暗黒微笑・・・それはチートスキルと呼ばれるにはあまりにも残酷な運命を背負っていた。
これを見ると過去にあった出来事を思い出して泣けてくる可能性があります。ご注意ください。

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使い方この内容であってるのだろうか・・・?




その恋は夜を駆ける

諸君は暗黒微笑って知ってるであろうか?

私~だからね(暗黒微笑)

みたいな感じで書かれる強キャラ感()がにじみ出る笑みのことである。

あれは果たしてネタなのであろうか?ガチなのであろうか?

この物語はあるいは喜劇、そして悲劇。

死は常に身近に、魅惑的な色をしているものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

普通の女子高生であった私、いや今はそうではないのでスツーカと名乗っておこうか。

私は道端に転がっていた鶏が、トラックに轢かれそうになっていたのを助けたらそのまま死んでしまったらしい。

ド田舎に住んでいるのが祟ったな。全く。

いやしかしそれはいいのだ。

神様がチートスキルを持たせて転生させてくれるらしいんだから!

いやっほう!異世界で逆ハー築いたるわwwwワロスwww

・・・そんな風に考えていた。

 

「スツーカさん!!大変です!!十二の魔王が復活して王城に攻め込んできました!!」

 

ああ、まただ。私は非常に忙しい。

いや、問題はそこではないんだけど。

 

私は城の衛兵に連れられて、阿鼻叫喚の様相になっている玉座の間にやってきた。

十二体の凶悪な魔力を放っている者たちが一斉に私を見る。

恐らくそいつらが魔王だろう。

私はそいつらを睨みつける。それと同時に恐怖と嫌悪感が私の体を支配する。

そんな私の内面など関係なく、城の者たちは歓喜に包まれた。

 

「やった!!スツーカ様だ!!巻き込まれないうちに早く逃げろ!!」

 

・・・そして、そこに残されたのは私と魔王たちだけになった。

一番小さい魔王がゲラゲラと笑いながら、しかし隙は少しもなく語りかけはじめた。

 

「お前がスツーカか!!・・・城の者が話しておったぞ。108の魔神を倒したとな。」

 

続けて一番ムキムキの魔王が話し出す。

 

「そうとわかれば油断はしない!!全員で行かせてもらうぞ!!」

 

それが掛け声であったように、十二の魔王たちは弾かれたように一斉に躍りかかる。

あるものは拳に雷光をまとわせながら、あるものは呪文を唱えながら・・・。

・・・異形の者たちが私に迫りくる!

私は小さくため息をついて顔を引きつらせながら、転生チートスキルを解放した。

 

「・・・あんまり舐めた口きいてると、殺すよ?(暗黒微笑)」

 

「「「ぐわああああああああああ!!!」」」

 

魔王たちは突然苦しみだした。ある者は体がただれ、ある者は灰になって消え始めた。

そして一番小さい奴が消え入るような声で話し始めた。

 

「は、恥ずかしい!!なんという凶悪なセリフ!!()()()()()で殺す!!

これが貴様の切り札だとは・・・。」

 

そして体がぐずぐずに溶けて消えてしまった。

何が共感性羞恥だ。一番消えたいのはそれを言う私の方だ。

もう前世も合わせれば20を超えた私がなぜこんなことをしなけらばならないのか・・・。

そう、これが私の転生チートスキル『暗黒微笑』だ。

発動と同時に、にやけながらイキったセリフを吐くと、聞いた相手は精神的にひどく苦しんでから死ぬ。

強いは強いが精神にかかる負担が半端ではない。諸刃の剣なのだ。

 

静かになった玉座の間に、衛兵どもが駆け込んでくる。

 

「おお、スツーカ様!!さすがですぞ!!その笑みは勝利の笑みですかな!!」

 

兵長の言葉にドッと衛兵どもが笑い出す。

・・・なんで国を守ったのに笑いものにならなければならないんだ。

この顔はどう見ても引きつり笑いだろうが。

恐らく衛兵どもは、私がなんかすごい力で敵を倒し、好きであのセリフを言っていると思っているのだろう。

まあ、私は見た目はまだ小さな子供。かっこいいセリフにあこがれる年ごろと思われているのかもしれない。

しかし、むかつくもんはむかつく。

私は何も言わずに自室に足を向けた。

 

「皆の者!!城を守った英雄に敬礼!!」

 

衛兵は足並みをそろえて息の合った敬礼をした。見事なものだ。

しかし、聞こえたからな。お前ら。一番後ろの連中。

お前ら敬礼のかわりに、殺すよ?って言ってただろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで私がこんな嫌な環境に身を置いているのか疑問に思った者もいるのではないだろうか。

