切嗣はヤバい女を手懐けてしまいました   作:柚原  笹葉

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 本当に勝てるのだろうか。私は不安になってきた。私のマスターは普段は完璧なのにここ一番と言う時にミスをする。何処ぞの赤い悪魔と違い普段のうっかりは無いが、この伯爵の場合うっかりが致命的過ぎる。例えば、うっかりガスを切り忘れて家にガスが充満することや、うっかり洗剤を混ぜてしまうこと等、このマスター聖杯戦争云々の前に放っておくと死ぬんじゃないのか?
 私な不安で不安でたまらない。凛、君のお父様は君が思っている様な完璧人間では無かったらしい。


未知の捌き方

 「本当に何だったんだよ。あいつ」

 「そうさなぁ。美しい女児だった。是非とも、娶りたい」

 「何言ってやがりますかーー。この馬鹿はぁぁーー」

 拠点に戻って考えていた。あのキャスターは一体何者なのか。あのアーチャーを退場させたのはあのキャスターだ。別に三大騎士クラスのアーチャーがキャスターに負けることは充分に有り得る。だが、それはあくまでもキャスターの工房に攻め込んだりした場合や、サーヴァント同士の相性が余程悪い場合、後は英霊としての能力が極端に弱い場合の話だ。

 だが、あのキャスターは無限とも言える宝具に対して、一本の剣と一つの弓だけでアーチャーを撃退した。アーチャーの宝具は全てキャスターに狙いを定めていた。なのに全て弾いていたのだ。アーチャーの宝具は狙いをズラすことの方が多かった。恐らく、他の英霊を嘗めていたのだ。だが、あのキャスターに対してはどうだ?本気を出していた。

 あれ程の宝具を持つアーチャーがキャスターに対して警戒を示していた。見た目で見ればあの場では格好の餌食だった。あれは戦う乙女と言うよりは、守られる一輪の花の様な姫君の見た目だった。だが、結果ではあのキャスターが最も戦士らしいと言える。

 「なあ、ライダー?」

 「何だ?坊主」

 「あのキャスターがアーチャーと面識があったと言うことは無いか?」

 「確かに、無いとは言いきれんな。何せ、英雄として認められればその英霊の最盛期で召喚されるのが聖杯戦争だ。その可能性も充分にある」

 やはり、アーチャーはキャスターを知っていた?だとしたらあのアーチャーの真名が分かれば芋蔓式にキャスターの真名が分かる。流石にキャスターの真名を当てるのは特徴が少なく難しい。その上、セイバーを見た限り実際は女性だったと言うことが充分に有り得る。

 「なぁ、ライダー。あのアーチャーの真名に心当たりは無いのか?」

 「さあなぁ。少なくとも記憶にある限りあの様な男は知らん」

 となると、完全に手掛かりは無しか。せめて宝具の真名解放がされれば真名が予測出来たのに。弓と剣を持つ英霊何てものは探せば幾らでもいる。それこそヘラクレスなんかキャスター以外の全てのクラスへの適正を持っている。もし仮に相手がヘラクレスなら死因はヒュドラの毒以外にも炎がある。ヒュドラの毒は無理だが炎なら簡単に用意出来る。

 「ライダー。明日はキャスターの工房を探るぞ」

 「何だ坊主?攻め込むのか?」

 「違うやい。相手の拠点が分かればある程度の手掛りにはなる。今後の計画を立てるのにも必要だ」

 「やめておかないか坊主。何か嫌な予感がするぞ」

 「そうかよ。じゃあ不味くなったら撤退するよ」

 「そうだぞ坊主。攻めるばかりでは無く、時に撤退する事も必要だ」

 そして、僕は魔力の残滓を探知する為の薬の錬金術に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後の落ちる光景から察するに、アサシンが撃退されたのだろう。流れ弾も考えたが、あの場で遠距離形の宝具を使っていたのは退場したアーチャーのみ。ならば、アーチャーがアサシンを撃退したとは考え難い。必然的に何処かの陣営は恐らくアサシンの生存に気付いている。恐らく、キャスターの陣営と見て良いだろう。あれはアサシンの背後から貫いていた。大方、投擲した際に魔術で軌道を曲げたのか、そういう宝具を持っているのか。

