家に帰り、僕は冷蔵庫から二リットルのコーラを出しながら雄太に次の作戦を話す。
「次は、ペットボトルロケットを飛ばそうと思う」
かなりロマンのある方法だ。きっと雄太も食いつくだろう。しかし、
「それはさすがに現実味がないんじゃ……」
予想は大きく外れた。
「いや、でもギネス記録は八百メートルだよ」
僕は昔読んだギネスブックの記憶を辿る。
「もうこれくらいしか方法が思い浮かばないんだよね」
僕はそう吐露する。これが失敗したら、諦めるか強行突破するかの二択になる。貯めていたお小遣いも残り少ない。
「とりあえず買わないといけないのが、上のカバーとゴム栓とビニールテープ」
リビングの本棚にある自由研究の本を開いて材料を確かめる。
「でも兄ちゃん。その本に載ってるペットボトルロケットって五十メートルしか飛ばないぜ」
なんのために僕が今わざわざコーラを飲んでいるんだか。
「それは五百ミリリットルのペットボトルで作るからだよ。このコーラのペットボトルで作れば単純計算で二百メートル飛ぶよ」
でも家から飛ばすには距離が足りない。なにせ町外までは五百メートルあるのだから。それに本来真上に飛ばすものを斜め上に飛ばすのだから前へ進むエネルギーはかなり少ない。だから、
「ちょっと先の公園で飛ばそう」
「ああ、住宅街で飛ばすといえとか破壊しかねないからか」
確かに破壊まではなくともぶつかる可能性はある。
「とりあえず先に材料だけ買いに行く?」
まだ近場のホームセンターが閉まるまで二時間くらいの猶予がある。
「確かにな。この際だから買っといたほうがいいかもしれない」
「よし、そうと決まったらさっそく出発だ」
僕はダウンジャケットを羽織り、家の鍵を手にする。
「んでさ、ちょっと作戦があるんだけど……」
僕は家の中にもかかわらず雄太に囁く。 きっと普通にしゃべっても全てあちらに筒抜けなのだろうから。
雄太は一つうなずくと玄関の扉を開けた。いつも通りの冷たい風が頬に刺さる。
「さて、行くか」
自転車で五分程度のところにある大きめのホームセンターは大抵のものがそろっていると評判である。案の定ペットボトルロケットの材料はすぐに集まった。レジで会計を済ませ、雄太の自転車のカゴにホームセンターのレジ袋を入れる。一枚十円の出費は痛いが作戦のためには仕方のないこと。
自転車をこぎ始めて一分と立たずに彼らはやってきた。どこからか現れて行く手を阻む。男のうち一人がポケットから手帳を取り出して僕らに突きつける。
「警察だ。少し話を聞かせていただきたい」