病も境遇も気から   作:音槌和史

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第十九話~終わりの始まり~

「良かった、晴れた~」

 カーテンの隙間から青空を視認して僕は思わず階段の上に向かって叫ぶ。

「雄太、飛ばすよ!」

 すぐさま雄太が階段を駆け下りてきて僕は洗面所に隠したペットボトルロケットを取りにいく。洗面所のすりガラスからも爽やかな光が差し込んでいる。

「よし、行くか」

 僕はペットボトルの半分ほどに水をいれ針で穴を開けたゴム栓で口を塞ぐ。リビングでジャケットを羽織って靴下を履こうとしていた雄太にも声をかける。玄関で靴を履きながらサッカーボールの空気入れを取って青が輝く空の下へと飛び出した。遠くに止まっていた鳥すらも羽ばたくほどの気配を至る所に感じ、僕らは思わず立ちすくむ。

 筒抜けだったか……。僕は爪を手のひらに食い込ませる。もう片方の手で雄太の肩に手を置き「戻ろう」と声をかける。

 体を百八十度回転させ玄関前の小さな段差を越えようとすると隣家との間にある生垣から一人の小柄な男が出てきて立ち塞がる。同時に至る所に潜んでいたと思われる男らが姿を現して右を向いても黒、左を向いても振り返っても黒になった。

 背後で自動車の止まる音とドアを開け閉めする音が聞こえてきて振り返ると、後ろ側にいた男らが少し下がって、白いスーツを着た長身の男が歩いてくるのが見える。黒いスーツの集団に一人だけ白。目立つことこの上ない。

「トランクに乗せろ」

 しゃがれた声でそう命じてすぐに車に戻っていく。次の瞬間、僕らを取り囲んでいた男たちが間合いを詰めてそのまま僕ら二人はなぎ払われる。抵抗する間もなく僕らはそれぞれ特にいかつい男らにお姫様抱っこされて黒いハイエースのトランクに乗せられる。いや、置かれる。寸前にペットボトルロケットは取り上げられてしまった。すぐにトランクは閉められフィルムによって光が遮られた薄暗い中で僕は雄太と目を合わせる。

「彼らは何をしようとしていたのだね」

 さっきの白スーツと思しきしゃがれ声が車の前方から聞こえてくる。

「この街にいる他の被験者にもこれを知らせようとしたのかと」

 若めな声がそれに答えている。

「しかしなんだ、何故バレたのだ、弟に」

 雄太が怪訝な顔をする。

「偵察班によると%&”!/が情報を流していたとか」

 車のエンジンがかかり男らの会話が聞こえづらくなる。足掻いても仕方あるまい。大人しくしておこう、体力を温存するためにも。僕は静かに目を閉じた。寝るのは危険すぎるが目を閉じて休むくらいなら問題ないだろう。

 

 

 車が後ろに下がる振動で目を覚ます。こんな緊迫した場面でも車の揺れによる睡魔が勝っていたようだ。トランクが開けられて僕らは外に出される。濃い灰色の建物がある。だが研究施設にしては小さいような。そう思ってながら男らに連れられて建物内に入るとそこには下へと続く階段が。どうやら地下施設のようだ。

 謎の機械がたくさん置かれた部屋を歩いていると突然、どこからか怒号が聞こえてきた。たくさんの足音も。一体何が起きているんだ……?

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