家に駆け込み、逸る手を落ち着かせながら玄関の鍵とチェーンをかける。きっと必死の形相だっただろう。
リビングに入ると雄太がメモを片手に立っていた。
「あ、おかえり──ん?どうした?」
メモから目を離して僕の方を見た雄太が固まる。僕は乱れた息で原本を雄太に差し出した。
「やっぱ、この計画は、本当、っぽい、……」
雄太は僕から受け取った原本を机にそっと乗せ、深くため息をつく。
「妨害された?」
「そう。黒ずくめの男三人に詰め寄られたから家と家の間を通り抜けて帰ってきた」
雄太は母さんのパソコンを立ち上げる。某大手掲示板サイトを開いているのだろう。
「おわっ、ちょっ来て」
雄太に呼ばれ、僕はパソコンの画面を覗き込む。
「これは……」
そこには予想外にも数多の返信が並んでいた。ほとんどが「そんなバカな」だったり「ネタにしてはおもんないぞ」だったりと一ミリたりとも信じていない様子が伺えるものだったがその中でちらほら「なんかそんな話あるらしいね」や「え、私も一卵性双生児の妹と外見・性格が全然違います」という返信が並んでいる。さらには「再来年に生まれる一卵性双生児の中からも同じことをするっぽい」という返信すらある。
「これはなんとしてでもこの人権を無視した計画を阻止しなきゃ」
僕がそう呟くと雄太も唇をグッと噛み締めて頷いた。
「うん、絶対に」
何かいい方法は無いか……。恐らく、この状況だと小さく折りたたんでいったところであの三人組に取り囲まれて一巻の終わりだろう。
窓の外を見ると背の高い草が風にたなびいていた。
「そうだ、わざと紙を風で飛ばせばいいんじゃない?」
それを繰り返していけば、少なくともこの町内は出ることができるはずだ。
「なかなかに無理がない?」
でも、やってみるしかないんだ。
「一応、もう一枚手書きしておけば無くしても大丈夫だと思う」
僕は手をグッと握りしめる。
「そうだね、風が強い日がいいよね」
雄太は再びパソコンを操作して気象情報を発信しているサイトを開く。週間天気予報を見ると明後日の夕方の風速が五メートル毎秒となっている。だが、
「だめだ、その日は母さん夕方家にいるはず」
そうなのだ。
その次に風が強そうなのは……。雄太がマウスホイールを回転させてページをスクロールする。僕はテレビをつけdボタンから天気予報を見る。
「月曜日……だね」
週明け、月曜日の予想風速は七メートル毎秒。風向きは北。うまいこと飛んでいってくれそうだ。