 そして、その宝具を調べた限り思い当たるの二人。ケルトの英雄クー・フーリン。彼はクルアジーン・カタドゥヒャンと言う丈夫な剣を持つ。アーチャーの宝具を受け止め切れたのにも納得出来る。そして、アサシンを仕留めたのは恐らく彼の持つゲイ・ボルグ。キャスター適性についてもルーン魔術で説明がつく。だが、一つ疑問が残る。弓は何処から来たのか。彼に弓を持つ逸話は無い。使う話はあったとしてもそれに固有名が付く程では無い。無名の弓として持ち込んだ物を考えすぎかもしれない。

 そして、もう一人。シャルルマーニュ十二勇士が一人───ローラン。だが、彼には弓と槍の逸話が無い。代表としての立ち回りもあったが、彼は最後に大きな過失を犯している。その仲間が彼に宝具を貸し渡すとは考え難い。更には彼にはキャスターの適性が見受けられない。ローランがキャスターとは考え難い。

 「全く、ここまで面倒な事になるとは」

 アサシンに探させようとも思ったが、バーサーカー陣営により残りは六十九騎。時臣師も「キャスターは下手に触れる方が危険だ。今は放置でいい」と言われた手前、手を出す訳にもいかない。

 「綺礼殿。バーサーカーのマスターの拠点を捜索するのは困難かと思われます」

 後ろには影から出てきた様な黒い骸骨の面を被った女が居た。

 「どういう事だ。アサシン、貴様等の気配遮断スキルを持ってすれば隠密位容易い筈だ」

 「それが、バーサーカーのマスターを探る様に命じた十名が全員消息を断ちました。恐らく、バーサーカーのマスターには何らかの手段で私達を探知している物と思われます」

 バーサーカーのマスター貴様は一体何者なのだ?アサシンの気配を察知し、彼のアーチャーを撃ち倒す。興味が湧く存在だ。

 「分かった。これ以上の損失は痛手だ。バーサーカーのマスターの捜索はこれで打ち切りとする。以降は他のマスターの拠点の把握、追跡を行え」

 「了解しました」

 そして、再びアサシンは霊体化し消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はクレーンの上に居た。恐らくヌルが転移させたのだろう。そこには自由に育てられた黒髪に黒い煙草の匂いが染み付いた草臥れたコートを着て、黒い少し形の変わった銃の様な物を構えた男が居た。

 「ねぇ?ケリィ何をしているの?」

 「その声は───」

 ケリィはこちらに振り返る。その顔は無精髭が生えていて、大人びていたがやはりあの頃のケリィの面影がある。ケリィは目を閉じて開いて混乱していたが直ぐに落ち着いた。

 「ケリィ、久しぶり」

 「どうして君が……ここに……」

 「ヌルに連れてこられたの」

 私はケリィの横に寝転がる。肌には金属独特の冷たさが広がった。

 「ヌル?!一体何をやったんだ?!」

 「さぁ?私を人間に戻したとは言っていたわね」

 ケリィは何を言っているんだと言わんばかりに混乱していた。一応、死徒になると戻ることは無いらしい。私も完全に戻った訳では無いが、戻ったのでかなり稀少な事例と言えるのだろう。

 「で?ケリィ、何か知らないけど聖杯戦争だったけ?あそこに居るのがサーヴァントなの?」

 「……そうだ。あれがサーヴァントだ。あそこの金髪の騎士が僕のサーヴァントだ。そして、あそこに居る銀髪の女性が僕の妻だよ」

 ケリィは指でセイバーさん指した後、アイリさんを指す。

 「ケリィは何になりたいの?」

 私はあの日の質問を再び問い掛ける。その瞬間、風が吹いた。ケリィは大人に成った。ならば、あの日の夢を叶えることは出来たのだろうか?

