モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 まだまだ書かないモンスターハンター・トータス2の先の話の前日譚的な奴です。


公国の決断/奈落の海

 アンカジ公国がヘルシャー帝国の味方につく決断をしたのは今から数十年前のこと。

国土の7割が砂漠となっている彼らの生活は、トータス大陸の中で最も過酷だった。

 

 昼間は猛暑、夜間は極寒。

天気が荒れると決まって砂嵐が吹き荒れる。

喉を渇きを潤そうと、数少ないオアシスを巡ってモンスターと争うことは日常茶飯事。

食料として小さな虫も食べることは珍しくない。

 

 土地の広さなら王国、帝国にも劣らないが人の住む場所は両国より少なかった。

北の砂海を越えても、より過酷な環境のグリューエン火山が待ち受けている。

東の果てまで砂漠を突っ切っても、広大な海で行き止まり。

南の砂漠と荒地を越えてしまったら、川向こうから先は魔人族の領域。

 

 彼らがアンカジを国として動かし始めてから100年も経っていない。

昔は少数民族がそれぞれ代表を選び、交易を中心に交流を行っていた。

現在は勢力が増加したゼンゲン一族が彼らを纏める立場になっている。

 

 ある時、アンカジの民は日々の暮らしを良くしようと考えた。

ゼンゲン一族は豊かな資源のある隣のハイリヒ王国に対して友好の使者を送る。

王国は彼らに人間族の三つの国で同盟を結ぶこと、アンカジの民が聖教教会に入信することを条件に交易を許可すると返答した。

同盟を結ぶことは満場一致で同意したが、彼らは教会への入信を強要されることが理解出来ず、一旦は躊躇した。それでも民の生活が豊かになって欲しいとゼンゲン家の当主は要求を受け入れた。

 

 

 しかし、それこそが彼らにとって苦痛の始まりだった。

当時のゼンゲン家当主は後継者に、自分が死ぬまで要求を受け入れたことを謝り続けたという。

 

 派遣されてきた聖教教会の狂信者達による用途不明な税の徴収や嫌がらせ。

逆らった者を例外なく異端者と呼び、問答無用で処刑する教会の横暴に民は不満を持った。

 

 それでもなんとか日々の暮らしが良くなるようにと民は我慢してきた。

そんな中、彼らの頑張りを嘲笑うかのようにアンカジ公国で原因不明の疫病が流行した。

 

 病の治療を教会に懇願するアンカジの民に対し教会は適当な理由をつけて断った。

例の如く神エヒトの名を使って「疫病は神の試練だ」「疫病が治らず死んだ者は異端者だ」等と言い出す者まで現れ、公国の民は滅びを覚悟した。

 

 だが、彼らは滅びなかった。

彼らに救いの手を差し伸べる者達が現れたのだ。

大陸の西側で勢力を拡大していた同盟国のヘルシャー帝国である。

 

 当時若くして皇帝の地位に就いたガハルド・D・ヘルシャーは治癒師の派遣。

彼らの護衛を兼ねた対モンスターのスペシャリストであるハンターの派遣。

更に疫病によって働けないアンカジの民に代わる労働力として、亜人族の奴隷を派遣した。

 

 疫病の治療法が見つかり、彼らの生活は安定を取り戻すどころか以前より豊かになった。

アンカジの民は安堵して一件落着…とはいかなかったが…

 

 当主ランズィが病床に伏していた。

彼の代わりに執務をこなしていたレイネルクはガハルドからある話を持ち掛けられる。

聖教教会による弾圧と人間以外の種族の差別と迫害に対する報復と、それを知りながらだんまりを続けた王国を打倒する計画を。

 

 代表者達の殆どがガハルドに賛同し、回復したランズィは息子から話を聞いて驚愕した。

そして彼だけが最後まで計画を実行に移すことに躊躇していた。

協会には今まで散々な目に遭わされてきたが、ハイリヒ王家とは友好を結んでいる。

 

 彼らを裏切るようなことはしたくない。

故に三国会議で彼らの真意を見定めようと考え、ガハルドもそれを承諾した。

そして三国会議の日―――ランズィの信じたエリヒド国王の姿はそこになかった。

 

