切嗣はヤバい女を手懐けてしまいました   作:柚原  笹葉

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 さて、僕もどうやら限界が来たらしい。もう何も見えない自分の目で娘が居るであろう場所を見る。妻は先立ち、幼い娘を一人遺して行くこの姿。なんと罪深いことだろうか。僕は結局一人じゃ何も出来やしない。逃げるだけで守れやしない。
 「■■■■■■■■■」
 そう言って僕は事切れた。


聖杯戦争開始前
ヤバい女。平行世界に旅立つ


 私はただ終わりを待っていた。私は知っている。もうこの世界()は切り落とされると。何故ならもう先が見えていないのだから。

 手の甲が隠れる位にサイズの合わない草臥れた黒いコートを着た、深海の様な深い青い目と対比的な日光を押し固めた様な黄色の目をしたオッドアイの少女が墓地に一人座っていた。

 「バイバイ切嗣」

 その後、世界は切り落とされた。

 

 

 

 

 

だか、私は消えることは無かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雪の積もる森の中最初に思ったのは大自然の感動や寒さなんて感情は感じ無かった。

 かわいい。流石切嗣の娘かわいい。

 何を言っているか自分でもあまり分からない。

 私は起こったことをありのままに話そう。

 私は結界をうまく偽装魔術で通り抜けた。

 そして、そこで偶然鉢合わせた。切嗣と切嗣の娘と思わしき人物と遭遇した。

 「イリヤは後ろに下がっていなさい」

 切嗣は胸からキャリコM-950を取り出した。その銃口をこちらに向ける。

 「お前は誰だ」

 切嗣が私に尋ねてくる。その目はかつての対象を処理するだけの機械的な目から愛を知った人間的な目をしていた。よかった切嗣はこの世界では幸せになれたらしい。私が切嗣を幸せに出来なかったのは少し残念だが、彼が幸せならそれでいい。

 「……切嗣怖い」

 切嗣の娘が若干後ずさっている。確かに、子供にはこの目は怖いかもしれない。だが、良い!私にとってはとても好ましい。おそらく平静を保てているだろうが、本来なら頬を紅葉の様に赤く染め上げ、口は(ほど)けた結び紐の様に緩んでいることだろう。

 本音を言えばその目でもっと私を見つめて欲しい所ではあるが、こんなとこで撃たれて切嗣の持つ弾薬と切嗣の娘の精神に悪影響を与えてはいけない。

 「私はヌル。何処にでも居る金眼銀眼で少し黄色かかった白髪のホムンクルスよ」

 私は胸に右手を当てて自分の名を語った。

 「悪いが、アインツベルンのホムンクルスにこんな寒い雪の中、僕と同じ草臥れたコートを着て歩くホムンクルスは居ない」

 「ご丁寧に紹介ありがとう。切嗣」

 全く切嗣は律儀で可愛いなあ。

 「悪いことは言わない今すぐここから去るのであれば何もしない」

 優しくなった物だ。仕事の目撃者は誰一人殺していたのに。

 「私も悪意があって侵入したんじゃ無いよ?少し君に用があるだけさ」

 「何の用だ」

 「君の陣営への参加よ」

 切嗣は何を言っているんだと言う視線を向けて来た。それはそうだ。訳の分からない女が仲間になる等と世迷言を言ったのだ。流石にいくら切嗣とは言え驚くだろう。

 「目的は何だ」

 「純粋に貴方に協力したいのよ」

 「怪しいな体の何処に武器を仕組んでいるか分かったものじゃない。それにマスターの可能性も十分にある」

 「確かに、護身用のサバイバルナイフはあるわ。でも、残念だけどね───」

 両手の甲を彼に見せる。

 「───私は貴方の舞踏会(パーティー)の相手には成れそうに無いわ。招待状(チケット)を貰い受けてませんから」

 「全身を見ないと分からないな。何処に武器を隠しているのか分かったもんじゃない」

 「やだ、切嗣ったら年頃の女の子に何を求めてるんだか」

 「悪いが僕には妻が居るからね。君は趣味じゃないよ」

 「確かにアイリさんに比べたら私なんかおばさんよね~。所で、長話して良いの?」

 「何がだ?」

 「イリヤちゃん寒いんじゃないの?さっきから少し震えて寒そうよ?私は慣れてるから平気だけど、普通の子供にこの寒さは少し酷なんじゃ無いの?」

 切嗣が後ろを見る。まぁ、気付かないのも無理は無い。切嗣は不審者である私以外にも私以外にも居るかもしれない危険人物を警戒していた筈だ。子供の機微までは気付けなかったのだろう。