 「僕は……正義の味方になりたかったんだ。……でも世界は残酷で必ず誰かが犠牲になる。だから、この冬木の聖杯戦争を人類史最後の流血にしてみせる」

 「そっか。まだケリィは子供のままなんだね」

 「そうだね。まだ夢を叶えられていない僕はきっと子供のままなんだろうね」

 その時、ヌルの剣がアーチャーの頭を貫いた。それと同時にアーチャーの体は吹き飛んだ。もう私にとっては見慣れた光景だった。

 「平気なのかい?」

 「大丈夫。慣れてるから」

 「……そうか」

 そして、暫くただ風の音が響いていた。二人の間に会話は無く、静寂が続いた。

 それからどの位経ってからだろうか?サーヴァントが全員去り私が嫌がるケリィをお姫様抱っこで抱えながらクレーンを飛び降りたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故シャーレイが此処に居る?!?!

 落ち着け。先ずは落ち着くだ。きっと疲れているのだろう。目を瞑ればきっと消えて───無い?!死ぬのか?!僕はもう直に死ぬのか?!

 「ケリィ、久しぶり」

 「どうして君が……ここに……」

 「ヌルに連れてこられたの」

 「ヌル?!一体何をやったんだ?!」

 やっぱりヌルか。全く、アイリから聖杯を摘出する以外にも、魔術を乗っ取るだけで無く置換魔法を応用した空間転移、少し風変わりな投影魔術による宝具のレプリカの作成。更には、僕の固有時制御と思わしき物を使用する。そして、最後にはセイバーの一振を指二本で受け止める。本当にアレで人間なのか?僕はさては童話から出てきた魔法使いでも仲間にしたのか?

 「さぁ?私を人間に戻したとは言っていたわね」

 ……何を言っているんだシャーレイ、君は。死徒になると戻ることは無い。いや、ヌルだ。恐ろしい事にヌルはその様な事をやりかねない存在だ。彼女は僕達の範疇から逸脱している。

 「で?ケリィ、何か知らないけど聖杯戦争だったけ?あそこに居るのがサーヴァントなの?」

 ヌルは何処まで教えたんだ?あまりシャーレイにこっち側の話を教えないで欲しい。シャーレイは僕と違って純粋だと言うのに。

 「……そうだ。あれがサーヴァントだ。あそこの金髪の騎士が僕のサーヴァントだ。そして、あそこに居る銀髪の女性が僕の妻だよ」

 僕は指でセイバーさん指した後、アイリを指す。恐らくヌルからある程度聞いているだろうが一応説明するべきだろう。

 「ケリィは何になりたいの?」

 シャーレイはあの日の質問を再び問い掛ける。その瞬間、風が吹いた。

 「僕は……正義の味方になりたかったんだ。……でも世界は残酷で必ず誰かが犠牲になる。だから、この冬木の聖杯戦争を人類史最後の流血にしてみせる」

 そうだ、この戦いで人類最後の流血にしてみせると決めたのでは無いか。

 「そっか。まだケリィは子供のままなんだね」

 「そうだね。まだ夢を叶えられていない僕はきっと子供のままなんだろうね」

 その時、ヌルの剣がアーチャーの頭を貫いた。それと同時にアーチャーの体は吹き飛んだ。ヌル?!シャーレイに何てものを見せるんだ?!

 「平気なのかい?」

 「大丈夫。慣れてるから」

 「……そうか」

 そして、暫くただ風の音が響いていた。二人の間に会話は無く、静寂が続いた。恐らく、シャーレイはこっちの世界に関わってしまったのだろう。残念だが、死徒となっていた彼女が生き残る上ではしょうがないことだ。

 それからどの位経ってからだろうか?サーヴァントが全員去りシャーレイが嫌がる僕を力ずくで抑えお姫様抱っこで抱えながらクレーンを飛び降りたのは。

 絶対これはヌルの入れ知恵だろう。ヌル、僕は君がアインツベルンの城で毎日純愛物を三冊ほど読んでいたのを知っているぞ。そして、その中に女性が年上の男性をリードする話があったのを。正直な話恐怖を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「何で私は正座させられているのかしら?」