 もしあの場で王国が公国を助けようと動いてくれれば、帝国の計画は全て無駄に終わっていた。

だが、そうはならなかった。

 

 ガハルドの予想したとおりに、王国と教会は躊躇うことなく公国を見捨てようとした。

こうなってしまってはランズィが頼れるのは命の恩人である帝国しかいない。

友好を結んだのは王国が先だったかもしれないが、その過程で流された血はあまりにも多過ぎた。

だから王国を裏切った後、エリヒド国王が斬首されるとしても…彼らは止めなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

「――――――私から話すべきことはこれで全てです。リリアーナ姫」

「………」

 

 アンカジ砂漠の中を進む公国の一団、馬車の中でランズィは全てを打ち明けた。

リリアーナは王国と教会がしてきた行いの酷さに再びショックを受ける。

トレイシーに脅されて動いていた時から王国と教会の抱える闇は彼女も知っていた。

だが改めて被害を受けた本人達から語られる内容に、思わず顔を覆いたくなった。

 

「…本当はあの場で貴女を我が国に人質として連れていく等という話はなかったのです。息子…レイが何故そうしたのかは敢えて言うつもりはありません。あいつなりに考えた末の結論でしょうから」

 

 父の死の悲しみから、リリアーナはまだ完全に立ち直れたわけではない。

だが悪夢の始まったあの時から、歪んでいた認識を何度も自分の中で正してきた。

 

 オルクス大迷宮でモンスターと戦って命を落とした騎士。犯罪に手を染めて皇女に粛清された商業都市の貴族。王国打倒の為に帝国が積み上げた兵士の死体の山。フォルビン司祭の死も彼女の父…エリヒド国王の死も―――()()()()()なのだから。

 

 悲しみに暮れるのは一瞬でなければならない。

死を悼み鎮魂の祈りを捧げることが唯一今のリリアーナに出来る事だ。

思考を停止して失意の殻に閉じこもるという選択を彼女は選ばない。

 

「…教えて頂き、ありがとう御座いますランズィ様」

 

「お礼の言葉は不要ですリリアーナ姫」

 

 馬車が止まると、ランズィは頭を下げて静かに外へ出ていく。

リリアーナの隣に座って話を聞いていた近衛騎士クゼリーは悲痛な面持ちで下を向いた。

 

(…彼らのしたことは、全て王国が積み重ねてきた悪事への報復なのか…)

 

 帝国の民も公国の民も、その問いに対して間違いなく肯定と答えるだろう。

そして…愚かにも王国の民だけが「それは間違っている!」と声高に叫ぶ姿は容易に想像出来た。

クゼリーは自分の中にそんな意識が欠片でもあることに気づいて吐き気を覚える。

 

 

「レッ、レイネルク様!大変です、エリセンが…エリセンが!」

「どうした?エリセンに何があった」

 

 傷心のリリアーナ達から離れたところにいたレイは、屋敷へと向かってくる馬を見つけて駆け寄ると、乗っていた公国の兵士が馬上から転げ落ちるように降りて、彼の前で姿勢を正し青褪めた表情で告げる。

 

「―――かっ…海上都市エリセンが、消滅しました」

 

 

――――――偶然その場に居合わせた彼の見た、それは突然の出来事だった。

 

 彼の出身は公国だが帝国育ち、元は古龍観測隊の隊員であり現在はハンター。

しかも例外と呼ばれるハンターの一人”レクタ・ナムンシイ”は目の前の光景に言葉を失う。

 

「なんだ…これは…」

 

 先ほどまで彼の目の前にあった海上都市エリセン。

周囲の青い海が突然黒く染まったかと思えば、立っていることもやっとの地揺れが始まった。

空に曇天が渦巻き、風が荒れ狂う。

沖に浮かぶ都市が…()()()()()()()()()()

レクタは揺れの中でその光景を見続け、驚きから我に返って思考を巡らせる。

 

(…なんと…なんという()()!!このような状況に立ち会えるとは!)