 「そんなイリヤちゃんにはお姉さんからプレゼント!」

 「何をする気だ」

 私はリュックに手を入れ先程から魔術仕込みのプラスチック製の湯タンポを取り出し、魔力を込めてキリツグの前に放り投げた。

 「安心して?それは正真正銘只の湯タンポよ。術式はあるけど中の湯を暖める為の物だから」

 「悪いが、まだ信用出来ない人間から物を受けとる訳にはいかなくてね」

 「だったらせめてイリヤちゃんを城に入れてあげたら?流石に可哀想でしょ」

 「だったらお前がここを今すぐ去ればいい」

 「それは出来ない。だって私は貴方に用があるのだから。まぁ、信用出来ないって言うのであれば下着以外とリュックまでなら渡さないことも無いけど」

 正直な所、私も年頃の乙女なので全裸は回避したい。何より、イリヤちゃんの前で乙女の服を剥く切嗣なんて言う切嗣に対して印象を下げる絵を見せたくない。

 「流石にイリヤの前でそんなことはしない。両手を挙げて僕の前で歩くのなら何もしない」

 「分かった。その条件を飲むよ。それならイリヤちゃんの教育上何の問題も無い。もし私が抵抗しても直ぐに対象出来るよう私は前を向いて切嗣の正面を歩くね」

 そして、私は切嗣の前を歩いて城へと歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「貴方は何者ですか?」

 「えっ?」

 玄関の様な大広間で待機していたら青いドレスの様な服を来た金髪で緑色の目をした少女が尋ねて来た。確か、アインツベルンのホムンクルスは赤目に白髪。だが、この少女はそのどちらにも当てはまらない。

 あぁ、この人がセイバーか。向こうではうちの切嗣が迷惑を掛けてごめんなさい。

 「切嗣が先程、御息女と屋敷の周りを歩いてくると言った際に帰ってきたら一人気配が増えていましたので。屋敷に入っている辺り切嗣の客人かと思いましたが、その割に切嗣が特に触れませんでしたので」

 「あぁ、気にしないで?私は唯の客人よ。別に切嗣と何か特別な関係があるわけでは無いわ。今回のことも少しした用事で特にこれと言って特別なことじゃ無いわ」

 「そうですか。何やら切嗣が良く見張っておけと言っていたのですが」

 やっぱり、信用されて無いか。イリヤちゃんが居なければ一度気絶させて家に入る必要があったかもしれない。

 「そういう貴方こそ誰?とてもこの城のホムンクルスには見えないのだけど」

 「すいません。訳あって名前を名乗れません」

 一応聞いたみたけど、やっぱりそう簡単には答えてくれないわね。

 「良いわ。別に名前を名乗れ無いなら無理に知る気も無いし、こちらから一方的に名乗らせて貰うわね。私の名前はヌル・ハルモニア。唯の若い乙女よ」

 「セイバー?客人はどう?」

 後ろから若々しい女性の声。その声から不安も感じるが何処か抑え切れていない好奇心に満ちた声。

 「いえ、アイリスフィール。彼女に特に敵意は無いかと」

 「そう、なら良かった」

 声のした階段の方を見るとさっきのイリヤちゃんに似た感情豊かな大人のホムンクルスが現れた。そのホムンクルスは新しいおもちゃを見る子供の様な目をこちらに向けている。何だろう。私の勘が全力で逃亡せよと警鐘を鳴らす。

