今回お届けする作品はこれまでにあまり書いたことのないジャンルとなります。言い訳にするつもりはありませんが、少々勝手の分からぬ部分等ございますこと、ご理解ください。
それでは最後までお楽しみください!
断片的に浮かんでは沈みゆく記憶というものはときに妙なものが混じっていたりする。誰のものか分からないけど懐かしい声。何かが擦れ合う金属音。暗闇に聞こえる何かのざわめき。風のようなノイズ音。正体は分からずとも頻繁に目に浮かび、耳の中で反芻する。
「無事に成功しました。こちらが──」
ほら。今だってそう。
「……ん。……いたくん。……栄太くん。君は──」
でも肝心なところは聞こえない。
時折聞こえてくる「実験」だの「成功」だの言っている声。僕の生い立ちはいったいどうなっているのだろうか。
普通、こんな言葉が聞こえてきても気に留めないと思う。単なる想像の話だ、って鼻で笑う。でも僕は自らの生い立ちに謎を感じている。それは弟の存在だ。
僕──大原栄太とその弟──雄太は一卵性双生児として16年前、この世に生を受けた。僕らははじめこそそっくりな双子として扱われてきたが、いつの間にか雄太の方がイケメンで、僕の方は内面はいいけど外見のせいで損するタイプになっていた。初めて「双子だけど雄太の方がイケメンだよな~。お前は内面派っつうの?」そんなことを言われたときこそ疑問に感じていたが、だんだんとそれまでそっくりに見えていた家族写真も違いに気づくようになっていった。黒子の位置、目の大きさ、眉の濃さ、肩幅、えくぼの有無、鼻の形。全体的なバランスは近いのだが要所要所が異なっていた。そしてその差は年々開いていった。2人とも一重まぶただったのが雄太だけ二重になりさらに雄太はイケメン、イケメンと呼ばれた。それと同時に内面にも大きな違いが出てきた。元々2人ともあまりでしゃばっていくタイプでは無かったが、雄太が生徒会長選挙に立候補したのだ。イケメンと言われつづけ自分に自信を持つことができたのかもしれない。一方で僕は成績がどんどんと伸びていった。積極的に行動し思いついたらなんでも実行する天才肌の雄太、熟考した上で最適解を導き出す頭脳派の僕・栄太。そんなイメージが定着しつつあった。
確かにメチル体がうんたらどうたらで一卵性双生児でも容姿や内面が異なることもある、というのをネットで見たが、本当にそれだけなのだろうか。時折聞こえるあの声は本当に夢の中の話なのだろうか、想像の話なのだろうか、気にしすぎなのだろうか。得体の知れぬ気配が足元が上がってきているかのように思えて僕は、真夏にも関わらず布団を頭まで被って眠りに落ちた。夢の中であの声は──聞こえない。