 

 彼はまともな感性の持ち主ではない。

つけられた二つ名”公国の狂った探求者”は、仲間が目の前でモンスターに貪り食われても助けようとせず、ひたすらにモンスターの生態を記録し続けるといった行動を取る。

彼とコンビを組んだ、或いは彼とパーティーになったハンターで殉職した者は少なくない。例外のハンターでありながら、他のハンター達から尊敬の眼差しよりも恐怖の眼差しで見られていた。

 

 だが問題行動をしている訳でもなく、むしろギルドにとって有益な情報を幾つも挙げてくれる編纂者並に稀少な人材のため、こうして活動を続けている。

 

「おっと…こうしちゃおれん!」

 

 懐から羊皮紙を取り出すと、彼は見たものを正確に綴った。

空に向かって彼が口笛を吹くと、すぐにギルドの連絡鳥が飛んでくる。

羊皮紙を丸めて紐で縛り、それを鳥の嘴に銜えさせて送り出す。

 

「くくくっ…!何が待ち受けておるのか、楽しみじゃのう!」

 

 彼は躊躇うことなく濁った海へと飛び込み、海中へと沈んでいくエリセンに向かって泳ぐ。

普段なら水中で少し先まで見えるが、今はまるで先が見えてこない。

ごぼごぼと泡を吹きながら、彼は数分かけてエリセンのあった場所へ辿り着いた。

 

(これは…穴じゃと?)

 

 エリセンのあった場所に不自然な空洞が出来ていた。

海の水が見えない壁で阻まれているかのように途切れて、滝のように下へ下へと流れ落ちる。

その流れに勢いのまま飛び込みたい衝動を抑え、レクタは近くの岩に捕まった。

 

(海竜や水竜には、このような真似は出来ん。明らかにこの場の環境そのものに、不自然な力が干渉しておる。…わしの推察が当たっておれば、間違いなくこれは()()()()()じゃ)

 

 過去の経験からレクタは現象の原因を突き止めた。

問題はその古龍がどのような存在なのか、彼はまだ()()が何なのか知らない。

 

(伝承に聞く大海竜…いや、あの御伽噺に描かれた大地を創る巨人か…それとも―――)

 

 ふと彼は視界で揺れ動く物体を見つけて考えを隅に追いやった。

モンスターかと一応の警戒をして盾を構えるが…動いているものの正体に気づいて構えを解いた。

 

(なんじゃ海人族か。あの崩壊の中で生き残りがいるとは驚いたのう…)

 

 エメラルドグリーンの長い髪を揺らしながら、海人族の女性が気を失っている。

彼女の体は都市の瓦礫と近くの岩に挟まって奇跡的に落下を免れたようだ。

 

(―――あのまま運良く動かなければ、助けが来て命を拾うやもしれんのう)

 

 彼に海人族の女性を助けるという選択肢は最初から存在しなかった。

目の前で起こっている出来事を、徹底的に調べて納得がいくまで探求し尽くす。

狂人に人助けなど期待しても無駄である。

 

(よぉし覚悟は決まった!待っていろ未知の存在!!貴様の未知を丸裸にしてやるわ!!)

 

 酸素袋を口に突っ込んで、意を決してレクタは穴に向かって落ちていく。

それから暫くして急行した兵士の手によって、発見された海人族の女性は一命を取り留めた。

だが――――――彼女を除くエリセンの住人は()()()()()()()()()()()見つからなかった。

 

 




 リリアーナ姫の不死鳥メンタル(なお強度はガラス並)砕かれても何回だって再生して立ち上がるんだよ。ほらほら立ち直って、役割があるでしょ()
ちゃっかり息子(レイ)の行動をバラす親父。弟が誤解されたままじゃ不味いって言ってたのをどこかで聞いてたのかもしれませんね。

そして唐突に地図上から消滅した海上都市エリセン。
タイトルと状況、最後の一文で大体のモンハンプレイヤーは察するでしょうアイツです。他にも候補(作中で名前挙がってた奴)はあったんですけどねえ…(前者ならMH3みたいなストーリーでいけるけど、後者は確実にレミアさん死ぬのでNG。レミアさん死んだらミュウも詰みです)
たくさん感想を頂いたのでまとめて返信しちゃいます。

感想、質問、ご指摘等お待ちしております!

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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