 「ヌルさんでいいのかしら?私はアイリスフィール・フォン・アインツベルン」

 あぁ、この人がアイリさんか。切嗣の奥さんでイリヤちゃんの母。イリヤちゃんも将来こんな美しい女性になるのか。

 手を取りくっついてくるがここで格差を感じた。

 ……私はまだ成長期だきっと希望はある。そうだと信じたい。この低い身長も、この凹凸に乏しい体もきっと将来変わる筈。

 「ヌルで良いわよ?」

 「そう?じゃあ私もアイリって呼んでね?」

 フレンドリーな人だ。奥さん、一応私この家の結界を通り抜けた不審者ですよ。

 「分かった。よろしくねアイリ」

 「じゃあヌル。お洒落に詳しいの?」

 「……えっ?」

 「何か見たことの無い服を着ているからおしゃれに詳しいのかな?と思ったのだけれど違った?」

 「いえ、特にお洒落には」

 「お洒落は良いものよ。キリツグったら私が色んな服を着ると一つ一つ感想をくれるのよ。それにお洒落をすると気分も良くなるのよ」

ㅤ「そうなんですか?」

 「と言うわけでそうと決まれば善は急げよ」

 「えっ?」

 そういうアイリさんは私の手を引っ張り階段を駆け上がった後ろのセイバーさんはこちらを微笑みながら見ていたが目だけは何処か同情の目を向けられていた。

 一体この後どうなるんだ私?!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ねぇねぇ!セイバー、ヌルにこのセーラー服も似合うと思わない?」

 「マダムがそう思うならそうなんでしょう」

 セイバーさんは半ば諦めた表情で遠い目で天井を見ている。あの目は経験者の目。アイリの着せ替え人形にされたのだろう。流石のサーヴァントとは言え着せ替え人形にされるとキツい所があるらしい。

 「あのー?アイリちょっと帯の締め方に違和感を感じるのだけれど?」

 「やっぱり、そうよね!にしても、前に本で寸胴体型の人には日本の服が似合うと聞くけどやっぱり似合うわね」

 着物は恐ろしい。なんでも着物は下着を付けないらしい。まぁ、私もそれを知ってはいた。

 「確か日本では着物を着ている女性をこうするのが文化なのよね?」

 アイリさんは私の着物の帯を掴んだ。帯の締め方で何となく想像はついていた。

 「良いでは無いかー」

 アイリが帯を引っ張ると、私の帯が無くなった少しサイズの緩い着物は必然的に―――

 「ピィギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」

 下に落ちる。流石アインツベルンのホムンクルス。腕力も相当あるらしい。

 私はきっと城内に響き渡る様な声量で黄色い悲鳴を上げた。そして、それに反応したのか走る音が2つ。まさかとは思うが―――

 「どうしたのヌル?」

 「今の声は一た―――」

 ドアが勢い良く開くと切嗣とイリヤが部屋の前に立っていた。私はドアの前に居たので必然的に。

 「ピィギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」

 再び黄色い悲鳴を上げた。その際に私の羞恥心で魔術回路が誤爆して、アイリの趣味の部屋が一つ埃塗れになったのはやむを得ないことであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……グズンッ」

 「キリツグ?流石に女の子の裸を見るのはね? 」

 「キリツグのスケベ」

 かなり不味いことになった。確かにヌルの裸を見たのは僕の落ち度だ。注意していれば見ることは無かっただろう。

 現在、僕はイリヤとアイリがベットに座り、僕がその前で正座している。

 「イリヤ。父さんは別にスケベじゃないよ?」

 現在風呂に入って出てきてから何処から用意したのか猫耳付きの黒いパジャマを着て部屋に入って以降、ヌルはずっと部屋の隅で三角座りで固まっている。

 「確かに帯回しをした私も悪いかもしれない。けどね?私達みたいに愛しあっている夫婦ならいざ知らず、今日会ったばっかりの他人に裸を見られるのはとっても恥ずかしいし悲しいことのはずよ?」

 「うっ」

 確かにその通りだろう。僕はどうであれ、ヌルの裸を見てしまった。後ろから見たから大事な部分は見ていないが、その結果魔術を暴発させる程の精神的ダメージを与えてしまった。

 僕は別に見ること自体慣れているからなんの反応も無かったが、ヌルは違ったらしい。

 「仲間になりに来た人にこの扱いはいくら何でも弁明の余地が無いわ。アインツベルンとしても謝罪しなければいけない。けど、キリツグ?キリツグからも誠意を見せるべきよね?」