 「どうやら、この馬鹿は自覚が無いらしい」

 現在私は切嗣とお姉ちゃんの前で正座させられている。家に帰って寝ていたら急に呼び出されたから何事かと思えば切嗣が何か怖い顔して立っていた。あと何か舞弥さんとアイリとセイバーも居た。一応、この面子には私の家に来ようとすると認識阻害が掛かるように仕掛けてはおいたが正解だったかもしれない。

 「馬鹿とは失礼ね。切嗣、私は英霊を倒した大英雄よ?」

 「違うそうじゃない。何でシャーレイをこんな格好で出歩かせたんだ?!今は冬だぞ!馬鹿なのか!」

 「違うわ!それはお姉ちゃんがあの日から穢れない心を持つって意味よ!」

 私は反論し立ち上がる。確かに冬場にこんな白いワンピース一つで歩き回るのは可笑しいとは思う。勿論、何か不審者が寄ってきた日にはその場で始末する。変態は許さない、変態退散。特に私を幼女と言って寄ってくるロリコン共。私はロリじゃないと何度言えば分かるのだろうか?

 「僕は知っているぞ!君の読んでる純愛物にアラサーが女子高生に恋する物がある事を!」

 「ケリィ何でそんな事知ってるの?」

 「さあ?私の部屋にでも入ったんじゃない?」

 純粋な何も知らない姉が問い掛けて来たので私は一般的な解答で答えた。その瞬間部屋が凍りついた。勿論、物理的な物では無く雰囲気的な物で。

 「ケリィ。ちょっと向こうで話そうか」

 「違う。シャーレイ誤解だ!僕は別にヌルの部屋に入っていない!」

 「へぇ?じゃあ何で知ってるのか教えて貰おっか」

 「シャーレイ?!何でこんなに力が強いんだ?!」

 そう言ってお姉ちゃんが切嗣のコートの首根っこを掴んで別の部屋へと連行して行った。その後、少しの断末魔が響いたが、私は悪くない。断言しよう。私は何も悪く無いと。

 そう言えば、確か舞弥さんとアイリとセイバーが風呂に行ってるのよね。あのバーサーカーと対面して居ないけど対面したらどうなることやら。

 噂をすれば何とやら、噂をしていないがバーサーカーが襖を叩いていた。

 「何?入りなさいバーサーカー」

 「マスター。所でマスターはまだ十歳程なのでは?特に疾しい物など───」

 へぇ。バーサーカーもそういう風に言うんだ。へぇ。紳士なのに。うん、何も怒っている訳じゃ無いのよ?ただ少しイライラするだけで。

 「マスター。落ち着き下さい。否、落ち着いて!あのその手にある青い剣は何ですか?!」

 「安心して?バーサーカー。私は別に貴方を殺したい訳じゃ無いのよ?」

 「ではその剣を仕舞って───」

 「そうね。そうしましょう」

 私は不毀の極聖(デュランダル)の投影を解いて鉄パイプに戻し、虚数に仕舞った。そうよね。顔を引き攣らせる程に安心よねだって貴方の希望通りだもんね?私はそれと引き換えに虚数から縄無しの黒い棒のみの一本鞭を取り出した。

 「ねぇ?バーサーカー。ある時、偉い人は言いました。“傷つくまでに打てば悪い所は清くなり、鞭で打てば心の底までも清まる”この意味分かる?」

 「いいえ。分かりません断じて分からないので今すぐその鞭を仕舞って下さい。暴力は何も生みません。ただ痛いだけです」

 バーサーカーは襖に後ろに這いずり近寄っているが、退路は断っている。

 「あら?分かってるじゃ無い。さぁ、馬さんにお仕置の時間よ」

 「何故?!何故鎧が出ない?!あっ、───」

 その日、我が家からは二人のそれはそれは雄々しい断末魔が響いたらしい。




久しぶりの連稿です。はい、私です。遠坂家にはやっぱり介護が必要ですね。バーサーカーと切嗣の扱いが酷い?気のせいです。一応、リアルのゴタゴタが一切片付いてないのでこのペース維持は厳しいですが、今後も読んで頂けたら幸いです
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