「提案……?」
「うん。俺はぶっちゃけこの境遇に憤りを感じてる」
そっか……。最愛の人をある意味、失ってしまったわけだからな……。
「で、もしかすると被験者の中にはこの計画を知れば俺以外にも同じことを感じる人はいるかもしれない」
「確かに」
北風に瞬く星を見上げながら考える。僕も正直良い気はしない。雄太型の被験者はこのことを知ればこれまで積み重ねてきたものが崩れてしまうと感じるかもしれないし、僕のような被験者は、すでに散々な思いを経験している。
「そこでだよ。このことを周りに明かさないか?」
「周りに明かすっても斉木さんの言うことが本当ならこの街全員、このこと知ってるぞ?」
すると雄太は人差し指を左右に振った。様になっているのが非常に悔しい。
「そりゃあもちろん他の市、他の県に決まってるじゃないか」
「でもどうやって?」
母はノートパソコンを持っているけど僕ら二人はパソコンはおろかスマートフォンも持っていない。まさか電話なはずは無かろう。
「ふっふっふ」
妙な笑い方をして雄太はポケットからチラシをちぎったような紙切れを見せてきた。
「これが母さんのパソコンのパスワードだよ」
何!?
「あとは母さんが仕事に出ているときにネットに書き込むだけの簡単なお仕事」
「なるほど……」
自前のインターネット機器は持っていないけど、学校で情報技術の授業があるおかげで、ある程度の使い方は分かる。
だけど……。
「ネットの情報は信憑性低いって聞くよ。僕らが書き込んだこともスルーされるんじゃないの?」
すると雄太は紙切れをポケットに戻す手をピタッと止めた。
「確かに、信じてもらえない可能性があるわけか」
僕らは二人揃って空を見上げる。容姿も性格も似ていないけど、こういうところは双子だと感じる。
ん?信じてもらえない……って言ったってこの街の人はピンとくるよな。
「あっ、じゃあさ」
僕がそう声をあげると雄太が大きな瞳をこちらに向けた。
「とりあえずたくさんの人に信じてもらうことを目標にするんじゃなくてさ、斉木さんの言うことが本当ならこの街には他にも同じ実験を受けている双子がいるはずだからその人たちとコンタクトがとれるんじゃない?」
我ながら名案だと思う。
「それだ!学年とか違ったら普通に生活してたら接点ないもんな」
ついでに言うと。
「この街の人たちはこの実験を知っているわけだから、僕らの書き込みを見たらなんらかのアクションを起こすと思うんだ」
「アクションを起こしたらこの実験は本当だってこと?」
察しの良い雄太に僕は親指を突き出す。
「That's right!」
「今日、確か母さん夜勤だよ」
それは好都合!
「よしっ善は急げだ」
僕らは全速力で家に帰り、パソコンを起動させる。
「実験の真偽を確実にするために文書を作ってコンビニかどっかでコピーして適当にばら撒いてもいいんじゃない?」
雄太がそう言うので、僕は文書係に、雄太がパソコン係になって作業を続けた。
「ふぅ……。疲れたな」
「コピーは明日、帰ってきてから行こう」
僕らはネット上への書き込みと文書の清書を終わらせ充足感と夢に落ちた。