 「うぐっ」

 確かにこのまま情報を聞けないのはこちらとしても不利益だ。ここは、紳士的に謝るのが正解だろう。その上で何を望むのか聞くべきだ。

 僕は部屋の隅で三角座りで固まっている黒い塊に謝罪の意を表す為に近寄った。

 「すまない。僕がしっかりと注意しておくべきだった。だから情報を渡してくれないか?お詫びは出来る限り如何様にもすると約束する」

 「……参加させて」

 「ん?すまない。上手く聞こえなかったからもう1回言ってくれないか?」

 1度深呼吸した後、再び口を開いた。

 「あの時も言ったけど私を聖杯戦争の切嗣陣営に参加させて」

 「ッそれは流石に」

 あの時?あぁ、最初に会った時か。よく聞こえなかったから情報提供だと思っていた。

 「………今間桐は空席」

 確かに間桐は空席だ。だが、2年後には向こうもサーヴァントを召喚する筈だ。

 「確かに空席だが、2年後には―――」

 「間桐家は全員私が殺った」

 「何?!」

 この表情豊かな少女が?魔術師なのは分かっているが、間桐はいくら衰えているとは言えかつての名門。さらに、衰える前の魔術師・臓硯が生きており、そう簡単に易々と殺れる家では無い。流石に単独でやったとは思えない。

 「私が冬木の聖杯を調べに行った際に、襲ってきたから家を焼いた。臓硯も本体を殺した」

 信じ難い話だ。だが、1週間前に間桐家の焼失の知らせが入った。次男以外は消息不明らしい。

 「本当か?本当に君がそれをやったのか?」

 黙って頷く。それが事実だとすればかなり心強い味方になる。嘘だとしてもアインツベルンの結界を通り抜ける程の技術、又はそれを持つ仲間が背後に居る。かなりの戦力上昇、作戦の幅の拡張が見られる。

 「今から冬木に行く?」

 「いや、それはいい。こちらの陣営になるのなら明確な力量を知りたい」

 結界抜けが得意なら偵察。それ以外にも力があるのなら上手く使えばいい。

 「……少なくとも遠坂とアーチボルト程度なら単騎でも。あと、キャスターのサーヴァントならどうにか」

 アーチボルト?何処かのマスターの名前か?何処でその情報を掴んだのかは後だ。今欲しいのは実力だ。

 「その実力を示すことは?」

 「そうですね。アイリさんが魔術で攻撃してくれると分かり易いと思います」

 ……一応アイリの魔術の腕はその辺の魔術師よりかは高い。

 「全力でやってもいいんだね?」

 だとしたら敵陣営にこの少女を渡す訳にはいかない。こちら側の陣営に引き込む。それが出来ないのなら聖杯戦争から退場して貰わなければならない。

 ヌルの顔がこちらを向く。その顔は福音でも受けたかの様な笑顔だった。

 「勿論、可能よ?流石に五感のどれにも掛からない物なら厳しいけどね」

 「なら、どうやるか。少し見せてくれないか?」

 「適当に攻撃してみて。加減は要らないわ」

 「アイリ。少し攻撃してみてくれ」

 「分かったわ」

 アイリは針金を錬金術で加工し鳥の使い魔を作った。その使い魔は高速でヌルの方へと向かっていった。

 だが、一方のヌルは何の素振りも見せない。カウンターの類か?嘘だったのか?

 アイリに振り向いた時だった。アイリが少し驚いた様な顔をしていた。死んでしまったのか?そう思い再びヌルの方を振り向いた。

 本来、ヌルに突撃しているであろう鳥達はヌルの手前で静止していた。まるで、そこだけ時間が止まった様に。まさか、ヌルの持つ魔術は時間に干渉する魔術なのか?

 そう思ったが使い魔は2匹はヌルの頭上に飛行し、ヌルの頭上を飛行し続けている。となると時間操作の類である確率は低いな。

 「アイリ。これは?」

 「何でかこの子達私の言うこと聞いてくれないのよ」

 「これが私の得意とする魔術です」

 アイリの魔術がアイリの意思に反して動いている。アイリがこんなヘマをするとは思えない。なら、有り得ることは本来有り得ないことだ。まさか―――

 「行使中の術式を乗っ取った?」

 「正解よ」

 これは恐ろしいな。魔術が主力であるキャスターに取っては致命的と言っても良いだろう。自分が魔術を展開する度、敵が有利になる。これは非常に強力な魔術だ。魔術師同士の戦いなら僕の様な異端を除けばほぼ確実に勝てるだろう。

 「サーヴァントを乗っ取ることは可能か?」

 「理論上可能よ。と言ってもサーヴァントを乗っ取る機会は無かったから分からないけど」

 「是非とも協力願いたい」

 「喜んで」

 僕の陣営に、新たな魔術師殺しが入った瞬間だった。




 キャラ崩壊をお許しください。今後も暇を見つけて書くのでお付き合い頂ければ幸いです。
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