその場に居た化け物たちの視線が集まる。男は全員が手紙を見たことを確認すると男は懐に手紙をしまい話を続けた。
男は手の中にあるワインボトルの中身をワイングラスに移しながら流れる液体を
「ソロモンの名において貴様らに問う。この文書を読むべきか読まぬべきか。貴様らの意見を聞く」
ソロモンと名乗った男の言葉を聞くと一人の化け物が人間の手を挙げた。ソロモンは嫌な顔を一つ浮かべると顔を歪めて化け物の名を呼んだ。
「なんだ、アスモデウス。意見があるなら早く言え。
「ならなんで俺のこと助けてくれちゃったりしたんすかネ~?エジプトに放置しとけばよかったじゃないっすかぁ」
アスモデウスと呼ばれた化け物の姿は
「意見が無いなら消え失せろ。お前の声を耳に入れると耳に
「蠅っていうとベルゼブブとか~?」
「お前ぶっ殺すぞ!!」
「ちょっとぉ、ベルゼブブ
アスモデウスの発言に
「あ、悪い」
「――――――。ベルゼブブ、グレモリー。いいか…………?」
「はい、サーセンしたぁ」
「もうしわけありません、どうぞ」
女性の
ベルゼブブとグレモリーが軽く謝罪し、定位置に戻るのを確認するとアスモデウスに顔を向け直した。
「アスモデウス。意見があるなら素早く言え」
ソロモンの言葉にアスモデウスが平伏し一匹のダチョウの化け物に視線を向けて意見を言いだした。
「そんなに読むのが心配ならイポスに未来予知してもらえばいいじゃないっすかぁ?」
ソロモンに目を向けられたダチョウの化け物は頭を数回ポリポリと照れくさそうに掻くと顔を少し赤く染めた。
「イポス、貴様は未来予知が得意だったな。やれ、この手紙を読むと
「了解いたしました」
イポスがダチョウの頭を一度下げると、淡い輝きを放つ魔法円の中から水晶玉を取り出し未来予知の魔術を唱え始めた。
「ソロモン様も小心者だな」
「アスモデウス、貴様と同じだ」
アスモデウスがボソリと呟くと、ソロモンが意図を返すようにアスモデウスに話を持ってきた。名を呼ばれたアスモデウスは体をビクリと跳ね上がらせると揺れる瞳でソロモンの顔を見た。
ソロモンの目には
「
ソロモンが穏やかな笑みを浮かべてアスモデウスに話しかけるとアスモデウスは小さく自分の頭を撫でると作り笑いを浮かべて顔を影に
その姿を見ると他の悪魔や天使たちはクスクスとアスモデウスに対して微笑を投げた。
「ソロモン様、終わりました」
「ン、そうか。結果は?」
イポスの言葉を聞くと隷属させた悪魔とのコミュニケーションを終えたソロモンがイポスに結果を聞く。
「ソロモン様が求める物が手に入る旅になるかと」
「ほう……」
ソロモンが
「フハハハハハハハハハハ!!!!」
「ソロモン様!空けるの早すぎじゃあ……」
ソロモンのすぐそばに居たベルゼブブがソロモンの行動を訊こうとした
視界が白で染まる中、ソロモンの喜ばしい声が大広間を
「悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能《ギフト》を試すことを望むのならば、己の家族を、友人、財産を、世界の全てを捨て、我らの〝箱庭〟に来られたし……!」
数秒の間の後ソロモンが叫んだ。
「最高じゃあないか! この文書は
ソロモンの声が聞こえ終わるとソロモンの高笑いが大広間に残され、呆然と立ち尽くすソロモンの隷属悪魔と隷属天使が残された。
☆ ☆ ☆
光に飲まれたソロモンは一瞬で空の上。上空何百mの所に青年はいた。眼下には湖、周囲には三人と一匹の同じ
「楽しませろよ、
ソロモンの言葉が空を切ると同時に水面に着水した
。落ちる前に待ち構えていたかのように用意された水膜がクッション代わりとなって衝撃を殺してくれたので怪我一つしてない。
だが湖に落ちれば濡れるは道理。おかげで全身ずぶ濡れだった。
「……チッ、服が濡れた。クソッ!」
「まったくよ信じられないわ! 問答無用で引きずり込んだ挙句空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃあれでゲームオーバーだぜ」
「大丈夫? 三毛猫」
落ちてきたのはソロモン一人ではなかった。他に少年と同い年くらいの子供達が三人。一人は男、もう二人は女だった。
それにしても、と辺りを見回した。落ちる最中にも見えたが、天幕に覆われた未知の町。大地が寸断された絶壁。そこらの木々一つとってもソロモンが初めて見る種類の植物だ。
(こんな植物、我が王国にあったか?
「ここ……どこだろう?」
ここにきてようやくほとんど無口だったもう一人の少女が口を開いた。答えたのは皮肉気に笑う少年。
「その前に、まあ間違いねえだろうが一応確認しとくが……もしかしてお前達にも変な手紙が?」
「そうだけど、まず『オマエ』だなんて呼び方訂正して。私は
真っ直ぐな瞳で少年をたしなめるが、少年の方は怖気もせずに笑うだけだった。それが少女、飛鳥は尚更気に入らないとばかりに鼻を鳴らす。
「そこのあなたは?」
「
「そう、よろしく春日部さん。で、そこの野蛮で凶暴そうな貴方は?」
どちらの少女もプライドが高いと見て問題はないだろう。とソロモンが思っているとヘッドホンの少年は両手を広げてなにやら自慢げに自己紹介を始めた。
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な
「そう、取り扱い説明書を作ってくれたらそうするわ」
「マジかよ。今度作っとくわ」
十六夜が心から笑うとソロモンに目線を向けた。目線を向けられたソロモンも笑いを浮かべて目線を送り返す。
「それじゃあ残るはあんただぜ」
十六夜の興味の眼。飛鳥の鋭い眼。耀の好奇心の眼。三者三様の視線がソロモンに向けられた。
ソロモンは心の中の野心を燃やしながら
ギラギラと輝く瞳には野心が見え、右目の周りに刻まれたタトゥーが3人と1匹の心を威圧している。
「貴様ら平民ごときに教えを授けるのは気が引けるが特別に教えてやる。イスラエルの魔術王ソロモン。といえば分かるか?平民共」
主人公は英雄王をくずしたような人格ですね。
続きを書いてる暇がないのが心残りです。