私は・・・恥ずかしながら恋をしているのだ。

もう逆ハーなんて望んではいないが、それでもこの胸の高鳴りは抑えられないものだ。

そう思いながら、自室の窓から彼を覗く。

誰もいなくなった修練場で、一人剣を振る青年。

特別強いわけでも、かっこいいわけでもない。

しかし、私は彼の努力する姿を見ているうちにいつのまにか惹かれていた。

彼を見ていると自然と顔が綻び、私も頑張ろうという気持ちになるのだ。

今日は私の運命の日だ。

一度目の死を迎えた日以上の。

私は今日、彼に告白する。

言葉でなんて伝えきれないから、手紙にして。

せめて勇気をもって直接渡しに行かなくては。

私は何度も推敲した手紙を手に取り微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜も更けたころ、誰もいなくなった城壁。

一人たたずむ頬を赤らめた女。

一人歩く若き青年。

それは月のきれいな晩であった。

 

 

彼が近づいてくる。胸がはちきれそうに高鳴る。

ああ、成否なんて関係ない。

この想い。伝えずにはいられない。

私は先走って上ずった声をあげてしまう。

 

「「あ、あの!!」」

 

しかし、その声は彼と重なってしまう。

私は次の言葉が出てこずテンパってしまう。

頭がまとまらない。どうしようどうしようどうしよう。

えーとえーと、とりあえず!!

 

「あ、あのこれ受け取ってください!!じゃあ!!」

 

私は彼の手に手紙を押し付けると、走って逃げ始めた。しかし、彼の手が私を引き留めた。

 

「待ってください!!いえ、待って。」

 

ど、どうしよう。目論見が外れてしまった。

私の顔は見ずとも真っ赤であることがわかるほど暑い。

振り向くと、彼は決意めいた表情をしていた。

 

「これは受け取れません。いえ、私から言わせていただきます。・・・貴方のことが好きです。

愛しているのです。」

 

ああ、全く。

・・・今の私の顔はどんな間抜けな顔をしているのであろうか。

恐らく、世界で一番幸せな顔をしているのではないだろうか?

そんな私の顔を傍目に彼は続ける。

 

「貴方のことが好きです。私は今まで貴方に見られていると知っていたから励むことができました。貴方のことが好きです。どんな化け物にも勇気をもって立ち向かう姿は人としても尊敬しています。」

 

彼の私を握る腕の力が強くなる。私は涙を流しながら彼の言葉を聞いていた。

 

 

 

 

「貴方のことが好きです。クソ痛いセリフを何度も恥ずかしげもなく言えるところがいいよね。

あなたのことが好き。そのセリフ成長したときに馬鹿にして赤面させたいよね。」

 

 

 

 

・・・・・・・。

おや?何かおかしい気がする。

私はいつの間にか真顔になっていた。

反射的に彼の手を放したが、彼は握りしめたまま興奮したように話し出す。

 

「あと幼児体型というところがいいよね。いやー、あんま大きい声では言えないけど俺ロリコンでさー。君みたいな痛いやつとかドンピシャなのよ。だからさー、いやー良かったわー。早速俺の部屋行こうか」

 

彼の手の力はいつのまにかとてつもなく強くなっていた。

い、いやだ!!こんな奴だなんて知らなかった!

私は死に物狂いで腕を振り回す。

 

「うわっ!!なぜだ!!待て!!」

 

私は全力で走った。王城を抜け、この街も抜けて当てもなく走った。

もうどこか消え去ってしまいたかった。

結局、私のこと皆馬鹿にしていたんだー!!!!!!!

しかもロリコンかよ!!あいつ!!

 

「うわああああああああああああああああああああん!!!」

 

悲しき咆哮が木霊した。

少女はその日すべてに敗れた。

月のきれいな晩であった。

 

 

 

 

 

さて、その後の顛末を話そうか。その愚かな女は修道院に拾われ、シスターとして生き始めた。

『暗黒微笑』なんてそれから一度だって使ったことがない。

まあ、戦闘に関わらなけらば普通に生きられるから、苦労はしていないよ。

幸せ・・・といえるんじゃないかな。

もうわかっただろうか?

これは痛々しい者たちを傷つける本ではないのさ。

過去を振り返れば、傷などいくらでもあるのが人生だ。

誇って生きていけばいい。

・・・しかし、『暗黒微笑』はやめておけ。

先人からの警告だよ。

 

一番()()()()()()()をするのは君だよ。

 

 




こういう痛いものを題材にすると、過去にあった恥ずかしいことを思い出して作者は苦しいです。生き恥。



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